雨晴海岸単語

14件

アマハラシカイガン

2.2千文字の記事

掲示板へ

記事編集

馬なめていざ打ち行かな渋谿の
清き磯みに寄する波見に

大伴家持

雨晴海岸とは、富山県高岡市北部にある景勝地である。雨晴は「あまはらし」と読む。

ここでは、付近にある「雨晴駅」「道の駅雨晴」についても述べる。

概要

石川県と富山県を跨ぐ国定公園「能登半島国定公園」に含まれる日本海では数少ない遠浅海岸である。海に浮かぶ島の向こうに立山連峰の山々が見える風景が有名である。

岩礁・白砂青松の続く景勝地で、沖にある大きな松が植生している島「女岩」は雨晴の象徴。晴天で空気が澄んでいるという条件が揃えば、富山湾越しに3000m級の立山連峰を眺望できる絶景スポットとなる。越中国司として伏木に在住した青年歌人の大伴家持もこの絶景を多くの歌にして詠み、万葉集に収めている。

「松太枝浜海水浴場」と「雨晴海水浴場」という2つの海水浴場があり、夏には多くの海水浴客が集まる。冬には「けあらし」と呼ばれる海霧が発生し、その風景と日の出やJR 氷見線の列車をセットで撮影しようと多くのカメラマンが集まる。

平成8年（1996年）に「日本の渚百選」に選定された。

名称の由来・歴史

「雨晴」と呼ばれるようになったのは江戸時代より後とされる。それ以前はこのあたりの海岸は「渋谿（しぶたに）」と呼ばれていた。上記の大伴家持の歌にもこの地名が残っているほか、現在でも雨晴地区の一部に「渋谷」という地名がある。

雨晴の由来は源義経とされる。義経が奥州へ逃げ延びる最中、にわか雨が降ってきたので、この付近にあった海岸近くの岩に隠れ、雨が晴れるのを待った、という伝説が残る。そのときに隠れた岩は「義経岩」と呼ばれている。

ちなみに義経岩は人工的に石を積み上げて作られた岩のように見える。このため、義経岩は古墳の石室の部分が、他の盛り土の部分が波にさらわれて残ってしまったものではないかという説がある。実際、付近には桜谷古墳という別の古墳がある。

江戸時代には、松尾芭蕉が富山湾（有磯海）を見て

早稲の香や分け入る右は有磯海

という句を詠んだとされる。これがもととなって、この付近は国名勝の「おくのほそ道の風景地」に指定されている。ただし、あくまで雨晴に江戸時代当時の風景が残っているという理由での指定であり、ここは奥の細道のルート上ではない。上にある句も、さらに東にある新湊から高岡に向かう途中で詠まれたものとされている（そもそも句に詠まれた風景は新湊と高岡の間には実在しないともされる）。

ちなみに義経岩の上には義経の腰掛や弁慶の足跡が残る「義経神社」が建っている。他には「女岩」「男岩」「三ツ岩」「平床岩」という岩礁がある。義経岩はJR 氷見線の踏切を渡って訪れることができるが、他の岩礁は海上にあるので陸路ではたどり着けない。

周辺地域

雨晴海岸は富山県高岡市にあるが、距離的には高岡と氷見の中間にある。海に山が迫っている地形であり、狭いところに家や畑が多く並んでいる。

雨晴海岸の周辺には「雨晴」「太田」「渋谷」の3つの字があるが、3つを総称して「雨晴」と呼ぶこともある。比較的開けた地形になっているのが「太田」であり、雨晴観光協会も太田にある。雨晴駅や道の駅雨晴は「雨晴」にあり、観光の中心もここである。「渋谷」は狭い地区ではあるが、自治会館の「雨晴会館」があるほか、前述するように雨晴よりも歴史ある地名でもある。