AAV7(Assault Amphibious Vehicle,personnel.model7:水陸両用強襲輸送車7型。AAVP7とも)は、アメリカ合衆国で開発された装甲兵員輸送車である。最大の特徴は水上航行が可能なことである。
アメリカでは同様の水陸両用車に伝統的に呼ばれるアムトラックという愛称が使われている。
概要その前に
装甲兵員輸送車には橋が落とされた河川の突破のために浮航性を備えていることはよくある。そういった装備は手間のかかる事前準備が必要であったり、水上航行に適した形ではないがゆえに航高性能は大したことがないことが多い。要するに、こういった車両の水上航行能力は緊急時のためのオマケに近い。
しかしAAV7の場合は違う。見るからに船に近い形状をしており水上航行を主眼においていることがよくわかる。
では、このAAV7の水上航行能力が何のためにあるかというと河川を渡るためではなく、海上の揚陸艦から発進し敵勢力化海岸へ兵員を送り届け、場合によっては上陸後の支援を行うためにある。
太平洋戦争では日本軍と米軍は東南アジアでまさしく島を奪い合う戦いをしていた。
このとき上陸用の水陸両用車として注目されたのが水陸両用トラクター、LVTである。
ドナルド・ローブリングが開発した、もともと災害救出用の湿地突破用トラクターのアリゲーターがアメリカ海兵隊に目に留まり、改良が施したのがLVTである。
LVTは当初単なる輸送作業に使われていたが、これがタラワ攻撃にて上陸作戦に上陸用舟艇と一緒に使われたのだ。
そしたらこれが大当たり。
上陸用舟艇が堅固なサンゴ礁に引っかかって進めなくなり、日本軍の攻撃の下を歩兵が胸まで浸かる海を海岸まで徒歩での進軍をしなければならなかったのに対し、LVTはキャタピラを持ち合わせているためサンゴ礁を突破し歩兵を海岸まで送り届けられたのである。
終わってみればLVTは防御力の欠如で少なくない被害を出したものの、海を徒歩で渡らなくてはならなかった上陸用舟艇組と比べたら歩兵の損耗も火器の投棄も圧倒的に少なかったのである。
こうしてAAV7まで連なる上陸用の水陸両用装甲車の系譜が作られることになったのである。
ホバークラフトを利用した新世代の上陸用舟艇、LCACが運用されている現在でも、ある程度の装甲を持ち敵勢力化の海岸への上陸作戦を行える有用性は高く、今後もこのカテゴリーは運用され続けることになるだろう。
概要
AAV7はベトナム戦争にて防御力の少なさやガソリンエンジンの燃えやすさであんまりいい評価のないLVTP5 (LVT5)を置き換えるべく開発された。 もともとはLVTP7というものであり、1970年代後半にこれにいろいろな改良(後述)を行い、LVTP7A1が正式採用された。 そして1985年に制式名をLVTP7A1からAAV7A1に改め今に至る。
AAV7は車体はアルミ合金製の溶接構造となっている。エンジンは燃えにくいディーゼルエンジン。
運用は3名で行い、車体後部の輸送スペースに25名の兵員または4.5tまでの貨物を積載できる。
操縦席右側に砲塔が装備されており、ここにA1型の改修車以前はM85 12.7mm機関銃一丁、A1型の改修車はMk19 自動擲弾銃とM2 12.7mm重機関銃を装備する。
操縦席後方は車長用のキューポラとなっている。
水上航行は車体後部左右に一基ずつ備え付けられたウォータージェットで推進を行う。ウォータージェットを使用した場合最大で13km/hの速度で航行が可能となっている。
仮に故障などでウォータージェットが使用できない場合は水中でキャタピラを動かすことでも進むことができるが、その場合航行速度は最大7.2km/hとなる。
AAV7の欠点は、装甲兵員輸送車としてみた場合の防御力の少なさである。
浮航性を得るにはどうしてもアルミ合金製の装甲板を採用せざるを得ず、素のままの防御力は7.62mmに耐えるレベルでしかない。またアルミ合金であるがゆえに高熱などにも弱い。
こうした問題に対処するため増加装甲キットも開発されている。
現在アメリカで各型合計1300両以上が運用されているほか、イタリアやスペイン、韓国に台湾などの国で運用がされている。
日本でも島嶼防衛能力を向上させる一環として、平成25年度予算から試験用として配備が始まり最終的には自衛隊版海兵隊『水陸機動団』向けにA1通常型、後述するC7、R7と併せて58両が配備される予定。
バリエーション
- LVTP7:初期型
- AAV7A1(LVTP7A1):発電機や電子機器の更新、銃塔への発煙弾発射器追加、乗員用暗視装置のパッシヴ化、これらの重量増対策と車高低減のためのサスペンション改良を行ったモデル
- AAV7A1(改修型(仮)):上のAAV7とは型番や表記上の違いは無いが、銃塔の更新、14.5mm弾まで耐えられる増加装甲キット(車体側面の波型のアレ)を装着できるようにする、車体前面に航行能力を上げる折りたたみ式波切り板の装備を行ったモデル
- AAV7A1(2次改修型(仮)):こちらも表記上は違いは無いが、400馬力だったエンジンをM2ブラッドレーと同じ525馬力のディーゼルエンジンに交換
- AAVC7:無線機増設を行った指揮車両型
- AAVR7:クレーンを装備した回収車型
後継車両
海兵隊は十数年前から後継車両の開発をしてきたが、モーターボート並のハイスピードで洋上を疾走させるなどという非現実的なスペックを欲張った為にとても計画内の予算・期日では仕上がらず、ゲーツ国防長官時代に計画が中止された。海兵隊は2020年には装輪式(8×8)のACVという水陸両用強襲車両を持ちたいと計画している。2015年にBAEにプロトタイプが発注されている。[1]
関連動画
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関連項目
脚注
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