青菜とは
概要
青菜とは、落語の演目である。元は上方落語で、明治になって東京にも移入され、江戸落語としても広まった。初心者が見ても、最初は何が面白いのか分からない噺なのだが、後になるとその旦那と奥方の粋なやりとりと、それを真似して赤っ恥を掻く庶民の所作のギャップを楽しめる、ある意味玄人好みの噺である。
あらすじ
植木屋が、得意先のお屋敷で精を出していると旦那が呼びかける。それは「仕事が終わったら一緒に食事でもどうかね?」ということだった。彼は二つ返事で快諾すると、上物の酒や鯉の洗いをごちそうになり、すっかり上機嫌。だが、わさびが効きすぎて噎せていると旦那が「それなら青菜でもどうかね?」と声をかけてくれるので、植木屋はうなずいた。
だが、そこに申し訳なさそうに奥方がやってきて「昨晩、鞍馬より牛若丸が居出まして、名を九郎判官」と意味のわからないことを言う。だが、旦那は「義経、義経」と返すのだ。何のことかと植木屋は旦那に問い訊ねてみたところ、「自分(鞍馬)が昨晩、名(青菜)を食ろう(九郎)てしまったので今はない」と、客人の前に伝えるのも失礼なのでそういう隠語を使い、そして自分も「義経(良し良し)」と返したという。その粋なやりとりに植木屋はすっかり膝を打ち、自分も真似てみよう、そして品位のかけらもない家内にも見習ってもらおうと、今晩実践することにした。
さて、植木屋が家に帰ると無理を言って家内を奥座敷、といっても長屋で部屋がないので、押し入れに押し込めていると、そこへ大工の友人、タケが風呂に誘ってくる。早速植木屋は旦那の振りをして、柳陰といってはぬる燗を渡し、鯉の洗いと言ってはおからを渡し、そして青菜も勧めようとする。
だが、彼は「青菜は嫌いだ」と答えたので、すっかり困ってしまい、「嘘でもいいから好きって言って!」って泣きつく。大工は訝りながらも「わかったわかった。ほなら、青菜も呼ばれようか」って答えたので、植木屋はぽんぽんと合図をすると、押し入れから家内が汗だくになって出てきたので、すっかり目を丸くする。
しかし、彼女は暑さで目を回していたせいか「鞍馬より牛若丸が出まして、名を九郎判官義経」と最後まで答えたので、植木屋は間が持たなくなり
「…弁慶」
…で?
これで終わりである。落語初心者のときに見たら「え、何が面白いの?」ってなるのは必至である。しかし、当時はこういう洒落という言葉遊びが大流行した時期があり、高い機転と素養が求められるため、風流人の嗜みにもされていた。それを庶民が知識人を気取って真似事をして、赤っ恥を掻いてしまうというギャップの笑いがあるのである。
…それでも面白くないと思ってるなら、それでもいいだろう。落語は300年は続いてる芸であり、今になって通用しない下げは無数にあるのだから。
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関連項目
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