非上場企業単語


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ヒジョウジョウキギョウ
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非上場企業(ひじょうじょうきぎょう)とは、その名の通り、株式券取引所に上場していない会社のことである。

会社の規模や知名度に関わらず、実は日本の会社の99%以上がこの非上場企業にあたる。世界的に有名なあの会社から、あなたのの近所の個人商店まで、最も一般的な会社のあり方なのである。

概要

会社の形態を語る上でよく「上場企業」という言葉が使われるが、非上場企業はそれ以外のすべての会社をす。両者を分ける最大の違いは、会社の市場(マーケット)でオープンに取引されているか、いないかという、ただ一点に尽きる

上場企業不特定多数の投資家であるのに対し、非上場企業の経営者、その族、従業員など、ごく限定的な範囲に留まる。この構成の違いが、お金の集め方(資金調達)から経営の意思決定まで、会社のあらゆる面に根本的なを与えている。

上場企業とのちがい

ざっくり言うと以下のようになり、会社の経営スタイル根本から違うことがわかるだろう。

非上場企業 上場企業
株式 (取引相手が限定的) 市場でも売買可
経営の自由 高い(長期的な視点で経営できる) 制約あり(の意向を常に気にする)
資金調達 金融機関からの融資などが中心 市場から大規模に調達できる
買収リスク 低い 常に存在する
社会的信用 相対的に低い傾向 高い(上場のハードルが高いため)
情報開示義務 限定的 あり(経営状況を開する必要がある)

非上場でいることのメリット

  • 経営の自由度がめちゃくちゃ高い
    上場企業のように、四半期ごとの業績について「物言う」からプレッシャーを受けることが少ない。そのため、先の利益にとらわれず、独自の企業文化を守りながら、速かつ柔軟で、長期的な視点に立った経営判断を下せる。「たちのやり方でいくぜ!」が本当に可になるわけである。この点は、後述するように崇高な理念を育む強みにもなる。
  • 買収されにくい
    株式市場で一般に売買されていないため、会社の乗っ取り的とした敵対的買収を仕掛けられるリスクがほとんどない。経営の安定性を保ちやすい。
  • 余計なコストがかからない
    株式を上場し続けるためには、法人への報酬や、投資家向けの情報開示資料(IR)の作成など、毎年多額の維持コストが発生する。非上場であればそのコストを本来の事業や社員投資できる。

非上場でいることのデメリット

  • お金集めが大変
    市場から「うちの未来投資してください!」と広くアピールして大規模な資金を集めることができない。な資金調達は、金融機関からの融資(借入)や、特定投資家ベンチャーキャピタルなど)からの出資に限られる。そのため、大規模な設備投資などには困難が伴うことがある。
  • 知名度・信用度が上がりにくい
    「上場企業」というだけで一つの社会ブランドになるが、その看板がないため、人材採用や新規取引先の開拓において不利になることがある。「この会社、本当に大丈夫…?」と見られてしまうこともある。
  • を売りたくても売れないことがある
    創業者一族や従業員など、を持っている人がそれを現金化したくても、上場企業のように市場で好きな時に売れるわけではない。買い手を自分で探さなければならず、適正な価格で売却することが困難な場合がある株式の流動性が低い)。
  • コンプライアンス意識やガバナンスが欠如しやすい
    外部の市場といった厳しい監視のがないため、経営が独善的になりやすい。その結果、後述するようなコンプライアンス違反や、従業員を軽視した労働問題など、深刻な不祥事の温床となる危険性がある。

非上場企業が抱えるガバナンスの闇

経営の自由度の高さは、非上場企業の最大のメリットであると同時に、最大の弱点にもなりうる。外部の市場からの厳しいチェックがないため、創業者やオーナー経営者の権力が絶対的なものとなりやすい。

これにより、経営者の意向が良くも悪くもダイレクトに会社全体に反映される。カリスマ経営者のもとで急成長を遂げる企業がある一方で、ひとたび経営者がを誤れば、会社は「裸の王様」状態に陥り、従業員を顧みない劣悪な労働環境や、社会常識から逸脱したコンプライアンス違反がまかり通る「無法地帯」と化す危険性を常にんでいる。

ケース1:ビッグモーター

中古販売・買取大手。創業株式100%保有する典的な非上場オーナー企業であった。外部のがないことをいいことに、創業者の絶対的なトップダウン体制のもと、異常な利益至上義が横行した。ゴルフボール靴下に入れて振り回し車体を傷つける、ドライバーでボディを引っ掻くといった悪質な手口で修理範囲を増しし、保険金を不正に請する行為が全店舗で常態化。さらに店舗前の除草剤を散布して枯死させるなど、社会器としての意識が著しく欠如した問題も発覚した。

