霹靂とは、稲妻のことである。
- 青天の霹靂(せいてんのへきれき)。青空に雷が鳴り響くという状態。転じて、前触れもなく突発的に起こった事態のこと。
- 台湾の人形劇「霹靂布袋戲(ピーリープータイシー)シリーズ」のこと、また、その制作会社「霹靂國際多媒體股份有限公司
」(霹靂インターナショナルマルチメディア株式会社:以下霹靂社)のことである。この記事で記述。
概要
霹靂布袋戲シリーズは1985年頃から黃強華と黃文擇の兄弟により製作されている、台湾で最も認知され、高い人気を誇る人形劇である。兄弟の父である黃俊雄の「雲州大儒侠」から発展し、25年で総話数1000以上を数えるロングランシリーズで、現在も進化し続けている。
兄の黃強華は監督として作品制作の指揮を取り、息子の黃亮勛もゼネラルマネージャーとしてIPの国際展開など新しい風を吹き込もうとしている。
弟の黃文擇は人物やナレーションを担う「口白師(日本で言う弁士)」。老若男女あらゆるキャラを演じて分けることから「八音才子」の異名を持つ。2021年に口白師を退き、黃滙峰(息子)と蔡易軒の二人体制となった。
幻想的なストーリーもさることながら、アクションシーンが派手で人形がグリグリ動く。本当によく動く。
1984年リリースのレンタルビデオ「霹靂城」から、冒頭に「霹靂」を冠すので「霹靂布袋戲シリーズ」と呼ばれるが、実際は素還真が主人公に据えられた1988年の「霹靂金光」からが現在に繋がるシリーズである。今も毎週金曜に2話収録のDVDが1枚ずつ発売され、全家便利商店(台湾ファミリーマート)で購入可能。
美形が多く、それぞれキャラが立ちまくっているのも関係してか、台湾オタク界でも一大ジャンルを誇り、登場人物のコスプレや二次創作は超人気コンテンツ。公式グッズやムック本、コラボ商品も非常によく売れている。
ストーリー構成
「霹靂布袋戲シリーズ」の舞台は、「苦境」とよばれる我々が住む現実界にほど近い世界である。苦境は広大で、方角によって東武林、西武林、南武林、北武林、中原と5つに分かれ、その周辺国家も合わせると数多の組織や国があり、覇権を巡ってしのぎを削っている。更に苦境は資源が豊富で、外界から狙われることも多く、「集境」、「滅境」、「道境」と呼ばれる異界や魔界、天界が干渉して来るので超カオスなのだが、それらに生きる人々は神や魔物と言うよりは、そういった種族だと認識すると理解しやすい。稀に機械人、吸血鬼、宇宙人、未来人や日本人、終いには神まで登場する。マジカオス。
天界人界魔界それぞれの英雄が入り乱れ、更に登場人物が多く、「○○界最強の○○」な人物のバーゲンセールなため、敷居が高いと感じる諸兄もあるかと思われるが、ファイブスター物語みたいなものだと思えば理解出来るかも知れない。
シリーズ共通の主なキャラクター
以下の内容は、一部ネタバレを含む。
素還眞/素還真(ソカンシン)
霹靂シリーズの総括主人公。二つ名は「清香白蓮」。「日才子」「素賢人」とも。白い蓮華をイメージとする。
基本的に温和で人当たりも良いが、正義感が強く、怒らせると非常に怖い。
人物背景は謎だらけで、時折驚愕の事実が発覚する。銀髪童顔のため年齢不詳に見えるがバツイチ(死別)子持ち。
天才で器用。一回見た他人の技を完璧にコピーすることも出来る。剣術の達人だが拳術、体術も相当の腕前。
主人公ゆえにしばしば危機に遭遇し、時々死ぬが、これまた主人公ゆえにその内復活、或いは彼の化身が別の姿と名前で登場して、サイヤ人みたいにパワーアップ、という事態を繰り返すので、ファンに「不死身」というあだ名もつけられた。いわゆるチートキャラ。
一頁書(イッコウショ)
二つ名は「梵天」「百世経綸」、「邪心魔仏」。非常に好戦的な御坊。霹靂シリーズにおける、もう一人のキーマン。もちろん不死身でチートキャラ。
あの髪型は日本人にはショッキングかも知れないが、螺髪(らほつ)と言って徳の高いさまを表している。
悪者に一切の容赦がなく、己の絶大な力でねじ伏せるため、ファンに「暴力坊主」というあだ名で呼ばれることも。
素手や払子で戦うが、武器の心得もある。法力での戦いはほとんどアスラズラースの大仏アタック
のノリ。
あまりに 口白師の負担が高い声色 戦闘力が高すぎる ので、最近では物語の節目にしか姿を表さないことも多い。
