WRC(世界ラリー選手権)とは、1973年からFIAが主催するラリーの世界選手権である。
競技としてのラリーについては当該記事を参照のこと。
概要
1924年から行われている伝統のラリー・モンテカルロで開幕し、ヨーロッパ、南米、アジア、オセアニアを13戦ほどで転戦する。各イベントは4日間1000~1500㎞のステージで争われる。
競技場や広場などの観客が見やすいコースで2台のマシンが同時に走るSSS(スーパースペシャルステージ)というSSが1イベントに1~2つほど存在し、人気を集めている。また最終SSはパワーステージと呼ばれ、イベントの総合順位に加えてこの1つのSSの順位によってボーナスポイント(1位5pts~5位1pt)が加算される。これはデイリタイアを喫したドライバーの救済とともに、イベント期間中の出走台数が減少するのを防ぐためでもある。
下位カテゴリとしてWRC2、WRC3、JWRCが開催されており、WRCへの登竜門となっている。
車両規定
現在のWRCマシンは1998年に導入されたWRカーという規定で、年間25000台以上生産された市販車の派生モデルで年間2500台以上生産されている車がホモロゲ―ション対象。グループAの反省から、市販車からの大規模な改造が認められている。なお現在のWRカーのベース車両は全てヴィッツやフィエスタのような、小回りの利くBセグメントハッチバックである。また2017年からは迫力を増すために空力に関する規定が緩くなっており、サーキットレース並に派手なエアロパーツが装着される様になった。
エンジンはGRE(グローバル・レース・エンジン)規定の1.6リッター直4ターボのみ、ギアボックスはパドルシフトの6速セミAT。タイヤはマルチメイクで、ほとんどがミシュランを履く。
WRCの下位カテゴリではグループR規定に則って市販車を改造したマシンが用いられており、排気量や駆動方式などでおおよそ速い順にR5~R1に分けられている。WRC2では四輪駆動のR5とR4、WRC3とJWRCでは二輪駆動のR3~R1規定が用いられる。またこれ以外にはGTのラリーカーであるR-GT規定、市販車からほとんど改造しないグループN規定、現在のR5規定の原型であるスーパー2000なども出走が許可されている。
以前人気を博したグループB、グループA規定に関しては当該記事を参照のこと。
エントラント
2017年現在出場しているマニュファクチャラーはトヨタ、シトロエン、Mスポーツ(フォードのセミワークス)、ヒュンダイの4社。2016年まではVWとセバスチャン・オジェが圧倒的な速さで4連覇していたが、VWが排ガス不正問題の影響で電撃撤退しており、オジェはMスポーツへ移籍している。
旧くは9連覇を果たしたセバスチャン・ローブや、日本車を駆ってタイトルを獲ったカルロス・サインツ、トミ・マキネン、コリン・マクレー、ユハ・カンクネン、マーカス・グロンホルム、ペター・ソルベルグなども日本人には馴染みが深いだろう。
F1レーサーのキミ・ライコネンやロバート・クビサも参戦していたことで有名だが、彼らは表彰台にも上がることはできなかった。ただしクビサは2013年にWRC2で圧倒的な強さで王者を獲得している。女性ドライバーではグループB時代にタイトルまであと一歩の所まで上り詰めたミシェル・ムートンが有名。
日本との関係
日本勢では過去にトヨタ、スバル、三菱、日産、マツダが複数回総合優勝をしており、このうちトヨタ・スバル・三菱は3回以上タイトルを獲得している。またスズキ、ダイハツ、いすゞなども下位カテゴリでクラス優勝やタイトルを獲得しており、WRCは数あるFIA世界選手権の中で最も日本車が成功したシリーズだといえる。逆にワークス参戦したことの無い主要日本メーカーはホンダだけである。また日本開催が2004年から2010年までの間に北海道で「WRCジャパン」の名で行われていた。
リーマン・ショック後は日本メーカーも日本開催もご無沙汰だったが、2017年にトヨタがヤリスで復帰・優勝し、再び注目を集めつつある。特にラリー好きの社長である豊田章男氏のテコ入れで、トヨタはWRCの宣伝に力を入れている。放送は全SSを生で見られるWRC公式の有料サービスWRC+、日本語で最終SSの生中継やダイジェスト放送を行う有料放送のJスポーツ、初心者向けにWRCの魅力を伝えるTV朝日の「地球の歩き方」などで見ることができる。なおトヨタGAZOOレーシングとしてのWRC活動についてはヴィッツの記事を参照のこと。
日本人ドライバーとしては、WRCで優勝を収めたのは篠塚建次郎だけである。またかつて存在していたPWRC(グループN規定のラリーの世界選手権)では、新井敏弘が日本人で初めてFIA世界選手権のタイトルを獲得している。
現在は新井敏弘の息子新井大輝、全日本ラリー王者勝田範彦の息子勝田貴元、範彦のコ・ドライバーとして栄光を支えた足立さやかがトヨタGAZOOレーシングとトミ・マキネンレーシングのもとに欧州各地で修行している。
関連動画
関連項目
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