ED-209とは、アメリカの映画「ロボコップ」に登場するロボットである。読みは「エド・ツーオーナイン」である。
概要
EDとは「Enforcement Droid」の略称であり、警官のロボット化を目指したものであった。警察官は一般に公務員であり、税金の許す範囲で人員が賄われる以上はその数も無限ではない。まして人である以上は給料や殉職、各々の意識の問題はついて回る。ロボコップにおけるデトロイト市は民間企業たるオムニ社の傘下であり、人件費などコストの問題には人一倍敏感である。事実、劇中ではしばしば警官の人員不足やストライキの描写が描かれており、不平不満を言わず、給料もいらない、生命の問題もないロボット警官の誕生はこうした問題を解決するであろうと思われていた。
そんな中で制作されたED-209はオムニ社の重役であるリチャード・ジョーンズ肝いりの作品であり、両手にガトリングガンを備え、二足歩行を可能とした逆関節の脚部などはまさに次世代の治安維持を印象付けるロボットの姿である。この他、何故かミサイルがあったり、人工知能を組み込んで、犯罪者が降参した際にはそれを認識して過剰な行動に出ないようになっている。また人工音声も組み込んでいる。
実際の運用
治安維持と銘打ってるわりには明らかに過剰な火器類はジョーンズがこれを足掛かりにして、さらに大量配備が望める軍需産業へ売り込みをかける皮算用をしており、社内会議で社長の目の前でデモンストレーションを行った。これには社長へのアピールの他にも、ライバルであるロバート・モートンへの牽制もあった。
ところがこのED-209はとんでもないぽんこつであった。犯罪者役として役員の一人が銃を構えた後に銃を床に捨てたのだが、落とした場所がカーペットの上だったせいで捨てた際の音を認識できず、反撃態勢に入ったのである。カウントダウン終了の後、その役員は文字通り蜂の巣にされてしまった。配線をぶった切って機能は停止したのだが、ジョーンズはこの大事な場面で赤っ恥をかき、社長からの信頼を失ってしまった。なお、その様子をライバルのモートンがほくそ笑んでいたのは言うまでもない。
ちなみにジョーンズは以前よりアレックス・マーフィーを殺害したクラレンス一味と結託し、警官を殺させてわざと治安を悪化させるという非人道的な自作自演をしてまでED-209導入の必要性をしきりに訴えていたが、この顛末で元のもくあみとなった。なおここに書かれた設定は映画版には存在しない、ノベライズ版のみに書かれているもので、この他にもモートンがロボコップの素体となる警官を確保する為にわざと危険地域に配属させた上で負傷時には救急隊の到着を遅らせたり、映画版でマーフィーが配属されて直ぐに殉職となった警官がクラレンス一味に襲撃される顛末が書かれているなど、描写が深くなっている。いずれにせよ、オムニ社の連中は「悪党」ばかりである
再び本編に話を戻すと、この失敗の後、イニシアチブを握ったモートンは予備のプロジェクトであるロボコップ計画を実行する。そうなると面白くないのはジョーンズである。彼は一蓮托生とも言えるクラレンスを使ってライバルのモートンを殺害し、力づくで権力闘争をものにした。その後、ED-209を使ってライバルの設計したにっくきロボコップとの直接対決をさせたが、火力では圧倒的であってもセールスポイントのはずであった二足歩行について、階段が下りられないという弱点が露呈、降りようとしたら見事にすってんころりん、さらに起き上がれないという致命的な弱点をさらしてしまった。その後、ロボコップがジョーンズを逮捕しに向かった際には門番用として運用されていたが、クラレンス一味の持っていたキャノン砲ですっ飛ばされて下半身のみとなってしまった。
ここまでの顛末はロボコップ1作目、及びノベライズ版からであるがとても治安維持なんて任せられる代物でない事がお分かりになるであろう。その武装と人工知能の行動は過剰防衛どころか殺人そのものであり、欠陥ってレベルじゃねえぞ!というクレームが殺到しそうな製品である。ちなみに陸軍から発注があったと劇中では語られており、現状で配属されようものなら平時であっても誤作動必死で未亡人製造機となる事は必至である。まさに死の商人と言うべきであり、こんな欠陥品を売り込もうとするオムニ社も大概であるが…
