SIMカードとは、「加入者識別モジュール(Subscriber Identity Module)」の略称。携帯電話に於いて、電話番号やユーザーIDが記録されているICカードのことである。
なお、そこから派生して、「USIMカード」や「UIMカード」、「R-UIMカード」なるものが存在するが、当記事ではこれらも総称して「SIMカード」として扱う。
概要
SIMカードは主に第二世代携帯電話のGSM方式で採用され、そこから第三世代携帯電話のW-CDMAおよびCDMA2000でも採用されるようになった。日本ではドコモおよびボーダフォン(現ソフトバンク)のW-CDMAでは当初からSIMカードが採用されていたが、auでは数年遅れてからのSIMカード採用となった。
SIMカードは、その中に契約者を識別するための情報が組み込まれており、入っているSIMカードが変わらなければ、どんなに端末が変わっても安定して契約者にプラン通りのサービス提供を行うことができる。
この特性を生かして、SIMカードさえ差し替えれば即座にその場で機種変更が可能となったほか、中古(白ロム)携帯電話市場が活性化するきっかけともなった。また格安SIMと呼ばれる、MVNOによるSIMカードの提供サービスが始まる一因ともなった。
SIMフリー
日本の通信事業者の端末は基本的にSIMロックと呼ばれる制限がかけられており、その通信事業者が発行するSIMカード以外を受け付けないようになっている[1]が、その制限がかかっていない端末も広く流通している。それが「SIMフリー」と呼ばれる端末である。
国外で流通しているSIMフリー端末は、通信方式が一致していれば日本の通信事業者のSIMカードをさして日本国内で利用することも可能である(並行輸入品の場合は、一部の商品を除き技適マークを所得していないため、物理的には利用可能であっても電波法違反となる)。
日本国内で正規販売されている主なSIMロックフリー端末は、スマートフォンだと「Nexus5」「Nexus6」「Zenfone5」「AscendMate7」など。タブレット端末だと「Nexus7」や「FonePad」が有名。2013年11月からはアップル直販でiPhone5C/5SのSIMロックフリー版が正規発売となった。
2014年以降は格安SIMやそのサービス事業者が増えたこともあってか、中国のHuawei(華為技術有限公司)やZTE(中興通訊)、韓国のLGエレクトロニクス、台湾のASUSTeKなどアジア系企業の安価なスマートフォンが流入してきており、一般的な家電店やPCショップなどでも販売されていることがある(格安スマホ。後述する格安SIMとセット販売する事業者も多い)。
なおキャリア販売の端末に関しては、もともとNTTドコモはFOMA以降は2011年4月からSIMロック解除に有料で対応していたが、2014年に総務省の指示でauとソフトバンクのそれに対してもSIMロックの解除が義務化されることとなり、2015年5月以降販売のものについては契約から半年以上契約しているなど諸条件があるが、一部を除きSIMロックを解除することが可能となった。
…ただし、docomoはサイズさえ合っていれば新機種に対応のSIMを旧機種に移し替えても使用できたが、auやソフトバンクは同一キャリア間であっても、(マーケティング的な理由で)移し替えが制限されていた時期も過去にあった。
格安SIM
通信事業者のうち、ドコモ、au、ソフトバンクなど大手キャリアから回線を借りてプランや契約のみ売っている事業者(仮想移動体通信事業者 MVNO)のサービスを利用することで安くできるSIMカードの総称。
既存の大手キャリアとは差別化をはかる目的でこう呼ばれる(詳細については格安SIMの当該記事を、サービス事業者の詳細については仮想移動体通信事業者の記事を参照)。
プリペイドSIM
日本ではキャリアのみならず、先述した格安SIMの提供会社でも月次料金の契約を結ぶのが一般的であるが、SIMカードの販売価格に一定の通信量が含まれているか、SIMの購入後に事前に所定の金額をチャージする形で利用するプリペイド型のSIMカードも存在する。
海外ではSIMフリーの携帯電話が元から一般的であったことに加え、日本ほど口座振替など月次の課金を行うシステムが普及していなかったことから、プリペイドSIMが一般的な国も多い。
日本でも日本人向けの短期利用の他、訪日外国人や海外駐在者の一時帰国時の利用を想定したプリペイドSIMが昨今は盛んに販売されるようになっている。多くは格安SIMを提供するMVNOが提供しており、月次契約に切り替えることが可能なものも存在する。
先述した通り海外ではプリペイドSIMが日本以上に一般的であるため、海外渡航時はSIMフリー端末であれば現地でSIMカードを購入することにより、日本のキャリアの国際ローミングサービスを利用するより安価に現地のデータ通信や音声通話サービスを利用することが可能になる事が多い。
