雪が降らない地域とは、雪が見かけられない地域である。
概要
雪が降らない地域を指す。「降らない」にしても「(意外と)降らない」「(めったに)降らない」「(降ったら観測史上初レベルで)降らない」等の程度の違いがあるが、これについては後述する。
めったに降らない地域の場合、いざ降って雪が積もると住民のテンションが上がり、学校の授業や仕事を雪遊びの時間にしてしまうこともある。ただし、降っても積もるとは限らないため、いわゆる風花だけで終わってしまうこともある。
その代わりに交通機関が混乱し、事故が多発するなど、必ずしも喜ばしいことだけが起こるわけではない。
日本で雪が降らない地域
日本は世界の中でも引けを取らない豪雪地帯を抱えている一方で、東京などでは雪は珍しい。地域によって雪の降り方の差が違いすぎるため、日本では雪が降らない地域が話題になることも多い。
「雪が降らない」にも程度があるので、当記事では以下に分けて説明する。
- イメージほどには(または周辺地域と比べると)降らない
- あまり降らないが、下と比べたら積もる年もそこそこある
- 上記以上に雪が珍しく、積もるのはごく稀
- ほぼ降らないが、みぞれの観測記録はある
- 観測史上雪の記録が無い
以下、カッコ内の数字は1990~2020年の年間降雪量の平均を指す。
イメージほどには降らない
北に行くほど降るというイメージがあるが、山などで雨雲がガードされる、海水温が高い等の理由で意外と北の方でも降らない地域がある。新潟市(139cm)の場合、佐渡島によってガードされる等の理由で雪が少なくなっている。参考までに、同じ県の上越市の高田は年間平均413cmほどである。
同様の理由により、北海道の太平洋側(釧路市:127cm)や、東北地方の三陸(宮古市:91cm)、仙台市(59cm、、長野県・岐阜県の北部を除く地域(松本市:76cm)でも雪は少なくなりがちである。参考までに、青森市の降雪が567cmである。
特に少ないのは福島県浜通りであり、いわき市小名浜の1991~2008年の降雪量平年値は9cmと、東京とあまり変わらない。
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ただし、降雪量平年値の数字から見てもわかるように、降るときは降るので、「雪が(全く)降らない」と勘違いして冬にノーマルタイヤで走ってはいけない。
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積もる年もそこそこある(5cm~20cmぐらい)
東京(8cm)や横浜(9cm)は雪が少ないように見えるが、後から出てくる太平洋側の地域と比べると実は多い方である。他にも名古屋(12cm)は伊吹山地から抜けてきた雪雲などが来やすいため、太平洋側の地域の中では雪が降りやすい部類に入る。広島(8cm)、京都(15cm)、北関東平野部(前橋:19cm)も同じかそれより多い程度と思われる。
特に東京周辺の場合、1cm積もっただけでも全国ニュースで報道されてしまうこともあるため、いわゆる「北から目線」の対象になりやすい。
一方で、融雪設備が整っていない、冬用タイヤやチェーンの準備が無いなどが原因で、雪国以上に滑って転倒しやすかったり、交通機関に障害が出たりすることもある。また、人口が多いので事故の発生件数も多くなってしまう。全国ニュースで報道する必要性があるかはともかくとして、出かける際には相応の対策が必要である。
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ちなみに、箱根・北関東の山地、北近畿、中国山地など、同じ県に属していても雪が多く降る場所は存在するので注意。下記は神奈川県相模原市の北部の山あいにある藤野駅。
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積もるのはごく稀(0cm~5cmぐらい)
千葉県銚子市周辺、静岡県沿岸部、紀伊半島の沿岸部、阪神、瀬戸内、高知県沿岸部、九州沿岸部などが該当する。降雪量0~2cmの地域が大半。
東京以上に雪が降らない地域。東京や名古屋が雪のときに、雨などの別の天気であることが多いので、がっかりしがちである。
特に数値上際立っているのは静岡市と宮崎市であり、降雪量平年値が0cm、雪日数の平年値も10日未満である。静岡市の場合は、2001年より後に積雪1cm以上の観測が無い。
ちなみに、先ほどの東京等と同じように、雪が降らない都市と同じ県に属している内陸部や山の上、日本海側ならば雪が降っているということも珍しくはない。ただし、雪が降らない地域の人はニュースで見るだけであり、実際に自分たちの家の周りで雪を体感するのはほとんどできないことが大半である。
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ほぼ降らないが、みぞれ等の観測記録はある
奄美大島・沖縄本島などが該当する。2016年の寒波でみぞれが観測された地域である。奄美大島は115年ぶり、沖縄本島では観測史上初となった。
ちなみに沖縄県では、他に久米島で1977年に降雪の観測記録がある。また、琉球王国時代の記録では降雪があったとされている(参考)。
