Pro Tools(プロ・ツールス)とは、米AVID(アビッドテクノロジー)が開発保守・販売しているDAW(デジタルオーディワークステーション)である。略してPT、プロツー、ツールスなどと呼ばれる。
概要
Pro Toolsのバンドルは、大きく二分される。
一つは他のDAW同様、アプリケーションをコンピューターにインストールし、CPUのパワーを使う「Pro Tools」(ver 8まではLE、PEが該当)、もう一つはオーディオシステムそのものを構築する「Pro Tools HD」(現時点ではHDXが該当)となる。さらにThunderbolt端子を利用し、MacBookPro等のPCIスロットがないものでも、HDシステムを使う「HD Native」と呼ばれるものも出てきた。
CPUパワーを使うものは"Native",専用のシステムやDSPパワーを使うものは"HDX"と呼ばれることが多い。
Pro Tools HDXではコンピューター(多くはMacPro)に差し込んだPCIスロットのDSPによる高速演算と専用のオーディオインターフェイスを使用した低レイテンシー、大量のIN/OUTが可能となる。その代わり安定稼働させようとすると◯百万円吹っ飛ぶ。
多くの場合ポストプロダクション・音響スタジオに導入されているものは後者のPro Toolsである。
では、NativeとHDで互換性がないかと言われるとそうでもなく、ミュージシャンやエンジニアがMacBookProでNativeで下処理をし、そのプロジェクトファイルをスタジオのHDで開くといったことも可能である。
また、他のDAWと違い、システム要件が非常にシビアであることでも有名で、OSのアップデート一つで動かなくなることもザラにあり、AVIDが定める推奨コンピュータなるリストすらある。多くはMacで、Windowsでの保証対象は、公式にはHP(ヒューレットパッカード)やDellのワークステーションタイプしかノミネートされていない。これはWindowsが多くのサードパーティによるパーツの相性問題を抱えるのに対し、MacがApple社のみの専属販売による安定性を考慮したものである。だからと言って、自作のWindowsでも動かすことは可能である。さらに言えば、Macでさえ、バージョンが0.1違うだけで動作保証から外れてしまうこともあるので安心はできない。
歴史
Pro Toolsの歴史は、Digidesing社 波形編集ソフトの"Sound Designer"と呼ばれる時代から脈々とオーディオに特化してきた。
他の主要DAW(Logic,Cubase,Digital Performer)はMIDIシーケンサーを始祖としているのに対し、
Pro Tools は最初からコンピューターと専用のインターフェイスを使用したオーディオシステムの構築からスタートしている。
それ故に安定性が非常に高く、トラブルを嫌うプロスタジオでの使用が多くなり、実質デファクトスタンダードとなっていった。逆にMIDIエディットに関してはからっきしダメであった。
Ver 8まではLEも専用のオーディオインターフェイスをドングル代わりに差し込まなければ起動しない上、LEはプラグインによる遅延を補正する機能さえついていない・リアルタイムバウンスのみという殿様商売であった。(マジでPTLE8買った僕を救済してください)
さすがにまずいと思ったのか、Ver 9からはDigidesignはAVIDに吸収され、オーディオインターフェイスドングルは廃止しilok2へ変更、他社のオーディオインターフェイスの使用を可能に、さらに遅延補正を付け、MIDIエディターを強化するなどし、PT11で他のDAWと同等に張り合えるようになってきた。
それ以前は、HDであっても他のシーケンサーでMIDIで打ち込んだものを一旦オーディオ化し、それをPro Toolsに読み込みミックス作業をする作曲家やエンジニアも多くいた。(梶浦由記など)
前述の通り、Macと進化を続けてきたこともあり、 AppleのLogicや、同じくオーディオインターフェイスを製造するMOTUのMac用 DAWであるDigital Performerとの互換性がかつてはあったが(HDシステムのオーディオインターフェイスをLogicやDigital Performerが使用することができた*Logic 8,Digital Performer 7まで)、HDXになってからはそれもできなくなった。
完全に互換性がなくなったかというとそうでもなく、MIDIは、お馴染みSMFファイル、オーディオはOMF/AMFと呼ばれる汎用プロジェクトファイルに変換して他のDAWに持って行くことはできる。(ただしOMF/AMFはトラブルが多く一発で読み込めることはまずない、しかも持っていけるのはオーディオファイルのみで、インサートエフェクトなどの情報は含まれない。)
プラグイン形式はおなじみのVST/AUではなく、RTAS/AAXを用いる。
RTASはPTのver 10まで、AAXはver 10からver 11までとなる。
小ネタ
・Sound Designer時代のオーディオ形式の".sd2"ファイルは、実は今でもMacでデフォルトで開ける。
・当時うん百万を必要とするPro Toolsのオーディオが扱える機能は、MIDIしか扱えなかったLogic,Cubase,Performer(Digital Performerからオーディオ機能を抜いたもの)をメインで使うミュージシャンには憧れだった。
・Pro Toolsの競合ソフトには、Cubaseの業務用スタジオバンドルのsteinberg 「Nuendo」、MAGIX「Sequoia」、Fairlight社のコンソール、MOTU 「Digital Performer」がある。どれも音声を扱うことができるだけでなく、非常に高度な映像との同期を求められる「MA」としての用途を重視しているものである。
・RTASの読み方はいろいろ。外人のYouTubeでの発音は「アータス」だったけど人によって違うっぽい。
関連項目
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