SEALs(シールズ)とは、アメリカ海軍特殊戦コマンドに所属する特殊部隊である。
正式名はNavy SEALs(United States Navy SEALs/ネイビー・シールズ)。
ここではSEALsより派生したDEVGRUについても記述する。
概要
アメリカ軍には「アメリカ特殊作戦軍(USSOCOM)」と呼ばれる、陸軍・海軍・空軍、および海兵隊のそれぞれの特殊部隊を統合指揮する部署がある。そのうちの「アメリカ海軍特殊戦コマンド(U.S.NAVSPECWARCOM)」の管轄部隊で、2つの特殊戦グループ、8つのチームで編成されている。
もともとは第二次世界大戦中の水中破壊工作部隊(UDT)から発展しており、ベトナム戦争中に河川や沼沢地域での活動を目的に発足した。
SEa(海)、Air(空)、Lands(陸)の文字を取られてSEALs(シール = アシカのダブルミーニング)と呼ばれているように、あらゆる地形での作戦が可能とされている。
その成り立ちからして特に水路からの潜入や水際での作戦、艦船や海上油田などの海上施設での対テロ作戦に定評がある。最近ではイラクやアフガニスタンなどの内陸部においても長期の展開が行われているとされている。
特殊部隊そのものとして歴史はアメリカ軍でももっとも古い。そのため数多くの戦いに参加しており、また作戦で失った人員数も数多い。特殊作戦を理解しない海軍上層部の無理解も多分にあるともいえるが。
グリーンベレーをはじめとする陸軍の特殊部隊とはある意味でライバル意識があり、作戦環境や軍種の違いなどから、異なった組織文化が養われている部分がある。
現在、SEALsは以下の編成となっている。
海軍特殊戦グループ1:太平洋方面担当
├ チーム1 : 極東アジアを除くアジア太平洋全域担当
├ チーム3 : 中東地域担当
├ チーム5 : 極東アジア担当(北朝鮮情勢にかんがみて韓国に常駐)
├ チーム7 : アメリカ西海岸担当
└ SEAL輸送チーム1 : SEAL輸送潜水艇専門部隊
海軍特殊戦グループ2:大西洋方面担当
├ チーム2 : ヨーロッパおよび地中海担当
├ チーム4 : アメリカ本土担当
├ チーム8 : アフリカおよび地中海担当
├ チーム10 : アメリカ東海岸担当
└ SEAL輸送チーム2 : SEAL輸送潜水艇専門部隊
チーム9は欠番。チーム6は後述するDEVGRUとして独立(したとされている)。
輸送チームはSEAL輸送潜水艇(SDV)と呼ばれる小型の潜水艇を操作するが、密閉式ではなく、長時間にわたる水中での作業を求められる。その為、高度な水中訓練を受けたSEALs隊員でなければ搭乗できない。
SEALsの選抜は「基本水中爆破訓練(BUD/S)」によって行われるが、これは数ある特殊部隊の中でも極めて過酷な選抜試験と言われている。毎年志願者は100名前後だが、予備試験後に80名前後に落選、その後約6ヶ月に渡るBUD/S期間中に7割~8割程度が落選する。そのあまりの過酷さっぷりは驚きとしかいいようがない。特に「ヘル・ウィーク」と呼ばれる期間のすさまじさは有名で、5日間を通じて睡眠時間は僅か4時間。チーム対抗戦によってチームメイトとの協力が強く求められ、体力を限界まで追い込まれる事で心身に異常を来たす者さえいるという。これは、極限状態において本性を見せ、仲間を見捨てて自分を優先させる志願者を見つけて排除する為である。
その後も訓練は続き、晴れてSEALs隊員になるにはおよそ2年6ヶ月を要するという。
SEAL Team Six / DEVGRU
SEALsのチーム6は対テロ専門部隊DEVGRU(デヴグルー)として独立しており、海軍特殊作戦コマンドではなく、JSOC(統合特殊作戦コマンド)の指揮下にある。正式名称は「United States Naval Special Warfare DEVelopment GRoUp:海軍特殊戦開発グループ」で、公式には陸海空での戦術や技術の試験・開発を行なう部隊とされているが、実際には対テロ作戦のみならず誘拐や暗殺といった秘密作戦も行なうといわれる。[1]
※DEVGRUという名称は1987年に付けられたものだが、ビンラディンを排除する作戦「Operation Neptune Spear(海神の槍作戦)」を遂行した部隊として有名になってしまった為、今は表記名を変更したといわれている。[2]
アメリカ軍特殊作戦史上の痛恨事、「イーグル・クロー作戦 [3] 」の結果をうけて誕生。SEALsの中でも、特に優秀な隊員を集めて編成された。現在に至るもアメリカ特殊戦海軍では存在がおおやけに認められていない部隊でもある。その為、情報が伝聞形になるのはご容赦を。
