2002 FIFAワールドカップとは、日本と韓国で開かれたサッカーの世界大会であり、第17回目のFIFAワールドカップである。
概要
2002 FIFAワールドカップ | |
---|---|
期間 | 2002年5月31日~6月30日 |
場所 | 日本 韓国 |
出場国 | 32ヶ国 |
公式球 | フィーバー・ノヴァ(アディダス) |
マスコット | スフェリックス |
今大会は日本と韓国での開催で、アジアでの開催は史上初。共同開催となった背景には、当時のFIFA内の権力闘争があり、日本はジョアン・アベランジェ会長の支持を得て単独開催を目指していたが、アベランジェ会長に反発していた欧州の理事たちはアフリカ勢の票を押え、これを覆そうとする。対抗勢力の勢いに押されたアベランジェ会長は、日本に共催を提案するようになり、事実上後ろ盾を失った日本がこれを受け入れることとなった。
今大会は、中国、セネガル、スロベニア、エクアドルの4か国が初出場となった。予選では、前回ベスト4に入った強豪オランダが飛行機嫌いで有名なデニス・ベルカンプが早々と代表を引退した影響もあって敗退したことが最大の波乱となっている。また、ブラジルのロマーリオ、イタリアのロベルト・バッジョというスター選手が本大会のメンバーから落選したことが話題となり、日本でも中村俊輔が落選している。
大会マスコット「スフェリックス」はエネルギーをモチーフにしたアトー、キャズ、ニックの3人組のキャラクター[1]。
公式球「フィーバー・ノヴァ」は、従来どおりの切頂二十面体のボールで、タービンを模した絵柄が描かれている[2]。
応援では、独韓戦での「ヒトラーの息子たちは去れ!」(히틀러의 자손들이여 떠나라!)というプラカード[3]やクローゼとカーンの遺影を掲げた応援[4][5]、伊韓戦での人文字「AGAIN 1966」[6]や垂れ幕「Welcome to Azzuri’s Tomb」[7]などが話題となった。
なお、大会の表記は正式には「Korea/Japan」だが、日本国内で大会名を呼称する時は日本/韓国で構わないということになり、今でも日本では「日韓ワールドカップ」と呼ばれている。
グループリーグ
グループA | グループB | グループC | グループD | グループE | グループF | グループG | グループH |
---|---|---|---|---|---|---|---|
フランス (1位) |
スペイン (8位) |
ブラジル (2位) |
韓国 (40位) |
ドイツ (11位) |
アルゼンチン(3位) |
イタリア (6位) |
日本 (32位) |
セネガル (42位) |
スロベニア (25位) |
トルコ (22位) |
ポーランド (38位) |
サウジアラビア(34位) |
ナイジェリア(27位) |
エクアドル (36位) |
ベルギー (23位) |
ウルグアイ (24位) |
パラグアイ (18位) |
中国 (50位) |
アメリカ (13位) |
アイルランド(15位) |
イングランド(12位) |
クロアチア (21位) |
ロシア (28位) |
デンマーク (20位) |
南アフリカ (37位) |
コスタリカ (29位) |
ポルトガル (5位) |
カメルーン (17位) |
スウェーデン(19位) |
メキシコ (7位) |
チュニジア (31位) |
グループA
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | デンマーク |
― | △ 1-1 |
○ 2-1 |
○ 2-0 |
7 | 3 | 5 | 2 |
2 | セネガル |
△ 1-1 |
― | △ 3-3 |
○ 1‐0 |
5 | 1 | 5 | 4 |
3 | ウルグアイ |
● 1-2 |
△ 3-3 |
― | △ 0-0 |
2 | -1 | 4 | 5 |
4 | フランス |
● 0-2 |
● 0-1 |
△ 0-0 |
― | 1 | -3 | 0 | 3 |
前回優勝国であり、2000年の欧州選手権も制覇し、黄金期にあったフランスが圧倒的に有利なグループと当初は見られていた。ところが、大会直前でロベール・ピレスの負傷や親善試合でジダンが負傷したことで雲行きが怪しくなる。
