零式艦上戦闘脚とは、「ワールドウィッチーズ」に登場するストライカーユニットの形式である。
概要
扶桑皇国海軍の代表的な航空ストライカーユニット。第二次ネウロイ大戦では前半期における扶桑海軍の主力ユニットとして活躍した。海洋国家である扶桑の国情がもたらした航続重視・防御削減の特徴がもっともよく表れた航空ユニットとされ、長大な航続距離と高い運動性能によって世界を代表する名ユニットのひとつとして知られた。
開発元は宮菱重工業で、同社の設計主任宮藤一郎博士による「宮藤理論」の確立の結果、ウィッチの脚を異空間に収納できるようになったことで大型の魔導エンジンと燃料タンクの搭載を可能とした。その良好な運動性と扱いやすさは多くの扶桑ウィッチに愛され、旧式化し後継機が登場した後も改良が続けられた。長島飛行脚でもライセンス生産され、生産数では宮菱製を上回っている。
零式艦上戦闘脚の技術は、通常航空機である零式艦上戦闘機の開発へとフィードバックされた。制式採用時、すでに採用年次による命名規定が廃止されていたにも関わらず同機が「零式」と称されたのは、原型となった零式艦上戦闘脚があまりに高名だったためとされる。
開発経緯
1937年(昭羽12年)に勃発した扶桑海事変においてネウロイの急激な進化に直面した海軍は、同戦役に画期的な新鋭機として投入した九六式艦上戦闘脚(宮菱)よりもさらに高性能なストライカーユニットを求め、宮菱重工業と長島飛行脚に対し、当時の世界水準を大幅に凌駕した性能を要求する「十二試艦上戦闘脚」の開発を指示する。
要求のあまりの高さに長島は辞退し、宮菱も宮藤博士が共同研究のため欧州赴任中だったことから同様に辞退しかけたものの、宮藤博士は欧州で設計・開発にあたることを了承。その研究成果である「宮藤理論」によりウィッチの脚を異空間に収納することができたため、ユニット内に生じた余剰スペースの分、魔導エンジンや燃料タンクの大型化が可能となり、海軍の性能要求を達成できる見通しとなった。
こうして誕生した宮菱十二試艦上戦闘脚は、折からのウィッチの欧州派遣に試作機40機が使用されて試験を実施、無事に零式艦上戦闘脚として制式採用された。
性能・活躍
零式の大きな特徴はすぐれた運動性にあり、格闘性能では各種ユニットでも最高級。熟練したウィッチが使用すれば高い戦果が期待できた。航続距離も長く、増槽取付による延長実験まで試みられている。非常に扱いやすいユニットでもあり、弱い魔法力でも十分使用でき、身体の負担も少ないため長時間にわたる活動が可能という利点もあった。
しかしその反面、呪力の割り振りが飛行用に偏っているため防御性能が低く、特に新人ウィッチが使用すると危険が大きかった。ユニットにも軽量化による構造的な弱さがあり、急降下時の速度制限が存在した。また、主戦場となった欧州では戦闘時の飛行時間が短い迎撃戦闘が多く、性能の航続距離への割り振りが逆に弱点となった。
こうした性能の特徴から、大戦初期には、遣欧艦隊が拠点としていたバルト海沿岸リバウから長駆無補給でオストマルク東部の戦闘に参加したり、補給基地を置いて黒海に進出するような、足の短い欧州のユニットでは不可能な運用もこなして多大な活躍を示した。しかし上記したような欠点から後継機の開発が急がれ、大戦中期には山西航空機の紫電に主力の座を譲ることとなる。
各種形式
零式一一型
最初期の試作機は宮菱の瑞星一三型魔導エンジンを搭載し、形成される呪符も2枚だったが、不具合のため長島の栄(マ)一二型魔導エンジン、呪符3枚に変更となった。こうして誕生した十二試艦上戦闘脚は、制式採用後は零式艦上戦闘脚一一型と呼称された。
零式二一型
魔動機 | 栄(マ)一二型 | 公称呪力 | 940Mp |
---|---|---|---|
脚長 | 90.5cm | 自重 | 極秘 |
最大速度 | 288ノット(4,550m・標準的航空歩兵装着時) | 兵装 | 99式一号二型20mm機銃、他 |
『第五〇二統合戦闘航空団全記録 第三集』所収 |
零式二一型(A6M2)は最初に本格量産されたタイプで、空母搭載向けに胴体の折り畳み機構を搭載し、機体も強化されている。同タイプは第二次ネウロイ大戦初期の主力として活躍した。
問題点として空冷式魔導エンジンの始動時間の長さやネウロイの進化に対する出力不足が挙げられたが、補給不足だった最前線で二一型をブリタニアやリベリオンの魔導エンジンに換装してテストしたところ、若干の運動性低下と引き換えに速度と上昇率が向上するという結果がもたらされた。
零式三二型、二二型
魔動機 | 栄(マ)二一型 | 公称呪力 | 1,010Mp |
---|---|---|---|
脚長 | 90.6cm | 自重 | 極秘 |
最大速度 | 292ノット(3000m・標準的航空歩兵装着時) | 兵装 | 九九式二号二型改13mm機関銃、他 |
『第五〇一統合戦闘航空団全記録弐 第一集』所収 |