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降った記録が無い
ちなみに伊豆諸島の場合、緯度が九州南部程度の八丈島までは雪の観測記録があり、それより南の青ヶ島でも降ることはあるようだ(参考)。ただし、さらにずっと南の小笠原諸島の父島では降雪の記録は無い。
今後雪が降ることはあるのだろうか…。
世界全般で見た降雪
世界的には、赤道に近づくほど気温が上がり、雪が降らなくなっていく傾向がある。例えば赤道付近のシンガポール等ではほぼ雪が見かけられない。
ただし、これは絶対的なものではない。キリマンジャロ山など、赤道付近でも標高があれば雪は降る。また、日本の青森市・秋田市・富山市などは世界の中では温暖な地域だが、雪雲の発生しやすい日本海側に位置しており、世界の雪が降る都市ランキングTOP10に入るほどに降雪量が多い。
逆に、赤道から離れた寒い地域であっても、雪雲が少ない砂漠や内陸部などではあまり雪は降らない傾向がある。参考までに、1月平均気温が-40℃近くまで行くロシアのシベリア内陸部・ヤクーツクの平均年間降雪量は196cmなのに対し、1月平均気温-3.5℃の青森市は年間平均567cmの雪が降る。つまり、寒い地域だからといって、雪が多いとは限らないのである。
※ただし、上記も絶対的なものではなく、内陸部であっても山の風上側であるために、雪雲が山にせき止められて沿岸部以上に雪が降るケースもある(例:北海道岩見沢市、664cmなど)。
今回使用したデータ
当記事では「年間降雪量の平年値」・「年間の雪日数の平年値」を主に取り上げている。
気象庁が実際に計測した降水量・気温・日射量などのデータをモデルに当てはめて積雪深を求め、その増加量から降雪量を出している。今回はこのデータを使用している。
例えば、東京の年間降雪量の平年値は8cmとなっている。多いように感じられるが、必ずしも一気に8cm積もったわけではなく、融けてしまった雪の分なども含まれている。
雪日数は降雪量と関係なく、雪が観測された日数を数えたものである。みぞれなどは含むが、あられやひょうなどは除かれている。
上記のような取り上げる数値の違いや、統計を取っている期間の違いによって数値が変動することも多いため、雪に関して地域間で単純に比較することは難しい。
静岡県御前崎や和歌山県潮岬、高知県室戸岬など、現在は雪の観測が行われていないが、他にも雪が降らないと思われる場所もある。また、同じ都市内でも位置によっては降雪量に差が生じることもある。あくまでこの記事は目安程度に考えておくとよい。
参考にした数値
※場所のチョイスは執筆者の判断です。適切な場所が選ばれていないかもしれません。
※転記ミスがある可能性が高いので、ちゃんとしたデータとして使う場合は元の気象庁のページを必ず参照してください。
各観測点の年間合計降雪量平年値(cm)・
年間雪日数平年値(日)
(1991~2020年、気象庁のデータより)
※「―」は「1991年~2008年」のように、途中で観測が中止されたものや最初から観測されていないものなどを指す。
都道府県 | 観測点 | 年間降雪量 平年値 |
年間雪日数 平年値 |
沖縄県 | 那覇 | 0 | 0.0 |
鹿児島県 | 名瀬(奄美) | 0 | 0.1 |
宮崎県 | 宮崎 | 0 | 3.6 |
静岡県 | 静岡 | 0 | 4.1 |
千葉県 | 銚子 | 0 | 13.1 |
高知県 | 高知 | 1 | 10.3 |
香川県 | 高松 | 1 | 12.8 |
大阪府 | 大阪 | 1 | 13.9 |
大分県 | 大分 | 1 | 17.3 |
熊本県 | 熊本 | 1 | 17.7 |
愛媛県 | 松山 | 1 | 18.3 |
岡山県 | 岡山 | 1 | 24.4 |
和歌山県 | 和歌山 | 1 | 25.4 |
兵庫県 | 神戸 | 1 | 26.9 |
鹿児島県 | 鹿児島 | 2 | 4.9 |
福岡県 | 福岡 | 2 | 15.6 |
徳島県 | 徳島 | 2 | 18.8 |
山口県 | 下関 | 2 | 27.7 |
長崎県 | 長崎 | 4 | 18.7 |
佐賀県 | 佐賀 | 4 | 22.2 |
奈良県 | 奈良 | 5 | 33.9 |
三重県 | 津 | 6 | 26.5 |
千葉県 | 千葉 | 7 | ― |
東京都 | 東京 | 8 | 8.5 |
広島県 | 広島 | 8 | 21.8 |
神奈川県 | 横浜 | 9 | 17.7 |
愛知県 | 名古屋 | 12 | 14.7 |
茨城県 | 水戸 | 12 | 21.9 |
京都府 | 京都 | 15 | 44.5 |
埼玉県 | 熊谷 | 16 | 17.7 |
栃木県 | 宇都宮 | 18 | ― |
群馬県 | 前橋 | 19 | ― |
山梨県 | 甲府 | 23 | 19.4 |
山口県 | 山口 | 26 | 41.3 |
岐阜県 | 岐阜 | 34 | 33.4 |
埼玉県 | 秩父 | 36 | ― |
岡山県 | 津山 | 44 | 47.1 |
宮城県 | 仙台 | 59 | 65.6 |
長野県 | 飯田 | 61 | ― |
新潟県 | 相川(佐渡) | 67 | ― |
島根県 | 松江 | 68 | 50.5 |
