THE KING OF FIGHTERS 2001とは、SNKの格闘ゲーム『THE KING OF FIGHTERS』シリーズの第8作である。
概要
『'99』から続く「ネスツ編」3部作の完結編。
前作同様ストライカーシステムを搭載し、新キャラクターも登場する。
コピーライト表記はSNK(エス・エヌ・ケイ)となっているが、発売を待たずに同社が倒産してしまったため、倒産後の体制で発売された最初のゲームとなった。
本作はSNK倒産という難局にあって、様々な問題を抱える中で発売された曰くつきの作品でもある。
SNK倒産直後の作品として
本作が稼働した2001年のSNKは、アミューズメント事業の象徴であるお台場パレットタウンのネオジオワールド東京ベイサイドが閉店する等、既に倒産の危機に直面しており、主力ゲームであるKOFに関しても前作『KOF2000』ではエンディングの内容の一部が打ち切りを覚悟したと捉えられるものでないかとファンの一部から囁かれていた。加えて毎年7月に稼働していたKOFが2001年7月に稼働することはなく、同年10月にSNKが正式に倒産及び解体される事が決定すると、ファンの間ではネスツ編3部作は未完になる可能性が益々濃厚になり、ファンからは惜しまれる声が上がっていた…筈だった。
しかし、奇妙なことに実は前年2000年の秋頃から"KOF開発スタッフ募集"という告知がインターネット上でとある会社より告知されていた(参考)。その会社の名は「ブレッツァソフト」。立ち上げたばかりの会社で事務所の所在地はSNK本社のすぐ近くのマンションの一室にあるという怪しげな会社であり、当時の2chでも話題に上がっている(参考)。
そしてそれに続く形で「プレイモア」「サンアミューズメント」といった会社も出現し、SNKが倒産した2001年10月、即座に「プレイモア」が、SNKの知的財産を落札した。どうやら、SNKが経営末期に傘下に入ったパチスロメーカー「アルゼ」からの脱却を図る為、ひいてはネオジオブランドのゲーム販売を引き続き継続したい為に、一部の旧SNK社員達が中心となり立ち上げた会社らしく、社員も旧SNKにいた人物が中心になっている。
実際、当時SNKとクロスライセンス契約をしていたCAPCOMの専務だった岡本吉起氏が後年語る所によれば、これらの会社はSNKの代表である川崎栄吉氏が再起をかける為に借金をしてまで立ち上げた会社だったとの事で、「パチンコ企業(アルゼ)」と「韓国企業(後述のイオリス?)」が当初競売に名乗りを上げた際、CAPCOMも入札するかが検討されたが、その後川崎氏ら入札の報を聞いたために辻本春弘社長と協議し手を引いたとしている。
しかし落札したのはいいもののかつてとは程遠い会社規模で、SNK最盛期には1200人を超えた社員も当時は各企業合わせて200人ほどしかいなかった。この時点では版権管理を「プレイモア」が行い、「サンアミューズメント」がネオジオの保障サービスを請け負い、「ブレッツァソフト」がゲームの開発を行う体制が2002年頃まで敷かれることになる。
財政的事情から分裂こそしているものの、実質ひとつの会社と言っても過言ではない(後にサンアミューズメントがSNKネオジオに改名、ブレッツァソフトを吸収し、プレイモアが更にSNKネオジオと合併。「SNKプレイモア」となる。その母体となった3社である)。
ただ、それでも倒産し再起を図り始める以前から旧SNK時代に「ブレッツァソフト」を立ち上げることから見ても分かる通り、資金繰りは厳しく、この『KOF2001』も旧SNK時代から開発は進んでいたが例年通りの7月に発売することはできなかった。
それらの資金問題を解決すべく旧SNKが末期に放った手段として、当時ネオジオが特に普及していたアメリカ、中国、韓国市場に、現地のゲームメーカーと共同出資する形で「SNKネオジオUSA」「SNKネオジオチャイナ」「SNKネオジオコリア」というネオジオ海外向け販売ブランドを正式に設立して、そこから資金調達を行うことになった。中でも韓国の「イオリス」という会社はスポンサーとして関わることになった(前述の岡本氏の言及によればSNKの権利自体を取得しようとしていた可能性もある)が、開発費を提供する代わりにこの『KOF2001』と続編『KOF2002』ではゲームキャラクターの設定に同社の要望を受け入れなくてはならなくなった(ちなみに『KOF2002』以降は完全に手を切っており、SNKプレイモアがゲームを独自開発・販売できるまでになってからは、完全に関係を解消し企業名は一切出てこない。当り前だが、SNKプレイモアは韓国企業ではない)。
そういった事情もあり、4ヶ月例年よりも遅れるが何とか2001年11月、旧SNK後初のネオジオのリリースタイトルとなる『KOF2001』が稼働する。
