龍馬伝とは、2010年に放送された第49作目の大河ドラマである。
概要
脚本・監督は福田靖。2004年「新選組!」以来のNHKの完全オリジナル作品である。
(翌年の「江〜姫たちの戦国〜」もオリジナル作品)
岩崎弥太郎の過去の回想という視点から、幕末に生きた坂本龍馬を描く。
そのため実質、主役は坂本龍馬と岩崎弥太郎の二人となっている。
(無論、龍馬の方が出番が多い)
主演の坂本龍馬を演じるのは、福山雅治。
なお福山はこのドラマにおいてカツラを付けておらず、地毛で出演している。
当の坂本龍馬本人も、福山の髪型同様、縮れ毛であったと言われる。
もう一人の主役ともいえる岩崎弥太郎を演じるのは、香川照之。
「春日局」(小早川秀秋役)「葵徳川三代」(宇喜多秀家役)「利家とまつ」(豊臣秀吉役)「功名が辻」(六平太役)などの大河ドラマに携わった経歴を持つ。
なお、正岡子規役で出演した「坂の上の雲」第一部が終わった翌週に、龍馬伝に出たので正岡子規と岩崎弥太郎が混同するという事態も起きた。
さらに、龍馬伝最終回の翌週には「坂の上の雲」第二部で再び子規役に戻って出演したため、またしてもごっちゃになったことは言うまでもない。
あまりに貧窮し汚れた岩崎弥太郎の容姿のために、三菱グループ各社から「汚すぎる」とNHKにクレームが来た。
あらすじ
明治15年(1882年)、郵便汽船三菱社長、岩崎弥太郎は、主催する宴会の席上で自らの半生を振り返るスピーチをしていた。語り終えた直後取り押さえられた暴漢を一喝し立ち去ろうとする弥太郎の前に土陽新聞の記者、坂崎紫瀾が声を掛ける。
坂崎「坂本龍馬という名前をご存知ですか?」
岩崎「・・・おんし、龍馬を調べて、どうするがぜよ」
坂崎「僕が聞いた話がほんとやったら、大変な人物やないですか。けんど、こんなひとがおったと、今は誰も知らん
がです。教えてください岩崎社長。坂本龍馬とは、いったい、どんな人物であったがですか?」
岩崎「・・・龍馬はのう、わしがこの世で一番嫌いな男だった。あんな能天気で、自分勝手で、人たらしで、女子(おなご)に好かれて、あればぁ腹の立つ男はどこにもおらんとじゃき!」
キャスト・人物紹介
主人公・準主人公
- 坂本龍馬(福山雅治)
- 土佐脱藩浪士。豪商才谷屋の分家である坂本家に生まれる。武市半平太率いる土佐勤王党に所属するが袂を分かち脱藩。勝海舟の元を訪れその弟子になる。海軍操練所閉鎖後は薩長融和の周旋を図り奔走。慶応2年(1866年)1月、京都にて薩長同盟締結に立ち会う。慶応3年(1867年)に土佐藩の後藤象二郎と提携して大政奉還を歴史の裏面で推進する。大政奉還が成った1ヶ月後の11月15日、暗殺される。享年33。
- 岩崎弥太郎(香川照之)
- 土佐藩地下浪人。曽祖父の代に郷士株を売ったため郷士の中の更に最下級である地下浪人に落ちた一族に生まれる。極貧生活の中で学問・商業を学び、土佐藩参政・吉田東洋に認められ藩士として勤めるが、命令無視により職を免じられる。その後後藤象二郎により再度藩士として活動。土佐商会の責任者に抜擢されて長崎に着任。龍馬率いる海援隊の財政管理を嫌々任される。維新後海運業で財を成し、後の三菱財閥を興した。明治18年(1885年)病死。享年52。
- 武市半平太(大森南朋)
- 土佐藩郷士。白札と呼ばれる上士格で、土佐藩郷士達の首領として土佐勤王党を結成。公武合体派の吉田東洋の暗殺を指揮し、土佐藩の運動方針を勤王に導く。京都に赴き朝廷工作を行う一方で暗殺による威嚇を行い、長州藩士らと共に一時京都を席巻するが、文久3年の「八月十八日の政変」により山内容堂の弾圧を受け、土佐勤王党は壊滅。武市も捕えられ、慶応元年閏5月11 日に切腹。享年36。