大会のオープニングマッチ、ジダンを欠いたフランスは初出場のセネガルに大金星を献上してしまう。続くウルグアイ戦ではスコアレスドローに終わり、この試合ではアンリがレッドカードを受けるという不運の連鎖が襲った。後がなくなったフランスは第3戦のデンマーク戦でジダンが登場するが、本来のコンディションとは程遠いジダンは何もできず。デンマークに完封負けを喫したフランスはまさかの無得点のままグループリーグで敗退となる。
フランス相手に歴史的な勝利を飾ったセネガルは、機動力とフィジカルを前面に出したサッカーでデンマーク、ウルグアイという強豪相手に引き分け、グループリーグ突破というサプライズを起こす。
対抗馬と見られていたデンマークは初戦でウルグアイに勝利したことで優位に立ち、トマソンがGL3試合連続ゴールを決めたこともあって首位で突破する。3大会ぶりの出場となった古豪ウルグアイも1勝を挙げることができず、優勝経験国2チームがGLで敗退となる。
グループB
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | スペイン |
― | ○ 3-1 |
○ 3-2 |
○ 3-1 |
9 | 5 | 9 | 4 |
2 | パラグアイ |
● 1-3 |
― | △ 2-2 |
○ 3-1 |
4 | 0 | 6 | 6 |
3 | 南アフリカ |
● 2-3 |
△ 2-2 |
― | ○ 1-0 |
4 | 0 | 5 | 5 |
4 | スロベニア |
● 1-3 |
● 1-3 |
● 0-1 |
― | 0 | -5 | 2 | 7 |
スペインが頭一つ抜け、前回ベスト16のパラグアイが対抗と見られたグループ。今回も予選では絶好調だったスペインは、前回のような失敗を繰り返さず。名実共に無敵艦隊のエースとなったラウールが結果を残し、3連勝しかも3試合連続3ゴールと順調に決勝トーナメントへ進出。
パラグアイは自慢の堅守が安定せず、2試合の時点で1分1敗とピンチを迎えたが、それでも第3戦のスロベニア戦で逆転勝利し、冷や汗ものながらも2大会連続でGLを突破する。
スロベニアを相手にワールドカップ初勝利を飾り、2試合を終えた時点で2位につけ、第3戦のスペイン相手にも善戦するなど健闘した南アフリカだったが、総得点の差で泣くこととなった。
EURO2000で躍進し期待された初出場のスロベニアは、初戦の後監督と対立したエースのザホビッチが強制帰国になるゴタゴタがあり、3連敗と期待外れに終わった。
グループC
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ブラジル |
― | ○ 2-1 |
○ 5-2 |
○ 4-0 |
9 | 8 | 11 | 3 |
2 | トルコ |
● 1-2 |
― | △ 1-1 |
○ 3-0 |
4 | 2 | 5 | 3 |
3 | コスタリカ |
● 2-5 |
△ 1-1 |
― | ○ 2-0 |
4 | -1 | 5 | 6 |
4 | 中国 |
● 0-4 |
● 0-3 |
● 0-2 |
― | 0 | -9 | 0 | 9 |
ブラジルにとってはラッキーというしかない恵まれたグループ。もはや興味はどこがブラジルに続いて2位で通過するのか?となっていた。
予想通りブラジルは他の3チームに対して格の違いを見せつけ、ロナウド、リバウド、ロナウジーニョの「3R」と呼ばれた攻撃陣は3試合で11得点と驚異的な破壊力を発揮。余裕の首位通過を決める。
2位を争うのもトルコとコスタリカの2チームと予想通りになったが、ブラジル相手に2失点で済んだトルコが得失点差で上回り、初の決勝トーナメント進出を果たす。
初出場の中国だったが、正直ワールドカップに出るチームのレベルではなかった。4大会連続で違う国を決勝トーナメントに導いたミルティノビッチをもってしてもミッション・インポシブルだった。
グループD
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 韓国 |
― | △ 1-1 |
○ 1-0 |
○ 2-0 |
7 | 3 | 4 | 1 |
2 | アメリカ |
△ 1-1 |
― | ○ 3-2 |
● 1-3 |
4 | -1 | 5 | 6 |
3 | ポルトガル |
● 0-1 |
● 2-3 |
― | ○ 4-0 |
3 | 2 | 6 | 4 |
4 | ポーランド |
● 0-2 |
