XRPとは、ブロックチェーン技術を利用した暗号資産(以前は「仮想通貨」「暗号通貨」と呼ばれていたもの)のひとつである。通称「Ripple」(リップル)。
要は、沢山ある「ビットコインみたいなやつ」の一つ。
概要
2009年にリリースされた暗号資産「ビットコイン」の普及を背景として、後追いで様々な暗号資産が開発されたことはよく知られている。
そういった、有象無象が多数存在する暗号資産らの中で、時価総額(該当の暗号資産1単位の価格×流通している暗号資産の総数)のランキングにおいて、2013年から2020年現在までだいたい3位くらいに位置し続けているのがこのXRPである。
ビットコインが不動の1位、「Ethereum」(イーサリアム)プラットフォームの暗号資産「Ether」がそれに続く2位であることが多く、そしてこのXRPが3位であることが多い(もちろん人気によってそれぞれの暗号資産の時価総額は上下するため、稀にEtherを抜いてXRPが2位に浮上したこともあるし、「ビットコインキャッシュ」「テザー」等の別の暗号資産に抜かれて4位になった時期もある)。
国内コンビニで例えると、ビットコインがセブンイレブンとすれば、ローソンやファミリーマートに相当するような暗号資産は存在せず、ミニストップがEtherで、デイリーヤマザキがXRP。2020年現在の感覚で言えばそのくらいの立ち位置だろうか。
この世に存在するXRPの総数は1000億XRP。そして取引が行われる時にごくごく微かにすり減るため、総量は緩やかに減少していっている。ただし、現在のペースで全XRPが消失するまでは7万年かかるとされるため、あまり気にする必要はないとされる。1XRPずつで取引する必要はなく、最小単位である0.000001XRPまで分割可能。この最小単位は「1drop」とも呼ばれる。
2020年11月25日現在のXRPの価値は日本円で約70円前後であるため、時価総額は70円×1000億枚で7兆円くらい……となりそうなものだが、上記のサイト「CoinMarketCap」では時価総額3兆円くらいとしている。これは、このサイトが「存在している全暗号資産総数」ではなく「流通している総数」を元に計算しているため。なお、暗号資産は比較的値動きが激しい。上記のXRPの価値や時価総額はすぐに変化するという点に注意が必要。
技術的な特徴:非PoW
「ビットコインの問題点を改良した存在となる」ことを目標にして開発された暗号資産は多いが、XRPもその中のひとつ。
一応「2004年にRyan Fuggerという人物が開始したプロジェクトが土台になった」とも言われるため、この大元にまで遡ればビットコインよりも歴史は古い(ビットコインは2008年にアイディアが発表され、2009年にリリースされた)。しかし2012年に実際に形になったXRPは明らかにビットコイン、そしてそのブロックチェーン技術を参考としたものとなっており、2011年にXRPの開発者の一人「Jed McCaleb」がビットコインフォーラムに投稿した「Bitcoin without mining」というトピックが現在のXRPを彷彿とさせる内容であったことからもそれがわかる。
ビットコイン(および、それを模倣した多数の暗号資産)は、そのブロックチェーン技術において「Proof of Work(プルーフ・オブ・ワーク。略してPoW)」と呼ばれる仕組を採用している。この仕組の詳細については「ビットコイン」や「ブロックチェーン」の記事に委ねるが、「常に誰かが「マイニング」目的で計算し続けていることにより、ブロックチェーンのシステムが常時維持される」「改竄するにはそれらの世界中のライバルを超える非常に大きな計算リソースが必要となるため、実質的には改竄が困難」という良い面がある。
しかし一方、この「PoW」のシステムには「計算リソース(すなわち、電力)をやたらと消費する」という難点がある。現代の暗号資産ネットワークが世界各地で消費している電力は膨大なものであり、ビットコイン1種だけに絞ったとしても小国1つの電力消費量を超過すると言われている。
さらに、この「PoW」の手法では決済が承認されるまでに時間がかかりがちである(暗号資産の種類やバージョン、さらには利用タイミングによっても異なるが、ビットコインでは承認されるまでに約10分と言われることが多い)。
