MSA-120とは、U.C.111年10月に行われた『次期主力モビルスーツ開発コンペ』においてサナリィ社のガンダムF90に敗北したアナハイム社の小型モビルスーツ。デザインは藤田一己。
呼称・型番について
資料により「MSA-120」又は「MSA-0120」と記述されている。正式な読み方は不明。一部ファンの間では0120という型番からフリーダイヤルという愛称も使われている。
型番「MSA」といえば過去のアナハイム製の機体(「リック・ディアス改」「」「Sガンダム」「Ex-Sガンダム」「Bst-Sガンダム」「ネモ」「ネモ・カノン」「ネモⅢ」「メタス」「メタス改」「ガンキャノン・ディテクター」「ネロ」「EWACネロ」「ネロ・トレーナータイプ」など)に使われていた番号だが、その年代のものとは数字部分の法則性が違っているように思える。また120といえば漫画『機動戦士ガンダムF90』においてF90が火星のオールズモビル相手に活躍した年代だが、MSA-120がF90とコンペを競い合ったのは111年の事である。
劇中での活躍
ガンダムF90が登場する漫画『機動戦士ガンダムF90』やゲーム「機動戦士ガンダムF91 フォーミュラー戦記0122」にはMSA-0120は一切登場しない。
MSA-0120が登場するのはそれらの前史における設定の中のみである。以前より連邦軍は暴騰する調達費用に喘いでおりMS開発を手がける各社に性能を落とさず小型のモビルスーツを作成するよう命じた。最終的に予備審査を通過したサナリィ社のF90とアナハイム社のMSA-0120がコンペを行い勝者を採用する運びになった。一次審査ではコンピュータシュミレーションで、MSA-0120は最大出力、耐弾性に優ったがF90は運用コスト、機動戦力比に優れ総合評価で高いポイントを得た。続く二次審査ではテストベッド同士による模擬戦が行われ、F90が完勝。これは審査官達に大きな感銘を与えることになった。
後にそのコンペの様子はF90の最新漫画「機動戦士ガンダムF90FF」にて初めて描かれた。当然MSA-0120も登場し一コマだけその姿が確認出来る。
機体外観
ブルーグレーの有機的な外装、そこから伸びた動力パイプと思われる管と繋がったダークグリーンの本体ボディとマゼンタピンクのモノアイととても個性的な外観。パイプ、モノアイ、グリーンっぽい本体カラーと開発担当がグラナダのZIONIC事業部なこともあって先鋭化しすぎたジオン系の系譜と捉えられなくもない。また強いてあげれば背部部分が、同じ藤田一己氏がデザインしたとされるディジェSE-Rに近い。
2011年『機動戦士ガンダムAGE』に登場したアンノウン・エネミー(ヴェイガン)のガフランを見て、MSA-120の外宇宙的技術の息吹を感じさせるフォルムを思い出した方もいるのではないだろうか。
機体兵装、特殊機能
- 「ハイインパクトガン」
- おそらくデザイン画で右手に装備している銃の事を指していると思われる、ミノフスキークラフトを用いた疑似重力兵器。ミノフスキークラフトを搭載したΞガンダムは小説上巻での説明で擬似反重力推進を可能にしたとの記述があるが、ミノフスキークラフトの原理はミノフスキー粒子の立体格子状構造が導電性物質に浸透しにくい性質を応用して空中に浮遊させる方式な為重力を操っているわけではない。なのでミノフスキークラフトを用いてどうやって擬似重力を発生させているかは未だに不明である。後述のF90FFにて初めて使用場面が描かれ、ここではミノフスキー・リバルサー・フィールドの反発力で弾体を加速する疑似重力レールガンであると解説されている。その後の話でリパルサーフィールドはメガ粒子相互干渉で発生すると解説されミノフスキードライブと同じ原理であると説明された。そのため、元設定のミノフスキークラフトの応用はF90FF内ではミノフスキー粒子を自ら発生させられる点であると推測できる。
- 「ハイパーメガランチャー」
- アナハイムでハイパーメガランチャーと言えば、グラナダ工場製のZガンダムのオプション装備があるが同一の物かは不明。