○ 3-1 |
● 0-4 |
― | 3 | -4 | 3 | 7 |
オランダの名将ヒディンクを招へいした共催国・韓国は、当初突破は厳しいと見られていたが、初戦のポーランド戦に勝利し、6度目の出場にして初勝利を飾ると、続くアメリカ戦を引き分け、迎えた強豪ポルトガルの第3戦で命運をかけることに。2人の退場者を出したポルトガルに対し、パク・チソンが決勝ゴールを決めた韓国が初の決勝トーナメント進出を果たす。
初戦でポルトガルを撃破したアメリカは、最終節でポーランドに敗れて首位通過は逃したが、勝ち点でポルトガル、ポーランドを上回り、堂々の2位通過となった。
フィーゴ、ルイ・コスタら黄金世代を擁し、優勝候補に挙げる声もあったポルトガルだったが、評判通りの実力を発揮することができず、GLで姿を消すことに。
グループE
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ドイツ |
― | △ 1-1 |
○ 2-0 |
○ 8-0 |
7 | 10 | 11 | 1 |
2 | アイルランド |
△ 1-1 |
― | △ 1-1 |
○ 3-0 |
5 | 3 | 5 | 2 |
3 | カメルーン |
● 0-2 |
△ 1-1 |
― | ○ 1-0 |
4 | -1 | 2 | 3 |
4 | サウジアラビア |
● 0-8 |
● 0-3 |
● 0-1 |
― | 0 | -12 | 0 | 12 |
本来ならドイツ一強と言いたいところだが、世代交代の遅れから低迷期に差しかったドイツの評価は低く、欧州予選でオランダを蹴落としたアイルランド、個人技のあるカメルーンにもチャンスがあると見られた。
だが、ドイツは初戦のサウジアラビア戦で大量8ゴールを奪って圧勝すると、第3戦でカメルーンに勝利。クローゼが3試合で5得点の荒稼ぎをしたこともあり、首位でグループリーグを突破する。
2位の座を得たのはアイルランドだった。敗色濃厚となっていたドイツ戦で終了間際のロビー・キーンのゴールで引き分けに持ち込み、無敗で乗り切ったことがカメルーンを蹴落とす要因となる。ちなみにこの時のロビー・キーンの弓矢パフォーマンスを真似をするサッカー少年が続出した。
キャンプ地だった大分県中津江村との絆が話題となったカメルーンだったが、最終戦でドイツに完敗したことで3大会ぶりの決勝T進出を逃した。サウジアラビアは初戦でドイツに屈辱的な大敗を喫した後もチームを立て直せず、惨敗となった。
グループF
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | スウェーデン |
― | △ 1-1 |
△ 1-1 |
○ 2-1 |
5 | 1 | 4 | 3 |
2 | イングランド |
△ 1-1 |
― | ○ 1-0 |
△ 0-0 |
5 | 1 | 2 | 1 |
3 | アルゼンチン |
△ 1-1 |
● 0-1 |
― | ○ 1-0 |
4 | 0 | 2 | 2 |
4 | ナイジェリア |
● 1-2 |
△ 0-0 |
● 0-1 |
― | 1 | -2 | 1 | 3 |
実力のある4チームが揃い、今大会最も厳しいグループとなる「死のグループ」と見られたのはこのグループ。また、1986年のマラドーナの神の手、前回大会のベッカムの退場劇と何かと因縁深いアルゼンチンとイングランドが同じ組に入ったことでも注目された。
日本ではベッカム人気で注目されたイングランドは、初戦をスウェーデンと引き分け、一方優勝候補と見られたアルゼンチンはナイジェリアに勝利し、両雄は第2戦で激突。前半44分に得たPKをベッカムが決めたイングランドが制し、ベッカムは前回退場に追い込まれ、批判を浴び続けた4年間のリベンジを果たす。
最終的に勝ち点、得失点差でスウェーデンとイングランドが並び、ナイジェリア戦をラーションの2ゴールで勝利したことで総得点で上回ったスウェーデンが首位通過となる。
攻撃陣にタレントが揃い、優勝候補と見られたアルゼンチンだったが、イングランド戦に負けたことが響いて早期敗退に追い込まれた。ナイジェリアは3度目の出場で初めて未勝利で終わった。
グループG
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | メキシコ |
― | △ 1-1 |
○ 1-0 |
○ 2-1 |
