AZIKとは、拡張ローマ字入力、つまり普通のローマ字入力を拡張した日本語入力方式である。
概要
AZIKは、一般のローマ字入力のキー配列をそのままに、日本語によく出てくる文字列(読み)を2~3ストロークで打てるようにし、さらに打ちにく いパターンの互換キーを提供するものです。今あなたが馴染んでいるローマ字打鍵に、ほんのすこしの工夫を加えるのですが、このささやかな一歩が、あなたと キーボードのつき合いを大きく変えてくれるのです。
次のようなことを経験された方には特にお勧めします。
以上、AZIK考案者の解説サイトより引用。
要するに、「普通のキーボードでローマ字入力するのって非効率だけど新しい入力方式を1から学ぶのもアレだから、ローマ字入力を拡張して入力を速くかつ簡単にしてやろう」というものである。
そもそもどの辺りが「拡張」なのか
- 「っ」と「ー」のための専用キー割り当て
- 撥音(「ん」のこと)や二重母音(「あい」とか「おう」とかその辺)、その他頻出イディオムのための入力キー割り当て
- 入力を楽にするための互換キー割り当て
- その他こまごましたものの割り当て
順に解説していく。以下キーボードレイアウトはQWERTY配列と仮定する。
1.「っ」と「ー」のための専用キー割り当て
AZIKでは、「っ」を入力するために「;」キーを、「ー」を入力するために「:」キーを利用する(ーは元のキーでも入力できる)。つまり例えば「あっと」→「a;to」などといった感じになる。これだけだと正直みみっちい感じがしなくもないが、AZIKの本気はむしろこれからである。
2.撥音や二重母音、その他頻出イディオムのための入力キー割り当て
日本語の特徴として、特定の母音の後に別の母音が続きやすかったり、母音の後に「ん」が来るパターンが意外と多い。そこでAZIKでは、こいつらを簡単なキー操作で出せるようにしてしまおうという、正直我々一般人では思いもつかないような発想に至った。
撥音拡張
「~ん」というパターンを入力する時は、ローマ字の2ストローク目の母音キーの代わりに、その母音キーの下のキーを使う。例えば、「かん」と入力したい場合は、「kann」→「kz」(zはaの下にあるよね)となる。ほら、もう入力キー数が2つも減ったよ!!
……「だからどうした」という声が聞こえるが、このように、この手の「~ん」というパターンは文章中で結構な数があるので、Googleの検索窓に入力する程度の流さでは価値を実感しにくいかもしれないが、こと長文を入力する際にはかなり生きてくる。以下同様に、「きん」→「kk」、「つん」→「tj」、「めん」→「md」、「どん」→「dl」などといった入力キーとなる。「『きん』が『kk』だったら『っ』が入力できねーじゃねーかどーすんだ」などということも、1つ目の拡張に「っ」を入力する方法がしっかり定められているから問題ない。以上をまとめる。
機能 | キー | 覚え方 |
ann | Z | Aの下 |
inn | K | Iの下 |
unn | J | Uの下 |
enn | D | Eの下 |
onn | L | Oの下 |
また、「あん」や「えん」などといった母音+「ん」の形はどうするかと言うと、なんと「q」キー1つで「ん」が入力できるので「いん」→「iq」となる。実に便利。(もちろん普通にnnでもちゃんと「ん」は出ます)
二重母音拡張
AZIKでは、「~aい」、「~uう」、「~eい」、「~oう」という4つの形の二重母音入力に対して、これを即入力するショートカットが可能である。この入力のためには、原則として対応する母音キーの(下以外の)すぐ近くのキーを使う。面倒なので表を引用する。
機能 | キー | 覚え方 |
ai | Q | Aの上隣り |
uu | H | Uの斜め下隣り |
ei | W | Eの左隣り |
ou | P | Oの右隣り |
例:「かい」→「kq」 「むう」→「mh」 「べい」→「bw」 「ぞう」→「zp」
※さっき「q」は「ん」になるとかいう話をしたが、それは何も子音が入力されていない時の話
まあ要するに、2つのキー分の労力を1つにしてくれる便利屋になる。さっきの撥音拡張と合わせると、「東海道新幹線」が「tpkqdpskkzsd」になる。普通のローマ字入力だと「toukaidousinnkannsenn」。かなり短くなったのがお分かりいただけたであろうか。
あ、普通に「あい」とか「えい」とか打ちたい時には残念ながら普通に「ai」とか「ei」って打たないと駄目なのです。まあ元々2打だし我慢しろ。
特殊拡張
これ以外の、日本語の文章中によく出てくる2文字集のうち、以下のものがAZIKの入力キーとして登録されている。ただこれらは妙に多い上に、覚えにくい。そのためAZIKでもこれらのキーはサブセットとして扱っており、積極的に覚えるものではないとしている。AZIKのこれ以外の部分をマスターしてから手をつけるべきものである。
KT | こと | ST | した | TT | たち | HT | ひと |
WT | わた | MN | もの | MS | ます | DS | です |
KM | かも | TM | ため | DM | でも | KR | から |
SR | する | TR | たら | NR | なる | YR | よる |
RR | られ | ZR | ざる | MT | また | TB | たび |
NB | ねば | BT | びと | GR | がら | GT | ごと |
