NVIDIA(エヌビディア)とは、GPUで有名な半導体メーカーである。
概要
1990年代後半において、DirectX5にいち早く対応したビデオチップを開発し、実用レベルの3Dグラフィック表示への対応に成功し、名を上げる。
その後、DirectX7でのハードウェアT&Lへもいち早く対応し、他社を出し抜きビデオチップでの最大シェアを獲得した。しかし、ATIテクノロジーズ社、および買収したAMDの台頭によってPC向けでは人気を二分するようになっている。
家庭用ゲーム機では初代XBOX、PS3などの採用実績があり、現在はCPUを含めてAMDの独占状態となっているが、任天堂がNintendo Switchで共同開発したカスタム版Tegraプロセッサーが搭載されたことにより、AMD一強ではなくなった。
一方でスマートフォンやタブレット端末向けとして、ARMアーキテクチャーを採用したTegraを開発、一定のシェアを手にしている。
現在(2019年)、8割ほどのシェアをNVIDIAが持っており、結局独占状態となってしまった。
(ブランド力、ワットperパフォーマンスなどいくつか要因はあるだろうが)
また、近年自動運転の需要の高まりを受け、CUDAコアを多数搭載した車両向け演算装置の開発を手掛けるようになった。
歴史
創業~1990年代
1993年設立。廉価でありながら高機能なGPUを発売、90年代末から短期間で世代交代を繰り返して業界全体の性能水準を押し上げ、次世代製品の開発が頓挫した当時の覇者、3dfxを瞬殺(後に吸収)。グラフィックチップ界での地位を不動のものとした。
1995年に、独自のライブラリーを使って3Dグラフィックを表示させる「NV1」を開発したものの、対応ソフトがセガの一部のものに限られてしまい、普及には至らなかった。そこでDirectXに対応したグラフィックチップを開発する方向にシフトする。
なお、同年にカナダのATI Technologies(以下、ATI)が「ATI RAGE」シリーズを発表し、これ以降NVIDIAとの戦いが続いていく。
1997年にDirectX5対応の「RIVA 128」をSGSトムソン社と共同開発し、優れた描写速度を見せて頭角を現した。さらにその後、RIVA 128のコアを2つ搭載したRIVA TNTを経て、1999年にハードウェアT&Lにいち早く対応した「GeForce 256」を発売した。
これにより、DirectX対応チップのトップに輝くだけでなく、当時3DゲームのスタンダードとなっていたVoodoo2を上回る性能を見せ、徐々にVoodooからDirectXへと、3DCGゲームの流れを変えていった。
2000年代
2000年、90年代から競争してきたATIが、「RAGE」シリーズを終了して新たな看板となる「RADEON 256」を発表。「RIVA vs RAGE」の構図が今度は「GeForce vs RADEON」となり、シリーズを移して新たな性能競争が始まる。
2001年には、Voodooシリーズを手がけた3dfxが倒産し、その一部を買収した。 それにより、SLIなどの技術が取り込まれ、更なる性能向上を見せるようになった。その一方でチップセットの分野にも進出し、AMDのCPUである「Athlon」向けチップセットとして「nForce」を発売、GeForceを受け継ぐ高性能グラフィックチップを統合することで、AMD CPU用チップセットとして大きな売り上げを得た。
しかし2006年に、チップセットで半ば提携状態だったAMDが、ATIを買収し自社のグラフィックチップに採用したことで、今度はATIではなくチップセットで協力してきたAMDと競合する関係に変わった。関係の変化により、nForceシリーズは2010年で終了することとなった。
2009年、AMDが「RADEON HD5000」シリーズを発表する。今までのAMDは「グラフィックチップに速さはあるものの消費電力が大きい」という状況が続いていたが、ついにGeForceの性能を上回りつつ消費電力の低さでも上回る製品がAMDから出てきたことで、NVIDIAは苦境に立たされるようになった。
また、インテルやAMDがCPUにミドルレンジに入るほどのグラフィック機能を持たせ、さらにGeForceシリーズに組み込まれたGPGPUによる高速なエンコード処理などにも対応できるようになり、動画のエンコードなどで利用されてきたCUDAにおいても翳りが見え始めている。
ライバル企業の対応変化で既存の戦略(PCのチップセット供給)が望めなくなったため、2008年にARMアーキテクチャーを採用したCPU「Tegra」を開発。ARMコアを採用しつつGeForceで培った高性能なグラフィック機能を搭載することで、ゲームや動画再生やエンコードにも対応できるチップとなり、Android採用のスマートフォン、タブレット端末のほか、Surface RTを初めとするWindows RT端末での採用実績を持ち、今後の新しい看板として期待されている。
2010年代
2012年、GeForce 600シリーズを発表。Keplerアーキテクチャーを採用し、それまでの高消費電力のイメージを払拭し、消費電力対パフォーマンスでRADEONを打ち破ることに成功した。
2013年、GeForce 700シリーズへと移行。GPUクロックを自動上昇させるGPU BoostがVer2.0になったことで電力効率がさらに上昇し、再びAMDをリードしている。
2014年、ナンバリング(800シリーズ)を飛ばし、Maxwellアーキテクチャー採用の900シリーズを発表。ノート向けグラフィックではナンバリング通り「800M」シリーズが出ていたが、後に「900M」シリーズも登場した。
