ENGとは、テレビ番組の素材を収集するシステムである。
現在では、小型のカメラ、ハンディーカムを用いた取材方法を主に指す。要は会見場の取材をニュース映像として映しているカメラマン、アレなどである。
概要
放送業界においてENGとは、"electronic news gathering" (直訳で「電子取材」)の略である。つまり「電子的な記録方式の撮影・記録機器を用いたニュース取材」を意味する。また、そこから派生して現在では「小型の動画用カメラ、ハンディーカムを用いて取材すること」を主に指す放送業界用語ともなっている(後述)。
アメリカの CBSテレビにより1972年に導入されたのち、日本では1970年代から1980年代にかけ導入され始めた。テレビ放送が始まって以来、取材はカメラマンが16ミリフィルムカメラを持って現場に行き撮影する手法が採用されていた。16ミリフィルムカメラは小型で狭い現場に持ち込める一方、編集に時間がかかり、カラーだと高価になることが難となっていた。そこで1960年代に、ビデオカメラとビデオテープレコーダーを使った方式が開発され、小型化に従って導入が広まりだした。
この取材方式はニュースやバラエティー番組のロケ、インタビューなど、様々な場面で使われるようになっていった。ENGは速報性に長けた取材方法であるだけでなく、重大なイベントや事件・事故で行われる報道合戦で編集の時間を不要とし、時には生中継することで、フィルム取材では得られない速報性をニュースの現場にもたらした。
収録であれば、2000年代に入るとDVカムやHDカムなどのテープフォーマットだけでなく、SDカードなどの記録メディアも使われるようになり、レンズ以外のデジタル化が進んだ。生中継でENG取材を行う際には、中継車を用いることがあるが、近年では電話回線やインターネット回線を用いた伝送が行われる。
ENGの最小構成は、ハンディーカメラ、三脚、カメラマイクの3つに加え、それに随じて必要になるケーブル類である。しっかりと音を録音する場合、現場やプロダクションによってはこれにピンマイクやガンマイク、ミキサー、照明が加わる。ENGの取材機材をひとくくりにENGシステムと呼ぶこともある。
ENGシステムの小型化は、現場で女性が進出できるようになっただけではなく、狭い場所でも取材できるようになる、機材者がいらなくなるなどの移動の最適化につながった。また、外で取材することの多いENGでは雨風や温度や湿度の変化が激しい場所にも耐えられるように劣悪な環境下でも正常に動作することが必要である。逆に言えば、取材する側の人間はその劣悪な環境に取材することになっても耐えなければならず、生きて帰らないといけないともいえる。
派生した意味として「ハンディカメラで取材すること」を特に指す業界用語ともなっている。現在のほぼ全てのニュース動画取材はハンディカメラであるかどうかに関わらず電子的機器を用いているため、「ハンディカメラでの取材」のみを指したこの用法はやや原義からは外れている。これはおそらく「ハンディカメラ取材のときは、フイルムカメラではなくENG」という使い分けがなされていた時代に生まれた用法であろう。その名残として、少し意味がずれた業界用語として残ってしまったものと思われる。
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関連項目
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原義の解説
歴史的経緯の参考となるページ
- 唐原久, ハンディカメラの番組制作への応用, テレビジョン, 30, 6 (1976), 442-449
- 岡田多生(元NHKカメラマン)「NHKカメラマンの追憶──ENG改革の衝撃」 綱町三田会電子版ジャーナル誌「メッセージ@pen」2013年8月号
派生した放送業界用語としての解説
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