その後の運用など
「ロボコップ2」で何と、司法省の警備用として採用された。さすがの国防総省もテスト段階で問題ありと判断したのか、当然の事、採用見送りとなったが、司法関係の警備用程度であれば自社の警備もやっているから問題ないと売り込みをかけた(かどうかはわからないが)結果、採用と相成ったのかもしれない。曲がりなりにも公官庁向けとして導入されたって事でちょっと回り道だけど、ここでアピールしておけば、そのうち国防総省というゴールにたどり着ける。やったね、ジョーンズちゃん!(もう死んでるけど)
…と言う風には行かないのが世の常であり、冒頭にニュースでマンホールの穴に片足がはまって動けなくなってるところをレッカーけん引されたり、故障している映像が全米で放映されるという恥の上塗りっぷりを露呈。新たに信頼性の面で難ありという問題が発生。司法省の採用担当者、及びオムニ社の設計・開発部門の目は節穴なのかと小一時間問い詰めたいところだが、さらにノベライズ版ではアン・ルイス巡査がED-209の股を潜り抜けた後、追いかけようとしたところ、前のめりになってまたもやすってんころりんと言う具合にオムニ社は致命的なウィークポイントを全く改良していなかった。本来、商品とは販売し続ける中で弱点の解消や時代に合わせた絶え間ない改良の末に熟成され、その企業共々市場の信頼を得るのであるが、独占企業故の驕りなのか、それとも回す予算がなかったのか、何処かの先生ではないが「まるで成長していない…」である。進歩を忘れた企業に未来はないと言うのは同じくアメリカに居を構える某自動車会社の例で実証済みのはずである。いずれにせよこの後に起こるオムニ社の大いなる崩壊を予見するがごとくの姿であった。
翻ってロボコップ2号の計画は遅々として進まず、やっとの思いで素体を見つけ完成しても自らの肉体を奪われた事による精神的なショックより作動をしなかったり、発狂の末の「自殺」など失敗続きであり、その予算も億単位のものであった。そして招き入れた精神学者の助言により、あろうことか素体に凶悪な犯罪者のものを使用、ED-209が萌えられるぐらい可愛く見える程にたちの悪いロボコップ2号の大暴れ&損害賠償、そしてそれがテレビ中継された事による致命的なイメージダウン、おそらく失敗作を含めたロボコップ2号開発で生じた損失等々の末に3作目ではオムニ社は日系企業「カネミツ」に買収と言う憂き目にあう。そういえば途中で何かお偉い方のじいさんが宙を舞ったように見えたけど、気にしない。さてそんな中でオムニ社の最後の砦()のED-209はというと、この期に及んで見事にハッキングされるという具合に最後の最後まで我々にぽんこつぶりを見せつけてくれたのであった。
造形など
ED-209の独特の動きはストップ・モーションを使用したものである。今でこそCG全盛であるが、そんな時代ではなかったので一つ一つ手をかけて撮影した。その結果、細かい所はともかく恰も本当に動いているかの如くの動きとなった。
また、劇中でロボコップと対比されるぽんこつぶりが萌えの対象となり、その圧倒的な存在感と相まってちょっとした人気となっている。そしてこの技術を担当したフィル・ティペットを始めとしたスタッフはよほどED-209に愛着を持ったのだろうか、彼らはDVDの特典映像においてED‐209の説明の中で1作目のラストでキャノン砲ですっ飛ばされたED-209の下半身にくるくる回るタケコプターのような謎の部品はスタッフがどうしても外せない部分としてつけられた肝いりの代物であると語っている。
兄弟機
- ED-260
アニメのロボコップに登場したED-209の後継機と言うべきロボット。外見はED-209そっくりであり、それに加えてマジンガーZもびっくりなロケットパンチや飛行機能が付いているが、ただのUターン禁止に重火器を使う辺り、ぽんこつさも先代譲り。なお、設計したマクナマラ博士曰く「OCPが予算をくれないからだ」との事。
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