- 楢崎龍(真木よう子)
- 龍馬の妻。父を亡くし女手ひとつで家族を養っていたが、妹を借金の形に取られ、取返しにいこうとしたところ龍馬と出会う。龍馬のとりなしで寺田屋に預けられる。幕吏による襲撃時には龍馬を助けるため薩摩藩邸に駆け込み救助を求めた。薩摩藩邸に潜伏中龍馬と結婚する。龍馬暗殺後、三吉慎蔵によって坂本家に送られる。
坂本家
- 坂本乙女(寺島しのぶ)
- 龍馬の姉。非常に大柄な女性で武芸に秀でていたため「坂本のお仁王様」と渾名された。幼い頃の龍馬の躾け役となり、脱藩後の龍馬と手紙のやり取りを行った最大の理解者の一人。
- 坂本八平(児玉清)
- 龍馬の父。安政2年に龍馬の活躍を見ること無く死去。享年59。
- 坂本権平(杉本哲太)
- 龍馬の兄。頑固者だが根は優しく、女ばかりの坂本家では少し肩身が狭い。龍馬の元を訪れた時、手違いで海軍操練所に入れられそうになる。
- 坂本春猪(前田敦子)
- 権平の娘で龍馬の姪。龍馬を「叔父ちゃん」と呼んで慕っているが、年は割と近く龍馬にとっては妹のような存在。
岩崎家
- 岩崎弥次郎(蟹江敬三)
- 弥太郎の父。喧嘩っ早く騒動ばかり起こすダメ親父だが、愛嬌があってどこか憎めない。一家のトラブルメーカーにしてムードメーカー。
- 岩崎美和(倍賞美津子)
- 弥太郎の母。夫とは対照的なしっかり者で、学問のために江戸へ行く弥太郎に壺に貯めておいたへそくりを密かに渡した。この時の壺は、龍馬伝が放送された直後に実際に発見された。
- 岩崎喜勢(マイコ)
- 弥太郎の妻。弥太郎が肥だめに落ちたところを助けたのがきっかけで結婚、いつも強気な弥太郎が彼女の前ではデレデレしてしまう。
土佐勤王党
- 中岡慎太郎(上川隆也)
- 土佐藩郷士。初め土佐勤王党に参加するが、藩からの弾圧が厳しくなり脱藩して長州に渡った。龍馬と共に薩長和解のため活動。慶応3年には薩摩藩に同調して武力倒幕を目指す。龍馬伝での登場はかなり遅く、龍馬が亀山社中を結成してから。そのため、それまでの活躍描写が全く無い上に、本編での出番は非常に少ない。近江屋で龍馬と対談中刺客に襲われ死亡。享年30。
- 岡田以蔵(佐藤健)
- 土佐藩郷士。通称人斬り以蔵。土佐勤王党に参加し、文久2年から文久3年の間にかけて京都で暗殺に手を染める。土佐藩に連行後、斬罪。享年26。
- 平井収二郎(宮迫博之)
- 土佐藩士。土佐勤王党に参加し、武市とともに京都で活動。文久3年に青蓮院宮(中川宮朝彦)に令旨を受けたことを藩に咎められ切腹。享年29、もしくは28。
- 望月亀弥太(音尾琢真)
- 土佐藩士。武市の命令で、土佐勤王党から勝海舟の海軍操練所に異動となる。過激な攘夷思想から脱走して京に潜伏、池田屋事件で新撰組に襲われ非業の死を遂げた。享年27。
亀山社中・海援隊
- 近藤長次郎(大泉洋)
- 通称、饅頭屋長次郎。海軍操練所閉鎖後は龍馬とともに亀山社中の一員として活動。軍艦買い付けの交渉を任される。外国への密航計画を立てていたが露見してしまい、責任を取るため切腹。享年29。
- 沢村惣之丞(要潤)
- 土佐藩郷士。龍馬と共に脱藩。海軍操練所閉鎖後は龍馬とともに亀山社中の一員として活動。血気盛んな性格に反して語学堪能であり、通訳を務める。
- 陸奥陽之助(平岡祐太)
- 後の陸奥宗光。元紀州藩士。勝の門下生の一人。亀山社中の一員として活動。かなりの毒舌家で、時々トラブルを起こす。
- 池内蔵太(桐谷健太)
- 土佐藩士。天誅組の変や禁門の変で体中に無数の傷跡がある。豪快な人柄で、お元にプロポーズするが、ワイル・ウエフ号が嵐で沈没した時に船と運命を共にした。
- 小曽根英四郎(杉山彦々)
