概要
Explainedクラスのオブジェクトはやや特殊な立ち位置にある。通例、オブジェクトというのは財団がアノマリーであると認定し、確保、収容、保護する対象と定めたものである。
しかしながらExplainedは上述の通り、「もはや異常とはみなされなくなった」オブジェクトとして認定されているのである。これは「その原因・メカニズムが解明されたから」。「異常であったがその異常を失ったもの」であるNeutralizedや、「異常であったが財団が破壊したもの」であるDecommissionedとは根本がことなっている。
一例を挙げるならば、SCP-1851-EX - 『ドラペトマニア/逃亡奴隷精神病』が挙げられるだろう。このオブジェクトは黒人奴隷が苦役に耐えかねて脱走することを「異常」であるとみなしていたが、後に「非異常」と捉えるようになった、というものである。誰だって苦役なんかに耐えられるわけがないのに、かつての白人はこれを黒人特有の精神病と見做していたのであり、それを皮肉った作品である。
SCP-8900-EX - 『青い、青い空』の知名度の高さからこのオブジェクトクラスを『財団の失敗』であるかのように捉える向きもあるが、本来は異常を解明し非異常にするということから見ても分かる通り、財団の敗北どころか勝利である。SCP-8900-EXで「諸君、我々は敗北した」と綴っているのは、異常を人々の認識を変えてむりやり非異常ということにしたためであり、通常科学的に説明がつく事柄であるとわかることは、火を恐れるばかりではなく活用することに成功したご先祖様のように、人類の進歩であるためである。
しかしながら、Explainedクラスオブジェクトには後味が悪い作品が多いことも事実。手放しに喜べるものばかりではないと考えると、やはり『財団の失敗』をある意味では体現するクラスなのかもしれない。
もはや異常ではないことを明確に記すためか、オブジェクトナンバーは通常とことなり、最後に「-EX」が付記される (異常であるとみなされていた時系列において書かれた報告書文中では「-EX」がついていない場合もある) 。このことから、「SCP-EX」という呼ばれ方もなされる。
オブジェクト例
SCP-920-EX - Evil Workgroup Printer (邪悪なネットワークプリンタ)
つながっている電子機器に異常を与えるネットワークプリンタであり、関わったデバイスに超常的影響を及ぼして、PCを弄ってファイルやメールを勝手に送信したり、所在地のエレベータや各種システムまで弄くり始め、更にこれを処分しようとした人を車に閉じ込めて一酸化炭素で殺害するという恐ろしいプリンタである。
財団はこのプリンタをありとあらゆる電子的通信手段をシールドして収容していたが、ある日「一切の異常が見られないので有効に資源を活用すべく通常業務に用いる」ことが決定した。これSCP-920-EXの影響受けてない?
SCP-1841-EX - Lisztomania (リストマニア)
とある作曲家・ピアニストが弾いた楽曲が若者、とりわけ女性に影響を及ぼし、曲のテンポに合わない踊り、興奮した会話を喚起し、演奏中のピアニストに触れようとしたり、所持品はおろかゴミ、切れたピアノ弦を持ち去ろうとする。葉巻の吸い差しやコーヒーのかすでさえ争奪戦が突発するうえ、SCP-1841感染者は宿舎にまで押し入ろうとさえした。また女性は本来の貞淑さを失い、自身の夫よりも当該ピアニストと親密であるという妄想を重ねる。その姿を財団は娼婦のようであるとまで形容している (本報告書の執筆は1878年であることに注意) 。このピアニストは亡くなったが、後に同じような効果をエルヴィス・プレスリー、ジョン・レノン、ジミー・ヘンドリックスなどが示したことで財団は彼らを暗殺することに。
だが、この振る舞いは現代でもアーティストやアイドル、声優、歌い手、実況者等のファンに結構見られることに着目したい。いつの世もファンは過激になるというだけで、異常だけど異常ではない。
SCP-1851-EX - Drapetomania (ドラペトマニア/逃亡奴隷精神病)
黒人奴隷が、神に与えられた職務と土地を脱し、彼らの状況に同情する領地に移住したいという願望を持つ心の障害である。……いや、そりゃ奴隷労働なんて逃げ出したくなるよね?
この文章は財団の前身組織のひとつである『全米確保収容イニシアティブ』の主任研究員S. Cartwrightが提言した内容に基づいて、イニシアティブがまとめたものであるという形式になっているが、このS. Cartwrightとは実在の精神科医サミュエル・A・カートライト (主任研究員S. Cartwright同様にドラペトマニアという精神病を提唱したことで悪名高い) をイメージしている (あるいは、カートライトが財団前身組織の一員だったのだという意味合いで記述した) ものと思われる。
本報告書では「Dクラス職員とはもともと『ドラペトマニア』クラス職員だったのだが、財団となる各組織の統合に先立ち他組織からの批判を恐れ現在の死刑囚が務めるプロトコルに変更された」という意味合いでのDクラス職員の起源を綴っており、かなり面白い記事となっている。
SCP-3000-EX - Modified Hospital Beds (改造された医療用ベッド)
SCP-3000-EX | |
基本情報 | |
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OC | Explained |
著者 | psul |
作成日 | 2017年4月11日 |
リンク | SCP-3000-EX![]() |
SCPテンプレート |
「アーリントンの人食い」として逮捕されたカール・フレイザーの家にあった4台の医療用ベッド。子供をこのベッドの上で拘束し、自分たち自身の肉を食わせることで彼らの美を止めようとしていたらしい。非常に異常な男であり、異常な考えをしていたが、正直財団としては非異常性のものであった。財団が彼やそのベッドを収容したのも、彼が見せた食人や儀式を思わせる発言に異常があるとふんだからである。
結果として異常はないとみた財団は警察にこのベッドとカール・フレイザーを返すことに。しかし警察は財団が証拠になるベッドと、容疑者であるカール・フレイザーを収容した際に記憶処理を施されたため、カール・フレイザーがなぜ逮捕に至ったのか、その決定的な証拠を含め忘却していた。この証拠不足の状態で裁判が開かれればどうなるか、読者諸兄らも考えてみてほしい。
SCP-8900-EX - Sky Blue Sky (青い、青い空)
SCP-8900-EX | |
基本情報 | |
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OC | |
著者 | tunedtoadeadchannel |
作成日 | 2010年12月18日 |
リンク | SCP-8900-EX![]() |
SCPテンプレート |
可視スペクトルに影響を与える複雑な知覚現象であり、1800年代に特定の撮影技術の副産物として発生した。当時は写真乾板のみに限定されていたが、1935年にフィルム技術実験が起きた際に拡散してしまい――。
このオブジェクトの解釈についての論は非常に燃えやすく、ニコニコ動画では上がる動画がもれなく炎上するという事態も引き起こした。後にディスカッションで作者がスポイラーを上げていることが知られたが、その後はスポイラーを『正解』として絶対視する者と、「作者のスポイラーと現実の作画技法の矛盾」を指摘するものでやはり喧々諤々の議論に発展するという数奇なオブジェクト。現在では、「ヘッドカノン」を理解する上で重要なオブジェクトとして解説されることが多い。
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