S県月宮とは、ネットゲーム「ラグナロクオンライン」にかつていた電波の通称、またはその人物が中心となって引き起こした一連事件のこと。
経緯
※前半部はすべてネットゲームの中で行われた会話である。
2002年8月当時、S県月宮はラグナロクオンラインのプレイヤーであったが詳しいことは知られていない。一連の事件の被害者である374(仮名)のことを「お兄ちゃん」と呼び、「妹と呼んでねお兄ちゃん」などと要求していた。これに対し374は「耐えられないのでやめてくれ」と答えるものの、「お兄ちゃんと私の仲でしょ」と押し切っていた。
主要な登場人物 | |
374 | 仮称。男性。大学生ではあるが成年。 374とはRO本スレLv417の>>374が最初の書き込みであった事から。 本人曰くAVは良く借りるが二次元エロに興味が無いのでコミケにも興味が無いとの事。 |
S県月宮 | 仮称。女性。中学生。374の報告の中では主に「デムパ」と呼ばれていた。 「S県」は彼女がT都の北にあるS県在住であった事から(事件の舞台はT都の横のC県)、 月宮はRO内で彼女のキャラクターだとされるキャラクターが月宮あゆから名前を取っていた事から。 (※ あくまで「とされる」であり、彼女本人のキャラである信憑性はかなり低い) |
アコ | 仮称。女性。アコはRO内に登場する職業の1つの略称で、彼女のキャラクターの職業でもある。 そのキャラクターの名前自体は本名をもじって付けたものであるらしく、 オフでも374はキャラ名兼ニックネームとしてゲーム内の名前で呼んでいたとの事。 374曰くグラビアアイドル並とまでは行かないが非常に可愛く天然だとの事。 未成年であるが酒好きで、374とのオフでも未成年である事を隠し飲酒していた事が最後にバレた。 |
アコ登場
2002年8月5日、374に11日のコミケに行こうと誘いをかける。374は拒否するが「妹のお願い聞けないの?」と繰り返し誘った。これも拒否すると「お兄ちゃんの住所――でしょ? 日曜日行くから」と374の住所を言い当てた。
374は自分の力ではこの問題を解決できないとしてアコに助けを求めた。アコの常識的な説得に対しS県月宮は「私とお兄ちゃんは前世からずっと一緒になるって決まってたんだもん」「ずっと昔に魔女に私たち兄妹は引き裂かれる運命」などと発言。さらに「魔女に殺される前にもう1度会うって約束した」「だからお兄ちゃんに会いに行くのがとうぜんでしょ」などと畳みかけた。その上アコのことを「私達の仲を引き裂こうとしている魔女のしもべ」と呼んだ。解決に失敗した374とアコは諦めて去ったが、その際374に以下のセリフを伝えた。
お兄ちゃんどこ行くの?
そのアコは魔女なのよ!?
お兄ちゃんそんなヤツの所に行かないで(後にProject"D"によって楽曲が製作された際、そのまま歌詞に採用された有名な一文)
ちなみに374がS県月宮の誘いを拒否した第一の理由は、同じ日にアコとオフ会を行う予定があったためである。
第1次S県月宮事件
2002年8月10日夜、374は「お兄ちゃんとはやく会いたいのでもう0時に行きます」とのメールを受信した。身の危険を感じた374は断りのメールを送信すると同時に警察に連絡。0時に出動できるように待機してもらう。自身もアパートの自室を監視できる位置へと隠れた。またこの時「早く来る」のメールを受信。
同日深夜、S県月宮が374宅を訪れる。ドア前で「374さーん来ましたよー」と大声で呼ぶものの、374は屋外で待機していたため当然反応は無かった。これに対しS県月宮は「お兄ちゃん! 大丈夫!」「誰かに捕まってるの!?もしかして魔女に捕まったの!?」と叫ぶ。さらにバッグから取り出した警棒らしきものでドアを殴打、そして破壊。374は警察に通報したのち飛び出して武器を取り上げようとする。しかし「何すんのよ!?」の叫びとともにふとももを殴打される。374が「俺の家の前で何をしてる」と機転を利かせた呼びかけを行ったことが幸いし、S県月宮は「お兄ちゃん?」と応えて破壊・暴行行為を止めた。
警察に引き渡し、パトカー内で簡単な聴取が行われるも「妹の私が来るのにお兄ちゃんがまさかお外にいるとは思わなかった」「もしかしたら魔女に捕まってるかと思って」「どうにかして助け出そうかと思った」など意味不明な発言が続いたため、署に連行される運びとなった。
S県月宮は身分証明になるようなものを持っておらず、また未成年であることも疑われた。深夜という時間もあって対応できる刑事がおらず、「お兄ちゃんには私が必要なの」「お兄ちゃんは魔女に狙われて殺されるかも知れない」「2人で救世主を探しに逃げようと約束した」などの妄言に対応できなかった。そこで唯一話の通じる374が「実はお前が前に住んでた所に実は魔女の呪いがかかっていることがわかって……」と妄想に妄想で対抗し連絡先を聞き出すことに成功する。
同8月11日未明、S県月宮の保護者が到着する。374は破壊されたドアの弁償で手を打つことにして帰宅する。その別れ際にS県月宮は「魔女の呪いのかかってる家なんか帰りたくない」「お兄ちゃんこのままだと魔女に捕まる」と暴れた。