こういった「電力を大量に消費する」「決済に時間がかかる」と言った難点を回避するためのPoWに代わる仕組として、XRPのネットワークは「バリデータ」という特殊な参加者たちを利用した「コンセンサス」という仕組で維持されている。複数の信頼するバリデータのうち圧倒的多数がある取引台帳に関して同じ返事を返した時のみ、その取引台帳は検証済みのものとして扱われる。
後述するRipple社は推奨する「バリデータ」のリストを公開しており、実質的にはこの推奨バリデータたちがXRPのネットワークの信頼性の拠り所となっている。こういった推奨バリデータには「信頼性が高い施設を有しており公正・中立」と見なされた団体が選択され、世界全体に複数が存在している。例えば日本では、京都大学、東京大学、データーセンター事業者「アット東京」などがバリデーター運用を開始したと報じられたことがある。
- 日本初、アット東京のデータセンターでデジタルアセット(仮想通貨)「XRP」の Validator(検証)ノード運営を開始、信頼性の高い通貨システムに貢献 | アット東京
- 京都大学、仮想通貨XRP台帳のバリデータを立ち上げ 日本の大学初の事例に
- 東京大学、仮想通貨XRP台帳のバリデータを立ち上げ 京大に続き国内2校目
この「コンセンサス」手法であればビットコインのような信頼性を「マイニング」に拠る「PoW」の手法とは異なり、消費電力は抑えられ、また決済スピードも非常に速い(4秒程度であるとされる)。
この手法を疑問視する人々からは「バリデータらを攻撃して過半数を不正に操作したり、バリデータらの過半数が信頼を裏切って共謀したりすれば?XRPネットワークを改竄あるいは停止できてしまうだろう。ならばPoWよりも脆弱ではないか?」と指摘されることもある。この指摘に対しては、XRPの支持者からは「様々な国の様々な団体に分散している多数のバリデータが同時に攻撃されて過半数が改竄や停止されてしまったり、あるいは彼らの過半数が悪意を持って結託する、といった事は起きがたく、むしろPoWより安全なくらいだ」と主張されるようだ。
この回答がどの程度正しいものかどうかはともかく、ひとまずXRPネットワークが攻撃によって改竄を受けたり停止されたことはないようだ(2020年11月現在)。一方「PoW」の手法を採用している暗号資産のいくつかに、「Block Withholding Attack」等といった攻撃を受けてブロックチェーンが改竄されてしまった実例があることは事実である。
実利用面での特徴:Ripple社
上記の「技術的な特徴」の所でも名称が登場したが、XRPの現状の説明に切り離せないのが、アメリカに本社をおく企業「Ripple」である。
基本的に「一つの企業に拠って立った暗号資産はあまり時価総額が高くならない」傾向がある。「その企業が崩壊したらその暗号資産の価値は雲散霧消してしまうではないか」というわけだ。にもかかわらずXRPが「時価総額だいたい3位」の位置を安定して占めているのは、このRipple社の戦略にあると言われる。
このRipple社はXRPの開発者らが設立した企業であるが、ある時からXRPの主な実利用イメージを「為替取引時のブリッジ通貨」とした。その上で、分散型台帳技術を利用した送金システム(かつての名称は「xCurrent」、2020年現在の呼称は「RippleNet」)を開発して、世界各国の金融機関にプレゼンした。そしてこの送金システムは「別にXRPを利用する必要はない」ものだった。
ビットコインがダークウェブでの取引に利用されていた過去があったり、取引所から大量に暗号資産が不正に盗まれたりと、どうしても「うさんくさい」印象がぬぐえない暗号通貨。しかし「暗号通貨」が利用している技術「分散型台帳技術」に限れば、多くの金融機関が注目するものであり、「必ずしもXRPを使う必要はない」このシステムは受け入れやすいものだった。
また、その送金システムの基盤となる台帳間送金プロトコル「Interledger Protocol」(略称ILP)を提唱[1]した。その後、Web技術の標準化と推進を目標に活動している国際非営利団体「W3C」内にILPの標準化に関するワーキンググループが発足したり、日本銀行の資料内にILPを用いた送金実験が登場する程には信頼性のある技術へと成長した。
