魂の駆動体とは、日本のSF小説である。作者は「戦闘妖精・雪風」シリーズで知られる神林長平。
概要
人が運転する「クルマ」がほぼ絶滅している近未来の日本と、人類が滅びた遠い未来の地球という二つの世界が舞台。運転することを楽しめる本来のクルマを介し、人間が本質的に求める自由やスピードの快感、そして人間とは何かというものを考察する内容となっている。またクルマ作りを通じて、物事を設計し開発することの偉大さをも示している。自動車に関する技術や原理に関することも、丁寧に触れられている。登場人物に熱い心を持った者が多いと言うのも特徴。
あらすじ
技術が高度に発達した時代の日本。人口全体としては減っているものの都市部では人口が密集し、人々は一区画が小さい狭い居住区の中で住む者と、閑散とした田舎に住むものに分かれていた。さらに人間の意識を巨大なコンピューターシステムに移す「HIタンク」の開発が進んでおり、人間は肉体を捨て、デジタル世界にユートピアを求めようとしている。自動車は道路と統合された交通システムになっており、モーター駆動のそれは操縦の全てが自動化されていて、人々は個人の車を所有することすらなくなっていた。人間が運転する「クルマ」は一部の好事家だけが保有しており、それも公道を走ることすら許されない。
老齢の「私」は田舎に建てられた、独居老人専門の居住施設に入居していた。私は友人の子安と共にある計画をたてている。それは施設の近くにある林檎畑から林檎を盗み出すことだ。畑の持ち主は、敷地にバリケードと警報装置を張り巡らせており、簡単には盗めそうに無い。子安は過去に何度もそれを盗もうとしていたが、その度に警報装置と、犬と、持ち主の銃によって阻まれ失敗していた。このゲームに子安と共に挑むことになった私は、子供のようにそれを楽しんでいた。
決行日。二人でなんとか林檎畑に侵入し、お目当ての樹からレイゴールドという品種のリンゴを一個入手することに成功した。しかし犬に気付かれてしまい、持ち主が銃を持って追いかけてくる。息を切らせながら追っ手から逃げる私と子安。その途上、私は一つの物体に一瞬心を奪われる。それはボディを錆付かせ朽ち果てるのを待つだけとなっている、初代のホンダ・プレリュードだった。私はそのクルマに思い出があった。私が子供だった頃、カーマニアだった亡父が同じ型のプレリュードをレストアして乗っていたのだ。子安に声をかけられ我に返って逃げ出したが、以後、私の心にはプレリュードが残り続けた。
この気持ちを子安に相談した結果、私達は一つの新たな計画を始めることにした。自らクルマを作ること。目的地を言えば勝手に走っていくような、ただ移動するための、エレベーターのような「自ら動く車」ではない。自分で運転するクルマ、走ることを目的と出来るクルマだ。いきなり実車を作る金も技術もないから、私達はとりあえず設計から始めた。二人は時に子供のような喧嘩をしながらも、設計を完成させるに至る。フォルクスワーゲン・ゴルフGTIやプジョー・205GTIのような、機敏に走る悪ガキのクルマだ。そして専門家が使う図面を引く機械をリースし、端末の中の図面をプリントアウトすると、私達のクルマは設計図にその姿を現した。
その時代から、どれくらい時間を経たのか、遠い遠い未来。人類は既に地上には無く、鳥のような空を飛ぶ知的生命体「翼人」が住む世界となっていた。翼人は大昔に滅びた人類について知るため、彼らの遺跡を発掘し研究している。研究者のキリアはより人間を知るため、自ら変身装置で人間となった。そして研究に基づき人間とほぼ同じに作られた人造人間のアンドギロギアと共に、人間を知るための生活を送り始めた。アンドロギアには翼人が調べた人類に関する様々な知識が入っており、キリアの作業を忠実に補佐する。しかし見た目は人間のようでも、実際には人工的に作られた生命体。会話をしてみても、コンピューターに入力し回答を受け取るのとさして変わらないようなもの。研究はまだまだこれからと言ったこところだ。
キリアは人間の体に徐々に慣れたが、一つだけ不満があった。翼人だった時は自由に飛べたのに、人間の体では当然ではあるが飛べなくなったからだ。飛べないこと自体が不満なのではない。飛ぶときの、あのスピードと爽快感を味わいたいのだ。それを同僚に相談すると、彼らは遺跡から発掘された設計図を基に自転車を作ってくれた。自転車で駆け抜けると、飛ぶことにも似た快感があった。そして次の段階として自動車を再現することになる。偶然にも、ほぼ完全な図面が化石となって発見されたので、それを解析して自動車を作る案が出る。
キリアは、アンドロギアと住む家の端末でその図面を眺めていた。アンドロギアがその図面を見ると、彼に急激な異変が起きる。今まで自我を持たない機械のようだったアンドロギアに、突然自我が覚醒し始めたのだ。そして彼は言った「これは私が描いた」と・・・。
登場人物
ニコ動での扱い
魂の駆動体は、2011年2月現在では映像化されていないのでMADなどはなく、作品を髣髴とさせる動画にタグがつけられている。
過去には、保安基準準拠を目指して自分でカートを組み立てる動画にこのタグが付けられたことがあった。また自動車ではないが、空に憧れた少年の頃思い出し、操縦桿で模型飛行機を動かす装置を自作する動画にもタグが付けられている。編集者もその動画を見たが、そこに魂の駆動体があると感じた。涙腺崩壊である。
もっともタグが多くつけられているのは、紅茶の国の女王陛下に仕えるパワー厨、ハムスター、スローの三紳士が司会を務めるバラエティ番組自動車番組関連の動画。彼らが、自動車が人々の魂を揺さぶるものであるというのを知っている愛すべき馬鹿だからだろう。
???「人間は運転する生き物ではない」???という考えに基づいて考案された、Googleの自動操縦車コンセプト関連の動画には、「魂の駆動体のあれ」などとコメントがつけられている。そこにかなり否定的な意味があるのは言うまでもない。なおこの車両は、現段階ではトヨタ・プリウスに制御システムを搭載して開発が進められており、公道での走行距離は自動操縦のみで1000マイル、総走行距離では14万マイルを走行している。
Google側の説明としては、この車は車間距離を小さくしても安全に走行することが可能なので、安全性と車の流れを保ちつつ、交通の密度を高めることができるとしている。また受動安全装備を減らすことが出来るので軽量化が可能で、エネルギー効率も高めることができるという。つまり事故にならない前提だから、一旦事故が起きると(ry
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関連項目
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