概要
正史・演義どちらでも、宦官つながりであろうか、十常侍さながらの佞臣として描かれている。
正史
正史では諸葛亮の後任であった董允が病没した後に、董允の後任となった陳祇と共謀して政務を仕切るようになる。
数々の政治工作の結果、黄皓は蜀漢皇帝の中常侍まで登り詰めた。この位は社長と秘書の関係に例えられる。そのため「染められやすい」劉禅は黄皓の意見を多く耳にするようになった。
やがて黄皓は諸葛瞻や董厥らと結託して北伐に執心する大将軍・姜維を排斥し、蜀南郡で実績のある閻宇を後任に据えようと画策した。姜維は劉禅にこの行為を辞めさせようと説くも聞き入れられず、姜維は出先から帰れなくなった。
また、劉備の息子で劉禅の異母弟だった劉永は兄に侍る黄皓を憎んでいたが、そのために黄皓は朝廷に劉永の讒言を説いた。そのため、劉永は先帝の血族でありながら十年余も朝廷への出仕を許されず、不遇な生活を強いられた。
また政治の中枢を担っていた諸葛瞻・董厥・樊建は黄皓=劉禅の怒りを買わないために各々が各々をかばうようになり、結果蒋エン・董允亡きあとに黄皓の専横を止められる人材は誰もいなくなっていた。
ただしその董允没後17年も国が持ったこと(言い換えれば黄皓が台頭してもなお17年持ったこと)、また諸葛瞻・董厥・樊建ら文官と黄皓は「戦果なく、国力をいたずらに疲弊するだけの姜維を排斥すべし」という点で姜維の排斥に合力していたこと、正史三国志の編者である陳寿を左遷させた張本人であることなどから、黄皓ら文官・宦官は「劉禅と姜維を貶めた者」として実際よりも低く見られていた可能性もある(しかし孫呉の張悌・薛クは名指しこそしないものの、蜀漢腐敗の原因をそこにはびこる宦官や汚吏に求めている)。
ことほど左様な宦官にありがちな例の通り、黄皓は政敵・姜維の援軍要請をよく握りつぶしていた。そのために対魏の最前線にいた姜維とその部下はほとんど遊兵と化し、鄧艾が綿竹関・江油城からの急襲を仕掛けた際もその報が姜維に伝わらず、あっさり成都と劉禅は鄧艾に攻め取られた。この際に諸葛亮の孫、諸葛尚は「黄皓の専横を許さなければこうはならなかった!」と鄧艾軍に突撃、玉砕して果てたという。
かねがね黄皓の専横を聞いていた鄧艾は、蜀が降伏したら直ちに黄皓を殺そうと思っていた。そこで黄皓が将兵の前に金銀財宝をばらまくと、やんぬるかな、将兵は全員宝物に目を奪われ、その隙に黄皓は歴史の闇の彼方に消えてしまったという。
なお蜀記によれば、降伏時における蜀の金銀は二千斤しか残っていなかったという。
演義
実質的な蜀漢滅亡の元凶と考えられたため、演義では史実にあることないことを脚色され、ことさらに悪辣な人物として描かれている。
まず諸葛亮の存命中から佞臣として辣腕を振るい、魏から頻繁に小銭をせしめて私腹を肥やし、その見返りとして頻繁に姜維を北伐から呼び戻した。このため北伐は魏に対し決定的な打撃を与えることができず、蜀だけが消耗するばかりだったという。
また北伐が完全に潰え前線の蜀軍が危うくなると、なんと神懸かった巫女を召し出し、その予言や妄言で政治方針に定めるようになった。劉禅には佞と妄が合わさり最強に見えた。これにより姜維ら前線への援軍や連絡はさらに打ち切られるようになる。
しかも「江油城が何者か(鄧艾)の手により落城した」という報告を受けても「神は言っている―まだ決断すべき時ではないと。」とこれを誤報と断じた。諸臣は黄皓と巫女の連携プレイで佞槃の境地に引きずり込まれていたので、黄皓の決定に逆らうものは少なかった。
なんとか諸葛瞻・諸葛尚父子はこの佞府を脱し、綿竹関に篭って鄧艾を抑えにかかるも、鄧艾の猛攻凄まじく綿竹関も突破され父子は敗死、成都まで鄧艾を遮る者はいなくなってしまった。
こうして鄧艾が成都に攻め入ると蜀漢は全面降伏。鄧艾もこう劉禅に出られては無碍にもできず、まず先に黄皓を捜索した。ここでも黄皓は得意の財宝ばらまきで逃げようとするも、司馬昭にこれを看破されて捕まり、凄惨な肉刑で処刑された。
かくして宦官の専横に端を発した蜀漢の歴史は、宦官の専横を以って幕を閉じるのである。
仮想世界では
三國志(KOEI)では演義補正が下方にも働きやすいため、どの作品でも常に「ちょっと政治に詳しいけどまあ佞臣だし」という程度の扱いで、顔グラもほとんどの作品では老獪とはとても言えない梅干しジジイだったのだが、11では遂に知力30、政治10、武力・統率・魅力1、全兵科適正C(全部隊攻防力1)という正真正銘の種無し宦官になり下がってしまった。
何と能力値合計が劉禅以下である。(前作10でも黄皓は統率1、武力2、知力36、政治4、魅力3と十分とんでもないのだが…)
そして武将リストラが多い最新作の12では諸葛瞻・董厥・樊建共々影も形もなくなってしまった。
三国志大戦ではどれもこれも微妙すぎて紹介する気が失せるほどの超微妙武将として登板。
最新版では城内からポクッと武将を生やす暴乱計略「縮毒の乱」を授かったようだが、まあ黄皓だし…。
そして三國無双シリーズ最新作の真・三國無双6では、劉禅が顔あり武将として立ったためか、黄皓もこれを補佐するモブ文官として戦場の前線で戦うアグレッシブな姿を見ることができる。
ニコニコ動画では
ニコニコ動画では劉禅が縛りプレイに最適なドM勢力蜀漢のラストエンペラーとして中華統一の野望を胸に秘める大英傑となり、劉禅勢力は飛躍的な潜在能力を発揮して諸侯を従える強大な国家となる可能性を秘めた。
そのためか、黄皓も時には治世を延伸させた能吏として、時には中原に佞を唱えるネコミミ大軍師として、時には自ら国を起こし数節でボコされるダメ君主として、ある意味劉禅以上に活躍したりしなかったりするようになっている。
劉禅が活躍する動画で黄色コメが流れてきたらだいたい宦官(≒黄皓)の佞言である。
関連項目
- 6
- 0pt