IMAXとは、カナダのIMAX社が開発した大型映像向けのフォーマットである。なお五島光学が開発したULTRA70と互換性がある。
概要
1コマあたり70ミリ15パーフォレーションという非常にでかいコマを持ったフィルムを、毎秒24コマで水平方向に動かして上映する。(IMAX HDに至っては毎秒48コマで動かしている)映写機も専用のものが必要で、光源は15000ワット出力の水冷式クセノンショートアークランプを使っている。
何しろ1コマの大きさがブローニーフィルムの67判と同じなので、フィルムの消費スピードが半端じゃない!1000フィートのフィルムを約3分で上映しきってしまうので、1作品あたり40〜60巻ものフィルムを運搬してつなぎ合わせないといけない。最近では配給元からあらかじめ上映用につないだ状態のフィルムが、プラッターに固定された状態でシアターに配給される様になった。これならシアターでいちいち仕込みやばらしをしなくて済む。なおプラッターを交換する際は、専用の運搬機器(電動フォークリフトの様な物)を使って交換する。
このIMAXを使った作品で有名なのは、1970年の大阪万博で上映された「虎の子」。そして最近では「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(IMAX規格にアップコンバートしたIMAX DMR作品)」「君の名は。(同じくIMAX DMR作品。アニメをIMAX化するのは非常に珍しい)」そして大ヒットした「ダークナイト ライジング」など近年のクリストファー・ノーラン監督作品である。撮影では1000巻もの65ミリネガフィルムを消費しまくり(時間換算で約3000分、つまり50時間)、その中から使えるシーンを73分分だけチョイスして12K超ハイビジョンスキャナーでデジタル化し、本編に使用したとのこと。1作品に数百億かけられるハリウッドならではの暴挙である。余談だがこの作品の撮影で、IMAXカメラが2台ぶっ壊れたそうである。あと「RRR」などの大作インド映画も最近はIMAX上映が行われたりしている。3時間が怒涛の展開と超贅沢な環境で過ぎるだけあってこちらも満足度が非常に高い。
IMAX用のカメラはIMAX社でしか貸し出していない。しかも借りる際はIMAX社に作品の企画を通して許可が出ないと、カメラを借りることは出来ない。なお借りる際は3日間の操作講習を必ず受講しないといけないうえに、講習期間もレンタル料金に加算されてしまう。
参考までにフィルムかかる経費は、1000フィートの65ミリカラーネガフィルムが約22万円、ネガ現像と35ミリ縮小ラッシュプリント制作で35万ほどかかる(これらの作業はアメリカのイマジカでしかやっていない。)このためIMAXで作品を作る場合は、最低でも数十億の予算がないとできないと言われている。
本家IMAXカメラ以外に、アメリカのIMAXマニアがガレージファクトリーで開発した「MSM9801」「MSM9802」というカメラもある。ちなみにMSM9801は電源回路に問題があり、長時間使っていると動かなくなるという不具合を持っていたため、MSM9801は電源を改良強化したMSM9802に置き換わったとか。参考までに価格はフルセットで4000万もする。ちなみにレンズマウントはペンタックス67マウントである。(本家のカメラはハッセルブラッドマウント)重量が20キロと軽く(本家のは50キロもある)フィルムのセットアップが非常に単純(スリットにフィルムを落とし込むだけ)なため、本家のカメラを扱ったことがあるスタッフが、装填の容易さに感動したという逸話も残っている。なおフィルムの幅が広いため、ゲート部分で真空ポンプによるバキュームを行ってフィルムをゲートにしっかり吸着させると同時にフィルムを固定する上下各4本のレジストピンが出て、フィルムをしっかりホールドしている。ここまでしないとピンぼけなネガフィルムができてしまうとのこと。(しかもこれを1秒間に24回行うので、結構動作音はうるさい!デジタル一辺倒なカメラマンが、動作音を聞いて驚いたという逸話がある。)
なおデジタル上映の波はIMAXにも襲ってきており、日本国内では4Kレーザー上映している映画館だけになってしまった。フィルム上映をしている映画館は日本にはないので、もしフィルム版IMAXを堪能したいのならば、外国のIMAXシアターへ行くしかない。ちなみにフィルムとデジタルとではスクリーンの対比が違うため、映画館によってはフィルムとデジタル両方の映写機を持っていて、フィルム上映の場合は左右をカットマスクでトリミングして上映するところもある。余談だがフィルム上映でも音声に関してはデジタルサラウンドで流している。初期の頃は35ミリシネテープを同期させて音声を流していた。
関連項目
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