7 | 2 | 4 | 2 |
2 | イタリア |
△ 1-1 |
― | ● 1-2 |
○ 2-0 |
4 | 1 | 4 | 3 |
3 | クロアチア |
● 0-1 |
○ 2-1 |
― | ● 0-1 |
3 | -1 | 2 | 3 |
4 | エクアドル |
● 1-2 |
● 0-2 |
○ 1-0 |
― | 3 | -2 | 2 | 4 |
イタリア、メキシコ、クロアチアの三つ巴で2つの枠を争うと見られたグループは、イタリアがGLで躓く悪い癖を発動。第2戦のクロアチア戦で逆転負けを喫し、GL突破に黄色信号が灯る。これに対し、メキシコはクロアチア戦、エクアドル戦と連勝したことで第3戦を引き分けでも突破という状況になる。
イタリアとメキシコの第3戦は、メキシコが前半に先制し、イタリアは敗退寸前に追い込まれるが、終了直前にデル・ピエロが値千金の同点ゴールを決めたことで引き分けに持ち込み、メキシコと共にGL突破を決める。ここで2位通過となったことでイタリアは酷い目に遭うことになる。
クロアチアはイタリアに勝利したものの、前回躍進の中心だったメンバーが代表引退や高齢化し、次に目立ったタレントも現れなかったことで前回大会より弱体化したことは否めなかった。初出場のエクアドルも善戦はしていたが、クロアチア相手に1勝したのみとなった。
グループH
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 日本 |
― | △ 2-2 |
○ 1-0 |
○ 2-0 |
7 | 3 | 5 | 2 |
2 | ベルギー |
△ 2-2 |
― | ○ 3-2 |
△ 1-1 |
5 | 1 | 6 | 5 |
3 | ロシア |
● 0-1 |
● 2-3 |
― | ○ 2-0 |
3 | 0 | 4 | 4 |
4 | チュニジア |
● 0-2 |
△ 1-1 |
● 0-2 |
― | 1 | -4 | 1 | 5 |
これといった本命が存在せず、共催国日本にとっては突破が十分期待できる恵まれた組み分けとなった。それでも欧州勢と比べると実績で劣ることは否めず、可能性は五分五分といったところだった。
初戦となったベルギー戦をシーソーゲームの末に引き分けに持ち込んだ日本は、第2戦のロシア戦で稲本潤一が決勝ゴールを決め、歴史的なワールドカップ初勝利を飾る。第3戦のチュニジア戦ではチームの大黒柱である中田英寿に初ゴールが生まれ快勝し、いいムードのまま首位でGLを突破。開催国としての責任を果たす。日本国内ではこれまでにないほどサッカー熱が高まっていた。
2位を巡る争いでは、最終戦の直接対決に勝利したベルギーが突破を決める。このグループでは1番力があると言われていたロシアだったが、格下のチュニジアに勝利した後に日本に負けたのが痛かった。
決勝トーナメント
ラウンド16
終了直前のノイビルの決勝ゴールでドイツが1番乗りでベスト8進出。
ドイツのカーン、パラグアイのチラベルトとカリスマ的な両チームのGKに注目が集まった試合は、ドイツが攻め込むもパラグアイの堅い守りの前になかなかゴールを決めることができない。
GLではわずか2得点と得点力不足に悩まされたイングランドだったが、前半5分ベッカムの右足からファーディナンドが先制ゴールを決める。さらに前半22分にはオーウェンが今大会初ゴールを決め、追加点を奪う。
完全に試合を支配したイングランドは、その後もデンマークを圧倒すると、前半44分にはヘスキーにもゴールが生まれ、前半だけでほぼ試合を決めてしまう。
デンマークはGLでの戦いぶりが嘘のような低調な試合内容で何もできずに完敗となった。攻撃陣の調子が上がってきたイングランドが完璧な内容でベスト8進出。
セネガル旋風は続き、北欧の雄を倒してアフリカ勢12年ぶりのベスト8へ
前半11分ラーションがゴールを決め、序盤にスウェーデンが先制。立ち上がりは堅さが見られたセネガルだったが、これでふっきれたのか徐々にGLでフランスを蹴落としたスピーディーな攻撃が見られるようになる。
前半37分H・カマラが個人技からゴールを決め、セネガルが同点に追いつく。その後、スウェーデンは21歳のイブラヒモビッチを投入し、見ごたえのある好勝負が続く。
延長戦に突入した試合を決めたのはまたもセネガルの個の力だった。延長前半14分再びH・カマラがゴールデンゴールを決め、セネガルがアフリカ勢12年ぶりのベスト8進出を果たす。