NT | にち | DT | だち | WR | われ |
3.入力を楽にするための互換キー割り当て
皆さんは普通にローマ字で入力していて、「この文字打つの指の移動が変で面倒」という入力パターンはないだろうか。「にゅ」とか「ぎゅ」とか「ざ」とか。これらのパターンがキー入力の速さを落としているために、非常にもったいないことになっている。QWERTY配列滅びろ。そんな訳で一部の人はDvorak配列キーボードに逃げたりもしているが、AZIKを使えばQWERTY配列のままでこの問題に対処することができる。つまりキーボードの刻印を無駄にしないで入力のストレスから解消される。
Y
この面倒な入力の原因の1つは、「ゃゅょ」を入力するための「y」である。これとの兼ね合いで入力しにくいキーは多いので、AZIKでは「ゃゅょ」の入力に使うための「y」は「g」で代用できるというルールがある。つまり、「にゅ」→「ngu」、「ぎゅ」→「ggu」、「みょ」→「mgo」など。実際に打ち比べて通常のローマ字入力と比べての圧倒的打ちやすさを実感して欲しい。
あくまで「代用」なので、普通に「y」を使っての入力もできる。また、上で述べた拡張を同時に使用することももちろん可能なので、もう「にゃんにゃん(ngzngz)」とか「みょん(mgl)」とか「うにゅー(ungu:)」とかの入力に煩わされることなく嫁娘談義ができるのである。
Z
同様に鬼門のキーであるのが「z」。使用頻度がそこまで低くないのに、左手小指という右利きの人間にとっては最も使いにくい指でかつ、近くにある「a」、「e」という母音が激しく入力しにくいという打鍵速度を遅くする名人である。困ったことにこの「z」、上で書いたAZIKの撥音拡張(aんに割り当てられている)でより頻繁に使用することとなる。そのため「却って遅くなるじゃねーかこの駄入力方式が!!」と怒りたい気持ちは考案者もよく理解していらっしゃるので、これにも代替キーが用意されている。
まず左手用「aん」の互換キー。簡単に言うと、「左手で打たなきゃいけない子音の「aん」のためのキーは「n」にしよう」という、なんか付け焼刃感がなくもない代用方法。だがこれで「aん」の入力速度は劇的に改善する。
だん | DN | さん | SN | わん | WN | らん | RN |
がん | GN | ざん | ZN | たん | TN |
次に、その他の「z」で打ちにくいキーの互換。特に説明することはないと思うので、元の入力方法と比べて簡単になっていることを確認して欲しい。
ざ | ZC(ZA) | ざい | ZV(ZQ) |
ぜ | ZF(ZE) | ぜい | ZX(ZW) |
その他打ちにくいもの
その他にも、元々のローマ字で打ちにくかったもの、AZIKの拡張キーのうち打ちにくいもので、以下のような互換キーが設定されている。ほとんどの物が、打ちやすい位置にあるにも関わらず使用頻度がかなり低い「f」を使用しているのがポイントである。
き | KF | じゅ | JF | ふ | HF |
ゆ | YF | む | MF | ぬ | NF |
で | DF | ちぇ | CF | ぽん | PF |
わい | WF | さい | SF | せい | SS |
「しゃ行」と「ちゃ行」
AZIKでは、「しゃ行」と「ちゃ行」の入力はそれぞれ子音「x」と「c」で代用できる。
シャ | XA | シュ | XU | ショ | XO |
チャ | CA | チュ | CU | チョ | CO |
前述の撥音拡張や二重母音拡張はこれにも適用される。
例:「集中」→「xhch」、「新春シャンソンショウ」→「skxjxnslxp」など。
4.その他こまごましたものの割り当て
だいたい外来語専用の何か。パターンとしては、「元の子音」+「一個下のキー」+「元の母音」。
ウォ | WSO | ティ | TGI | ディ | DCI | トゥ | TGU | ドゥ | DCU |
以上、何か質問は?
そもそもAZIKを導入する方法は?あとAZIKの利点ばっかじゃなくて限界とかもあるだろ?
導入方法
Windowsプラットフォームの主要IMEで使用する方法について述べる。MacとかLinuxとかは自分でググってください。(Macは記事作者がよく知らないため。Linuxを使う程度の猛者なら自分で調べるだろう)
まあぶっちゃけどのIMEでもしこしこキーマップを登録すればいいんだけどね!!(ただしもちろんMS-IMEだけは取捨選択する必要がある)。AZIKしようと思っててATOK持ってないならGoogle日本語入力がオススメ。
AZIKの限界
まあQWERTY配列を無理矢理使ってる時点でどうしても入力しにくいキー順は出てきてしまう訳で。それにローマ字入力から自然に出てくるとは言え、導入にある程度の学習コストがかかるのは否定できない。「試してみたけど入力が速くならん!!」という苦情は一切受け付けないのでそのつもりで。
あとは記事作者が使ってみて意外と不便だったのが、「ミスタイプのせいで変な日本語が入力される率が上がる(組合せが増えたから)ので、ミスった時の時間のロスが結構ある」ということ。まあこの辺りは努力でなんとかなるでしょう。
関連項目
外部リンク
- 本家ページ
Wikipedia AZIK削除済み記事
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