- 小曽根乾堂の弟。亀山社中に加わる。
土佐藩
- 山内容堂(近藤正臣)
- 土佐藩元藩主。「幕末の四賢侯」の一人。自らを「鯨海酔侯」と称する。徳川慶喜の将軍就任を支持する一橋派に与したため、安政の大獄に連座して隠居・謹慎の身となる。赦免後、隠居の身で再び政局に復帰。土佐勤王党を弾圧し壊滅に追い込む。深酒のために、アルコール中毒を患う節が見られる。
- 吉田東洋(田中泯)
- 土佐藩士。山内容堂に仕える。参政就任後、門閥派を退け人材育成・登用、藩兵の洋式化などを促進するが、東洋の公武合体論に反対する武市半平太の刺客により暗殺される。享年46。
- 後藤象二郎(青木崇高)
- 土佐藩士。吉田東洋の甥。山内容堂の指示の下土佐勤王党弾圧を実行。かなりサディスティックな性格で、弥太郎をアゴでこき使う。慶応3年(1867年)、長崎の清風亭にて龍馬と会談し、対立を乗り越え手を組むことになる。
- 溝渕広之丞(ピエール瀧)
- 土佐藩郷士。千葉道場での龍馬の同門。江戸での龍馬や弥太郎の生活を助け、後に龍馬の協力者の一人になる。
- 平井加尾(広末涼子)
- 平井収二郎の妹。龍馬初恋の人。安政6年に山内容堂の子女が公家の三条家に嫁ぐ際同行し、文久2年まで京都で生活を送る。
千葉道場
- 千葉定吉(里見浩太朗)
- 北辰一刀流の開祖・千葉周作の実弟。江戸における龍馬の剣の師匠。
- 千葉重太郎(渡辺いっけい)
- 定吉の息子で龍馬の親友。龍馬と佐那の間を取り持つ。「君が大好きだアッー!」
- 千葉佐那(貫地谷しほり)
- 定吉の娘で、重太郎の妹。北辰一刀流免許皆伝を持つ。初対面の龍馬をフルボッコにするが、付き合う内に恋愛感情を持つようになる。生涯独身を貫き(異説有り)、明治時代になると灸師になった。
長州藩
- 木戸貫治(谷原章介)
- 旧名・桂小五郎、後の木戸孝允。長州藩士。維新三傑の一人。吉田松陰亡き後、松陰の教え子達の兄的な存在として頭角をあらわす。京都で政治活動を行っていたが、禁門の変後長州に帰還。長州藩の実質上の指導者となる。京都にて西郷隆盛と面会し、薩長同盟を締結する。
- 高杉晋作(伊勢谷友介)
- 長州藩士。吉田松陰の松下村塾門下生。久坂玄瑞とともに「松下村塾の双璧」と称される。佐幕派に制圧された長州藩をクーデターによって反幕府に転換させる。伊藤俊輔・井上聞多と長崎で武器調達をしていたところを龍馬が訪れる。第二次長州征伐にて幕軍を破るが労咳(結核)に冒され死去。享年29。
- 久坂玄瑞(やべきょうすけ)
- 長州藩士。松下村塾門下。高杉晋作とともに「松下村塾の双璧」と称される。禁門の変で自刃。享年24。
- 三吉慎蔵(筧利夫)
- 長州藩の支藩である長府藩士(作中では長州藩士と紹介される)。龍馬の護衛として同行する。伏見の寺田屋で幕吏の襲撃を受けた龍馬を護衛し、危機を救う。
- 吉田松陰(生瀬勝久)
- 長州藩士。黒船に乗り込み米国渡航を企図するが受け入れられず出頭。その後通商条約締結反対や老中の暗殺を唱たため、江戸に送還され斬首。享年29。
- 伊藤俊輔(尾上寛之)
- 後の伊藤博文。長州藩士。松下村塾門下。高杉・井上と長崎で武器の調達を行う。
- 井上聞多(加藤虎ノ介)
- 後の井上馨。長州藩士。高杉・伊藤と長崎で武器の調達を行う。
薩摩藩
- 西郷吉之助(高橋克実)
- 後の西郷隆盛。薩摩藩士。維新三傑の一人。勝の依頼を受け龍馬らの身柄を預かる。京都にて木戸貫治と面会し、薩長同盟を締結する。
- 小松帯刀(滝藤賢一)
- 薩摩藩家老。西郷と共に薩摩藩を代表する人物。京都にて木戸貫治と面会し、薩長同盟を締結する。2年前の大河ドラマ「篤姫」の準主役であり、こちらでは龍馬の盟友であったが、龍馬伝ではあまり龍馬と深く関わっていない。
