AWACS(えーわっくす:Airborn Warning and Control System 早期警戒管制機)とは、大型の全周囲レーダーを用いて敵の捜索・追尾を行うと同時に、友軍機の指揮管制を行う航空機の一種である。
概要
AWACSはAEWに比べ大幅に管制能力を増やした機体である。搭載しているシステムに大きな違いはないが、AEWであるE-2Cでは機上管制員が3名搭乗するのに対し、AWACSであるE-767では指揮官以下20名(うち操縦士2名)が搭乗可能で、ほぼ地上の警戒管制組織を代替することが出来る。[1]
警戒レーダーのみならず管制機材・人員も搭載し長時間飛行する必要性から、大型の輸送機または旅客機をベースとしていることが多い。
AWACSは、機体上部にあるレーダーを使用して航空機の位置・機種等を特定し、その情報を友軍に伝える他、発展した運用の場合友軍の位置を一度中継して友軍内で情報を共有するといった戦術も可能である為、現代の空中戦において必要とされる情報処理能力を格段に向上させる。
また、地上の警戒管制組織が損害を受けたときの代替機能ももつため、一国の航空戦力全体の抗堪性を高めることも期待できる。
大型の機体に電子機器を大量に搭載しており、現代の軍用機としてはもっとも高コストな部類に属する。そのため採用している国は多くなく、現在アメリカ、日本、ロシア、中国、NATOなどで運用されている。
最近はAEW&Cと呼ばれる機体も出てきているが、これはAWACSとAEWの中間的な存在ということだろう。
AEW(Airborne Early Warning:早期警戒機)
AEWが誕生したのはWW2終了直前。アメリカ海軍の空母艦載機で艦隊防空システムの一環として早期警戒機の概念が誕生した。これは艦艇レーダーでは(地球は丸いので)水平線より向こう側、あるいは低空、地形上の影になるような場合の目標発見について、より高い空の上からレーダー搭載の航空機で見張らせることが必要のため。太平洋戦争後半、日本軍の特攻機攻撃対策でもあったレーダー搭載駆逐艦を艦隊輪形陣の端に置くレーダー・ピケット艦を航空機に置き換えたのが始まり。データリンクが実用化しつつあったのも遠因にある。
WW2以後、航空機がジェット時代になるとより一層艦隊防空が難しくなっていた。ミサイルが実用化される一方、核攻撃により被害が甚大化することを踏まえての流れでもあった。つまり敵攻撃を察知できるように輪形陣を大きくとれば空母まで攻撃される時間を稼げるが、艦隊の防空力が低下。その反対も…というわけで、レーダー小型化の動きに合わせて、航空機でより高いところからレーダーで監視しようという流れであった。
余談だが、1950~60年代、アメリカは核攻撃やソ連軍の対艦ミサイル飽和攻撃に対して空母が脆弱であるということでかなり右往左往していたのも事実。アメリカ海軍の解答がE-2、F-14とフェニックスミサイルを使った艦隊防空能力強化で、最終的にはイージス艦にまで行き着くことになる。またフォークランド紛争でも早期警戒機の重要性が認識され、イギリス海軍はAEWの任務を持たせたヘリを艦隊前衛に配置する形となる。AWACSとの違いは航空指揮管制能力の有無で、AEWであるE-2Cは限定的な管制能力のみをもつことになる。派生型としてAEW&Cもあり、その明確な区別や基準などはないが、機体サイズが可能にする管制能力の多寡が基準と思っていいだろう。
AWACS/AEW&Cの例
- E-3
- E-767 - ベース機体はB767。日本で4機が運用されている。
- E-7 - ボーイング737-700をベースにノースロップ・グラマンのAESAレーダーを搭載している。航続時間10時間、操縦士2名、管制員6~10名。
オーストラリア空軍が「ウェッジテイル」と名付けて運用している他、韓国、トルコ、イギリスで採用されている。アメリカ空軍は2020年に、NATOは2023年にE-3の後継としてE-7を選定している。 - サーブ2000 AEW&C - ベース機体はサーブ2000ターボプロップ旅客機。パキスタン空軍で採用。
- EMB145 AEW&C - ベース機体はエンブラエルERJ-145ジェット旅客機。ブラジル、ギリシャ、メキシコで運用。
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
- 軍事 / 軍事関連項目一覧
- 軍用機の一覧
- E-8 J-STARS (地上向けAWACS)
- スカイアイ/サンダーヘッド/オーカ・ニエーバ/ゴーストアイ/イーグルアイ/スカイキーパー/バンドッグ/ロングキャスター(ACE COMBATシリーズに登場するAWACSのコールサイン)
脚注
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