ただでさえ精鋭のSEALsの中から選り抜きの隊員を引き抜いて編成されるという性質上、その訓練は上記の過酷な訓練を上回るものだという。訓練も年間を通じて休みなく、特に射撃訓練では、9mm弾の消費量および経費が1年間でアメリカ海兵隊全体のそれを上回ったらしい。
任務内容は対テロ、大量破壊兵器の拡散阻止のほか、敵国内における高価値目標の奪還ないし暗殺とされている。
SEALs/DevGruが登場する作品
作品名 | 種類 | 内容 |
---|---|---|
ネイビーシールズ | 映画 | SEALsそのものを描いた作品。 脚本を手がけたのは元SEALs隊員。隊員役には俳優がキャスティングされる予定だったが、現役隊員が主役を務めるというガチっぷり。 |
ザ・ロック | 映画 | 難攻不落の要塞・アルカトラズに侵入する主人公達と共に突入するチームがSEALs。また、元DevGru隊員がSEALs隊員役で参加している。 |
ティアーズ・オブ・ザ・サン | 映画 | 主人公達のチームがSEALs。最初はダイハード4.0になる予定だったが、「アフリカ民族浄化(虐殺)」というテーマが重く、別映画になった。 |
G.I.ジェーン | 映画 | SEALsの訓練課程に参加した女性兵士が主人公。女であるが故に誰よりも厳しく当たられるが、自ら女を捨てて根性を見せ、周囲が徐々に仲間として認識していく過程が描かれる。 |
キャット・シット・ワン'80 | コミック | 擬人化ならぬ擬獣化されたキャラクターによる、戦場の群像劇。アメリカ陸軍の偵察チーム「Cat Shit One」隊長・パッキー(ウサギ)がかつてSEALsで訓練を受けている。 |
ヨルムンガンド | コミック | 欠番「9」を名乗る極秘部隊、通称「ナイトナイン」が登場。夜戦を得意とし、その強さから主人公達に「今まで見た中で最強の連中」と言わせる。 |
メタルギアソリッド2 | ゲーム | プラント編の敵役「デッドセル」はSEALs内の秘密部隊と言う設定。その他やられ役としてもSEALsが活躍(?)する。 |
Civilization4 (Civ4) |
ゲーム | アメリカのUU(固有ユニット)で海兵隊の代替。ゲーム的な使いやすさは微妙。 |
Call of Duty: Modern Warfare 2 (CoD4:MW2) |
ゲーム | キャンペーン「Only Easy Day...Was Yesterday(日本語版タイトル:オンリー・イージー・デイ)」でNPCとして登場する。マルチプレイヤーでも登場勢力の1つとして登場。 |
Call of Duty: Modern Warfare 3 (CoD4:MW3) |
ゲーム | キャンペーン「Hunter Killer」で主人公・フロスト達とともに行動する。 |
Call of Duty: Black Ops Ⅱ (CoD:BO2) |
ゲーム | 主人公デイビッド・"セクション"・メイソンの所属がSEALs。ただしいくつかの海外サイトではU.S.Navy SEALs Team6と書かれれており、DevGruの可能性もある。マルチプレイヤーの登場勢力としても登場。 |
レインボーシックス | ゲーム | トム・クランシーの同名小説を原作とするシリーズ。世界規模のテロ活動に対応する為、国や組織の垣根を超えた精鋭を集めた部隊「レインボー」の活躍を描く。最新作「シージ」においてSEALsから2名の隊員がオペレーター(プレイアブルキャラクター)として参戦。 |
スプリンターセル | ゲーム | トム・クランシー監修のステルスゲームおよびシリーズ。主人公のサム・フィッシャーはSEALsチーム3出身で、NSAの秘密部隊「サードエシュロン」の工作員「スプリンターセル」として作戦に参加する。またサムの友人でありPMCを経営するヴィクター・コステもSEALs時代の同僚であり、サムにとっては命の恩人でもある。 |
PAYDAY2 | ゲーム | ピエロのマスクをかぶった4人組の強盗となって様々な犯罪をこなすFPS。オリジナルメンバー・Chainsが元SEAL(ゲーム中ではsを削除して実在のSEALsに配慮している)隊員という設定。トレイラーでは警察に追われるも、高度な水泳・潜水スキルで生還するシーンが見られる。 |
関連動画
関連静画
関連項目
脚注
- *「最強 世界の特殊部隊図鑑」坂本明 学研プラス 2014 p.68
- *「徹底解説 特殊部隊」ホビージャパン 2017 p.99
- *1979年にテヘランで起きたアメリカ大使館人質事件をうけて1980年にアメリカ軍が行った人質救出作戦。四軍全て投入されたが失敗し、12名の死傷者を出す大惨事となった。 → イーグルクロー作戦(Wikipedia)
- 10
- 0pt