ストライカー周りの新システムなどは、『2000』で世紀末と化したゲーム性への改善らしきものが随所にみられ、開発期間自体は旧SNKからだったこと、『2002』で活かされる操作性・システムも相まって一定の評価を得たが、倒産直後の人材不足やメーカー分裂による意思疎通の不十分などから、ストーリー・BGM等デモ演出の低さやバグ、また今作から、退社した森気楼(現在はカプコン所属)に代わって、『餓狼MOW』などを旧SNK時代に担当したノナにメインイラストが変わり、独特すぎる画風等で、波紋を呼んだことでも知られる。
ただし本作は発売が例年よりも遅れたことで、KOFシリーズの中でも現役稼動したシーズンが最も短い作品であり、突き詰めた評価がなされないまま『KOF2002』がヒットしたため不遇を買うのも仕方のない面もある。いくつかの新要素は本作以降にも生かされており、ビジュアル関連で顰蹙を買いネガティブな印象こそ持たれがちだが、実際遊んでみれば紛れもないKOFだったりもするのでプレイする価値のある作りにはなっている…それがKOF2001である。
家庭用としてはネオジオ、DC、PS2に単体移植された他、KOFネスツ編と題したオンコレ版に収録された。また今作は前作とは違いアレンジサントラ未発売であったが、このオンコレ版用にようやく新規にアレンジBGMが製作され収録された経緯がある。
黒歴史になってなお一部のファンに愛される島鉄雄K9999のデビュー作でもある。
『2000』からの変更点
タクティカルオーダーシステム
実際に戦闘に出すメンバーとストライカーとを振り分ける「タクティカルオーダーシステム」が搭載された。ストライカーの人数を0〜3人から選択し、STの人数が多ければ使用キャラクターが減少、逆ならば使用キャラクターを多く選択できる。
これにより4対4の試合も可能となることから、『2001』ではシリーズで唯一ラウンド6~8が存在する。裏数値として『CAPCOM VS SNK』シリーズのレシオシステムのようなものが存在しており、戦闘メンバーが増えれば増えるだけ攻撃力が低下していくため、後述のストライカーシステムの調整もあり大会では2:2に振り分けられる事が多かった。4:4対1:4という対戦方式も可能であり、何とも言い難い盛り上がりを見せたという。
モード発動の廃止
アーマーモードとカウンターモード(モード発動)が廃止され、必殺技>超必殺技などの連携については常時1ゲージを消費することで「スーパーキャンセル」として組むことができる(これにストライカーを廃止し、かつどこキャン・MAX発動・MAX2を加えたものが次回作『KOF2002』といえる)。
ストライカーの仕様
上記に加え『KOF2000』より引き継いだストライカーシステムは仕様が変更され、ストライカーボムが廃止されパワーゲージを使用する1ゲージ技扱いとなった。またオーダーによっては一度に複数のストライカー(2~3人)を呼び出せるようになり、極端な状況では、画面内に5キャラ以上出現、そのうち4人のキャラ(チーム全員)で対戦相手のキャラ1人をフルボッコするという、少々過激な場面が見られるようになった。反面呼び出せるタイミングは地上攻撃中、あるいは地上ニュートラル状態限定となっており、複数のストライカーを使用して連続技を組む難易度自体も高いので、バランスが崩壊するまでには至っていない。
また相手が地上で攻撃を受けのけぞっている場合のみ発動可能な「キャンセルストライカー」システムも導入。これもスパキャン同様、モード発動を廃止したために搭載された代用のシステムで、今作ではシステム面での全体的な簡略化が図られている。
各種ストライカー性能も著しく弱体化・変更されており、1人チームのリスクを覚悟でストライカー3人を使用しない限り『KOF2000』のような即死コンボは組めない。
攻撃の新要素
特定の技をヒットさせると相手を壁にバウンドさせ追撃が可能になる「ワイヤーダメージ」、ダウン中でも問答無用で追撃が可能な「どこでも判定」が本作より搭載される。
キャラクタービジュアルの変化
前述の通り、キャラクターヴィジュアルが同年の『CAPCOM VS SNK2』で既に移籍していた森気楼氏からノナ氏へ変更となる。絵が独特なのに加え、ノナ氏自身が『KOF2001』のムックでキャラについて設定に誤った認識を持っていることが暴露され、旧作ファンの批判を買うことになる(ノナ氏は元々旧SNKの餓狼伝説後期のスタッフだがKOFにはノータッチで、KOF担当に際しての情報伝達も上手くいっていなかったようだ)。だが販促イラストや小説版のカバー、挿絵を手掛けたヒロアキ氏のイラストには定評があり、パチスロ作品『KOF2』では氏が描いた『2001』のメインイラストが流用されている。
投げ捨てられた伏線
ストーリー面においては、会社の倒産による資料の紛失や担当スタッフの退社などによりきちんと補完されたとは言い難く、特に『2000』での新キャラクター関連のものはほぼ描かれず終わってしまった。あらゆる伏線は犠牲になったのだ……
一応、嬉野秋彦の公式小説(上下巻構成)では『2000』エンディングからのK´の動向などが補完されていたり、ゼロ等中ボスの死が明確に描写されていたりと評価が高い。デコ助野郎の動向は結局不明だが…
参戦キャラクター