前半8分この試合スタメンに抜擢されたモリエンテスが早速ゴールを決め、スペインが先制。だが、ここからスペインは時間と共にペースダウンしてしまい、高さとパワーで勝るアイルランドが押し戻すようになる。
逃げ切ろうとしたスペインだったが、試合終了直前にイエロがPKを献上してしまう。これをロビー・キーンが決めたアイルランドが土壇場で同点に追いつく。
延長戦では両チームとも疲労の色が濃いため試合は動かず、PK戦に突入。2人が失敗したスペインだったが、GKカシージャスが2人ストップする活躍を見せ、3人が失敗したアイルランドを退ける。
ワールドカップで実現した北中米対決は、アメリカに軍配。メキシコは3大会連続ベスト16敗退。
同じ北中米勢同士の顔合わせとなり、サッカーにおいてはライバル関係にある両チームの対戦は激しいものとなる。前半8分マクブライトが決め、アメリカが先制する。
戦前の予想では優位と見られたメキシコだが、アメリカの堅い守りの前にゴールが遠い。逆に後半20分ドノバンが追加点を決め、アメリカがリードを広げる。
両チーム合わせてイエローカード10枚、退場者も出た激しい戦いはアメリカに軍配が上がり、自国開催だった1994年を超える成績を残すこととなる。
最後に笑ったのはブラジルの理不尽なまでの個の力。ベルギーは謎の判定に泣く。
ブラジル相手に真っ向勝負を挑んだベルギーは、前半11分ヴィルモッツがゴールを決めたかと思われたが、不可解なファウルのジャッジで取り消しに。肝を冷やしたブラジルは3Rの個人技を軸に攻勢を開始。
ベルギーも決して盤石ではないブラジルの守備の穴を狙って攻撃を仕掛け、互角に渡り歩く。しかし、後半23分リバウドのスーパーゴールが決まり、ブラジルが先制。
逃げ切ったトルコが初のベスト8。共催国・日本の挑戦はあっけなく終わる。
戦前、組み合わせに恵まれ、ベスト8入りを期待する声が多かった日本だったが、前半12分CKからウミト・ダバラが決め、トルコが先制。
リード後自陣を引くトルコに対し、日本は焦りから攻撃が空回りし、GLで見せた躍動感が影を潜めてしまう。GLの時とメンバーとシステムをいじってしまったことも裏目に出ていた。
結局、そのまま逃げ切ったトルコの試合巧者ぶりだけが光った試合となった。初の決勝トーナメントに臨んだ日本の挑戦はあっけなく幕切れとなる。
後々物議を醸した問題の試合は、韓国がアン・ジョンファンのゴールデンゴールでイタリア相手に大金星。
韓国サポーターの大声援が飛び交う中、18分ヴィエリのゴールでイタリアが先制する。だが、ここからイタリアを待ち受けていたのは地獄だった。
韓国の半ば暴力的なラフプレーによってイタリアはリズムを崩し、逆に攻め続ける韓国が勢いを増す。そして後半43分ソル・ギヒョンのゴールにより土壇場で韓国が同点に追いつき、試合は延長戦へ。
そして事件は起きる。延長前半13分イタリアのエース・トッティが不可解な判定によって退場になる。動揺を隠せないイタリアに対し、延長後半13分アン・ジョンファンがゴールデンゴールを決め、韓国が大金星を挙げてベスト8進出。もっとも後述のとおり、この試合の数々の誤審が大きな問題となった。
準々決勝
文字通りロナウジーニョの独り舞台となった試合はブラジルがイングランドに競り勝つ。
今大会では数少ない強豪国同士の対戦は前半23分DFルッシオのミスを突いたオーウェンのゴールでイングランドが先制する。一方、ブラジルも前半終了間際ロナウジーニョの中央突破から最後はリバウドが冷静に決め、試合を振り出しに戻す。
後半に入ってすぐには、ロナウジーニョの放ったFKがGKシーマンの意表を突き、ブラジルが逆転。ところが、後半12分1G1Aのロナウジーニョが足裏タックルによって退場となってしまう。
数的優位に立ったイングランドだったが、割り切ったブラジルが守勢に回ったことで攻め手がなくなり、結局そのままブラジルの逃げ切りを許してしまう。
内容でドイツを上回っていたアメリカだったが、カーンの牙城を最後まで崩せず。
スピードに難のあるドイツの守備陣に対し、アメリカはドリブルでのスピード勝負に持ち込み次々とチャンスを作り出す。劣勢の続くドイツだが、この試合でもカーンが守護神としてアメリカに立ちはだかり、ゴールを許さない。
すると、前半39分セットプレーからバラックがヘディングシュートを決め、ドイツが少ないチャンスをモノにする。
