雇用統計とは、一国における労働者数や失業率など雇用情勢についての統計のこと。
特に、アメリカ合衆国労働省が毎月発表する雇用統計(CES: Current Employment Statistics)を指す。アメリカ雇用統計、米国雇用統計、米雇用統計とも。本記事ではこれについて解説する。
概要
アメリカ合衆国労働省労働統計局(BLS: Bureau of Labor Statistics)が毎月第1金曜日の米国東部標準時8:30(日本時間では22:30、米国サマータイム実施中は21:30)に発表する経済指標。全米約16万の企業・政府機関に対して実施した約40万件のサンプル調査を元に、計10数項目の指標が発表される。
アメリカの最新の景気動向を示す指標として、アメリカの金融政策を決定する連邦公開市場委員会(FOMC)の方針にも大きく影響する。
雇用統計が改善すれば賃金が上昇してインフレ傾向になるため、政策金利は引き上げられる。政策金利が引き上げられると市場金利が上がり、高金利となった通貨が買われるためドル買い傾向になる。雇用統計が悪化すれば逆のことが起こり、ドル売り傾向になる。
また、一般に雇用情勢がよくなれば個人所得・個人消費も改善し、雇用情勢が悪くなれば個人所得・個人消費も悪化する。アメリカの個人消費はアメリカのGDPの約70%、世界のGDPの10数%を占めるため世界経済への影響力も大きく、アメリカの雇用統計は米国内のみならず世界の経済指標の中でも特に注目されるものとなっている。
こうしたことから、米雇用統計の発表時には為替相場・株式市場が大きく動く。経済アナリストは米雇用統計について事前予想を出しており、これと比較して良かったか悪かったかが市場の動向を決めることになる。事前予想と大きく結果が違うことも珍しくない。
主な指標
「失業率」「非農業部門雇用者数」「民間部門雇用者数」「建設業就業者数」「製造業就業者数」「小売業就業者数」「金融機関就業者数」「週労働時間」「平均時給」「不完全雇用率」などの指標があるが、特に注目されるのは以下の2つである。
失業率
働ける人・働く意志のある人のうち、失業している人の割合を示す。
【失業者÷労働力人口×100】で定義される。「労働者人口」は失業者と就業者の合計。調査対象は16歳以上の男女だが、軍隊従事者や刑務所の服役者、就職の意志のない者(失業率調査の週の前の1ヶ月間に1回も就職活動をしていない者)は含まれない。
非農業部門雇用者数(NFP: Non Farm Payrolls)
最も注目される指標のひとつ。簡単に言うと、農業以外で働いている人ののべ人数。
民間企業や政府機関のうち、非農業部門の給与支払い帳簿を基に集計された就業者数で、前月比の増減が注目される。「給料が払われた人の数」をカウントしているため、経営者や自営業者は含まれず、副業など2つ以上の事業者で勤務している人は二重にカウントされる。
企業業績がただちに雇用情勢に波及するアメリカにおいては、失業率に比べて前月の雇用動向がいち早く反映される指標として重要視される。一般に15~20万人程度の増加が好調の目安で、20万人以上増加すればアメリカのGDPを押し上げる水準とされている。
雇用者数については業種別にも発表があり、特に製造業の雇用者数が注目される。
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関連項目
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