SCP-3353とは、シェアード・ワールド『SCP Foundation』に登場するオブジェクト(SCiP)である。
項目名は『Secrets for Sweets (お菓子のための秘密)』。
概要
SCP-3353 | |
基本情報 | |
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OC | Keter |
出現場所 | 英国・アイルランド (豪州・日本) |
著者 | Zyn |
作成日 | 2018年4月26日 |
タグ | 交換 外部エントロピー 食物 |
リンク | SCP-3353 |
SCPテンプレート |
SCP-3353は公共庭園や公園に実体を持たないリンゴの木が生えてくる異常現象。主にイギリスとアイルランドで確認されており、この2地域では財団も観測している。このほか、ソーシャルメディア上ではオーストラリアと日本でも報告されているようだが、財団はこの2地域では現象を観測できていない。
リンゴの木の出現に続いて、そこに写真や映像に映らないリンゴが出現する。細密検査では、小さくナイフで彫り込んだような「秘密を教えて」というメッセージが書かれていることが判明している。
そのリンゴに対して何らかの秘密の表明をすると、リンゴがカップケーキやマンチェスタータルトなどのリンゴを使ったデザートに変化することがある。秘密の表明をせずに持ち逃げしようとすると急激なねむけに襲われて数時間眠ってしまう。デザートは既存の味の好みに関わらず「おいしい」と感じられること、腐敗速度が早いことを除けば非異常性。また出現から消失の間に手に取らなかったリンゴも異常性を失い普通のリンゴになる。
最初のSCP-3353事例では、消失前にドミニク・ハリス研究員(ケンブリッジ大学卒の人文科学博士)が近づいて、7個の秘密の表明を行った。結果は以下の通り。
手料理が好きと母に言っているが、本当は好きではない | 変化なし |
ガールフレンドがヴィーガンだが、ヴィーガンとベジタリアンの区別がついていない | カップケーキ |
子供の頃、友人の注意を引きたくてその子のおもちゃを破壊した | 変化なし |
正直入浴や洗髪はかったるい | 変化なし |
若い時、単語の発音を間違えて嘲笑された。その日から発音を間違えた単語をリストアップして練習した | マンチェスタータルト |
毎月、手の甲の毛を剃っている | 変化なし |
公共の場で食べきれなかったり他の人より食事速度が遅いと落ち着かなくなるので、なるべく一人で食事をする。そのため周囲には家庭料理が好きだとアピールしている | マンチェスタータルト |
財団は次の実験の研究員として誰を選出すべきか議論を重ねている。
これ結局どういうことなの?
上記だけ見ても、「秘密の種類でなんで変わる場合と変わらない場合があるのか」がわからないだろう。実は本オブジェクトについて執筆者のZyn氏がネタバレと言えるものをディスカッションに残している。あくまで作者本人のヘッドカノンである点に留意してこの先を読み進めていただきたい。
本オブジェクトは、妖精[2]が人間と取引を行う事象である。妖精は人間からとある対価を得ることで、デザートを提供している。
妖精が好むのは単なる秘密ではない。「恥ずかしい」秘密である。今回で言うならば、ハリス研究員の秘密のうち、菓子に変化した秘密は「恥ずかしい」秘密である。まずヴィーガンとベジタリアンの区別がついていないこと。ハリス研究員の専門は人文科学である。人文科学者がヴィーガン(人間が動物を搾取せずに生きることを掲げる主義)とベジタリアン(菜食主義)を区別できていないのは、恥ずかしいことである。特に自分のガールフレンドがヴィーガンであるにも関わらず。次に単語の発音ミスをなくすために練習していること。彼はケンブリッジ大学卒の博士号を持つ。つまり、「良いとこ出てるのにまともに発音も出来ねえのか」と言われるのを嫌っている。とりわけ過去に嘲笑されたトラウマがあればこそ二度とそれを繰り返すまいと必死なのだろう。そして最後。単に少食で食事速度が遅いというキャラで行こうとは思えないくらいハリス研究員は外聞に気を使っている。故にこれらは妖精が求める「恥ずかしい」秘密として認められたわけである。これに比べれば、「母ちゃんの料理が嫌いだけど好きということにする」「子供の頃友達のおもちゃを破壊した」「風呂嫌い」「手の甲が毛深い」は(少なくともハリス研究員にとっては)そこまで恥ずかしい秘密ではないだろう。この手の頭のいい人って身だしなみは正直どうでもいいだろうし。
これを踏まえて考えて欲しい。ハリス研究員はなぜ「この取引は不公平である」と言ったのか。実際、妖精たちは結構ぼったくっているのである。ハリス研究員が発現した「恥ずかしい」秘密は正直財団にも明かしたくない(でも実験なので報告書に記述しなければいけない)ことであっただろう。それに対して得られたのは、足が早すぎるカップケーキとマンチェスタータルトである。たしかに、割に合っていない。カップケーキとマンチェスタータルトが食べたければ近所の菓子屋にでも行けばいいだけだからだ。
財団はなぜ次の研究員を決めかねているのか。本来であれば「明かしたくない」秘密を持っている人を選出して、「どうでもいい秘密」と「明かしたくない秘密」で結果を比較するのが実験としては正しいのだが、「お前明かしたくない秘密とかないか?」と聞いて回るわけにもいかない。まず答えてくれないだろうし、仮にあってもこの実験に参加する=バレてもいいと覚悟を決めたということになるので実験が再現性を失う可能性があるからである。
関連動画
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関連項目
脚注
- *俗にフェアリー・サークルなどと呼ばれるもので、妖精が草の上でダンスすると産まれるとされているミステリーサークル。
- *ここでいう妖精は一般的な西洋ファンタジーの妖精を指していると思われる。決して星辰の子ら/4000-Eshu実体群ではない……たぶん。
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