その後もアメリカは低調なドイツを相手に優位に試合を進めるが、圧倒的な存在感を見せるカーンからゴールを決めることができず。枠内シュート2本に終わりながらもドイツが虎の子の1点を守り切り、ベスト4進出。
またも判定に救われるも、韓国が立て続けの強豪撃破でアジア勢初のベスト4進出。
地力で勝るスペインのペースで試合が進むが、ホームの大声援を受ける韓国もカウンターで応戦。後半3分スペインはセットプレーからバラハのゴールが決まるが、ファウルの判定によりゴールは取り消される。
その後もスペインは右サイドをホアキンが何度も突破しチャンスを作るが、韓国もホームの意地で凌ぎ、試合は延長戦へ突入。
延長前半2分モリエンテスのヘディングシュートが決まるが、ホアキンがクロスの際にゴールラインを割ったという「誤審」によってまたもスペインのゴールは取り消される。その後、スペインの猛攻は続くが、ゴールは生まれず、試合はPK戦へ。
スペインはこの試合誰よりも輝いていたホアキンが失敗したのに対し、韓国は5人全員が成功。この結果、韓国がアジア勢としては史上初のベスト4進出を決める。
"王子”イルハンの決勝ゴールでトルコがセネガルを破り、初のベスト4進出。
このカードがベスト8で実現すると予想した人はどれだけいただろうか?今大会サプライズを起こしてきた2チームの対戦は、セネガルの個人技が目立つ試合展開になる。
後半に入ると、飛ばしていたセネガルの足が止まり、トルコがチャンスを作るようになる。トルコはブレーキになっていたエースのハカン・シュキュルを諦め、イルハンを投入。この決断が延長戦になって実を結ぶ。
延長前半4分トルコはイルハンがボレーシュートを決め、この瞬間初のベスト4進出を決める。旋風を起こした初出場のセネガルだったが、ベスト8でついに力尽きた。
準決勝
バラックの2試合連続決勝ゴールで韓国の快進撃を止めたドイツが決勝進出。
韓国の試合に様々な疑惑が生じていたこともあり、急きょ欧州の審判団が笛を吹くこととなった試合は、大舞台慣れしているドイツのペースで試合が進む。
熱狂の渦にあった地元サポーターの大声援を受ける韓国も速攻からチャンスを作り出すが、そこには守護神カーンが立ちはだかる。
スコアレスで迎えた後半30分こぼれ球をバラックが押し込み、ドイツが先制する。その後、韓国も反撃に出るがついにカーンの牙城を崩すことができず。完全アウェイの中、準々決勝に続いてバラックの1点で勝利したドイツが3大会ぶりの決勝進出。
GL以来の再決戦も、ロナウドのゴールでブラジルがまたしても勝利。
今大会の台風の目となっているトルコは、ブラジル相手にも互角に渡り歩き、ボール支配率で優位に立つ。ブラジルも個人技からチャンスを作るが、GKリュストゥが奮闘する。
迎えた後半4分この試合大五郎カットで登場したロナウドがトーキックでGKのタイミングを外したシュートを決め、ブラジルが先制。その後もトルコの攻勢が続くが、守りに入ったブラジルを最後まで崩せず。
3位決定戦
試合開始直後、トルコはエースのハカン・シュキュルがゴールを決め、先制。一方、地元の韓国も前半9分にイ・ウリョンが決め、すぐに試合を振り出しに戻す。だが、前半12分セネガル戦でヒーローになったイルハンがゴールを決め、再びトルコがリードする。
準決勝で敗れてややテンションの下がった韓国に対し、モチベーションでトルコは上回っていた。前半32分にもトルコはイルハンが再びゴールを決め、リードを広げる。
後半、守備の枚数を削ってアタッカーを増やした韓国だが、守備に比重を置くようになったトルコに対して終了間際に1点を返すのがやっとだった。
決勝
意外にもこれがワールドカップでの初対戦となったサッカー界の両大国によるファイナル。ブラジルは準決勝を出場停止だったロナウジーニョが復帰したのに対し、ドイツはベスト8、ベスト4で決勝ゴールを決めたバラックが警告累積によって出場停止となった。
試合は圧倒的な攻撃力を持つブラジルに対し、ここまでわずか1失点のドイツの守護神カーンの対決となる。ブラジルの猛攻に対し、カーンは前半これまで通りビッグセーブでゴールを守るが、後半接触プレーで負傷を負うと、抜群の安定感に陰りが見える。
後半23分リバウドの無回転のミドルシュートをカーンが前にファンブルすると、これに反応したロナウドがゴールに押し込み、ブラジルが先制する。カーンにとっては今大会PK以外で奪われた初の失点だった。
