Apple Watchとは、Appleのスマートウォッチである。
概要
公式サイト上での表記は「WATCH」(
WATCH)。2014年9月10日に製品情報が発表され、翌年2015年4月24日に、日本を含む9つの国と地域で発売された。[1]
「i」の文字を冠しないネーミングや、多彩な組み合わせが可能なパーツバリエーションなど、従来のApple製品と比較して異質な点が多く見られる製品である。
スマートウォッチとは、腕時計のように手首に装着する情報機器の総称で、ウェアラブルデバイスの一種である。本製品では、通常の時計としての機能のほか、iPhone上の通知の確認やメール等の送受信が行えるコンパニオンデバイス機能、ヘルスケアやフィットネス機能などを備えている。
その外観はその名称の通り時計然としており、Appleの定番モチーフである角丸四角形状の本体(ケース)に、着脱可能なバンドがついている。基本は左腕に装着するようになっているが、ケースの上下を逆にしてバンドを付け直すことで右腕にもはめられるよう設計されている。Appleの製品としては例外的に数多いバリエーションが存在しており、ケースの素材とサイズ、ディスプレイの素材、着脱可能なバンドがそれぞれ複数種類用意されているため、それらの組み合わせの数は無数である。
当製品より新規に搭載された技術として、リニアアクチュエータ、および感圧ディスプレイを採用しており、これらにより、よりシンプルで奥深い操作が行え、また、Apple Watchが鋭く動いて腕を叩くことで通知などを知らせることができる。
販売モデル
Apple Watch(第1世代)
Apple Watch(第1世代)は、様々な種類のケース素材とバンドを用意しているが、実際の販売にあたってはそれらを特定の組み合わせでパッケージ化した「コレクション」という形で提供していた。
コレクションは、大まかな分類としてはそれぞれ「ベーシック用途」「スポーツシーン用途」「フォーマルシーン用途」といったように当てはめられる。各コレクション毎に価格帯や化粧箱などのグレードが異なっているが、本体およびwatchOSで使える機能はいずれも同一である。
Apple Watch
Apple Watch(第1世代)の中でもっともベーシックなコレクション。ラグジュアリーで上品な光沢感に加え、ランニングなどの用途にも耐えうる適度な軽さを兼ね備えており、様々な状況に対応する種類多くのバンドがラインナップされている。ビジネスシーンからスポーツシーンまで多種多様な状況で利用可能な定番の内容である。
ケースの素材はステンレススチールで、カラーはシルバーとスペースブラックの2色。Retinaディスプレイを保護する素材はサファイアクリスタル。
化粧箱は正方形の白いポリカーボネート製で、内部にはApple Watchを固定するリング状のブレスレットホルダーが収められている。
Apple Watch Sport
スポーツシーン、アクティブシーンに特化したコレクション。軽さと肌への馴染みやすさが追求されている。
ケースとディスプレイともに軽量で強靭な素材を採用しており、ケースの素材はアルミニウムで、Retinaディスプレイを保護するのはIon-Xガラス。これらの素材の組み合わせによって、Apple Watchコレクションよりも最大で3割ほど軽量化している。ケース色はシルバーかスペースグレイで、バンドは5色から選ぶことができる。
本コレクションのみデジタルクラウンと充電コネクタの形状がわずかに異なっているほか、化粧箱がApple Watchコレクションと比べて横長の長方形型で、ブレスレットホルダーが同梱されていない。
Apple Watch Edition
「Watch Edition」という名の通り、コレクションの中でも時計としての美しさ、洗練さが表現されており、主としてフォーマルな場での利用が想定される。
ケースの素材は18Kイエローゴールド / 18Kローズゴールド。Retinaディスプレイを保護するケースの素材は、Apple Watchコレクションと同様にサファイアクリスタル。
化粧箱のデザインはApple Watchコレクションと同じだが灰色で、化粧箱自体に充電コネクタが埋め込まれており、Apple Watch Editionを設置するだけで充電が可能となっている。
Apple Watch Series 1
2016年9月16日に後述のSeries 2と同時に発売されたモデルで、第1世代をリファインした内容となっている(CPUが変更となった以外は第1世代と同じ)。コレクションはアルミニウムケースとスポーツバンドのみ。
Apple Watch Series 2
2016年9月16日発売。前モデルの「Apple Watch」「Apple Watch Sport」が統合された。CPUにはApple S2チップが採用されている。非接触型ICカードであるFelicaが搭載され、Suicaが利用可能となった。
ラグジュアリーで上品な光沢感のステンレススチールケース、軽さと肌への馴染みやすさが追求されたアルミニウムケース、という2種類のケース素材が用意されているのに加え、様々な状況に対応する種類多くのバンドがラインナップされており、ビジネスシーンからスポーツシーンまで多種多様な状況で利用可能となっている。ケースがステンレススチールの場合のディスプレイ素材はサファイアクリスタル、アルミニウムの場合はIon-Xガラス。
