Illustratorとは、アドビシステムズ社が販売する、ベクタ形式と呼ばれる画像(ベクターイメージ)を主に扱うソフトウェア(ドローソフト)である。
概要
画像を数値や式として表現するベクターイメージを作成・編集するソフトで、直線やベジェ曲線、円などの図形を組み合わせて描画を行う。文字入力、着色、その他多くの機能があり、イラスト制作や印刷物のデザインなど、DTP業界でのデファクトスタンダードとなっている。また競合他社の類似ソフトウェアとして、Macromedia FreeHand(2005年、アドビシステムズ社の買収により開発停止)、CorelDRAW、フリーソフトのInkscapeなどが挙げられる。
ソフトウェアの特徴
主な利点
- 画像を劣化させることなく拡大・縮小・変形が容易にできるため、大きさを問わず様々な媒体への利用が可能。
- 出力機がもつ最高解像度での出力が可能で、高品位な表示、出力結果が得られる。
- 色の変更や輪郭の修正などが比較的容易。
主な欠点
- 写真や油絵、水彩画などで見られるような、輪郭がはっきりしない複雑な色の表現、再現が困難。CS5にて筆ツール等が追加され、ある程度はベクター環境での有機的表現が可能となった。
- 一般的なフォトレタッチツールのように、カーソルの動きがそのまま線とならないため扱いに慣れが必要。
- ドローソフトの中では価格が高価であり、PhotoshopやPremiereなどでリリースされている廉価版(Elements)も存在しない。
歴史
元はアドビシステムズの社内用として用いられるフォント制作や、ページ記述言語である「PostScript」の編集ソフトウェアであった。1985年に初期版としてアップル社のMacintosh版がリリース。ちなみに当時のアドビシステムズ社の売り上げはそれらによるアップル社からのライセンス使用料が大半であり、PostScriptのライセンス供与がビジネスの中核でもあった。そして1986年(1987年1月出荷)に一般向けソフトウェアとしてMac OS版Illustrator 1.0を発表し、ソフトウェア販売市場に参入。アドビシステムズ社が初めて一般向けに開発、販売したソフトウェアであり、IllustratorはDTPの歴史と共に歩んだソフトのひとつとして長い歴史をもっている。
リリース履歴
バージョン | プラットフォーム | 発売日 | コードネーム |
1.0 | Mac OS | 1987年1月 | Picasso |
1.1 | Mac OS | 1987年3月 | Inca |
88 | Mac OS | 1988年3月 | (Picasso?) |
2.0 | Windows | 1989年1月 | Pinnacle |
3 | Mac OS、NeXT Step、他のUnix | 1990年10月 | Desert Moose |
3.5 | SGI | 1991年 | |
4 | Windows | 1992年5月 | Kangaroose |
3.5 | Solaris | 1993年 | |
5 | Mac OS | 1993年6月 | Saturn |
5.5 | Mac OS | 1994年6月 | Janus |
4.1 | Windows | 1995年 | Pavel |
6 | Mac OS | 1996年2月 | Popeye |
7 | Mac OS/Windows | 1997年5月 | Simba |
8 | Mac OS/Windows | 1998年9月 | Elvis |
9 | Mac OS/Windows | 2000年6月 | Matisse |
10 | Mac OS・Mac OS X/Windows | 2001年11月 | Paloma |
CS(11) | Mac OS X/Windows | 2003年10月 | Pangaea/Sprinkles |
CS2(12) | Mac OS X/Windows | 2005年4月27日 | Zodiac |
CS3(13) | Mac OS X/Windows | 2007年6月22日 | Jason |
CS4(14) | Mac OS X/Windows | 2008年12月19日 | Sonnet |
CS5(15) | Mac OS X/Windows | 2010年5月28日 | |
CS6(16) | Mac OS X/Windows | 2012年5月11日 | |
CC | Mac OS X/Windows | 2013年6月18日 |
関連用語
ドローソフト
画像の描画の際、主にベクタイメージを用いるソフトウェアの総称。ビットマップ画像と違い、内部表現をベクタ形式にしているところに特徴がある。ちなみにドローソフトという名前の由来はMacintoshの初期のグラフィックソフトであったMacDrawに由来する。
ベクタ形式、ベクターイメージ
ベクトルや微分の演算処理を用いて描き出した形式、またはその画像。座標、太さ、色、それらの線に囲まれた面の色、変化などを数値で表して描画する。解像度の概念がないため、品質の劣化なくサイズを変更可能である(Illustratorの初期設定値は800dpiであり、出力機に合わせる際は変更が必要)。近年では紙媒体のみならず、Web用のコンテンツでベクターイメージを扱う機会も増えており、Illustratorで制作したベクターイメージをFlash形式で出力することも可能である。
ベジェ曲線
フランスの自動車メーカー、シトロエン社のド・カステリョと、ルノー社のピエール・ベジェにより別々に考案された、アンカーとハンドルの座標を元にして描かれる曲線。ベジェ曲線によるベクターイメージの制作は、Illustratorの主たる機能のひとつであり、これを用いることで簡単かつ強力な描画が可能となった。またベジェ曲線は先述のソフトウェアなど、多数のソフトウェアに採用されている。ちなみに曲線の研究はド・カステリョの方が先んじていたが、その論文が公知とならなかったためピエール・ベジェの名が冠されている。
ニコニコ動画との関連
ニコニコ動画においてはこのソフトウェアの名前を目にする機会は多いとは言えず、関連動画やタグも少ない。 動画制作との関連も薄く、他のアドビシステムズ社の製品に比べ、名前や機能が知られていないのが現状といえる。
関連商品
Windows対応ソフトウェア
Mac OS X対応ソフトウェア
関連書籍
関連動画
Illustratorを用いて制作されている動画の一部を紹介。
関連コミュニティ
関連項目
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