勢いづいたブラジルは、後半34分再びロナウドがゴールを決め、決定的な2点目を奪う。ロナウドはこれで大会8得点目となり、断トツで大会の得点王となる。バラック不在のドイツの攻撃陣はブラジル相手にゴールを奪う力は無く、試合はブラジルが快勝。
史上最多となる5度目の優勝を飾ったブラジルは、前回大会の決勝で完敗したリベンジとなり、決勝で体調を崩して何もできなかったロナウドも自らの力で雪辱を果たすこととなった。
大会のまとめ
2002 FIFAワールドカップ 大会結果 | |
---|---|
優勝 | ブラジル(5回目) |
準優勝 | ドイツ |
3位 | トルコ |
4位 | 韓国 |
個人表彰 | |
大会MVP | オリバー・カーン |
得点王 | ロナウド |
最優秀GK | オリバー・カーン |
21世紀最初のワールドカップであり、アジアでの初のワールドカップは、王国ブラジルが史上最多となる5度目の優勝で幕を閉じた。この大会のブラジルはお世辞にも組織が機能していたわけではないが、3Rと呼ばれたロナウド、リバウド、ロナウジーニョの前線、さらにはカフー、ロベルト・カルロスの両翼という圧倒的な個の力による破壊力で他チームをねじ伏せる結果となった。
一方、今大会は「波乱の大会」と呼ばれた通り、前回優勝のフランスを皮切りにアルゼンチン、イタリアなど優勝候補が早い段階で次々と敗退となっていた。代わりに韓国、トルコ、セネガル、アメリカといったこれまで実績の無かった国が上位に躍進したのも特徴的だった。準優勝したドイツにしても世代交代の過渡期にあり、大会前の評価はさほど高くなかったが、世界No.1のGKと言われたオリバー・カーンの活躍と組み合わせに恵まれたこともあってファイナルまで進出した。
開催国となった日本と韓国も自国のチームが初めて決勝トーナメントまで進出したこともあって、大会中は熱狂の渦に包まれていた。日本では、イングランドの貴公子デイヴィッド・ベッカムが注目の的となり、女性層のみならず当時の彼のヘアスタイルを真似る若い男性が多く現れた。その後はトルコのイルハン・マンスズに女性ファンが急増し、女性週刊誌やワイドショーで頻繁に特集が組まれた。
一方で大きな問題となったが、疑惑の判定とされる誤審である。特に韓国が金星を挙げたベスト16のイタリア戦では、韓国の度を超えたラフプレーに対して警告どころかファウルも取られず、さらにはイタリアのフランチェスコ・トッティが不可解なシミュレーションの判定で退場となるなど韓国に有利な判定が相次ぎ、この試合の主審を務めたバイロン・モレノが韓国から買収されたという疑惑が持たれている。ちなみに、このモレノ主審は後に国際審判リストから除名され、2010年に麻薬の密輸で逮捕された曰く付きの人物である。ベスト8の韓国とスペインの試合でも2度に渡ってスペインの得点が取り消される不可解な判定が下され、こちらも主審の買収が疑われている。FIFA FEVER FIFA創立100周年記念DVD』に収録されている「世紀の10大誤審」では、この大会で起きた誤審が半数を占めている。
2002年ワールドカップの日本代表
地元開催ということで予選が免除された日本代表は、1999年のワールドユースで準優勝するなど年代別の大会で活躍した「黄金世代」がチームの中心となり、4年間強化が進められていた。アンダー代表も兼任していた監督のフィリップ・トルシエが導入したシステマチックなサッカーに批判の声が集まり、強豪相手の親善試合で大敗するなど直前まで不安視する声はあったが、中山雅史、秋田豊というベテランが直前に復帰したこともあってチームはまとまるようになり、いい準備ができたうえで大会に入ることができた。
ロシア戦で歴史的な初勝利を飾るなど、2度目の出場で初のグループリーグ突破を果たし、ホスト国としてのノルマを達成することができた。稲本潤一がベルギー戦、ロシア戦と連続して貴重なゴールを決めるなどラッキーボーイ的な存在となり、日本代表の快進撃に日本中が熱狂。特に第2戦のロシア戦での日本国内の平均視聴率は66.1%という驚異的な数字を残している。
しかし、日本サッカー界にとって未体験ゾーンである決勝トーナメントのトルコ戦では、トルシエがメンバーとシステムをいじってきたことが裏目に出たこともあり、実力を発揮できないままに敗戦。どこか不完全燃焼という印象を残して大会を終えることとなった。
関係者の声
- ベルギー選手「日本と同じグループなのに、どこへ行っても応援してくれる。信じられない」[8]
