高村薫(たかむら かおる)とは、日本の小説家。女性。正式な表記は「髙村薫」。北村薫ではない。
概要
1953年大阪生まれ。1989年、「リヴィエラを撃て」で第2回日本推理サスペンス大賞で最終候補となり、翌年『黄金を抱いて翔べ』で同賞の第3回大賞を受賞してデビュー。
1992年、『リヴィエラを撃て』で日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。1993年、『マークスの山』で第109回直木賞、日本冒険小説協会大賞を受賞、「このミステリーがすごい!」1位となり大きく知名度を上げる。1998年、『レディ・ジョーカー』で毎日出版文化賞受賞、2度目の「このミス」1位に輝く。
ディテールを緻密に書き込む硬質な文体で男たちが主役の冒険小説・サスペンスを書くという、それまでの女性作家のイメージを大きく覆す作風が話題を呼んだ。似たような名前・同時期のデビューでたまに混同される北村薫が女性的な作風の男性作家であるのとは対照的。また、初期作品では主役に同性愛者が多いため、腐女子のバイブル扱いされることも多い。当時からその文体・内容の重厚さ故に、作品が高く評価される一方で「読みづらい」「疲れる」という声も多かった。
また、文庫化に際して全面的な加筆修正を行うことでも知られる。文庫化時に多少の加筆修正をすること自体はそう珍しい話ではないが、髙村の場合はその修正の度合いが尋常ではなく、作品全体を丸ごと書き直すレベルで手を入れるため、作品の文庫化が非常に遅い。通常単行本の文庫化は3年後がひとつの目安だが、『マークスの山』は文庫化に10年、『照柿』は12年、『レディ・ジョーカー』は13年、『晴子情歌』は11年を要している。短編集の『地を這う虫』はなぜか文庫版では収録作が1本減り、『わが手に拳銃を』に至っては7年後に文庫化されたときには『李歐』というほぼ書き下ろしの別作品になってしまった。そのため読者泣かせの完璧主義者と言われる。その完璧主義ゆえか、未単行本化のままになっている連作や短篇も非常に多い。2018年に『冷血』の文庫版が単行本から僅か6年で出たときには、巻末に「改稿」「加筆修正」の文字がなく、高村ファンの多くが「えっ!?改稿してないの!?」と驚いたとかなんとか。
『マークスの山』で直木賞を受賞した際に「自分はミステリーを書いてきたのではない」「ミステリーではなく小説として評価されたのが嬉しい」という趣旨の発言をし、一部のミステリー評論家の間で論議を呼んだ。本人の作風も『レディ・ジョーカー』を最後にミステリーからは離れ、2002年の『晴子情歌』以降は内省的な純文学方向へシフトし、それまでのファンを戸惑わせた。日経新聞で連載された『新リア王』は連載を途中で打ち切られることに。
2006年、『新リア王』で親鸞賞を、2010年には『太陽を曳く馬』で読売文学賞を、2017年には『土の記』で野間文芸賞・大佛次郎賞・毎日芸術賞を受賞。現在は2~4年に1作というスローペースで作品を発表している。
『マークスの山』は1995年に映画化、2010年にドラマ化。『黄金を抱いて翔べ』は2012年に映画化。『レディ・ジョーカー』は2004年に映画化、2013年にドラマ化されている。
作品リスト
小説
- 黄金を抱いて翔べ (1990年、新潮社→1994年、新潮文庫)
- 神の火 (1991年、新潮社→1995年、新潮文庫[上下巻]→1996年、新潮社[改訂版])
- わが手に拳銃を (1992年、講談社)
→ 李歐 (1999年、講談社文庫[旧作を下敷きに書き下ろし]) - リヴィエラを撃て (1992年、新潮社→1997年、新潮文庫[上下巻]→2007年、双葉文庫[上下巻])
- マークスの山 (1993年、早川書房→2003年、講談社文庫[上下巻]→2011年、新潮文庫[上下巻])
