ASIMOとは、本田技研工業によって開発された人型ロボットである。
本項では同社による一連のヒューマノイド・ロボット開発についても述べる。
概要
自動車やバイク等、従来の「車輪」とは異なるmobility(移動性)にはまだまだ開拓の余地があるのではないか、という考えから、1986年より二足歩行機構の開発が開始された。この計画は秘密裏に進められ、事実1996年のP2発表まで正式な表明は無かった。
歴史
1986年、上司から「アトムを作れ」と言われた開発チームはその数ヵ月後に実験機E0で静歩行(身体の重心が常に足裏に入るような歩行)を実現。歩行速度は0.5km/h程であった。
その後チームは医学書や整形外科医のアドバイスを基に研究を進め、E1やE2、E3を動歩行させることに成功する。またE4からは足裏にスポンジやゴムを仕込み、それまでの地面の凹凸に弱いという弱点を克服した。
同時期には新たな姿勢制御システムが採用された。すなわち、「倒れそうになったら踏ん張る」という従来の姿勢制御から、「倒れそうになったら踏ん張り、それでも駄目なら倒れる方向に向かって加速する」というものになった。これによってE5、E6は数cmの段差や2~3度の傾斜の上を歩くことができた。
1993年からは機体名称を『Prototype Model』に一新。1996年12月P2がベールを脱ぎ、世界初の動歩行人間型ロボットとして世界に衝撃を与えた。翌年9月には小型化を進めたP3を発表。この機体は通商産業省(現経済産業省)が進めていた『人間協調・共存型ロボットシステムプロジェクト』(通称HRP)のプラットフォームとしても活躍した。
2000年11月、子供並に小型軽量化したASIMOを発表。正式名称は『Advanced Step in Innovative Mobility』(新しい時代へ進化した革新的モビリティ)であるが、実際は『脚』と『明日』、『モビリティ』からきているという。
同機は今までに何度かヴァージョンアップされており、2011年に3代目が発表された。この最新型モデルは従来モデルと比較して全体的に丸みを帯びたデザインとなり、重量も従来型から6kg軽減、走行時の最高速度が時速6kmから9kmに向上した。(自律歩行による走行の実現の困難さについてはウィキペディアなどを参照。"高速の歩行"と違い、"走行"では一瞬両足とも浮いてしまうため、バランス制御が非常に難しい)。
また、従来型よりも脚力のアップや脚の可動範囲を拡大したことに加え、動作中に着地位置を変更できる新たな制御技術を取り入れたことで、歩行や走行、バック走行、片足ジャンプ(ケンケン)、両足ジャンプなどを連続して行えるようになった。
この技術によってより俊敏に動けるようになった結果、凸凹のある路面でも安定姿勢を保って踏破するなど、変化する外部の状況により柔軟に適応できるようになった。
作業機能も向上しており、手のひらに接触センサーを、また5指それぞれに力センサーを内蔵し、視覚と触覚を合わせた物体認識技術と組み合わせることで、例えばビンを手に取ってふたをひねる、液体が注がれる柔らかい紙コップを潰さずに把持するなどの器用な作業を行うことが出来るようになった。
さらに、視覚センサーと聴覚センサーを連動させ、顔と音声を同時に認識することで、人間では難しい、同時に複数人の発話を聞き分けることが可能となった。
2011年11月現在 体重48kg、身長130cm、歩行速度は、通常歩行時:0~2.7km/h、直線走行:9km/h。
2022年3月末にホンダ本社で最後の実演を行った。引退後も関連商品の販売やイベントでの展示は続ける。[1]
逸話
最初の完全自立型人型二足歩行ロボットであるP2発表を前にして開発者が危惧したことが欧州を始めとするキリスト教圏での人型ロボットに対する反応であった。これは欧州で車の生産・販売のビジネスを行うホンダにとっても無視できない問題であった。そこで、開発者はP2の公式発表前にヴァチカンのローマ教皇庁を訪ねて人型ロボットに対する見解を聴くことにした。
応対したローマ教皇庁の司祭の回答は、「(ホンダがロボット)P2を作られたことは、神がせしめたこと。それもまた神の行為のひとつ」というものであり、これによりヴァチカンのお墨付きを得たホンダは無事P2を発表するに至った。
スペック
ASIMO(2011年11月時点)
- 全長:130cm
- 全幅:45cm
- 奥行:34cm
- 重量:48kg(従来比 -6kg)
- 歩行速度
- 通常歩行時:0~2.7km/h
- 把持運搬時:1.6km/h(運搬重量1kg)
- 直線走行:9km/h(従来 6km/h)
- 旋回走行:5.0km/h(旋回半径2.5m)
- 把持力:0.3kg(片手)、1.0kg(両手)
- 関節自由度
- 使用可能言語
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関連項目
脚注
- *人型ロボ「アシモ」引退 ホンダ本社で最後の実演 2022.3.31
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