- 大久保一蔵(及川光博)
- 薩摩藩士。維新三傑の一人。西郷・小松・岩倉具視と図り倒幕運動を推進する。龍馬を快く思っていなかった。
江戸幕府
- 徳川慶喜(田中哲司)
- 江戸幕府第15代将軍。京都で政治活動に携わる。なぜか眉毛が無い。慶応3年(1867年)10月、大政奉還の決断を下した。
- 松平春嶽(夏八木勲)
- 越前藩元藩主。「幕末の四賢侯」の一人。文久2年に幕府の政事総裁職に就任し、文久の幕政改革を実行する。龍馬を引見し勝海舟との面会の斡旋をする。龍馬の願いを聞き入れ勝海舟の私塾に資金援助を行う。夏八木勲は1977年の大河ドラマ「花神」で龍馬を演じた。
- 勝海舟(武田鉄矢)
- 旧名・勝麟太郎。幕臣。役職は海軍奉行並、後に海軍奉行。自身の元を訪れた龍馬を弟子として教育する。禁門の変後、操練所が閉鎖に伴い薩摩藩の小松帯刀と西郷隆盛に龍馬ら塾生の身柄を預ける。
- 小栗忠順(斎藤洋介)
- 幕臣、勘定奉行。フランスとの関係を深め、幕府権力の回復を図る。
- 佐々木只三郎(中村達也)
- 幕臣、京都見廻組与頭。坂本龍馬暗殺実行犯の1人とされる。
- 渡辺一郎(藤野秀樹)
- 幕臣、京都見廻組組士。坂本龍馬暗殺実行犯の1人とされる。
- 今井信郎(市川亀治郎)
- 幕臣、京都見廻組組士。坂本龍馬暗殺実行犯の1人とされる。弥太郎に対し、幕臣の大政奉還への恨みを語った。
新撰組
長崎の人々
- お元(蒼井優)
- 長崎の芸妓。長崎奉行所の間者で隠れキリシタン。キリシタン取締を逃れて外国に亡命した。
- 大浦慶(余貴美子)
- 長崎の貿易商。龍馬に興味を持ち庇護する。
- 小曽根乾堂(本田博太郎)
- 長崎の商人。龍馬に資金提供を行う。
- トーマス・グラバー(ティム・ウェラード)
- スコットランド人の政商。社中を仲介役として長州藩に武器を売却する。
その他の人々
- 茂田一次郎(中尾彬)
- 紀州藩勘定奉行。いろは丸事件にて龍馬との談判に応じる。
- 登勢(草刈民代)
- 寺田屋の女将。龍馬の依頼でお龍を寺田屋に雇い入れる。龍馬の亡き母・幸に瓜二つ。
- 佐藤与之助(有薗芳記)
- 幕臣で勝の弟子。勝塾塾頭。
- 横井小楠(山崎一)
- 肥後熊本藩士。松平春嶽の招聘を受け、越前福井藩に赴き春嶽の腹心を務める儒学者。
- 坂崎紫瀾(浜田学)
- 土佐藩出身。明治13年に創刊された高知県の土陽新聞主筆を勤め、連載小説「汗血千里の駒」などで坂本龍馬を取り上げる。これがきっかけで龍馬の名が世間に知られ始めることになる。
用語・時代背景
上士(じょうし)と下士(かし)
龍馬伝前半の主要舞台となる土佐藩(土佐国)は、戦国期から安土桃山時代にかけて長宗我部氏の領土であった。
しかし時の領主、長宗我部盛親は関が原の戦いにおいて西軍についたため、徳川家康により改易(全領地没収)となってしまった。
そして代わりに土佐国主となったのは、4作前(大河ドラマ「功名が辻」)の主人公である山内一豊であった。
しかし、一領具足(長宗我部氏の遺臣団)は度々反乱を起こした。山内氏はこれを鎮圧。浦戸一揆においては反乱兵を全員斬首するという強硬策に出た。
そして長宗我部遺臣団を郷士(下位の身分の者)、旧来からの山内氏家臣団を上士に区分。
これは江戸時代を通して明治維新まで受け継がれた身分制度であった。
しかし龍馬伝の作中では家格を大きく分け「上士」と「下士」と呼んでいる。
これは上士以外の身分の者は、「郷士」のほか「白札」(郷士の家系のうち功績のあった当主のみを上士待遇にする)「地下浪人」(土佐郷士の株(身分)を売却したものの、未だに藩内に居座っている浪人)など様々な身分が存在するため、その総称として「下士」という名称をつくったと思われる。