既存の国際送金システム「SWIFT」の難点を解決すると謳ったこのシステムは、おそらく上記のような「Interledger Protocol」が得た信頼性をも背景として、それなりに多くの金融機関からの採用をもぎ取った(2020年現在で、30か国以上300以上の金融機関とRipple社は謳っている[2])。その上で、「このネットワーク上で、送金の際に間にXRPをブリッジ通貨として利用すればより効率的ですよ」という「オプション」としてXRPの利用(「On-Demand Liquidity」略してODLと呼称している)を提示している。そして、このRipplenetでのODLの利用は2020年10月現在で、送金全体の20%程度を占めているという[3]。
多くの暗号資産の中には「様々にアピールされ投機の対象となるものの、実際には利用されることが無い」ものも多いが、XRPはこのように「金融機関の間での送金の仲立ち」という用途で実際に利用されている(あくまで、Ripple社の発表を信じるとすれば、だが)。こういった「どうやらRipple社はうまくいっており、XRPの実需要も確かにあるようだ」という判断材料からXRPは「時価総額だいたい3位前後」という地位を占めることができているものかと思われる(2020年11月現在)。
しかし、やはりXRPの実利用について「Ripple社」という一企業に拠っているという意見が根強いことは否定できない。RippleNetを通して金融機関間での送金には利用されているかもしれないが、個人間の送金や取引の代価としてはさほど使われていないのだ。つまりRipple社の業績が悪化すればXRPの価値もつられて下落する可能性があるということになる。Ripple社はこの状態を嫌ってか、XRPのその他の利用モデルの開発を推進するためのサイト「RippleX」も立ち上げている。
SBIホールディングス
ネット証券大手の「SBI証券」の親会社であるSBIホールディングスは、代表取締役社長兼CEOの北尾吉孝などがRipple社のビジネスモデルに期待を大きく寄せているとされ、Ripple社とのパートナーシップやRippleNet関連技術の利用などに積極的であるとされる。
逆に言えば、Ripple社やXRPがコケると、SBIにもそれなりのダメージが予想されるということになるが……。
2016年には、SBIとRipple社が共同で「SBI Ripple Asia株式会社」を立ち上げており、分散台帳技術(≒ブロックチェーン技術)の金融界での実用化を目指して協力し合っている。またSBIグループ内の送金企業「SBIレミット」は「RippleNet」に参入しており、既にRippleの技術を用いた送金を行っている。
また、同じくSBIが擁する暗号資産交換所の口座を利用する形で、経済情報提供サービス会社の「モーニングスター」が、2020年3月期から一定単位のXRPを株主優待に設定するようになっている。
関連リンク
- Ripple | Instantly Move Money to All Corners of the World (Ripple社公式サイト)
- XRP | Ripple (同公式サイト内、XRPの説明ページ)
- Home - XRPL.org (日本語) (XRP Ledger(略称XRPL)について学ぶためのサイト。どちらかと言えば開発者向け)
- XRP - XRPL.org (日本語) (同サイト内、XRPの説明ページ)
- XRPL Explorer | Ledgers (同サイト内、XRPネットワークの動きをリアルタイムで可視化しているページ)
- Home - RippleX (XRPの利用モデルの多様化を促進するための開発者向けサイト。上記XRPL.orgと異なり英語のみ)
関連項目
脚注
- *「Interledger Protocol」公式サイト内、Interledger Protocolのホワイトペーパー参照。著者2名がどちらもripple社に所属する人物である
- *Customers | Ripple
- *仮想通貨XRPを介すODL送金、利用率はRippleNetの2割=リップル社CEO
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