(参考:もう全部あいつ一人でいいんじゃないかな)
素還眞と同じくシリーズ最初期から登場するキャラクターゆえに、最近の耽美路線の木偶(人形)との間にデザインの乖離が起こっていたが
直近の作品群ではアレがアレして大変なことになっている。気になる人は「魔化一頁書」でぐぐれ。
千葉傳奇/千葉伝奇(チバデンキ)
日本人ファンの間ではセンヨウデンキとも。
千年前より夜明けから日没の間盲いてしまう奇病に冒されている夜行性の戦闘民族、「日盲族」の長。
一族に光をもたらすと言われる伝説の「太陽之子」として待ち望まれて誕生したが、てつをではない。
素還眞と瓜二つの顔立ち(ただし黒髪黒眉)、武術の腕前もほぼ互角だが高飛車で、人違いからトラブルが時折起こる。
問題が起こったとき、人情を理解できず機械的な結論を導き出しがちな性格。
「正確,但不是最好的答案」意訳:"(あなたの言うことは)正論です。が、正解ではありません。"とは、日盲族の部下、萬古長空の彼に対する評。
驚異的な記憶力の持ち主。大怪我をしていても一日に百冊ほどの本を読め、一字一句忘れない。
素還真とは敵また味方のライバル。今では互いに実力を認め合い奇妙な信頼関係で結ばれている。
千葉傳奇は素還真から生み出された魂の片割れである。闇にしか生きられない日盲族は日の下での生活を求め、伝説の救世主の召喚儀式を行った。とある戦いにより死亡した素還真の魂を呼ぶ手筈であったが、ちょうどその時素還真の仲間たちも彼を復活させるため、その魂を呼び戻していた。そのため、素還真の魂は二つに分かれ、片方は魔の力に染まり、黒い蓮華になってしまう。それが千葉傳奇である。素還真と二人合わせて「黒白雙蓮」とも呼ばれる。
葉小釵(ヨウショウサ)
二つ名「刀狂劍癡」。師匠より賜った「隻手之聲」(せきしゅのこえ)という言葉の意味を理解するため自ら舌を切り、言葉を失ってしまった。白銀長髪で、顔に大きな傷跡がある。一族郎党の殆どを運命の悪戯により失った上、更なる不幸を一身に受け続ける悲劇の英雄だが、優しい心を失わない。
二刀流をさせれば、彼の右に出るものはいないと言われる。剣も刀も凄腕だが、特に得意とするのは剣。
身剣一体の体現者であり、手を動かさず心だけで敵を斬るチート技「心劍」の使い手。
秦假仙/秦仮仙(シンカセン)
トリックスター的な役回りの人物で、星の数ほどの二つ名を持っている。器用者で多彩な技を繰り出すが致命的にパワーが足りず、雑魚すら殺すことができない。
しかし彼の本領は口先の上手さと運の強さ、逃げ足の速さで、これこそが彼の長生きの秘密である。
ごくたまにパワーアップすることもあるが、基本的にはネタとして扱われる。
口が悪くて腹黒、短慮だが頭の回転が速く、人を煽動することが得意で、彼を恐れる悪の組織も少なくない。このため彼に対する暗殺指令がしばしば掛かるが、口八丁手八丁で逆に敵を陥れ、のらりくらりと逃げるので殆ど成功していない。
劇中のある凶手(殺し屋)曰く、「一番手強い相手はランクS、ズバリダイアモンド級、硬すぎて噛むことができない。このランクの代表人物は彼だった」。
赤鼻のユーモラスな顔立ちだが何故かモテモテで、複数の妻がいる。
海賊版について
立体物の宿命として、霹靂の登場人物を模した人形(電子木偶)にもいわゆる「海賊品」が出回っている。
海賊版と言うと「出来が悪いパチもん」というイメージがあるが、作っている工房が以前は霹靂の正規品を作っていた店だったりすることもあり、そのクオリティは高い。
というか、下手すると正規品より出来が良かったりする。その上安い、早い(正規品は注文からお届けまで一年以上かかることもザラだが、海賊版だとその3分の1程度)、自分好みの顔に出来るなどメリットが多く、日台それぞれ手を出す人間がいる。
が、もちろんれっきとした【犯罪】である。
現在、霹靂角色の木偶は霹靂直営店のみの販売となっており、他はオークションサイトの二手(中古)などの入手手段がある。
霹靂公式サイト(※中文)には、
などの正規品と海賊版の見分け方が記載されているので、木偶をお迎えの方は参考にして欲しい。
現在(霹靂經武紀之梟皇論戰)活躍しているキャラクター
梟皇論戦を参照されたい。
霹靂布袋戲シリーズリスト
1988~1990