こうした不正の背景には、元経営幹部の中野優作氏(後にBUDDICAを創業)の暴露などによって明らかになった、常軌を逸した企業文化があった。従業員に経営計画書を毎復唱させ、幹部が従業員を罵倒するLINEグループが存在するなど、恐怖による支配と過剰なノルマで従業員を精神的に追い詰めるパワハラが蔓延していた。非上場であったがゆえに、こうした内部の腐敗が外部に漏れることなく、問題が極限まで深刻化したと言える。最終的に、同社は伊藤忠商事支援のもとで再建されることとなり、「WECARS」として再出発を切った。

ケース2:いなば食品

CIAOちゅ〜る」で知られるペットフード食品メーカー。こちらも創業による同族経営が続く非上場企業である。2024年、一般職で採用された新入社員の9割が入社を辞退したことが週刊誌報道で発覚した。その背景には、提示された社宅が漏りのする「ボロ」であったことや、募集要項と異なる給与体系など、新入社員を軽視した杜撰な労務管理があった。

さらに問題の根深さを示したのが、創業一族の私混同ぶりである。副社長社長夫人)が作成したとされる「10カ条」なるルールで従業員の私生活にまで介入しようとしたことや、休日にも関わらず買い出しや散歩といった身の回りの世話を従業員に命じていたことなどが報じられた。毎「社是社訓」を復唱させていたことも含め、従業員を会社の歯車どころか、オーナー一族の私的な使用人と見なすかのような振る舞いは、奇しくもビッグモーターの事例と共通する。外部のチェックが働かない非上場・同族経営の閉鎖的な体質が、現代の労働観との大きなズレを生んだ典例として注された。

ケース3:ヨドバシカメラ

大手家電量販店。非上場企業であり、創業者の強力なリーダーシップによる速な経営判断で知られる。このトップダウン経営は、時に社会との轢やコンプライアンス上の問題を生む。2019年台風19号襲来時に営業を継続しようとして「従業員の安全軽視」と批判を浴びたほか、メーカーから派遣された販売員(ヘルパー)に、契約外のレジ打ちや他社製品の販売といった店舗業務を行わせる「ヘルパー問題」も度々摘された。これは揮命権のない従業員に業務をさせたとして労働者派遣法に抵触する行為である。

しかしその一方で、この強力なトップダウン経営は、消費者に大きなメリットをもたらしてきた。短期的な利益を度外視した10%という高還元率のポイントカード導入や、物流コスト無視したかのようなECサイトの全品送料無料は、の顔色をうかがう上場企業には困難な、大胆かつ長期的な顧客囲い込み戦略の賜物である。良くも悪くも、トップの判断を速に実行できる非上場企業の特性が色濃く表れた事例と言えるだろう。

ケース4:知床遊覧船沈没事故

2022年、多くの死者・行方不明者を出した遊覧KAZU I」の沈没事故。運航会社の「知床遊覧船」は、社長株式の全てを保有する非上場の企業であった。事故調の過程で、ずさんな安全管理体制が次々と明らかになった。社長は運航管理者としての経験がなかったにも関わらず兼任し、船長に対して悪下での出航を強要していたとされる。

また、その背景には底したコスト削減があった。経験豊富ベテラン員を解雇して人件費を削り、残った船長には社長が経営するホテルの業務を兼務させるなど、専門性を軽視した労務管理が横行。さらには業務管理用のパソコン購入さえ渋るほどの経費削減を優先するあまり、通信設備の故障を放置するなど、安全への投資が全く行われていなかった。外部からのチェックが働かない閉鎖的な環境が、経営者の誤った判断をにも止められず、最終的に取り返しのつかない悲劇へと繋がったのである。

ケース5:セラノス(Theranos)

アメリカ血液検査ベンチャー企業。「先から採った一滴の血液で、200項以上の病気を診断できる」という革新的な技術を謳い、一時は企業価値が1兆円をえるとされた注の非上場企業(ユニコーン企業)であった。しかし、その技術は全くの虚偽であり、実際には存在しなかったことが内部告発によって発覚。シリコンバレー史上最大級の詐欺事件へと発展した。

カリスマ的な創業者エリザベスホームズは、その巧みなプレゼンテーションで有力な投資家たちを魅了し、総額7億ドル(約1000億円)以上もの巨額の資金を調達。非上場であったため、上場企業に課されるような厳格な情報開示義務がなく、技術の詳細を「企業秘密」として隠蔽し続けることができた。メディアルパート・マードックウォルマート創業ウォルト、元米国務長官ヘンリー・キッシンジャーといった錚々たる投資家たちが騙され、その富を失った。外部からのチェックが働かない環境で、創業者の虚言が暴走し、投資家社会を欺き続けたこの事件は、非上場企業のガバナンスがいかに脆いものであるかを世界に示す教訓となった。