下士への差別
第1話において、龍馬や弥太郎が上士にぶつかったため上士やその子息により無礼打ち(殺害)にされかけるシーンが存在するが、これはオーバーな描写である。
身分差別はあったものの理由の無い、ないし軽度の理由の「切捨て」は、江戸時代中期より幕領や各藩においては御法度であった。最悪、切腹も許されず斬首刑になるケースもあった。
また坂本家は、元が豪商(屋号は才谷屋)でありながら郷士になったというとても裕福な家系だったので、相当な額の大金を上士たちに貸し付けていた。そこの次男坊を些細な理由で殺害でもしようものなら、奉行による判断では、士道倫理に背き切腹・一家お取り潰しになりかねない大沙汰であった。
なお、第11話で下士・池田寅之進が弟を上士に斬殺され、上士に対して仇討ちを行い、上士と下士が内乱状態寸前まで至ったのは事実である。(井口村刃傷事件)
史実との差異
若い頃絶対に会ったことがないと断定はできないが、確認できる史料がないため初対面は慶応3年(1867年)4月頃の長崎と思われる。なお、司馬遼太郎の「竜馬がゆく」でも龍馬と弥太郎は若い頃から交流があるが、本作の龍馬は弥太郎を嫌悪している。
武市半平太は岡田以蔵に毒を渡して自殺をすすめたか
実際には以蔵の親族に対して服毒させるための許可を得ようとしたが拒絶されたため実行はしていない。武市から毒殺されそうになったことを悟った以蔵が自白したという話があるが、小説などの創作にしか出て来ない話(維新土佐勤王史にもあるが史料と比較した結果信憑性が低いことを郷土史家の横田達雄が指摘している)であり、実際には土佐に送還されてすぐに自白している。自白した時点で死罪は免れず、関係者に累が及ぶことを恐れた武市が自殺をすすめようとしたのが事実。また以蔵にのみ特に死を求めたわけではなく、実弟の田内衛吉に対しても毒を渡しており、拷問に耐えられず自白した田内は服毒自殺している。
坂本龍馬は武市半平太の身代わりになろうとしたのか
ドラマでは土佐に戻って後藤象二郎に啖呵を切っているが、操練所を出てからの龍馬は江戸に行って軍艦の買い付け交渉を行っている。その後京都に赴き鹿児島に渡っている。土佐に戻るのは慶応3年(1867年)8月と9月の二度。
武市半平太は自白したのか
最期まで自白はしていない。三文字の切腹は事実。なお武市の命日は慶応元年(1865年)閏5月11日で、その時期龍馬は下関に滞在して西郷の到着を待っている。
坂本龍馬と操練所のメンバーは薩摩に渡っていないのか
勝海舟の斡旋で鹿児島に渡っている(龍馬だけはひと足遅れ)。この時鹿児島に渡った人々が亀山社中結成時のメンバーになる。
長崎で高杉晋作に面会したのか
3部になってから時系列がテロップで出て来ないため何年何月なのか不明だが、伊藤俊輔と井上聞多が武器調達のため長崎に来たのは慶応元年(1865年)の7月20日頃。高杉は同行していない。
薩摩藩は幕府に追い詰められていたのか
実際には薩摩の政治工作で阿部正外・本庄宗秀の2老中が兵を率いて京都を制圧しようとしたのを阻止し、逆に将軍を再度上京させるように仕向けるなど、むしろ幕府側が苦慮している。また慶応元年(1865年)9月には長州再征が決定されたが、大久保利通は「非義の勅命は勅命ではない」と批判して協力を拒んだ。薩摩を始め全国諸藩の大半は長州再征に反対だったが、幕府は旧来のごとく強引に決定して諸藩を政治から遠ざけようとしたため、西郷隆盛ら薩摩首脳達は幕府との協調路線は不可能と判断して長州との関係修復を模索していた。
近藤長次郎の死について