1991~1995
1996~2000
- 霹靂外傳之葉小釵傳奇 全6回
- 霹靂幽靈箭第二部 全20回
- 霹靂英雄榜 全50回
- 霹靂烽火錄 全30回
- 霹靂風暴 全40回
- 霹靂狂刀之創世狂人 全50回
- 霹靂雷霆 全30回
- 霹靂英雄榜之江湖血路 全40回
- 霹靂英雄榜之風起雲湧一 全20回
- 霹靂英雄榜之風起雲湧二 全30回
2001~2005
- 霹靂英雄榜之爭王記 全30回
- 霹靂圖騰 全20回
- 霹靂異數之龍圖霸業 全40回
- 霹靂封靈島 全20回
- 霹靂兵燹 全48回
- 霹靂刀鋒 全30回
- 霹靂異數之萬里征途 全32回
- 霹靂九皇座 全50回
- 霹靂劫之闍城血印 全26回
- 霹靂劫之末世錄 全24回
- 霹靂皇朝之龍城聖影 全40回
- 霹靂劍蹤 全30回
- 霹靂兵燹之刀戟戡魔錄 全30回
- 霹靂兵燹之刀戟戡魔錄II 全40回
2006~2010
- 霹靂奇象 全40回
- 霹靂謎城 全40回
- 霹靂皇龍紀 全50回
- 霹靂皇朝之鍘龑史 全30回
- 霹靂開疆紀 全40回
- 霹靂神州 全30回
- 霹靂神州II之蒼玄泣 全46回
- 霹靂神州III之天罪 全48回
- 霹靂天啟 全48回
- 霹靂震寰宇之刀龍傳說 全40回
- 霹靂震寰宇之龍戰八荒 全40回
- 霹靂震寰宇之兵甲龍痕 全40回
- 霹靂經武紀之梟皇論戰 全40回
2011~2015
- 霹靂兵燹之聖魔戰印 全40回
- 霹靂兵燹之問鼎天下 全40回
- 霹靂戰元史之天競鏖鋒 全40回
- 霹靂戰元史之動機風雲 全40回
- 霹靂驚鴻之刀劍春秋 全20回
- 霹靂俠影之轟動武林 全31回
- 霹靂俠影之轟定干戈 全32回
- 霹靂俠影之轟掣天下 全32回
- 霹靂俠影之轟霆劍海錄 全32回
- 霹靂開天記之創神篇 全32回
- 霹靂開天記之創神篇下闋 全32回
- 霹靂謎城之九輪異譜 全32回
- 霹靂狼煙之九輪燎原 全16回
- 霹靂狼煙之万堺塵濤 全32回
2016~2019
- 霹靂狼煙之古原爭霸 全50回
- 霹靂天命之仙魔鏖鋒 全50回
- 霹靂天命之仙魔鏖鋒II斬魔錄 全60回
- 霹靂天命之戰禍邪神 全20回
- 霹靂天命之戰禍邪神II破邪傳 全50回
- 霹靂驚濤 全42回
- 霹靂魔封 全60回
- 霹靂端玄録
映画「聖石伝説」
霹靂インターナショナルマルチメディア株式会社が2000年に制作した映画「聖石傳說」は、シリーズ第41作「霹靂圖騰」を下地とした外伝とも言える作品で、主人公は素還真ではなく傲笑紅塵。
謎の宇宙人「非善類」が、人の願いを叶える不思議な石「天問石」を狙う、陰謀とバトルと誤解が交錯する壮絶な物語である。
日本でも上映され、台湾語版、中国語版、日本語版のDVDがリリースされている。
そのほかの布袋戲
霹靂社では、霹靂布袋戲シリーズだけではなく他の作品も製作されている。
1995年、単元劇「黑河戰記」、全30回。スタジオではなく屋外での収録が特徴。
2000年11月、中国語布袋戲「火爆球王ファイター・オフ・グローブ」を制作。
(以下あらすじ)
2013年、世界中の資源が枯渇した。人類を救うため宇宙探検隊が地球を発ち、地球とよく似た惑星「天堂藍(ヘブンブルー)」を発見した。が、同じく移民先を探していた宇宙人「カサイ人」が地球人よりも先にその星を見つけたと主張し、戦争に突入。一年後、双方は停戦協定を結び、移民権を賭けスポーツで勝負をすることに。世界政府が選手として5人の死刑囚を選抜、勝てば自由が手に入るという。果たしてその結末は....。
伝統的な技術にバイクや宇宙船など、SFテイストを加えた新しい布袋戯。 全10回。
2001年、香港のマンガ会社「玉皇朝」と契約し、香港コミック「天子傳奇」を布袋戲化、台湾語版と中国語版がリリースされた。
日本版公式サイト
2010年12月15日オープンを果たした霹靂布袋戲日本公式サイトでは、刀龍傳說以降の作品情報を公開中。スタッフブログも随時更新している。
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関連項目
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