「自由な経営」が強みとなるケース

もちろん、非上場であることの自由さは、闇ばかりを生むわけではない。むしろ、その強みを最大限に活かし、社会に大きな価値を提供している企業も数多く存在する。

ケース1:出版社(小学館・集英社・講談社など)

日本の大手出版社は、その多くが非上場企業である。漫画小説といった創作物は、ヒットするかどうか分からない上に、完成までに長い年を要することも少なくない。もし上場していれば、短期的な利益をめるから「もっと売れる作品を」「開発期間が長すぎる」といった圧力を受け、クリエイター編集者自由創作活動を行うことが難しくなる可性がある。非上場であることで、外部の雑音に惑わされず、じっくりと時間をかけて作品と向き合う環境が守られている。日本ポップカルチャーの豊かさは、この経営形態に支えられている側面がある。

ケース2:新聞社・テレビ局(報道の自由)

新聞社やテレビ局といった報道機関も、その多くが非上場企業である。これは、特定スポンサーや大といった外部資本からの圧力で報道内容がめられることを防ぎ、「報道自由」を担保するための戦略的な選択である。テレビ朝日朝日新聞社のように、関連会社同士で株式を持ち合う(株式持ち合い)ことで、経営を安定させ、外部からの干渉を排除する体制を築いている。

しかし、この外部からの干渉を防ぐための閉鎖的な構成は、逆に内部の権力集中を招くという大きなリスクを抱える。外部の市場によるチェックが働かないため、特定の個人が長期間にわたって絶大な権力を握り、経営が硬直化することがある。フジテレビにおける「日枝政権」とも呼ばれた長期支配体制とその下で起きたとされる不祥事は、報道自由を守るための仕組みが、結果として内部のガバナンス不全を引き起こした徴的な事例として挙げられる。

ケース3:YKK

ファスナーで世界トップシェアを誇るメーカー。同社が非上場を貫く理由は、創業者が提唱した「善の巡環」という独自の企業哲学にある。これは、事業で得た利益を外部のへの配当で最大化するのではなく、顧客や取引先、そして事業の担い手である従業員、さらには社会へと適切に分配し、それが巡り巡って自社の利益に繋がるという考え方である。

この理念を実現するため、YKK株式従業員持会や関連団体がその大半を保有している。つまり、従業員自身が会社のオーナーであるため、短期的な利益をめる外部の投資家から「もっと配当を増やせ」「価を上げろ」といった圧力を受けることがない。例えば、ファスナーの品質を支える生産機械を自社開発することにこだわり、短期的なコストよりも長期的な品質と安定供給を優先する投資を続けられるのも、外部の顔色をうかがう必要がないからである。非上場かつ独自の構成だからこそ、この崇高な理念をブレずに貫くことができるのである。

ケース4:サントリーホールディングス

「やってみなはれ」という創業者の言葉は、同社の挑戦的な企業文化徴している。これは、たとえ失敗のリスクが高くても、未来への大きな価値創造に繋がるなら果敢に挑戦すべきだという精神である。世界初のバラ開発など、すぐには利益に結びつかない壮大な研究開発に長年投資し続けられたのも、この文化と非上場という経営形態があったからである。また、熟成に数十年単位の時間がかかるウイスキー事業への継続的な巨額投資も、非上場だからこそ可な長期戦略の典例である。四半期ごとの業績に一喜一憂するがいれば、このような息の長い挑戦は許されなかったかもしれない。

ケース5:IKEA(イケア)

スウェーデン発祥の世界最大のメーカー。同社は非営利財団が所有するという、非常にユニークな非上場形態をとっている。これにより、短期的な利益追求から解放され、創業者の理念である「より快適な毎日を、より多くの方々に」というビジョンを長期的に追求することが可となっている。

その理念が最もよく表れているのが、サプライヤーに対する独自の行動規範「IWAY」である。IKEAは、自社が定める厳格な環境・労働基準と、事業を展開する各の法規制のうち、より厳しい方を遵守することをサプライヤーに義務付けている。この考えを共有できない企業とは取引を行わないという底ぶりは、コスト増に繋がりかねないため、利益を最優先する上場企業では実行が難しい。非上場だからこそ、先の利益よりも地球環境人権といった普遍的な価値を優先する経営を貫くことができるのである。

有名な非上場企業

ここで改めて、内外の有名な非上場企業を一覧で見てみよう。

主な日本の非上場企業

主な海外の非上場企業

まとめ

結論として、非上場企業とは、経営の自由度と安定性を優先するために、あえて株式開しない戦略を選択した経営形態と言える。資金調達や知名度向上においては上場企業に劣る側面もあるが、それは企業理念や長期的な成長戦略に基づいたトレードオフの結果である。ただし、その自由さがガバナンスの欠如という深刻な問題につながるリスクもあれば、崇高な理念文化を守り育てる強みにもなる。、両方の側面を理解することが重要である。

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