また現地でSIMカードが入手出来ない場合などを想定し、様々な国の通信キャリアとローミング契約を結ぶ形で、一つのSIMで世界各国にて通信が可能なグローバルSIMも設定・販売されている。日本において入手可能なものにはGigskyやMightySIMなどがあり、昨今は日本のMVNOの中にも独自に海外旅行用SIMとして設定・販売を行う所が現れている。このうちGigskyに関しては、セルラーモデルのiPadで利用が可能なApple提供プリペイドSIMカードのAppleSIMにも採用されている。
SIMの規格と種類
通信方式と同様、SIMカードも扱うキャリアによって呼び方が異なる。また、機種によって入れられるSIMカードの形状が違うため、大手キャリアに任せるならばともかく自分で契約を行う場合は、入れるSIMカードを間違えないよう注意が必要となる。
ちなみに、端子部分は規格に関わらず共通であるため、アダプタを利用すればこれまでのサイズのカードを採用している機種でも使用可能。
- マイクロSIM
- ミニSIMよりも一回り小さいサイズのカード。
規格として登場したのは2003年。2010年に登場したiPhone4を皮切りに採用する機種が増え、後述のナノSIMに置き換わり始めた2010年代後半まで主流の規格だった。 - ナノSIM
- microSIMよりもさらに小型のSIMカードで、ほぼICチップの外周に沿った大きさとなっている。
2012年の登場直後にiPhone5へ採用され、2010年代後半には一気にマイクロSIMからシェアを奪った。 - eSIM
- 基板実装型のSIMカードで、「embedded-SIM」の略。詳細は後述。
- それまで各社が異なる規格のものを採用している状態だったが、2010年代後半から本規格が主に使われ始め、現在ではデュアルSIMモデルのバリエーションとして大体の機種が対応している。
eSIM
一般的なSIMカードでは、契約する携帯電話事業者を変更するときにSIMカードを差し替える必要があるが、このeSIMは通信経由で事業者情報を書き換える。[2]
かつては、アップルがeSIMの一種とも言える物理カードレスのSIM「バーチャルSIM」を採用しており、その関係からeSIMを推進している一社にアップルが含まれていた。そのため対応も早く、2018年発売の機種(スマートフォンではiPhone XS/XS Max、iPadでは11インチProの第1世代・12.9インチProの第3世代)からはシングルeSIMに、2021年のiPhone 13以降はデュアルeSIMに対応している。
日本国内で利用可能な通信会社も楽天モバイル(通話・データ両対応)とIIJ(データ専用)のみだったが、ソフトバンクがY!mobile・LINEMOでeSIM導入(通話・データ両対応)を開始した(メインブランドでも7月から開始)のを皮切りに、KDDIもpovoでサービス開始から取り扱うほか(auにおいても2021年8月に導入)、ドコモもahamoを含めた全プランで2021年9月に開始した。総務省もキャリア乗り換え促進策の一手段として普及を進める狙いがあるため、今後の広い普及が期待できる。
デュアルSIM
携帯電話・スマートフォンの中にはSIMカードを2枚挿すことができるデュアルSIMに対応した機種がある。物理カード2枚が基本だが、上述のeSIM対応のiPhoneやPixelなどのように物理カードとeSIMという組み合わせが可能な機種もある。
元々はヨーロッパやアジアのGSM対応機種が他の国でも同じ端末を現地の通話料金で使えるようにするのが目的で、外国に行く際に電話機2台持ち歩かなくても済むようになる。他にも主回線を通話専用にしてデータ専用の格安SIMを副回線で使って料金を安く抑える、電話する際プライベート用とビジネス用のように2つの電話番号で使い分ける、などが行えるようになる。
ちなみに端末によってDSSS(シングルスタンバイ:その都度使うSIMの切り替えが必要)、DSDS(デュアルスタンバイ:同時待ち受けが可能、同時通信は不可)、DSDV(DSDVのVoLTE対応版)、DSDA(デュアルアクティブ:同時待ち受け・通信が可能)と実装形態が分かれている。
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関連リンク
関連項目
- 携帯電話 / スマートフォン / タブレットPC
- ソフトバンクモバイル / au / NTTドコモ / ワイモバイル / UQモバイル / 楽天モバイル
- 格安スマホ / 格安SIM
- 仮想移動体通信事業者(MVNO)
- 白ロム
- 携帯電話関連記事の一覧
脚注
- *香港では法律でSIMロックが禁止されている。フランスやデンマークではユーザーが端末購入後6ヶ月、イタリアでは1年半経過するとメーカー・キャリアがSIMロックを解除する義務がある。
- *用語集 | KDDI株式会社
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