ATRACとは、ソニーが開発した音楽の規格であり、ウォークマン苦戦の原因とも言われる規格である。
概要
名称は「Adaptive TRansform Acoustic Coding」の頭文字から取られている。
規格の種類が豊富なのだが、これはオリジナルの1がバージョンアップした訳ではなく、互換性のない別規格である。
現在ソニーはこの混乱を収める為に全てを「ATRAC」としているが、実際はこのように分かれている事を覚えておいて頂きたい。
以下、その種類について簡潔に説明する。
なお、この規格をパソコンで再生するにはまず「SonicStage」「x-アプリ」が必要となるのだが、この規格自体ウォークマンを使っていない人にはあまり馴染みのない規格なので・・・
ATRAC1
主にミニディスク(MD)で採用されている。
なお、ver.1の出来ない子っぷりがATRACの音質への印象を悪くしてしまう事となる。
ATRAC2
1994年に発表され、ステレオ録音しか出来ない通常のミニディスクの代わりとして使用された。
ATRAC3/ATRAC3plus
ATRAC2をベースにしており、1999年に発表された。現在よく利用されるATRAC規格でもある。
3と2002年発表の3plusに互換性は無いのだが、一まとめにしてカタログに掲載される事が多い為ここでも一項目にまとめている。
ファイルの拡張子は本来「aa3」だが、OpenMGによる暗号化がされた場合は「oma」もしくは「omg」となっている。
なのでもし人から貰った音楽ファイルを再生出来なかった場合は拡張子を見てみるといいだろう。前述の拡張子(だいたいがoma)だったら諦めて「SonicStage」「x-アプリ」を入れるか、くれた人に「MP3で渡せ!」と文句言ってください。
なお、ウォークマン以外ではPSPやソニエリ製ケータイで採用されている。が、ソニーグループ製の多くの機器に対応している「Media Go」でCDを取り込む際にはATRAC3は選択出来ずMP3とAACのみが選択出来る他、PlayStation Vita等はATRAC3には対応していない(※Media GoではATRACファイルは音楽ファイルとしてではなく、その他のファイルと認識される)。
2023年現在発売されているハイエンドウォークマンでATRAC3系統や下記のATRAC Advanced Losslessは利用できない。ただし、ウォークマン対応のPC向けソフトウェア「Music Center for PC」にはATRACファイルをAACまたはFLACへ変換する機能が付加されている。このため、ライブラリ上にあるATRACを変換のうえウォークマンで利用することが可能となっている。
ATRAC Advanced Lossless
他のATRACが非可逆圧縮なのに対しこれは唯一可逆圧縮である。
現在発売されているメモリータイプのウォークマンは対応しているが、ミニディスクなどは非対応である。
参考:ウォークマンの苦戦
メモリースティックタイプのウォークマンが発表される前は「MP3対応に違いない」という期待があった。が、ソニーは見事にその期待を裏切った上で「ATRAC3」のみの対応としたのである。
とりあえず「ソフトによる変換」という方法があったが、そんな面倒な事をユーザーがいちいちしたい筈も無く、後発のiPodにユーザーを取られていく。
そして2004年、HDDタイプの「NW-HD1」を発表した際「iPodを追い抜く」とソニーの偉い人は言ったのだが、ATRAC3/3plusのみの対応だった事でユーザーがコアなソニーファン以外付かず、当時のSonicStageの出来ない子っぷりがそれに追い討ちをかける事となった。
この結果、2004年の秋にようやくMP3対応へ方針を変更。合わせてSonicStageの改良(ver.3の投入)が行われた。
→「SonicStage」「ウォークマン」
関連項目
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