- ハイインパクトガンと同じく、後述のF90FFでは事故で喪失したはずの1号機が作中時間から後年にあたるVガンダムが運用したビームスマートガン(通称物干し竿)とおぼしき大型ビーム兵器を携行しており、出自不明だったこのビームスマートガンと関連付けられる可能性が出てきている。
- 「ファンネルミサイル」
- F90FFにて改修された2号機仕様が装備しているサイコミュ誘導兵器。使用した当初はプロトタイプハーディガン「Gカスタム」で採用が検討されていたサイコミュグレネードの可能性もあったが、第44話最終ページにてΞガンダム用に書き起こされていたファンネルミサイルが描かれたためこちらで確定した。
- 「メガブースト」
- エネルギーCAP(最初に実用化されたのはガンダムのビーム・ライフル)を利用して、縮退寸前のミノフスキー粒子を核融合炉に注入して瞬間的に機体の出力を倍加し、機動性をあげる新技術。MSA-0120以降の機体ではハーディガンの試作改修型にあたるGカスタムに採用されている。
- 「蒸発式アップリケアーマー」
- 機体ブルーグレー部分の箇所と思われる。敵弾着弾時に装甲をかつての耐ビーム・コーティングのように蒸発させることで本体への被害を最小に食い止める機能。こちらはMSA-0120以降の機体で採用した機体はないが、サナリィのクロスボーンガンダムのABC(アンチビームコーティング)マントが技術的に類似している。
設定の変遷
「機動戦士ガンダムF91」関連の外伝作品の設定にはいまだ不明点が多い。なぜなら『SDクラブ』に掲載されていた漫画『機動戦士ガンダムF90』や『MJ』に掲載されていた小説『機動戦士ガンダム シルエット フォーミュラ91 IN U.C.0123』などは未だに未単行本化状態であり、さらには一度も世に出ることなく消えてしまった設定もあるらしく、そのあたりの整理は20年以上経った現在でも進んでいない。
設定の整理が何故進まないかと言えば、小型MSが戦場の主体となった宇宙世紀120年以降に関しては、その時代に焦点を当てた近年の漫画作品が「機動戦士クロスボーン・ガンダム」シリーズや「機動戦士ガンダム クライマックスU.C. 紡がれし血統2巻」くらいしかなく、今現在でも増え続けている一年戦争関連のガンダムシリーズに比べれば数が少ないという背景もあるだろう。
漫画やゲームに登場せず、プラモデルとして商品化もないマイナー機なのだが、そのインパクトあふれる設定、現在の目でさえ革新的なデザインは存在を風化させることなく、ファンの間で語り継がれており、F90関係の設定を読み進めるとよく言及されている。
関連商品(参考資料)
- 「サイバーコミックスNo.024」
- カラー設定画と設定掲載。こちらでの記載は「MSA-0120」。
- 「スーパーMJ・機動戦士ガンダム・最新MS造型資料集」
- 外見が特異なことは認めたうえでMSA-0120はヘビーガンの改良発展型であると設定している。つまりヘビーガンの発展系であるハーディガンとは兄弟なことになる。こちらの記載では、「MSA-120」。
- 「B-CLUB SPECIAL 機動戦士ガンダムF91 オフィシャルエディション」
- こちらでもMSA-0120はヘビーガンの発展型であると記載されている。
- 「GUNDAM EXA」 (単行本第4巻)
- 仮想世界ではあるが、木星帝国を迎え撃つ連邦MSの中に混じっている。
- 「機動戦士クロスボーン・ガンダム ゴースト」(単行本第6巻)
- ブラックロー運送がデブリから回収しているモビルスーツの中に混ざっている。やはり過去に実戦配備されていた機体があったのだろうか。
- 「総解説ガンダム辞典 Ver.1.5」
- 本書はサンライズ監修、皆河有伽氏が編著した「総解説ガンダム辞典」を増補改訂したもの。本機のモノクロの画稿と設定が載っており貴重な資料となっている。こちらの記載では、「MSA-120」。
- 「ガンダムMSヒストリカ Vol.6」