- イヴァン・エルゲラ「2002年W杯の韓国4強は審判のおかげ」[9]
- マルディーニ「韓国という国は、俺たちにできる限りの嫌がらせをしてきた。丘の上にある辺ぴなホテルは本当に汚いし、練習場のピッチは狭く、ロッカールームもない。日本では、すべてがしっかりと組織化され、仙台市民は熱烈に歓迎してくれたというのに」[10]
- 李天秀「(イタリアとの16強戦でマルディーニの頭に蹴りが入ったのは)チームが負けている戦況を逆転させるために蹴った」[11]
- スコールズ「韓国はW杯開催してはいけない馬鹿な国」[12]
- モンテッラ「はっきりと悟ったよ。このスタジアムでゴールを決めるのは無理だと。あんなにも露骨な判定を繰り返して勝とうとする国。その汚れた思惑に怒り、涙を流すチームメイトもいた」[13]
- ジーコ「不可解な判定はいずれも韓国が一番苦しい時間帯に行われた。これはもう偶然とはいえない。言っていいはずがない。」[14]
- ダビド・シルバ「スペインサッカーが不当な苦しみを味わったことを思い出すよ。2002年の日韓ワールドカップ、韓国での予選敗退はすべてが不公平だった。」[15]
- カシージャス「02年W杯の韓国戦は恥ずべき戦い。審判が相手を後押しし、誤審が存在した」[16]
- ゼップ・ブラッターFIFA会長「2002年韓日ワールドカップの時、MJ(鄭夢準)が審判を買収して(韓国が)4強まで行った」(鄭夢準談)[17]
関連動画
関連項目
脚注
- *「ザ・スフェリックス」『デジタル大辞泉プラス』2010/11/05、小学館。
- *Ikwunze, Ejikeme『WORLD CUP (1930-2010)』Xlibris Corporation、ISBN 9781479746361、p. 54。
- *フジテレビ/FNNスーパーニュース 2002年6月25日 5:55
- *TBS/筑紫哲也NEWS23 2002年6月25日
- *김상기. “악명 떨치는 한국 축구팬”…비매너 증거 모음집 日 집중거론. 쿠키뉴스, 2011.09.29 10:26
- *AP通信配信「South Korean fans will taunt Italians with memory of 1966 loss to」『CNNSI.com's complete coverage of the FIFA World Cu』2002年6月17日11:48
- *Ryall, Julian「South Korea scores huge upset」『The Japan Times』2002年6月20日
- *「W杯報道 日本イメージ一変」『読売新聞』2002/06/11朝刊
- *新川悠「スペイン元代表「02年W杯の韓国4強は審判のおかげ」、韓国で物議」『サーチナ』2010/06/05 13:27:09
- *「PSYが伊で大ブーイングの理由」『日刊サイゾー』2013.05.29
- *이병구「이천수 자서전 "사이버 전쟁"」『중앙일보』2002年8月13日15:32。
- *「英国代表発言「韓国はW杯開催してはいけない馬鹿な国」」『中央日報』2003年12月25日17時00分
- *「PSYが伊で大ブーイングの理由」『日刊サイゾー』2013.05.29
- *ジーコ「誤審が快挙を判定勝ちにした」『日刊スポーツ』2002年6月23日。
- *「D・シルバ:「プレミアで成長した」」『Goal.com』2011/09/05 4:37:00. 記事元:「Silva: "Estamos disfrutando de una buena generacion」『AS.com』2011年9月4日14:01
- *エンリケ・オルテゴ / 江間慎一郎「スペイン代表カシージャスの回想「02年W杯の韓国戦は恥ずべき戦い。審判が相手を後押しし、誤審が存在した」」『フットボールチャンネル』(株)カンゼン、Yahooニュース配信、2014年06月10日
- *「韓国の元FIFA副会長が「トンデモ発言」 日韓W杯の韓国躍進は「審判買収」したから?」『J-CASTニュース』2014/6/5 18:07. 記事元:「정몽준 “월드컵 심판 매수설 돌 정도로 내 능력 괜찮아” 발언 논란」『쿠키뉴스』
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