長野県 | 松本 | 76 | ― |
滋賀県 | 彦根 | 81 | 49.3 |
福島県 | 白河 | 90 | ― |
岩手県 | 宮古 | 91 | |
山梨県 | 河口湖 | 97 | 36.7 |
石川県 | 輪島 | 121 | ― |
福島県 | 福島 | 122 | 87.0 |
北海道 | 釧路 | 127 | 74.3 |
北海道 | 浦河 | 128 | ― |
青森県 | 八戸 | 134 | ― |
京都府 | 舞鶴 | 135 | ― |
新潟県 | 新潟 | 139 | 69.9 |
鳥取県 | 鳥取 | 140 | 54.7 |
石川県 | 金沢 | 157 | 73.9 |
北海道 | 室蘭 | 157 | 122.1 |
北海道 | 根室 | 159 | ― |
長野県 | 長野 | 163 | 85.6 |
福井県 | 福井 | 186 | 69.2 |
北海道 | 帯広 | 198 | 79.2 |
兵庫県 | 豊岡 | 204 | ― |
岩手県 | 盛岡 | 209 | 111.0 |
山形県 | 酒田 | 211 | ― |
北海道 | 江差 | 219 | ― |
栃木県 | 奥日光 | 227 | ― |
富山県 | 富山 | 253 | 71.8 |
秋田県 | 秋田 | 273 | 108.9 |
山形県 | 山形 | 285 | 105.7 |
岐阜県 | 高山 | 305 | ― |
北海道 | 函館 | 306 | 118.7 |
北海道 | 網走 | 312 | 132.1 |
福島県 | 若松 | 328 | ― |
新潟県 | 高田 | 413 | 81.3 |
福井県 | 大野 | 458 | ― |
北海道 | 稚内 | 477 | 147.9 |
北海道 | 札幌 | 479 | 124.4 |
北海道 | 留萌 | 546 | ― |
北海道 | 小樽 | 556 | ― |
北海道 | 旭川 | 557 | 151.5 |
青森県 | 青森 | 567 | 119.5 |
広島県 | 高野(庄原市) | 578 | ― |
長野県 | 白馬 | 655 | ― |
北海道 | 岩見沢 | 664 | ― |
富山県 | 猪谷(富山市) | 695 | ― |
群馬県 | みなかみ | 906 | ― |
北海道 | 倶知安 | 921 | ― |
岐阜県 | 白川(白川郷) | 972 | ― |
福島県 | 只見 | 1233 | ― |
新潟県 | 津南 | 1301 | ― |
青森県 | 酸ヶ湯 (青森市) |
1706 | ― |
雪が少ない地域の各年別降雪量(cm)
(2010年代、気象庁のデータから)
※「0」は降雪が観測されたが1cm未満。
※「-」は観測なし。
東京 | 銚子 | 静岡 | 名古屋 | 和歌山 | 大阪 | 神戸 | 岡山 | 広島 | 高松 | 徳島 | 松山 | 高知 | 福岡 | 佐賀 | 長崎 | 熊本 | 大分 | 宮崎 | 鹿児島 | |
2010年 | 2 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 11 | 9 | 7 | 0 | 0 | 10 |
2011年 | 2 | 0 | 0 | 18 | 5 | 6 | 0 | 0 | 4 | 10 | 8 | 0 | 0 | 1 | 9 | 16 | 4 | 1 | 0 | 32 |
2012年 | 6 | 3 | 0 | 25 | 0 | ― | 0 | 0 | 1 | 3 | 1 | 5 | 0 | 11 | 1 | 0 | 0 | 0 | ― | 0 |
2013年 | 8 | 5 | 0 | 5 | 0 | ― | 2 | ― | 8 | ― | 0 | 1 | ― | 5 | 1 | 0 | 0 | 0 | ― | 0 |
2014年 | 49 | ― | 0 | 12 | 10 | 6 | 1 | 9 | 2 | 6 | 7 | ― | ― | ― | 1 | ― | ― | ― | ― | ― |
2015年 | 3 | ― | 0 | 29 | ― | ― | 2 | ― | 14 | ― | 1 | ― | ― | 1 | 1 | ― | ― | ― | 0 | ― |
2016年 | 6 | ― | 0 | 10 | 1 | ― | ― | ― | 7 | ― | 3 | ― | ― | 3 | 13 | 18 | 4 | 2 | 0 | 14 |
2017年 | ― | ― | 0 | 9 | 3 | ― | ― | ― | 20 | ― | ― | ― | ― | 3 | 6 | 3 | ― | ― | 0 | ― |
2018年 | 24 | ― | 0 | 5 | 3 | ― | ― | ― | 2 | 1 | 15 | ― | 2 | 4 | 16 | 16 | 4 | ― | 0 | 1 |
2019年 | ― | ― | ― | 5 | ― | ― | ― | 3 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
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