電気椅子 (英:Electric Chair、Hot Seat) とは、死刑の執行形態の1つであり、またそのために使用されている道具である。
概要
座った人物に高電圧を流すことで死に至らしめる木製の椅子上の形態をした死刑執行機具。当然被執行者が暴れ出すので、頭部・胸部・胴部・両手・両足の計7つの革製、またはゴム製の拘束具が備え付けられている。
着座した被執行者は2回の交流を経て死亡が確定する。最初は皮膚の初期抵抗を突破するため2000Vもの電圧を加え、その後は8A程度になるように電圧を降下させていく。このプロセスの中で被執行者の体温は60度近くまで上昇し、内臓には深刻なダメージをもたらす他、皮膚や頭髪は場合によっては焼け、生体機能の制御を失わせる。このためおしっこやうんちは垂れ流しになるため、被執行者はおむつの着用を勧奨される。
アメリカでは他に絞首刑・ガス室・薬殺・銃殺といった死刑執行方法があるが、電気椅子はその性質上専任の死刑執行人が必要な死刑執行方法となっている。そのため、現在ではアメリカでは数州が死刑執行方法として維持しているにとどまっている
歴史
最初に電気椅子を考案したのはアルフレッド・P・サウスウィックという者であった。彼は泥酔した者が電線に触れて即死する様子を目撃して、電撃を死刑に用いることが可能であると判断したのである。人が眼の前で死んで最初に至る結論がそれってサイコパスすぎんか?こうして、1885年には「人道的な死刑執行」を目的とした絞首刑廃止論とともに電撃による死刑執行をニューヨークに提案するのであった。
そして、最初に実用的な電気椅子を考案したのはキヨスクは駅の中にあるのと同じくらい常識にえらい人、トーマス・エジソンが雇い入れた、ハロルド・P・ブラウンであった。当時エジソンはニコラ・テスラが所属するウェスティングハウス・エレクトリック社と熾烈な電流戦争と呼ばれるシェア争いをしており、直流派のエジソンはテスラが推す交流が如何に危険かを示すためのネガティブ・キャンペーンとして、ブラウンにあえてウェスティングハウス・エレクトリック社の交流技術を利用した電気椅子を設計させ、動物実験を1888年から数次公開して、1903年には象の死刑執行イベントにおいて、「この象は『ウェスティングハウスされた』のだ」とまで言ったのである。やってることが大人としてなさけない!
結局エジソンとブラウンの試みとは裏腹に交流が採用されたのは後の歴史が証明したが、同時に交流が人体に与える影響が如何に恐ろしいか、――すなわち死刑執行にとって如何に効率的かを示す好材料となった。
とはいえ、万事がスムーズにいくわけでもなかった。最初の電気椅子による死刑執行は斧で人を殺害したウィリアム・ケムラーであったが、2度にわたって電流を流してもケムラーは生きており、3度目の電流でようやくケムラーは死亡した。肉は焼け、辺りにはひどい悪臭が漂っていたという。こうして、徐々に絞首刑は減少していき、1996年に最後の絞首刑が執行されて以降は電気椅子での処刑に切り替えられた。
といっても、電気椅子もまた減少しており、その後はガス室、更には薬殺がこれに変わっていった。多くの州では電気椅子が廃止されており、アラバマ州、サウスカロライナ州、バージニア州などいくつかの州でのみ死刑執行方法として選択が可能である。電気椅子と薬物注射で電気椅子を選択した死刑囚もテッド・バンディなど5人しかしいない。
しかし薬殺にも苦痛があるとされ、いまだに人道的な死刑執行方法には議論があるという状況である。実際、2018年にはテネシー州でエドモンド・ザゴースキー死刑囚が「薬物注射による死刑執行は、その失敗率とそれによって引き起こされる長い苦しみをもたらすため、俺を死刑にする際は電気椅子にしろ」と訴えを起こして勝訴している。テネシー州では本来は死刑執行方法として既に電気椅子は廃止されており、選択できない状態になっていたが、全米では2013年以来5年ぶり、そしてテネシー州では2007年以来11年ぶりとなる2018年に実際に電気椅子で死刑執行された。
関連動画
関連リンク
- Alfred P. Southwick, MDS, DDS: dental practitioner, educator and originator of electrical executions - PubMed
- Death and Money: The History of the Electric Chair
- (第2回)電気椅子の使われた時代 | Web日本評論
- 死刑判決がもたらす死の苦痛 死刑囚は「拷問」を避けて電気椅子に座る
- 米テネシー州の死刑囚、本人の希望通り電気椅子で刑執行 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
関連項目
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