近藤長次郎が死んだのは通説では慶応2年(1866年)の1月14日だったが、薩摩藩士の日記には23日死去、墓のある寺の過去帳には24日死去と記載があることが発見されており、23日説、24日説が有力。なおこの時期龍馬は京都に滞在し、鹿児島に出発するのが2月末頃のため近藤の葬儀には立ち会っていない。→関連サイト
行っていない。
ない。
お龍本人曰く元治元年(1864年)8月に金蔵寺という寺で住職を仲人に内祝言を上げている。またお龍自身は語っていないが、慶応2年(1866年)の薩摩藩邸潜伏中に式を挙げて内縁関係から正式な夫婦になったという話もあるが真偽不明。因みに寺田屋で遭難した際に逃げ込んだのは伏見の薩摩藩邸だが、1月末頃に京都の薩摩藩邸に移動している(伏見は洛中ではない)。
龍馬は内戦を起こさないために薩長同盟を締結させようとしたのか
木戸が書いた箇条書きには「内戦を起こさないため」と言った文言はなく、長州に対する支援や復権のための協力に重点が置かれている。幕府の攻撃が始まればすぐ行動を起こす事が取り決められており、国内戦を起こさない事が目的ではない。龍馬も第二次長州征伐開始後、高杉晋作の要請を受けて小倉口での海戦に参加している(参戦していないという説もある)。
大政奉還について
作中では木戸から大政奉還という策について初めて聞かされた事になっているが、史実では文久3年(1863年)の4月初め頃、幕臣の大久保一翁と面会の際に聞いた耳学問だったと思われる。記録上龍馬が最初に大政奉還について語ったのは慶応2年(1866年)8月頃の福井藩士下山尚との面会時である。
清風亭会談について
龍馬と後藤の記録上初対面となるこの会談は日時が確定されておらず、慶応3年(1867年)の1月末から2月の初め頃と推定されている。清風亭での会談というのも千頭清臣の『坂本龍馬』(大正3年)が初出で、以降定説化したが確定はしていない。作中では弥太郎が引きあわせたようになっているが、実際に引きあわせたのは溝渕広之丞である。また弥太郎が長崎に着任したのは慶応3年の3月頃のため、日時も一致しない。
高杉「不戦?ナニソレ美味しいの?(^Д^)
っていうか幕府ブッ滅ぼすぞヽ(`Д´) ノ」
なお、1977年の大河ドラマ「花神」の高杉(演:中村雅俊)はバリバリの主戦論者であった。
いろは丸事件について
作中では紀州藩側に全面的な過失があるかのように描かれているが、実は海援隊側にも過失があるのではないかとも言われている。いろは丸側の照明が点いていなかったという指摘がそれで、もし照明が点いてなかった事が事実であればいろは丸側にも本来は過失責任が問われることになる。また平成17年の海底調査では積荷として主張していた金や小銃400挺は全く見つからなかった。この事から龍馬らが紀州藩に当たり屋のようなフッカケをしたとも取られる。
船中八策について
作中では龍馬本人が書いているが、通説によると龍馬が海援隊士の長岡謙吉に起草させた事になっている。
通説では船中八策は慶応3年(1867年)6月15日、長崎から兵庫に向かう洋上で龍馬が海援隊士の長岡謙吉に起草させ、後藤に示したものとされている。だがこの船中八策は目下原本が確認されておらず、確認されている初出は『維新土佐勤王史』の元になった諸家伝の1つである毛筆本の『坂本龍馬伝』とされる。『坂本龍馬伝』の初稿は明治31年頃の事で、現時点で確認されているものとしては最も古い。これが初めて活字化されたのは大正元年の『維新土佐勤王史』で、以後千頭清臣の『坂本龍馬』(大正3年)や、岩崎鏡川編『坂本龍馬関係文書』(大正15年)などに「所謂八策なるもの」として紹介され始めた。その後年を経ていつからか「船中八策」と呼ばれるようになった。誰がいつ船中八策と言い出したのかはよく分かっていないが、おそらく郷土史家の平尾道雄ではないかと思われる。原本が見つからないため、近年では船中八策は元々存在しなかったのではないかと言う論者もいる。
