音程が隣に・・・とは、下に記す、あのラストコンサートの裏に秘められた真実の一端である。
概要
『馬鹿野郎!もう一度言ってみろ!』
「……春香のプロデュースを終了する、って言ったんだ」
『どうしてだよ!確かに今までは俺も滅多に来れなかったかもしれない。
だが今のあの子を見れば分かるだろう?あと少しの所まで来てるじゃないか!』
「分かってる。春香に引退しろという訳じゃない。俺が春香から離れるというだけだ。
最初から、プロデュースは1年限り、という社長との約束だったからな」
『そんな事が言い訳になると思ってるのか?
あの子にお前が必要なのは――そして、お前にあの子が必要なのは、お前自身が誰より分かってる事じゃないか!』
「……俺だって春香をずっと見守っていられたらって思ってるさ。
だけど、お前だって分かってただろう?俺が春香の傍に、何時までもは居られないって事は」
『……』
「だから、お前に頼むんだ。お前なら春香の傍に何時までも居てやれる。
俺と春香の絆の証として、お前に、春香の隣に…居てやって欲しいんだ」
『……お前は馬鹿野郎だよ』
「……済まない」
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『久しぶりだな』
「あっ、来て下さったんですね」
『最近頑張ってるって聞いて、今回くらいは、と思ってな。少し遅れちまったが……あと一曲と、アンコール、だけか』
「ありがとうございます。えへへ、私よりずっと上手な子は沢山居るのに、なんだか悪いですね」
『俺は贔屓はしないさ』
「嬉しいです」
『……手が空けば、ちょくちょく来るさ』
「あの、もしかして、プロデューサーさんが言って下さったんでしょうか」
『何故そう思う』
「ううん、理由は無いんです。でもなんだか、そんな気がしちゃって」
『……』
「……私、これでもう、アイドルやめようかなって思ってたんです」
『……』
「でも…今日のステージでここまで歌って……やっぱり、アイドル、続けたいって思いました。みんなに私の好きな歌を、いっぱい、聴いてもらいたいって。プロデューサーさんが、私が頑張ってる姿を見て、心配しなくて良いようにって」
『春香は、あいつの事が大好きなんだもんな』
「なっ!なななに言ってるんですか!あの、絶対言っちゃだめですよ!私、自分で言うぞー、って決めたんですから!って、ああっ、私何言ってるんだろうごめんなさい!」
『ははは……そうだな、言ってやりな、あいつにさ。必ずな』
「えっと……あの、私……歌はやっぱり下手ですけど……歌が大好きだってことも、きっと、伝えたいです」
『そうだな……次の一曲だけ、近くで聴かせて貰うよ。最後の一曲は……精一杯、何も気にせず、春香らしく歌っておいで。それが一番、あいつに伝わるよ』
「はい!……ありがとうございます、音程さん……」
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スケジュール表での最後の歌。彼女が歌った曲は、まるで彼女の軌跡を辿るかのように、優しく、哀しく、しかし、何よりも未来を信じて見据えるように、力強く歌われた。
一人の少女と、男を含めて――人々が、一番泣いた瞬間だった。
そして繰り返されるアンコール――ラストソングは、まるでデビューステージの初々しさ、彼女らしさの全てが含まれたものだったという。
(参考文献:マー明書房『伝説のアイドル:某大企業企画部長と課長の語るアイドル史』)
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