雌雄モザイク(しゆう-)、雌雄モザイク現象とは、生物の一個体が、オスの部分とメスの部分を(明確な境界で区切られて)併せ持つことを指す言葉。
性的モザイク、雌雄嵌合体(しゆうかんごうたい)とも呼ばれるが別に変な意味ではない。英語では「gynandromorph(ジナンドロモルフ、ギナンドロモルフ)」、「gynandromorphism」という。
概要
オス・メスという性別のある生き物は、元から雌雄同体[1]であったり性転換[2]する種を例外として、一つの個体にオスの特徴とメスの特徴を同時に持つことはない。しかし、稀に「体の右半分がオスで左半分がメス」のような雌雄モザイクの個体が生まれることがあり、発見されるとしばしば大きく注目される(例えば、雌雄モザイクのニワトリは約1万分の1の確率でしか生まれない[3])。
生物学におけるモザイク(mosaic)の定義とは、遺伝的に異なる細胞が一つの個体中に混在することを指す(モザイクがキメラと違うのは、遺伝的に異なる細胞であっても同じ個体を由来とするところ)。ざっくり言えば、雌雄モザイクはモザイクの性別版といったところである。要するにリアルあしゅら男爵である。左右だけではなく、上下等で性別が異なる場合もある。
雌雄モザイクは節足動物(特に昆虫)や鳥類でよく見られる。原因は分類群や個体ごとに様々で、性染色体の脱落や突然変異による性ホルモン受容性の変化が主だと考えられている。鳥類では、遺伝子異常によるものではなく、オスの遺伝子を持つ精子とメスの遺伝子を持つ精子の2つが同時に受精し、1つの卵の中にオスとメスの2つの胚が形成され、それが融合することで雌雄モザイクの個体が生まれるケースがあると考えられている(ニワトリの場合)[4]。
昆虫は性別が細胞ごとに独立して決まるため、雌雄モザイクが起こりやすい[5]。鳥類でも同様らしく、ニワトリの雌雄モザイクを研究したイギリス・エディンバラ大学のマイケル・クリントン氏は、「鳥類のすべて、そしておそらくは下等な脊椎動物において、性は細胞で決定されていると思われる」「このシステムは哺乳類でもその名残は見られるが、それはホルモンの効果によって上書きされているのだろう」と述べている[6]。
人間を含む哺乳類では性決定のシステムが違い、精巣や卵巣から分泌される性ホルモンの決定力が強いので、体の半々で明瞭に性別が異なるような雌雄モザイクは起こらないとされる[7]。
昆虫や鳥類はオスとメスで色や姿が違う[8]ことが多いため、その点でも雌雄モザイクが見つかりやすい。特に鳥類では、雌雄モザイクであるかどうかに拘わらず、左右で色形の違う個体は「ハーフサイダー(Half Sider)」と呼ばれ人気が高い。
雌雄モザイクの個体の生殖機能だが、残念ながら生殖器は精巣か卵巣のどちらかしかないのが普通である(ニワトリの場合)[9]。しかし、実際に生殖能力があるのかは確かめられていない。また、鳥類のメスは左側の卵巣しか機能しないのが一般的なため、体の左側がメスであれば繁殖できる可能性はある[10]。どちらにせよ、自身と繁殖できる性別の相手に気に入られないといけないので、自然界では雌雄モザイクの個体が子孫を残す可能性は低いと思われる。
なお、雌雄モザイクはオスの部分にはオスの細胞、メスの部分にはメスの細胞があるので、全身の細胞がオスとメスの中間(の形質)で統一される間性とは違うものである。もちろんフィクション的なふたなりとも異なる。
人間の場合は(「雌雄モザイク」とは言わないが、異なる性染色体の細胞を併せ持つ)モザイクと間性のどちらも性分化疾患として扱われる。
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関連項目
脚注
- *特に同時的雌雄同体という
- *隣接的雌雄同体、異時的雌雄同体という
- *雌雄モザイクのニワトリの謎を解明 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
- *同上
- *雌雄モザイク | JT生命誌研究館
- *右と左で性が違う：「雌雄モザイク」ニワトリの研究 | WIRED.jp
- *左半分がオスで右半分がメス？ 昆虫などに見られる「雌雄モザイク」の謎 - ログミーBiz
- *性的二形という
- *雌雄モザイクのニワトリの謎を解明 | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
- *体の右半分がオス、左半分がメスの鳥が見つかる | ナショナルジオグラフィック日本版サイト
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