つづく零式三二型では、欧州での二一型の戦訓を取り入れ、魔導エンジンを出力を向上した栄(マ)二一型に強化。二一型の戦訓と欧州の傾向にあわせ継戦能力を削減して攻撃・防御・機動に重点を置いたほか、列国と主要部品を共通化した。
空母搭載向けには同様に栄(マ)二一型を搭載した零式二二型(A6M3)が生産され、現地で二一型の魔導エンジンを換装して二二型相当となったものも多い。零式二二型甲(A6M3a)のような派生形式も存在している。
零式五二型、五三型、五四型
やがて列国は2000Mp級の戦闘脚を投入、扶桑海軍も後継機である紫電(山西航空機)を導入し、出力不足の零式は徐々に後方部隊や訓練へと活躍の場を移していく。それでも前線からは零式の高い軽快性が望まれたため、改良した新形式も生産されはしたものの、装甲の強化が最大の長所である格闘性能を低下させてしまったことや、急降下時の速度制限が残り欧州の主流となった一撃離脱戦法に対応できなかったこともあり、主力の地位を取り戻すには至らなかった。
零式五二型はこうした改良型として誕生した形式で、欧州に適応させ航続距離を削減して構造と防御力の強化にあて、折り畳み機構も廃止された。つづく零式五三型はより強力な栄三一型魔導エンジンを搭載した。零式五四型では宮菱の金星六二型(公称呪力1350Mp)を搭載したことで、低下した運動性を若干取り戻したといわれる。欧州では補給不足からリベリオン製R-1830魔導エンジンに積み替えたタイプもあったとされるが、こちらも重量の増加に対して呪力には差がなく、性能はほとんど変わらなかったという。
零式練習用戦闘脚
零式練習用戦闘脚は、旧式化し後方運用に回されはじめた零式を練習機化したタイプで、練習機用の黄色い塗装が特徴。訓練中の新人ウィッチに、より実戦的な飛行経験を積ませることが目的であった。諸外国にも注目され、輸出機が実戦投入される例もあった。
魔動機 | 栄(マ)一二型 | 公称呪力 | 940Mp |
---|---|---|---|
脚長 | 90.6cm | 自重 | 極秘 |
最大速度 | 257ノット(3000m・標準的航空歩兵装着時) | 兵装 | 九九式二号二型改13mm機関銃、他 |
『第五〇二統合戦闘航空団全記録 第一集』所収 |
零式練習用戦闘脚一一型(A6M2-K)は、二一型を原型として胴体側面の安定用エーテル整流フィン追加、主翼折り畳み機構の廃止、機体構造の簡略化を施した。もともとの運動性と扱いやすさに高い安定性まで加わったことで、理想的な高等練習脚となった。新造機だけでなく二一型からの改造機も存在した。
零式練習用戦闘脚二二型は、零式のさらなる改良(上述)を受け、零式五二型を原型として同様に練習機化したタイプである。
搭乗ウィッチ
著名な使用ウィッチとして、坂本美緒、迫水ハルカ、宮藤芳佳、管野直枝、下原定子など、多くの海軍航空ウィッチの名が挙げられる。服部静夏、雁淵ひかり、三隅美也といった若手も、練習用戦闘脚として零式を使用している。
なかでも坂本美緒は、ブリタニアでの宮藤博士の零式の開発に中心的に携わった。迫水ハルカは、1939年(昭羽14年)のスオムス義勇独立飛行中隊派遣時、いまだ十二試艦上戦闘脚と称されていた零式を支給され、零式黎明期の搭乗者のひとりとなっている。
特殊な例として、スオムスへの支援として送られた零式二二型甲があり、同国のエースである飛行24戦隊のラウラ・ニッシネンが搭乗した機体(MI-685号機)の記録がある。
登場
扶桑海軍の主力ユニットという立場から、作品・媒体を問わず登場は数多い。
アニメ『ストライクウィッチーズ』では宮藤芳佳と坂本美緒が零式二二型甲を使用した(宮藤機は坂本の予備機)。つづく『ストライクウィッチーズ2』では宮藤芳佳が同様に二二型甲(旧坂本機)を使用している。『ブレイブウィッチーズ』では管野直枝が零式二二型甲、下原定子が零式二一型を使用(ともに作中で紫電二一型に更新)し、雁淵ひかり、三隅美也ら佐世保航空予備学校生も零式練習用戦闘脚を使用する。
機種の設定解説・諸元は、『ストライクウィッチーズ』特典全記録第一集、『ストライクウィッチーズ2』特典全記録第一集(ともに二二型甲)、『ブレイブウィッチーズ』特典全記録第一集(練習用戦闘脚)、同第三集(二一型)に収録。
コミック『ストライクウィッチーズ零 1937扶桑海事変』一巻巻末の「戦闘脚ノ頁」では「十二試艦上戦闘脚」名義で解説されたほか、イラストコラム「ワールドウィッチーズ」でも、雁淵孝美、若本徹子など、扶桑海軍ウィッチの多くの紹介において愛用ストライカーユニットとして解説されている。
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関連項目
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