2016年、900シリーズの後継となるPascalアーキテクチャー採用の10シリーズを発表。ノート向けグラフィックは「1000M」シリーズが発表された。
2020年代
2020年9月14日にソフトバンクグループとの間でARMの買収を発表した。買収は米国や英国、EUの規制当局が懸念を示して結局成立しなかったが、NVIDIAはARMベースのCPU「Grace」を開発し、サーバー向けCPU市場に参入している。
主な事件・騒動
- 9600GT 128bit混在(2010)
- 9600GTの性能を下げて補助電源を不要にした「Green Edition」として販売・流通したものの中に、同じ値段でありながらROPユニット数を8基に、メモリクロックのバス幅を256bit → 128bitに削減した粗悪品が混ぜられていた。しかもパッケージ上では区別がつけられないというものだったため問題となった。なお、NVIDIAはこの件に関して公式プレスを出していなかった。
- GTX970 性能低下(2014 ~ 2015)
- GTX970が発表された後の2014年10月~11月くらいから各所で話題になったもので、「グラフィックのメモリ使用量が3.5GBを超えるとフレームレートが急激に低下する」というものである。Steam掲示板、およびGeForce.com掲示板にもその話題が飛び火しており、複数のメディアに記事が載せられ検証が行われた。
- 2015年1月24日に出たNVIDIAの公式見解によると、「GTX970は、GTX980に比べてメモリのクロスバー接続が少ないという制約があるため、メモリ管理を3.5GBで区切っている」とのこと。そのため、「3.5GB以上のメモリ使用が起きた場合、GTX980よりも大幅に性能が低下する」というのが原因とした。しかし、「GTX970とGTX980のメモリ周りの仕様は同等である」としていながら、実際には980よりも仕様スペックが低いことを隠したまま販売していた」として問題になった。
主な製品・技術
製品
- GeForceシリーズ
GPUのブランド名。
1999年に発売したジオメトリエンジン搭載のGPU「GeForce 256」よりこのブランド名を使用。
現在では複数のGPUを並列で使用する「SLI」技術によって性能を高めることが可能であるが、チップセットやマザーボードの対応が必要である。 - Quadroシリーズ
GeForceに、ハードな業務用途に耐える安定動作とOpenGLでのパフォーマンスを引き出すセッティングをしたもの。OpenGLでは同世代・同グレードのGeForceの十倍程度と圧倒的な速度だが、価格もそれに近い強気設定になっている。 - Teslaシリーズ
HPCおよびデータセンター向けGPU。GeForceを汎用計算でのパフォーマンスを引き出すセッティングをしたもの。PCIe版とNVLink版があるが、NVLink版は同社の専用システム「DGX-1」のみに搭載されている。 - nForceシリーズ
チップセットのブランド名。AMD・Intelの両プラットフォームに展開している。
オンボードビデオを内蔵する製品ではノースブリッジに上記のGeForceシリーズの機能を取り込んでおり、比較的高いグラフィック性能が得られる。AMDプラットフォームでは一時期事実上のスタンダードに伸し上がったが、AMDが買収した旧ATI系のチップセットを積極展開するようになった後は失速し、2010年始めにチップセット事業から事実上撤退した。 - Reality Synthesizer(RSX)
PS3に搭載されているGPU。DirectX9.0c世代のGeForce 7800GTX(G70)をベースに、一部機能を削除してコストを抑えたもの。 - X-GPU(X-Chip)
無印Xboxに搭載されているGPU。何気にプログラマブルシェーダやHD出力に対応している。
なお、これの開発にあたりマイクロソフトとNVIDIAの間に一悶着あったらしく、その結果、現行機Xbox360に搭載されているのはライバルのATI社が開発したGPUである。 - Tegraシリーズ
コンピュータ機器に必要なCPU・メインメモリ・GPU・I/O制御系等の機能をワンチップにまとめた、所謂SoC。CPU部分はARMアーキテクチャのものをベースとしている。
2~4コアのARMアーキテクチャCPUや1080p対応の動画エンコーダ・デコーダ等を搭載し、尚且つ「必要な回路のみ電源投入する」方法により「数年前のハイエンドPC並の性能を携帯機器に与える」ということを可能にした。
国内外のAndroidタブレット端末で多数採用例があるほか、マイクロソフト社の携帯音楽プレーヤー「ZuneHD」にも搭載されている。
このほか、任天堂のゲーム機「Nintendo Switch」にも搭載されている。
ちなみにアップルの「iPad2」の心臓部であるA5プロセッサは、仕様的にはTegra2に非常に近いものらしい。
技術
関連動画
関連商品
関連ニュース
- GeForce9600GTのメモリバス幅 256bit→128bit問題まとめ (2chまとめサイト 2010年)
- 「グラフィックスメモリを3.5GB以上使う局面で,GTX 970の性能が低下する」現象を,実際に確認してみた (4Gamer.net 2015年)
- 「GTX 970」GPUでグラフィックメモリ使用量が3.5GBを超えると性能低下が起こることが明らかに (財経新聞 2015年)
関連項目 |
関連リンク |
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