黄電単語

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黄電（きいでん）とは、かつて名古屋市交通局が保有していた、全体が黄色（ウィンザーイエロー）に塗装された地下鉄用車両の通称である。

概要

1957年、後に東山線と称される名古屋市初の地下鉄路線が名古屋駅─栄町駅（現在の栄駅）間に開通することになり、地下鉄用の車両として100形電車が開発された。100形電車は、「トンネルのなかでもよく見えるように」という理由で、ウィンザーイエローの塗装が施されることになった。その結果が、下の画像のような外観である。

この全体が黄色という外観は、地元名古屋市民のみならず全国の鉄道ファンに衝撃を与えた。その後も増結用に開発された中間車 500形、改良形である200形・600形・700形・300形・800形、700形を中間車から先頭車に魔改造した250形などの形式が登場し、これらもすべて全体が黄色の塗装であったことからいつしか「黄電」の愛称で呼ばれるようになった。そして、黄色はそのまま東山線のラインカラーとして定着することになった。

後に開通した名城線でも、200形をベースに補色となる紫色の帯を施した1000形電車が使用され、これも黄電として扱われている。

ちなみに鶴舞線 3050形電車登場後あたりに刊行された某鉄道ファン向け雑誌に、「名古屋市営地下鉄の車両はデザインに面白みがないが黄電だけは例外」という投稿が寄せられたこともあり、いかに黄電が強烈なインパクトを与えたかを窺い知ることができる。

そんな黄電だが、酷暑の町と名高い名古屋にあって全車非冷房という男気あふれる仕様であった。当時の技術では改造で冷房を搭載するのは困難であったことから、東山線では1982年から5000形電車や5050形電車へ、名城線では1990年から2000形電車へ置き換えられはじめた。時代が平成に移り変わってもしばらくはレトロ感溢れる車両が名古屋の地下を元気に走り回っていたが、置き換えは着々と進行し、2000年にはついに東山線・名城線からすべての黄電が引退した。

なお、名古屋市営地下鉄での運用から退いた黄電の一部は、高松琴平電鉄やブエノスアイレス地下鉄に譲渡され、再び旅客列車として活躍することになった。また愛知県日進市にあるレトロでんしゃ館には、かつて東山線で活躍した100形電車のうち107号車と108号車が静態保存されており、レトロ感溢れる車両を今でも見ることができる。

中国地方の國鐵廣島や國鐵岡山もこの塗装を見て末期色を思いついたという話もある。

黄電と呼ばれた車両

東山線用車両

100形: 名古屋市営地下鉄開業当初から在籍していた車両。当初は先頭車同士をくっつけた2両編成で運用されており、全部で40両が製造された。
やや丸みを帯びたボディで方向幕は搭載されておらず、代わりに前面中央に行先表示板を取り付け（これは250形を除いた東山線用黄電に共通の仕様）、扉は片開きという、いかにもレトロな外観の電車であった。ボディマウント構造が採用されたが、保守の面で問題があったため真っ先に廃車の対象となり、1988年に全車両が運用を退いた。レトロでんしゃ館に静態保存されているのは、この形式の107号車と108号車である。
500形: 1963年、輸送力増加を狙い3両編成化するため、中間車が必要となったため開発された。
乗務員室がなく、代わりに簡易運転台を設けたことを除けば、基本的な仕様は100形に準ずる。将来的に4両編成化する際に備えて全20両の奇数番号車のみ製造されたが、これ以降の中間車に500形が使われることはなかったため、偶数番号車は欠番である。
100形と同じくボディマウント構造で、同様の問題も抱えていたことから早々に廃車の対象に挙がり、1987年に全車両が引退した。
200形・600形: 1964年に登場したマイナーチェンジ版で、先頭車仕様の200形が4両、中間車仕様の600形が2両製造された。1965年には4両編成化のため、600形が追加で2両導入された。
保守に難のあった100形・500形の反省を活かし、本形式からはボックスマウント構造が採用された。1990年に全車両が引退。
700形: 500形に代わって100形の中間車として挿入すべく、1965年から登場した。東山線の車両編成数増加に伴い順次導入され、最終的に1973年の6両編成化の時点で64両が製造された。
100形の中間車として製造されたので基本的な仕様は100形に準ずるが、200形・600形と同じくボックスマウント構造が採用されたり、扉が両開きに変更になったりといった相違点がある。1999年に全車両が引退。
300形・800形: 200形・600形の改良型として、1967年に登場した。最終的に先頭車仕様の300形が38両、中間車仕様の800形が76両製造された。
200形・600形と同じくボックスマウント構造で、扉は両開き。外観こそ以前の形式と大差ないものの、100形・200形系列とは異なる制御回路を採用したため、これらの系列の車両とは併結できないようになっていた。2000年に全車両が引退、これにより黄電はすべて名古屋市営地下鉄での運用から退いた。
250形: 1983年に登場。この時期は既に冷房を搭載した5000形によって黄電の置き換えが始まっていた時期であったが、この置き換えにより先頭車が不足するため、黄電の中でも車齢の新しい中間車 700形をまさかの先頭車仕様に魔改造。その結果、18両の250形電車が爆誕した。
元々は中間車であったため外観は従来の黄電の先頭車と大きく異なる平面顔で、東山線の黄電では唯一方向幕を搭載している。全体が黄色いという点を除けば、むしろ5000形に近い外観といえる。そんな250形も例に漏れず冷房を搭載できなかったため早々に廃車が始まり、結局1999年に全車両が運用を退いた。

名城線用車両

1000形: 東山線200形をベースに開発された車両。
この形式ならではの特徴として、黄色の補色となる紫色の帯を車体に配しており、これが名城線のラインカラーとして定着した。また、本形式は当初から方向幕を搭載していた。東山線の黄電と同じくマイナーチェンジも行われたが、形式ごとの差異は東山線のそれほど大きくはない。2000年に1000形系列の全車両が引退した。