「Apple Watch Edition」は前モデルから継続。ケースが18Kからセラミックに変更された。ディスプレイ素材は引き続きサファイアクリスタル。バンドはスポーツバンドのみ。
Apple Watch Series 3
2017年9月22日発売。コレクションは前モデルから継続して「Apple Watch」と「Apple Watch Edition」の2種類。CPUにはApple S3チップが搭載されている。
新たにGPS+Cellularモデルが用意され、Apple Watch単独で通信が可能となった(一部の操作は引き続きiPhoneとの連携が必要)。
ケースはアルミニウムとステンレススチールの2種類。ディスプレイ素材は、アルミニウムケースがIon-Xガラス、ステンレススチールケースがサファイアクリスタルとなっている。
Apple Watch Series 4
2018年9月21日発売。当モデルから「Apple Watch Editon」が廃止され、コレクションの概念がなくなった。CPUはApple S4チップを採用。
ケースのサイズが前モデルから比較して大きくなり、ベゼル幅が細くなったことで表示部分が30%増大している。
電気式心拍センサーが新たに搭載され、心電図の計測が可能となった。
Apple Watch Series 5
当モデルからディスプレイの常時表示が可能となった。磁力計が新規搭載され、コンパス機能が利用可能となった。
デザインとサイズは前モデルから変わらず。ケース素材はセラミックが復活したほか、新たにチタニウムが登場している。
Apple Watch Series 6
血中酸素濃度センサーと常時高度計、超広帯域通信用のU1チップ、UWBアンテナなどを新たに搭載している。
デザインと大きさは前モデルからほぼ変わらず。ケース素材のセラミックは再度廃止された。
Apple Watch SE(第1世代)
Apple Watch初の廉価版モデル。Series 5から常時表示ディスプレイ、心電図センサーが省かれており、Series 6で採用された血中酸素濃度センサーなども搭載されていない。
デザインと大きさはSeries 5と変わらず。ケース素材はアルミニウムのみ。
Apple Watch Series 7
シリーズ初となる防塵機能が搭載されており、最高等級のIP6X認定を受けている。
サイズが前モデルから大きくなり、45mmと41mmの2種類となった。
Apple Watch Hermès
フランスのファッションブランド「エルメス」とのコラボレーションモデル。「Apple Watch」コレクションをベースに、エルメスデザインのバンドと文字盤が用意され、ケース背面にはブランド名が刻印されている。
ケースはステンレススチールで、カラーはシルバーのみ。バンドは「ドゥブルトゥール」「シンプルトゥール」「カフ」の3種類。
ハードウェア
ケース
Apple Watchの本体部分は「ケース」と呼ばれる。
ユニボディ技法で製造されるケースには、サイズと素材に複数のバリエーションが存在する。サイズは「38mm」「42mm」の大小2種類、ケースの素材は「ステンレススチール」「アルミニウム」「18Kイエローゴールド/18Kローズゴールド」の3種類(さらに素材ごとにカラーが2種類)が用意されている。
サイズは購入時に好きな方を選択できるが、素材については後述のコレクションごとに用いられるものが決められており、例えば「Sport」コレクションを購入する場合はケースはアルミニウムのみで、ほかの素材を選ぶことができない。
ディスプレイ
ケース前面にはRetinaディスプレイのタッチパネルが備わっており、それを保護するガラスの素材は、後述のコレクションによってサファイアクリスタルまたはIon-Xガラス(アルミノ珪酸ガラス)のいずれかが用いられている。どちらの素材も高い硬度を持つが、下記の通りサファイアクリスタルのほうがより硬く、Ion-Xガラスのほうが軽い。
また、タッチ部分にはディスプレイへの圧力の強弱を感知する「感圧タッチ」を搭載しており、軽く触れるタップ操作なのか、深く押し込むプレス操作なのかによって、行われる処理を変えられるようになっている。
背面
ケースの背面には光を使ったセンサーが埋め込まれ、コレクションによってサファイアレンズのついたセラミックカバーかIon-Xガラスレンズのついた合成裏蓋で保護されている。
また、“Taptic Engine”というリニアアクチュエータ(直線往復駆動装置)が内蔵されており、腕に触覚的な刺激を与える、つまり腕を叩くことで、通知などを知らせることができる。
デジタルクラウン
右側[3]には「デジタルクラウン」と呼ばれる、旧来の腕時計についているリューズ(竜頭)のようなダイヤルが搭載されている。
このデジタルクラウンは、画面の小さな本製品を快適に操作するために開発された新たな入力装置であり、回すことで画面のスクロールやズーム操作を、押し込むことでホーム画面へ戻る操作を行える。
バッテリー