お元について
お元は実在した人物で、清風亭会談の際に後藤が呼んだとされる。長崎における龍馬の現地妻のような人物だったらしいが、生没年や経歴など詳しいことは不明。長崎奉行所の密偵やキリシタンだったという設定は当然フィクション。
龍馬と容堂が対面し、龍馬の説得によって容堂が大政奉還の建白書を書いたように描かれているが、実際には会っていないと思われる。龍馬が脱藩後土佐に戻ったのはイカルス号事件の始末の時、土佐藩に小銃1000挺を売りつけた時の2回で、その頃には既に後藤ら土佐藩重臣たちによって容堂への上奏がなされていた。小銃売りつけの際に会ったとする逸話もあるが史料による確認が取れないため創作と思われる。
◯◯◯について
龍馬本人が書いた原本が二通残されている所謂『新政府綱領八策』に「◯◯◯自ら盟主と成り」と記載があり、現代でも誰が当てはまるのか議論がある。「慶喜公」とする説、特に誰を想定しているのではなく、見たものが好きに名前を入れれば良いとする説などあるが、龍馬が何を思って◯◯◯としたのか実際は不明。なお、この◯◯◯に西郷や大久保が不信感を持ち、中岡を刺客としてけしかけるような場面があったが、両者が大政奉還後に龍馬についてどう思っていたかについてははっきりした史料が存在しないため、敵意を持っていたという描写自体が彼らの政治的立場から考えられる憶測に過ぎない。そもそも西郷と大久保は10月17日に鹿児島に戻っているため京都には居ない。再び京都に入ったのは大久保が11月15日、西郷が11月23日のことである。
暗殺者について
最終回にて佐々木只三郎、今井信郎、渡辺一郎(渡辺篤)らが登場し、彼らによって暗殺されているため定説通り京都見廻組が暗殺者の正体。この事件の詳細については近江屋事件を参照。
近江屋テロップ襲撃事件
2010年11月28日、この日は大河ドラマの「龍馬伝」の一年の締めくくりである堂々たる最終回(第48話)、「龍の魂」が放映された。その放映内に起きた見廻組による坂本龍馬・中岡慎太郎の襲撃シーンで、起きた出来事である。首謀者はNHKであり、謎につつまれている点も多い。
一年にもわたる大河ドラマは普段、12月に終わるのが定番となっていた。しかし、この昨年からスペシャルドラマである「坂の上の雲」が三年がかりで4、5回にも渡って放送されるためである。そこで今年も10ヶ月という普通の年とは1ヶ月短い放送になった。
しかし、折り悪く、この2010年11月28日は和歌山知事選と愛媛知事選という、二つの都道府県知事の選挙があった。視聴者はそのことを知ってか知らずかNHK総合にて8時から9時15分にもわたる最終回拡大枠で行われたドラマ本放送を見ていた。なのでBSで最終回を見ていた人には気づかなかった人が多い。
その後、最初は、和歌山知事選のためのテロップが表示されたがこの時は大して重要でない箇所で流れたため、視聴者は、特に何とも思っていなかった。
そして近江屋に滞在する龍馬の下に、中岡慎太郎が登場。龍馬は新政府建設のために、新政府の主導者を「○○○」と書いた、これが薩摩の反感を買った。もしも龍馬がこの「○○○」を徳川慶喜だったら中岡が龍馬を斬り殺すと誓約し、龍馬の下を訪れるシリアスなシーンであった。
そしてそのことが誤解とわかり、竜馬と中岡が二人でこれからの自分たちのこと(蝦夷地の開拓、西洋文化確認のための洋行等)といったことを語り合ってる間に、見廻組の連中が近江屋に押し入り、二人の背後に忍び寄り、中岡が「いかん!」と叫び、応戦するまもなく斬られる直前に、事件はおきた。
