エアバスA340(Airbus A340)とは、エアバス社によって開発・製造された大型・ワイドボディの旅客機である。
なお、ボーイング社製の機体(例:『B747=ボーイング747』)と違い「A」も含めて表記される。
概要
開発
中型双発旅客機「A300」および「A310」で旅客機製造会社としての実績を確立したエアバス社が、より長距離の路線を担うことができる後継大型機として開発したのが当機である。開発に当たり、A300から機体はほぼそのままに機器を最新技術にアップデートした中長距離双発機「A330」と、そこからさらにエンジンを増やした超長距離4発機「A340」として同時に開発された。
開発当時、大西洋や太平洋などの洋上を長距離・長時間飛行する飛行機には、緊急事態が起こったときに規定の時間以内に緊急着陸できることなどの規制がかけられていた[1]。その制限をクリアするために当時の長距離機はエンジンを4発搭載する4発機(まれに3発機)となっており、A340もその流れに乗って4発機として設計・開発された。
しかし、4発機となったことで同時開発のA330に比べて若干パワーの小さいエンジンを搭載することになってしまう[2]。このことが後に当機の運命を決めることになる。
1991年に初飛行を成功させ、A340はエアバス社のラインナップに乗った。初期の発注はヨーロッパ域内の航空会社やその航続距離に目をつけた各国政府の政府専用機が中心だったが、次第にヨーロッパ直行便に手ごろな大きさと見たアジア・オセアニア・南米・中東などの航空会社からの注文が増加していった。
実績
1993年3月、ルフトハンザおよびエールフランスをローンチカスタマーとして就航。前述の制限によって、大西洋や太平洋を横断(たまに縦断)する長距離路線に投入されただけでなく、B747を投入するほどの需要がない長距離路線にも数多く投入された。航続距離だけでなく燃費にも優れたA340は、文字通り全世界を股にかけて活躍することになったのである。
日本にも多く飛来し、一時は当時国際線を持っていた全日空・日本航空双方に提案され、全日空は一旦発注したものの最終的にはキャンセルした。そのため残念ながら日本の航空会社で飛ぶことはなかったが、4発機・シングルデッキ(いわゆる1階建て)という日本では新鮮[3]で流麗なスタイルからファンの人気は高い。筆者もその一人である。
シンガポール航空はA340をシンガポール-ニューアーク(ニューヨーク近郊)間の直行便という世界最長路線に投入している。余談であるが、シンガポール航空は同じ区間にフランクフルト経由便も運行しているため、1社だけ・1回の乗り継ぎだけで世界一周することができる。A340の長距離性能のなせる業といえるだろう。
製造終了
しかし2000年代に入ると各種機器の信頼性の向上に従ってETOPS制限が順次緩和されるようになった。
これにより、それまで長距離路線に投入できなかったB767やA330、新しくデビューしたB777などの双発機群が次々に長距離路線に投入されることになった。A340より新型のB777には燃費の面でも優位を奪い返され、双発機に比べてエンジン整備に手間とコストがかかる4発機は次第に劣勢になっていく。
また比較的非力なエンジンを搭載したことによって、競合する他の機種に比べて速度が遅く、航路によっては「A340用特別レーン」というべき航空路が設定されたり、遅れが発生してもその遅れを取り戻すことが難しく、場合によっては遅れを拡大させてしまうといったデメリットが表面化してしまう。このような事態に対してエアバス社は、超大型機「A380」の就航もあり、今後の大型4発機需要はA380が、300席級大型機の需要はA330がそれぞれ満たせると判断しA340の生産を終了することを決定、2011年11月に正式に発表した。
結果として販売機数こそ375機(前後)にとどまったが、A340はその航続距離を活かして世界各地を直接結ぶネットワークの構築に貢献したといえるだろう。
脚注
[1]:ETOPSという、緊急時に60分以内に着陸しなければならないという制限。のちに120分、180分と緩和された。
[2]:緊急時の出力を確保するために、一般的に双発機のほうが推力の大きいエンジンを装備する。
[3]:日本で4発ジェット機といえば長いことB747という時代が続いていたところに現れた新機体、という新鮮さは初就航から20年近くが経過した現在でも健在であろう。少なくとも筆者はそうだ。
バリエーション
- A340-200:基本型。261席(標準タイプの場合。以下同様)。28機製造。
- A340-300:座席増加型。ただし重量増加により航続距離は若干低下した。295席。218機製造。
- A340-500:超長距離型。航続距離1万6000kmを誇る。エアバスファミリーでは最長、全ての旅客機の中でも
B777-200LRに次ぐ超長距離機である。313席。32機製造。 - A340-600:長距離かつ座席増加(胴体延長)型。B747-8が就航するまで世界最長の機体だった。380席。97機製造。
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関連項目
- 航空機 - 重航空機 - 固定翼機 - 飛行機
- A300 - A310 - A320 - A330 - A340 - A380 - A350
- エアバス
- A330(同時に開発された姉妹機。双発機)
- B777(競合機と書いてライバル)
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