- 皆河有伽氏によるコラム、「ガンダムの世紀第6回」『内なる「ガンダム」内なる「神話」』でF90とMSA-0120対決に触れている。また、沖 一氏によるF90とMSA-0120が対峙した模擬戦のイラストも掲載されている。こちらの記載では、「MSA-120」。
- 「ホビージャパン メカニクス02」
- ホビー専門誌「ホビージャパン」によるガンプラメインのムック本。MGガンダムF91ver.2発売に合わせた刊行で同書に「MSA-0120」がモデラー林哲平氏によって立体化されている。
スクラッチキットでありながら、既存のHGUCのラインを最大限活用した(使用キットに藤田氏デザインのガブスレイ、パラス・アテネ、バイアラン等を活用)2018年におけるMS(ガンプラ)フォーマットでリファインされた「MSA-0120」の決定版と云える内容になっている。
アナハイム・エレクトロニクス社が接取した(と思われる)機体のチョイスに加えて、蒸着式アップリケ・アーマーを外装式と解釈し、アーマーを外すとジム系の頭部やボディラインが出てくるという非常に説得力がある構成であり、ベースとされたヘビーガンや同時代の機体であるF90との対比は興味深い。
31年の時を経て…
上記の通り、「F90FF」はF90がテスト機で様々な装備を試していた時代を描いた話であり、MSA-0120との模擬戦は回想の一幕にのみ収まった。後にサナリィスタッフたちの会話の中で「F90が模擬戦した相手」として一コマだけ顔が映ったり、アナハイムの部隊が運用するヘビーガンのカスタマイズ機であり、ハーディガンの前身でもある「Gカスタム」が背中にMSA-0120と同様のブースターを装備したり等、その存在を証明する描写のみに留まっていた。
時にU.C.0115…
「…嘘だろ?」
「あれは…F90にコンペで負けたはずの」
「なんでここに居るんだ。闇に消えたはずじゃないのか。"MSA-0120"は!!」
第24話……設定されてから31年、謎の部隊が運用するハイスペック機として初めて公にその姿を現した。かつて辛酸を舐めさせられたF90の弟分F70キャノンガンダムを、メガブーストを駆使しビームサーベル一本で撃破して登場するという鮮烈なデビュー戦を果たす。
続く第25話にて再びF90と対峙し、ハイインパクトガンやアップリケアーマーも使用して圧倒。かつての模擬戦の借りを返すかのように一蹴してみせた。
27話では回想シーンにおいて「新時代のリックディアスを目指してアナハイム系ガンダムタイプの技術を転用した事」「一号機は開発段階のテストで爆発事故を起こした事」が語られ、後者の事故でシルエットフォーミュラ91のヒロイン、アイリス・オーランドの父親が死亡した事にされた。
この設定は上述の小説版シルエットフォーミュラ91の設定(漫画版ではジェガン ファイヤーボールの事故とされていた)を元にしており、手つかずだったこの時代に新規設定を追加していくと共に既存の設定との統合・整理も行われていく物と推測できる。
さらに後の37話ではフレームにはF90FF内で新しく設定されたヘビーガンIIの試作型が使われた事にされ、その技術素体として宇宙世紀110年にロールアウトした「RX-110」という型式番号の機体が示唆されている。この機体については次のページにて予算獲得のためのダミーと結論づけられたが、実際はガイア・ギアに登場するゾーリン・ソールを指している。元々マハやヌーボパリなどでガイア・ギアの単語が散りばめられていたがここまで踏み込むのは初めてであり、幻の作品と化している本作の取り扱い方も今後変わってくるのかもしれない。
41話では開発主任が人型の至上である「ガンダム」を超えるものとして、個人的に龍を意味する「ドライグ」と呼んでいたと回想、ガンダム試作1号機に対するるゼフィランサスのようにあくまでも通称扱いではあるが30年以上の時を経て初めて機体名が与えられた。またこれに伴い、外見が異なる1号機にはドライグ・アクティブと区別もつけられている。
関連項目
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