霊柩車(れいきゅうしゃ)は、死者を移動させるための車であり、いわば人生最後にお世話になる車であるといえよう。
概要
霊柩車には大きく分けて宮型霊柩車、洋型霊柩車、バス型霊柩車、バン型霊柩車の4種類ある。
多くの人が思い浮かべる、後ろ半分がお御輿のように装飾が施された霊柩車は、宮型霊柩車と呼ばれ、日本で最もメジャーとされる。
宮型霊柩車は昭和の時代に普及し、自宅で通夜や葬儀を行い、自宅から出棺して火葬場に向かう際に霊柩車を利用することが多かったため、全国で1000両以上が走っていた。
しかし平成初期に、お葬式の象徴となる宮型を周辺住民に配慮した自治体が出入り禁止にするケースが増えたことや、バブル崩壊によりお葬式にかける費用が大幅に減ったことなどの理由から、次第に宮型霊柩車は減少していった。
これにより最近は、装飾がなく目立たない洋型霊柩車が増加している。
現代ではセレモニーホールや斎場でのお葬式が増加し、そういった施設に火葬場が隣接していることで、霊柩車を使わずとも火葬施設に運ぶことができることから、霊柩車を見掛けることが少なくなった。
一部地域では「霊柩車見たら親指を隠す」というジンクスも広まっている。
親指を隠さないと、親が早く死ぬ、親の死に目にあえないなど、さまざまな言い伝えがあるようだ。
車種一覧
霊柩車一つとっても、死生観や地域性などが出ており、色々と興味深いものがある。
宮型霊柩車
遺体を乗せる部分が御神輿のような造形になっている霊柩車であり、日本古来よりの乗り物である「輿」が源流と言われている。都会においては死を連想させるため、火葬場単位でも拒否をする事が増えてきた事や低廉な洋型霊柩車が普及したため、数を減らしている。架装部分は職人による手作りであり、定期的な手入れが必要である部分も減っている理由ともいえる。架装部内部は神社本殿やお寺の内部のような感じとなっており、日本人の宗教観を垣間見ることができる。
名古屋を中心に見られる霊柩車は都内でみられるような白木ではなく、黒檀を使ったデザインとなっている。またトヨタのおひざ元であるため、トヨタ車が使われるケースが多い。
他方、海外ではある種の日本らしさを感じる車と言う事でひそかに人気がある…らしい。
洋型霊柩車
デザインが通常のステーションワゴン形態と大きく変わらない造形の霊柩車であり、欧米でみられる霊柩車のデザインをそのまま持ってきたものと言える。英語から取ってハース型(Hearse)と言われる事もある。ステーションワゴンの形態をとっているが、源流は欧米の馬車である。その為、レザートップとなっているのだが、そこについているSの字に似た金属の装飾はランドウバーと言われ、馬車のホロ部分の骨組みを模したもので、馬車時代の名残と言われる。
死を直接連想させないことや事業者側・利用者側共にコストパフォーマンスに優れているため、全国的にもっぱらこちらが主流となっている。
バス型霊柩車
主に北海道や地方部でみられる形式で、バス車体に棺を納めるスペースのある霊柩車である。大きさはマイクロバスから大型バスまでさまざまであり、マイクロバスや小型バスの場合は車両側面から棺を納めるもの、車両後方から納めるものがある。いずれの場合も客室部分が出っ張るので定員は若干減る傾向にある。
他方、大型バスベースの場合、通常は荷物を納める部分に棺を納めるので客室内への出っ張りがない。
バン型霊柩車
文字通りバン型車両を使っている車両である。ステーションワゴンやミニバンをベースとしており、主に病院で亡くなった人を自宅、あるいは葬儀場へ移動させる用途で使用されるケースが多い。この為、通常の霊柩車と区別するために「寝台車」と言われる事がある。
近年はミニバンベースが増えているが、元々乗用で使われた車を改造したケースも見られるため、一見すれば市中を走るミニバンと何ら変わりはないが、8ナンバー・緑ナンバーである事が最大の特徴である。また車体側面に「霊柩」と書いてあるものも存在する。
車両の色は総じて色は黒や白、シルバーが殆どであり、非常に濃い色のプライバシーガラスとなっている。また車内にカーテンを装備して完全に外から見えないようにもなっている。
車内は後部座席の一部を棺・ストレッチャー固定部にしている。なお棺・ストレッチャーと客室とを隔てる部分は存在していない。
代表的なベース車両(一例)
車の数だけベース車は多いのだが、ある程度は決まった車種が見られる傾向にある。言うまでもなく国産車が多いのだが、アメ車もみられる。ヨーロッパ車をベースとした霊柩車はあまり多くない。
- トヨタ・クラウン
かつてはフレームシャーシを採用していたため、架装にかかる改造も容易であり、宮型・洋型・バン型問わず多く架装されていた。とはいえ、技術の進歩でモノコックとなった現在でもそこそこ存在している。 - トヨタ・センチュリー
車両本体の価格も高額であるため、あまり数は見られない。非常に面白いものとして、ガワがセンチュリーで、足回りやエンジン部分はハイラックスと言うものが存在する。ホーシングが5ナンバーベースのハイラックスであるため、ホイールが奥に引っ込んでいるのが特徴である。皇室用の車両であるセンチュリーロイヤルにも霊柩車モデルも存在している。 - トヨタ・エスティマ/トヨタ・アルファード/日産・エルグランド
バン型霊柩車ベースに使われることの多い車両である。 - リンカーン・タウンカー
クラウンと同じフレームシャーシを採用していたので架装にかかる改造も容易であった事、アメ車の中でも高級ブランドであったので、古くより採用が多かった。 - クライスラー・300
アメ車系統でタウンカーに代わってみられる霊柩車であり、割合に風格のある顔つきなのでぼちぼちみられる。
霊柩車運転について
法律上、遺体は「人」ではなく「物」となる為、理屈の上では運転に際しては当該の第一種免許でも運転できる。車両も8ナンバーとあるように特殊用途車であるが、貨物自動車の取り扱いとなっている。
しかし、法律で「物」であっても死者の尊厳という理由や、喪主が同乗する場合は一種の旅客輸送のようなものとなる為、二種免許所持者に運転させるケースがみられる。
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関連項目
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