- 地を這う虫 (1993年、文藝春秋→1999年、文春文庫)
- 照柿 (1994年、講談社→2006年、講談社文庫[上下巻]→2011年、新潮文庫[上下巻])
- レディ・ジョーカー (1997年、毎日新聞社[上下巻]→2010年、新潮文庫[上中下巻])
- 晴子情歌 (2002年、新潮社[上下巻]→2013年、新潮文庫[上下巻])
- 新リア王 (2005年、新潮社[上下巻])
- 太陽を曳く馬 (2009年、新潮社[上下巻])
- 冷血 (2012年、毎日新聞社[上下巻]→2018年、新潮文庫[上下巻])
- 四人組がいた。 (2014年、文藝春秋→2018年、文春文庫)
- 土の記 (2016年、新潮社[上下巻])
- 我らが少女A (2019年、毎日新聞出版)
エッセイ・時評・その他(単著)
- 半眼訥訥 (2000年、文藝春秋→2003年、文春文庫)
- 作家的時評集2000-2007 (2007年、朝日文庫)
- 閑人生生 平成雑記帳2007-2009 (2010年、朝日文庫)
- 続 閑人生生 平成雑記帳2009-2011 (2011年、朝日文庫)
- 作家的時評集2008-2013 (2013年、毎日新聞社)
- 空海 (2015年、新潮社)
- 作家的覚書 (2017年、岩波新書)
- 時代へ、世界へ、理想へ 同時代クロニクル2019→2020 (2020年、毎日新聞出版)
- 作家は時代の神経である コロナ禍のクロニクル2020→2021 (2021年、毎日新聞出版)
- 銃を置け、戦争を終わらせよう 未踏の破局における思索 (2023年、毎日新聞出版)
関連動画
関連項目
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 森博嗣
- 西尾維新
- 甲田学人
- 有栖川有栖
- 小林泰三
- 貴志祐介
- 芦辺拓
- 横山秀夫
- 芥川龍之介
- 宮部みゆき
- 歌野晶午
- 島田荘司
- 伊坂幸太郎
- 石持浅海
- 東野圭吾
- 森見登美彦
- 殊能将之
- 法月綸太郎
- 黒田研二
- 恩田陸
- 星新一
- 北山猛邦
- 北村薫
- 深水黎一郎
- 綾辻行人
- 大沢在昌
- 田中芳樹
- 小松左京
- 古処誠二
- 浅暮三文
- 浦賀和宏
- 小川一水
- 時雨沢恵一
- 神林長平
- 田中啓文
- 伊藤計劃
- 舞城王太郎
- 神坂一
- 麻耶雄嵩
- 乾くるみ
- 加納朋子
- 貫井徳郎
- 川原礫
- 奥田英朗
- 長谷敏司
- 石田衣良
- 小野不由美
- 今野敏
- 水野良
- 有川浩
- 詠坂雄二
- 氷川透
- 東川篤哉
- 道尾秀介
- 西村京太郎
- 米澤穂信
- 万城目学
- 森岡浩之
- 三崎亜記
- 古泉迦十
- 海堂尊
- グレッグ・イーガン
- 西村賢太
- 円城塔
- 田辺青蛙
- 田中慎弥
- 岩井志麻子
- 笹本祐一
- 朱川湊人
- 三田誠
- 真保裕一
- 品川ヒロシ
- 月村了衛
- 辻村深月
- 真梨幸子
- 佐々木譲
- 赤川次郎
- 梶尾真治
- 井上夢人
- 瀬名秀明
- 荻原規子
- 竹本健治
- はやみねかおる
- 池井戸潤
- 山田風太郎
- 船戸与一
- 北方謙三
- 連城三紀彦
- 湊かなえ
- 三津田信三
- 誉田哲也
- 野崎まど
- 中山七里
- 似鳥鶏
- 泡坂妻夫
- 桐野夏生
- 倉知淳
- 黒川博行
- 広瀬正
- 相沢沙呼
- 皆川博子
- 牧野修
- 稲見一良
- 恒川光太郎
- 西澤保彦
- ジョージ・オーウェル
- 天藤真
- 町井登志夫
- 今邑彩
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