呉一族(くれ いちぞく)とは、漫画家サンドロビッチ・ヤバ子の作品に登場する一族である。
初登場は『ケンガンアシュラ』だが、『アシュラ』以前の作品である『求道の拳』でもその存在が設定されている。それを含めれば、今のところすべてのヤバ子作品に存在する一族ということになる。
概要
「禁忌の末裔」の名で知られる暗殺集団の一族。飛鳥時代より数えて1300年続くという非常に古い歴史を持つ一族。暗殺を生業とする御雷零の雷心流とはライバル関係にある。
白地と黒地が反転したような目が特徴であり、一族の人間は例外なくこの風貌をしている。
同じような目をした『求道の拳』の登場人物、「凶帝」早鍬左馬斗は派生一族の末裔という設定。
呉一族はその時代ごとに最新の武術を導入しつつ、高名な武術者の血を積極的に取り入れるいわば品種改良を行ってきた結果、生まれながらにして強靭な体を持つ。また、「呉の技」と呼ばれる高度な戦闘技術を独自に発展させている。「呉の技」は暗殺技の「呉一族伝」と格闘戦を想定した「呉家伝(くれかでん)」の二系統に分かれる。その他、秘伝内容には鍼治療なども含まれる模様。
しかしながら、「呉の技」や鍼治療は一族以外の人間でも真似できる代物である。なんといっても呉一族の最大の特徴は後述する「外し」の技術であろう。
一族のモデルは、ブラジリアン柔術の創始者の一族で有名なグレイシー一族。幾人かの名前もそこからとられている。
一族からは優秀な暗殺者や闘技者を排出しており、拳願試合でも敗北回数は歴史上数えるほどしかない。
『ケンガンオメガ』にて呉一族は中国の「呉(ウー)氏」から分派した一族であることが明らかになった。後述する「外し」も元々は呉氏由来のもの。
日本に流れて「呉一族」になったように、西洋へ流れた「征西派」という一派も存在する。征西派のエドワード・呉は呉一族のことを「千年ほど放置していた紛い物」と呼んでいる。
生活
里の区画の一部は住人の1割ほどが一族とその関係者である。本業(殺し)にさえ絡まなければ基本気のいい一族なので、周辺住民との付き合いは良好。一族の中には呉の里を離れている者もいるが帰省のときや召集がかかった時には里に帰ってくる。[1]
『ケンガンオメガ』においては、大広間にテーブルを置いて一族みんなでそろって食事しているシーンが描かれている。ただし殺し屋の一族らしく、食事中の会話は殺しの仕事や武器に関するものばかりになるらしい。 [2]
外し
脳のリミッターを自分の意志で意図的に外し、それによって大きいパワーとスピードを得る事が可能な、呉一族の者が持つ固有の能力。いわゆる火事場の馬鹿力。秘伝という性質上、当主の許可のない使用は禁じられている。本家である「呉氏」では「鬼魂(グイフン)」と呼ばれる技術。
個人によって外すことのできる割合は異なっており、50%外す事ができれば一族では優秀と言われる。ただホリス(80%)や迦楼羅(85%)などのようにそれ以上外すことのできる者もいる。特に雷庵は100%外すことが可能で、これは長い歴史の中でもごく一握りしかいないという。
ただ、この開放率は「肉体の負担なく開放できる割合」であり、それ以上の解放自体は可能。
この「外し」に対抗して外部の者より生み出されたのが「憑神(通称:前借り)」といわれているが、その「憑神」は心臓に過負荷をかける危険な技である。普通の武術家が命を懸けてようやく並び立てる程、呉一族の身体能力が並外れているという証だろう。
なお、「外し」は非常に体力を消耗するためあまり長時間維持し続けると発動できなくなるという弱点も存在する。それ以外のデメリットはないと思われていたが、自身の限界を超える解放は自らの肉体や脳を大きく損傷する。
一門
- ■呉恵利央 (くれ えりおう)
- 現在の呉一族の当主で「強魔」の通り名を持つ。『アシュラ』では91歳と年老いてはいるが戦闘能力は一般的な老人のそれではない。親バカ気質であり、『アシュラ』本編では曾孫の迦楼羅を溺愛している。
- 溺愛しすぎてて迦楼羅が王馬に一目惚れしたと聞いたときにはその場では笑顔でやり過ごしていたが、
迦楼羅が席を外れた途端「外し」をしてまで激昂していた。とはいえ、王馬が決勝までたどり着いたときにはようやく諦めて王馬を受け入れる姿勢を見せていた。 - 迦楼羅に限らず娘、孫、曾孫、玄孫に至るまで溺愛しており、夫になる相手には大体厳しい態度をとっている。
片原滅堂の最初の闘技者=初代「滅堂の牙」にして、拳願絶命トーナメントの優勝経験者であり、滅堂を拳願会会長の座に導いた立役者である。
モデルはブラジリアン柔術の創始者の一人エリオ・グレイシー。
余談だが、血縁関係を考えると迦楼羅の曽祖父はカーロスをモデルとする方が自然にも関わらずエリオがモデルとなっているのは、「400戦無敗の男」ヒクソンの父親をモデルとした人物を登場させたいとの作者の思いによるもの。 - CV. 千葉繁
- ■呉迦楼羅 (くれ かるら)
