「Cross Of Iron」(クロス オブ アイアン)とは、サム・ペキンパー(Sam Peckinpah)監督の、1977年公開の戦争映画である。邦題は『戦争のはらわた』。
あらすじ
1943年のロシア・タマン半島。スターリングラード攻略に失敗したドイツ軍はソビエト軍の反攻に押し戻されていた。
下がる一方の士気、悪化する戦況。だがそんな中で確実に任務を果たし生還する偵察小隊の隊長がいた。シュタイナー伍長である。勇猛果敢に戦う彼に対する信頼は厚く、授与された勲章も数多い。その中には鉄十字勲章もあった。しかしシュタイナーはこの「只の鉄片」と、これに群がる無能な将校たち――シュタイナー自身に好意的な者も含めて――を憎んでいた。
一方、そのころ新しい指揮官が南フランスから着任する。シュトランスキー大尉である。鉄十字勲章獲得の「名誉欲」と部下を支配するという野心に燃え、朗々とドイツの理想的な軍人精神を説くシュトランスキー。しかしその「演技」を見抜かれ、精神主義など無意味とブラント大佐に一喝されてしまう。
プロシア貴族としての責任ゆえ鉄十字章にこだわり、戦死者の手柄まで横取りしようと焦るシュトランスキー。
「只の鉄片」にこだわり続ける上官を軽蔑するシュタイナー。
日増しに強大になる敵よりも、さらに無慈悲で危険な「敵」との激しい戦いが、始まるのだった。
戦争映画としてのポジション
西部劇映画で有名な、サム・ペキンパー監督の12作目の本作は、監督自身にとって初めての本格的な戦争映画である。これ以前にもペキンパー作品には『ダンディー少佐』のように軍人の登場する映画が制作されていたが、これは戦争映画にジャンルわけされる性格のものではなかった。
この作品以前のアメリカ戦争映画には、ドイツ軍人が「人間」として描かれるケースは殆どと言っていいほどなく、例外的にエルヴィン・ロンメル元帥のような反ナチス的な人物が、「敵ながらあっぱれ」というスタンスで描かれるケースがあっただけである。本作のように「名もなきドイツ軍人のドラマ」として、イデオロギーやドイツ人に対する偏見抜きで描かれた戦争映画は皆無であった。
「日本兵もドイツ兵もアメリカ兵も、兵士は兵士、みんな同じさ」
(インタビュアーの「心優しい映画でした」の発言に)「……いや、悲しい映画です……とても悲しい……われわれみんなにとって……」
(『キネマ旬報』1977年3月下旬号 サム・ペキンパー監督インタビューの発言より)
キャスト
主な登場人物
- ロルフ・シュタイナー伍長(のち曹長)・・・・・・ジェームズ・コバーン(James Coburn)
- シュトランスキー大尉・・・・・・マキシミリアン・シェル(Maxmilian Schell)
- キーゼル大尉・・・・・・デビッド・ワーナー(David Warner)
- オーベルト・ブラント大佐・・・・・・ジェームズ・メイソン(james Mason)
- 従軍看護婦・ハンナ・・・・・・センタ・バーガー(Senta Burger)
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