「愛媛県知事当選 新人の中村時広氏 当選確実」という文字が大々的に画面の上部、約5分の1程度を占める部分に表示されたのだ。この直後、龍馬が脳天を切られながら「どういてじゃ!どういて!」と大声で叫びながら剣を持って応戦し、血まみれの二人の顔を少し隠すようにして数分にもわたりこのテロップが流れた。これが最終回における最大の見所、暗殺場面でのできごとであった。この直後数時間、NHKにはクレームが殺到し、公式HPはつながらない状態となった。
当選した中村新知事はかつて三菱商事の社員であった経歴を持つ御仁である。
なお坂の上の雲の第一話冒頭(2009年12月放映)では、松山藩(当時の愛媛県松山市に本拠地を置く藩)が土佐藩に戦わず恭順し、15万両という大金を払い、藩主から藩士に至るまで経済状況が悪化し、その当時に生まれた五男の主人公(秋山真之)が寺に出されそうになるといった話が存在する。
この2つの事象は何かの縁なのだろうか。
音楽
ハゲタカのようなシリアスなドラマからプリキュアのような子供向けアニメ作品まで幅広く手がける、佐藤直紀氏が担当する。
オープニングテーマは時代という荒波に立ち向かう、龍の如く力強い曲となっている。スケールの大きさも相まって、ニコニコではOP曲をアニメやゲームの映像に合わせたMAD(大河OP×アニメMADシリーズを参照)が数多く作られている。
リサ・ジェラルドの歌唱部分は空耳で「煮込みおーでん♪」と聞こえると一部から言われている(他に「煮込み豆」「煮込みラーメン」と聞こえる人も)。また、太鼓の達人14にも収録されたおり、今ではゲームセンターでもこの曲を聴くことが出来る。もちろん、大河ドラマのOP曲が採用されたのは初めて。
実写版るろ剣との関わり
本作のチーフディレクターを務めた大友啓史は、龍馬伝の制作終了に伴いNHKを退職・フリーとなった。大友監督は、かつて自身が演出を手掛けたNHKドラマ「ハゲタカ」の劇場版の監督を務めた経験もあるが、龍馬伝の次に彼が手掛けた作品が、漫画・アニメ共に大ヒット作となった「るろうに剣心」であった。近年は漫画やアニメの実写化が増え、酷評され失敗に終わる作品もまた激増する中、実写映画版「るろうに剣心」は3作品合わせて興行収入100億円を突破し、ファンからの評価も概ね好評と成功を収めた。
制作にあたり、大友監督は主人公の緋村剣心役に佐藤健を指名したが、佐藤は「龍馬伝」が時代劇初出演作ながら本作で岡田以蔵役を好演した事によるものであった。この他にも、実写版るろ剣には下記の通り龍馬伝のキャストが多数出演している。また、音楽は先述の佐藤直紀が龍馬伝に引き続き登板し、迫力ある圧倒的なサウンドで映画本編を盛り上げた。
龍馬伝 | るろうに剣心 | |
---|---|---|
福山雅治 | 坂本龍馬 | 比古清十郎 |
香川照之 | 岩崎弥太郎 | 武田観柳 |
佐藤健 | 岡田以蔵 | 緋村剣心 |
青木崇高 | 後藤象二郎 | 相楽左之助 |
田中泯 | 吉田東洋 | 柏崎念至 |
音尾琢真 | 望月亀弥太 | 呉黒星 |
土屋太鳳 | 坂本乙女(少女時代) | 巻町操 |
伊勢谷友介 | 高杉晋作 | 四乃森蒼紫 |
蒼井優 | お元 | 高荷恵 |
滝藤賢一 | 小松帯刀 | 佐渡島方治 |
斎藤洋介 | 小栗忠順 | 浦村署長 |
小市慢太郎 | 和助 | 川路利良 |
関連動画
OP曲関係
龍馬伝OPパロ
その他
関連項目
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