参戦キャラは前作から更に10人増え40人となり、過去作のキャラクターの復活(ハイデルン、大門等)は兼ね好評だった。代わりにアナザーストライカー全て削除され、前作続投のストライカー動作も『2000』から一部を除き一新されている。
キャラクターでは、後述のバグのせいで各地で使用禁止になったフォクシーを筆頭に、弱体化された部分もあるが相変わらずリーチが長く「千手羅漢殺」の追加で火力が増した感のある麟や、シリーズで唯一「外式・轟斧」にキャンセルがかかるなど珍妙な連続技が可能になった八神庵、必殺技がコマンド入力になりコマンデルンなどと呼ばれたハイデルン等が強力で使用率が高かった。その他、特殊技が『2000』のボス性能のままで画面橋でノーゲージ永久が出来るも上位には一歩劣るクーラ・ダイアモンドや、メイ・リー、アンヘルといった新キャラはコマンドが複雑だが上級者に好まれるキャラで、そこそこの使用率を誇っていた。
ストライカーでは、前作で猛威を振るったジョー東の引き起こし性能に最も近い李香緋の使用率が高く、コンボ中の「マケナイゾ!ベロベロベー」という台詞は定番と化した。それ以外では、連続技だけでなく牽制にも組み込める不知火舞を筆頭に、突進系でコンボに組みやすいヴァネッサ、そこからキャンセルで出すと拘束力が増すアンヘル、切り返し性能の高い大門五郎やセス(セスは前作より攻撃判定が弱体化したが動作自体は同じだった)などがよく使われた。
ゲームバランス
意欲的な要素もあったのだが前述した開発時の様々なゴタゴタにより肝心の調整は甘く、今作ではフロアルールで禁止レベルとなった永久連続技から対戦では使い道のないネタ技に至るまで多数のバグも存在する。
以下はその中でも特に有名なキャラ群だが、この他にも紅丸の空中斜めJCやK'のミニッツスパイクが何でも判定だったり、新要素のワイヤーダメージが実装された技が不自然であったり(『2002』では大幅に削除されている)、実験的な要素も多い。なお、前述の家庭用移植作であるKOFネスツ編ではバグを取り除きアレンジ曲を搭載したDCベースの移植の他、アーケード版そのままの仕様で移植されたネオジオモードも収録しており、下記のバグが再現できるようになっている(一応家庭用ネオジオの時点で修正されるほどのバグもある)。その為取説にはご丁寧に対処法としてフリーズした場合のリセットの方法が明記されている。
- フォクシー
- 切迫した製作の代償に生み出されたバグの権化と比喩される。
『'98』のオメガ版ジェノサイドカッターに並ぶ無敵と強い判定・持続を誇る弱プレニルニウムをはじめ、立ちBの持続部分が完全ガード不能・即死相打ちのMAX2超必殺技『ミツバチ』がその立ちBから確定ヒットするため、大会で実際使えた場合とんでもないポテンシャルを発揮するので使用禁止になることが多い。 - 八神庵
- 自チームのオーダーが1:3の状態かつ、相手が画面端かつ間合いの開いた状態で、弱闇払い>処理落ち気味な突進の八稚女>豺華入力のタイミングにST呼び出し>豺華…と入力することでゲージがバグり、255本になる。当然超必、ST使い放題となるが、STに関してはキャンセルして2体以上呼び出すことは何故か不可能。しかし、この状態はそのラウンド後も継続するため強力。
- アンヘル
- 上記フォクシーは「急遽製作することになりドットを打つので精一杯」という開発事情があったが、このキャラは逆に前作『2000』からキャラの原型自体は存在し、『2001』のムックにはこのキャラ独自の派生連携必殺技であるアンチェイン(以下、UC)技のラフが数多く掲載されていた。
だがこのUC技の1つ『インポテント シンブトム』が何でも判定(相手がどんな状態でもHITする)であり、HIT後相手を立ち食らい状態にするため、ここからの永久が可能。もちろんノーゲージ。
但し難易度自体は非常に高いため、使用禁止になるような事例はなかった。
というかSNKの新キャラの伝統調整不足でアンヘル限定の即死連続技があったりむしろ不遇な面も持っている。 - メイ・リー
- 彼女はスタンダード・ヒーローの2つのモードを使い分けるキャラとしては非常に独特かつ面白いキャラなのだが、スタンダードの状態から特定のコマンドを入力すると、グラフィックはスタンダードだが動作するモーション及び入力可能な必殺技のみがヒーローの状態になる「ピョン吉モード」と呼ばれるバグが存在し、その状態で特定の技を相手にヒットさせると画面上のキャラ(ゲームの進行)がフリーズ、相手キャラがフリーズするなど店側として非常によろしくない状態を作り出す。当然このテクニックは他にいくつかあるバグ同様フロアルールレベルで使用禁止である。
- K9999
- イオリス社の無茶に近い要求の1つから生み出された『AKIRA』の島鉄雄を中の人から技の演出・セリフ群・容姿まで綺麗にパクったキャラ。彼の経緯については本人の項を参照のこと。
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関連項目
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