- 通称「天魔」。恵利央の曾孫。漫画では「カルラ」とカタカナ表記のほうが多い。
「呉の里」ではなく東京在住で、『アシュラ』での16歳の女子高生(吹奏楽部)。『オメガ』では大学生になった。いずれは呉一族の長の座を引き継ぐことになる立場らしい。
拳願絶命トーナメントにおいて十鬼蛇王馬に出会い、その強さに一目惚れ。出会い頭に寝技を仕掛けた挙句「(一族として強い遺伝子を取り入れるべく)お前の子が生みたい」と真っ向から宣言した結果、追い回しては逃げられる関係に。王馬にアタックするするときはよく服を脱いでいる。
モデルはブラジリアン柔術の創始者の一人カーロス・グレイシー(エリオの兄)の曾孫カーラ・グレイシー。 - CV. 黒沢ともよ
- ■呉雷庵 (くれ らいあん)
- 通称「魔人」。一族では現在"最凶"とされる男。『アシュラ』では21歳。外しを100%行える類稀な才能の持ち主。「呉の技」も学んでいるが、身体能力にまかせて相手を蹂躙することを好む。
- 『アシュラ』では呉一族と契約したアンダーマウント社の代表闘技者として拳願絶命トーナメントに出場。一回戦では圧倒的な実力を見せつけ会場を戦慄させたが、二回戦で王馬との死闘の末敗北した。
トーナメント以降、表向きは行方不明としつつ「呉の里」の呉本家に潜伏。『オメガ』では再び呉一族を代表して拳願会側代表選手として煉獄との対抗戦に出場した。しかし征西派殲滅を優先する呉一族の意向を優先し、殺傷NGの対抗戦で相手選手を殺害。反則負けとなった。
モデルはカーロスの孫(キーラの叔父)にあたる「グレイシー一族最凶の喧嘩家」「グレイシー一族の問題児」ハイアン・グレイシー。名前のみならず荒々しいキャラクター性もモデルを反映している。 - CV. 松岡禎丞
- ■呉風水 (くれ ふうすい)
- 雷庵の妹。「魔弾の射手」の通称を持ち狙撃に長ける。『アシュラ』では一族の指示でアンダーマウント社の社長である健蔵を監視していた。『オメガ』にも登場しており、呉一族の窓口担当をしている。開放率は28%。
- 「呉の里」ではなく都内に居住している。『アシュラ』時は19歳で皇桜女子大の一年。
- CV. 鈴木美園
- ■呉夜叉 (くれ やくしゃ)
- 皇桜女学院の教師。二児の母親で、そのうちの一人が迦楼羅。薙刀使い。
『ダンベル何キロ持てる?』の準レギュラーだが『アシュラ』のおまけ漫画にも登場している。
『ダンベル』では一族特有の体力でシルバーマンジムの面々からよく称賛されている。ジム仲間の中では年長者であるが、そこに触れる発言があると物騒な顔つきになりとても怖い。 - CV. 大原さやか
- ■呉半次郎(くれ はんじろう)
- 夜叉の夫にして迦楼羅の父。設定は『ダンベル』時点で既にあったが『オメガ』にて一家揃って登場した。婿養子で職業は殺し屋(得意武器は銃)。『ダンベル』での年齢は46歳。
婿養子という立場から恵利央からはかなり煙たがられている。 - ■呉沙楼羅 (くれ さるら)
- 夜叉の息子にして迦楼羅の弟。恵利央を「曾孫馬鹿馬鹿爺」と称した。
『ダンベル』での年齢は15歳、学生と殺し屋を兼業している。 - ■呉怜一 (くれ れいいち)
- 通称「金剛鬼」。恵利央の又従兄弟の曾孫。『アシュラ』では26歳。雷庵の実力は認めつつその性格を毛嫌いしている傾向がある。影が薄いが鏡に映った自分の姿を見て癒されるなど実は呉一族一のナルシスト。開放率は50%
- CV:高橋良輔
- ■呉堀雄 (くれ ほりお)
- 通称「鬼牛」。恵利央の大叔父の玄孫。『アシュラ』では55歳。世界のあらゆる場所での仕事も行っており、ムデバとの交戦経験もある。開放率は60%。
モデルはエリオの子ホリオン・グレイシーか。 - CV:徳本英一郎
- ■呉ホリス (くれ -)
- 通称「鬼哭童子」。堀雄の甥。『アシュラ』では31歳。一族有数の実力者。癖の強い呉一族の中では礼儀正しい方。開放率は80%
モデルはエリオが第二婦人との間に儲けた子ホイス・グレイシーか。 - CV:松田健一郎
- ■呉変造 (くれ へんぞう)
- 通称「狩鬼」。『アシュラ』では31歳。本拠地の「呉の里」出身。里の仲間と共に休暇で上京したが、ジャンケンで負けたため健蔵の監視をする風水のサポートをしている。ジャンケンで負け続けているため一向に東京観光ができずにいる模様。高所恐怖症の鳶職。開放率は19%
モデルはカーロスの孫(ハイアンの兄)ヘンゾ・グレイシーか。 - CV:広瀬裕也
- ■呉陸斗 (くれ りくと)
- 次期当主候補筆頭と言われた男。しかし「蟲」の頭領を追跡しているさなかに蟲と通じていた征西派のエドワード・呉によって殺害された。『オメガ』にて呉一族が拳願会の思惑を外れ征西派殲滅に動くきっかけとなったのがこの事件である。
関連動画
関連静画
関連項目
関連リンク
脚注
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