ちなみに374は魔女(=アコ)に捕まるのは満更でもないと述べている。
第2次S県月宮事件
事の発端は先の事件のわずか10時間後の2002年8月11日正午過ぎに発生する。
一連の事件で疲れていた374は昼過ぎまで寝ていたが、S県月宮の母親からの電話に起こされた。母親は丁寧な謝罪をした後に「娘が家から出ていってしまったんですよ」と発言。身の危険を感じた374は挨拶もそこそこに逃走した。
案の定入れ替わりにS県月宮が到着、今度はドアを壊さなかったがひたすら叫ぶ。隣室の住人があまりのうるささに374の不在を告げて追い払った。
374は近所のミスタードーナツで3時ごろまで時間を潰した後、約束していたアコとのオフ会の待ち合わせ場所に移動する。374は気づいていなかったが、実はこの時点でS県月宮は374を発見している。S県月宮はこの時点で接触する腹積もりだったが、日ごろの運動不足がたたって追いつけず、結果的に尾行することとなる。
アコと合流した374は昼下がりから居酒屋へ。見た目からして明らかに未成年だったS県月宮は入店できず、およそ2時間待ちぼうけを食らった。
同8月11日午後6時、酔っ払った374とアコは居酒屋を出て移動し始める。雑談しながら人通りの少ない住宅街を差し掛かったところで、アコがうめき声を上げて倒れる。酔い潰れたと思った374は慌ててアコの方を向いたが、そこにいたのは右手に警棒をぶら下げたS県月宮だった。「お兄ちゃん大丈夫?」と問いかけてくるが、とっさに反応できなかった374を無視して「お兄ちゃんそいつは魔女でしょ?だって魔女の名前で呼んでたもん」などと言い始める。374もこれを無視し、左腕を抱えた格好で倒れているアコに「動ける?」と確認した。それを見たS県月宮は「今そいつ殺すから」と言って警棒で374に殴りかかった。そして374が持っていたカバンで防御すると
「お兄ちゃんどいて!そいつ殺せない!」と絶叫。374はあまりの剣幕に恐れおののいて固まっていたが、おもむろに立ち上がったアコがS県月宮にラリアットをぶち込んだ。首に右腕の直撃を受けたS県月宮(発育不十分な女子中学生)は一撃で倒れた。アコも再び腕を抱えて倒れたため、374は警察に通報した後、1人でS県月宮を取り押さえる。S県月宮は最後まで「魔女に殺される!助けてお兄ちゃん!」と叫び続けていた。
事件後
警察に引き渡された後、374がS県月宮と出会うことは無かった。またS県月宮と思しきラグナロクオンラインのプレイヤーを見た者もいなかった。374も「S県月宮はカウンセリングを受けているらしい」と伝えた後、終わったネタを引っ張るでもなく姿を消した。こうして主な登場人物の2人が去ったため、その後の話は誰も知らない。
374が復活してないということは、彼はおそらく今日も平和に過ごしているだろう。生きていれば。
付記
なお、この話は「Iris的」というサイト管理人の作者によって(真偽はどうあれ)釣り宣言がなされている。
ここまで話が大きくなった背景について、2000年~2002年にかけては日本国内におけるインターネット普及率が急上昇した(21%→57%)時期にあたり、オンラインゲームの人口爆発期(リネージュ、RO、FF11等サービス開始)でもあった。
当時、まだ現在ほど身近ではなかったインターネットを訪れた人々には、得体の知れないネット界隈には常軌を逸した手合いが居そうである、あるいは居るという想像があり、その点に対してこの話が刺激的だったのではなかろうか。
いま同じ話が流布されてもおそらくは流行るまい。要は耐性がなかったのである。
また、類似する合宿所問題(こちらは現実に発生している)[1]などを知る人間にとっては、本当に起きても不思議な話ではないとされていたことも信憑性の一部を担っており、それゆえ釣り宣言がなされた後も、この話が事実だったのではないかという憶測を呼び続けてきた。
ここに来て、S県月宮は投稿者の手を離れた都市伝説となったのである。
ネトゲ史の一ページであったS県月宮事件であるが、オンラインゲームを舞台にしたライトノベル「ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?」がこれをモチーフとしたエピソードを題材にし、再び注目をあびることになった。なお、作中のヒロインの名前もアコだが、立ち位置は上記とは逆でラリアットを打ち込まれる側である。
なおRO15周年記念の一環として公式がLINEスタンプをリリースしたのだがなんとスタンプの一つに「お兄ちゃんどいて!」のスタンプが存在、公式ネタと化した瞬間だった
関連項目
外部リンク
脚注
- *本来はマナーの悪いオタクが現実で面識の無い他人の家をタダ宿代わりに使うため押しかける問題のことだが、S県月宮のような前世設定のロールプレイヤーや作品の登場人物になりきった人物が一般人や同人作家を『仲間』と認識して付き纏うケースも多発していた。
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