コネクタをマグネットで裏蓋に吸着させるだけで充電できる非接触充電が採用されている。
Appleが2015年3月に実施したテスト[4]によると、普通の使い方をした場合、バッテリーは最大18時間持続し、連続通話時間は最大3時間、オーディオ再生は最大6.5時間、また、時計としてのみ使う場合には最大48時間、更に、省電力モードになることで最大72時間持続する。テスト環境の詳細は脚注のリンク先を参照されたい。
搭載OS
詳細は、記事「watchOS」を参照。
Apple WatchのOSは、新たに設計されたOS「watchOS」が採用されている。2015年9月時点の最新バージョンは「2」。
iPhoneと連携させ、一部の重い処理はiPhone側で負担し、結果をApple Watchへ表示させる仕組みを持つ。ホーム画面には円形のアイコンが蓮コラ蜂の巣状に並び、指の動きにあわせて自由に移動させることが可能。また、可読性の高い書体“San Francisco”が独自に設計されている[5]。アプリの開発は、アプリ開発ツールセット「Watchkit」で行う。Watchkitは2014年11月18日から提供された(「外部リンク」の項に配布先アリ)。
余談
Apple Watchの名称
2013年には日本を含む複数の国で“iWatch”の商標権をAppleが取得しようとしていることが確認された為、“iWatch”を発表すると思われていたが、イタリア企業Probendiが欧州共同体において2008年から商標権を所有していたり[6][7]、時計メーカーSwatchが自社製品の“ISWATCH”と紛らわしいとして反発したり[8][9]していたからか、“Apple Watch”として発表された。過去にも同様のトラブルはあったが、例えばiPadの時は、中国系企業Proviewと裁判を重ねた結果、6000万ドルを支払うことで和解[10]している。
しかし、Appleがスマートウォッチを作るなら“iWatch”だろうという予想やコンセプトデザインは商標登録出願よりも前から数多くあった為、発表後も本製品をiWatchと呼ぶ人物・メディアは後を絶たない。ティム・クックCEOもそのうちの一人らしい[11]ので、Appleも発表直前までiWatchとして開発を進めていたであろうと思われる。
Apple Watchとマーク・ニューソン
Apple Watchのデザインには、2014年にAppleへの入社が報じられたデザイナー「マーク・ニューソン」が関わっているとされている。
マーク・ニューソンは、タイム誌の「世界でもっとも重要な100人」に選ばれた経歴を持つ世界的な工業デザイナーで、auの携帯電話「talby」(タルビー)や、ナイキのスニーカー「ZVEZDOCHKA」(シュベドッカ)、味の素のビンなどのデザインを手がけている。Appleの最高デザイン責任者であるジョナサン・アイブとは旧知の仲であり、これまでにも限定版のレッドカラーMac Proや限定版ライカカメラなどをふたりの共同作品として発表してきている。
マーク・ニューソンが1994年に立ち上げた腕時計ブランド「IKEPOD」(アイクポッド)の腕時計ラインナップは、「ソラリス」のメッシュバンドや「ヘミポッド」のラバーバンドなどがApple Watchのミラネーゼループやスポーツバンドと同一のデザインをしており、そのことから、氏のApple Watchへの関わりについては早くから噂が立てられていた。
関連動画
公式動画
その他
関連静画
関連リンク
関連項目
脚注
- *発売地域は豪/加/中/仏/独/港/日/英/米。なお、本製品の発表において、ティム・クックCEOが故スティーブ・ジョブズ前CEOの愛用したフレーズ「One more thing」を初めて使用している。
- *IEC規格60529にもとづくIPX7等級の耐水性能。「splash and water resistant」だが「waterproof」ではない。
- *左腕にはめる場合。右腕にはめる場合も、前述したように左側に置くことが可能。
- *Apple - Apple Watch - バッテリー

- *Appleは1984年にも同名の書体を発表しているが、それとは全く別種である。
- *TMview

- *Probendi

- *watson - iSwatch vs. iWatch: Die Schweizer Uhrenfirma Swatch geht weltweit gegen Apple vor

- *Swiss-based watchmaker Swatch anticipating Apple’s market entry by fighting for ‘iWatch’ trademark | 9to5Mac

- *Apple pays $60 million to settle China iPad trademark dispute | Reuters

- *(動画が流れます)David Muir Exclusive: Tim Cook on Keeping Jobs in America | Video - ABC News

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