ノストラダムスの大予言とは、1973年(昭和48年)に祥伝社より発刊された五島勉の著書、またそのシリーズの書籍である。
ノストラダムスという人物、また、日本で起こった所謂「ノストラダムス現象」については「ノストラダムス」項を参照のこと。
概要
フランスの医師「ノストラダムス」の著した詩集「ミシェル・ノストラダムス師の予言集」を読み解き、ノストラダムスの逸話などを交えながら20世紀末に起こるという「終末」を語るという体裁をとっている。しかし大体が五島の創作であり、ノンフィクションというより五島の著した小説と言ったほうが適当である。実際映画化もされてるし。
ノストラダムスの日本でのイメージを完全に間違った方向へ持って行っちゃった本として有名。シリーズ化され、10冊が発売された。本項ではどの本も内容が似通っているため一番初めに発売された「ノストラダムスの大予言~迫り来る1999年7の月の人類滅亡の日~」を解説する。
目次(太字は傍点付き)
- 序章:史上、空前絶後の大予言者―ノストラダムスとは何者だったか
- 1章:四百年前に今日を完全に予言―ノストラダムスの予言の的中率は九九パーセント
- 2章:世界史は彼の予言どおりに展開してきた―ヒトラーの登場も、原爆による日本の降伏も指摘
- 3章:人類滅亡の前兆はすでに出ている―資源不足、公害……彼の予言はすべて的中している
- 4章:一九九九年七月、人類は滅亡する―宇宙戦争や第三次対戦ではなく、文明の進歩によって…
- 5章:たった一つの救いの可能性とは?―本当に定められた未来から逃れられないのだろうか
- 付章:残された望みとは?
内容
南フランスのサロンの町がペストの災禍に襲われた。そこへ一人の医者がやってきて、「強烈な超能力によって三百年後の医学的知識を前もって知り(原文ママ)」、ペストの流行を食い止めることに成功した。それがノストラダムスという人物であったというところから始まる。
ノストラダムスなる人物は予言集「諸世紀」を著し、その中にはカーマニア、クレジット、環境汚染などの社会現象。またヒトラー、フランコ、パスツールなどの名前を上げて歴史上の事件を詳細に予言している。
ノストラダムスは「諸世紀」第10巻72番で「一九九九の年、七の月 空から恐怖の大王が降ってくるだろう」という予言をしていた。そしてこれを時の君主アンリ2世に話していた。つまり、恐怖の大王が世界を滅亡させてしまうんだよ!きっと世界中が汚染されたり核戦争が起きたりするに違いないよ!!人間以外のそして別のものが世界を征服しちゃうんだよ!
ノスさんの予言は絶対に外れないからこれは参ったね、まあ、人類滅亡は無かったとしても、地球上の一部は破滅しちゃうだろうね!
要約するとこんな感じである。
内容の問題
この本の中で語られているノストラダムス像があまりに史実とかけ離れているという問題があった。また、架空の研究者の名前や創作されたエピソード(史実に確認できないエピソード)が含まれており、大体は五島の創作と言っていい。このあたりはと学会の書籍にて山本弘や志水一夫がさんざん検証しているので省略するが、主なものを挙げる。
- ノストラダムスの著した予言集のタイトルの誤訳
- 「ノストラダムスの大予言」ではノストラダムスの著した予言集のタイトルを「諸世紀」としているが、これは英語訳から生まれた誤訳であり、本来は「百詩篇」などと訳されるべきものであった。そもそも、「百詩篇」というのは、予言集の中の四行詩100篇ごとのまとまりを表す言葉として使われているものであって、本自体のタイトルではない。本のタイトルは「ミシェル・ノストラダムス師の予言集」もしくは「予言集」である。
- 「ブロワ城の問答」
- ノストラダムスがブロワ城にてアンリ2世の子、シャルル9世と「1999年に起きること」について対話した内容をノストラダムスの息子、セザールが書きとめたものがフランス国立図書館に所蔵されているとされているが、そんなものはない。シリーズ第2巻「大予言Ⅱ」ではブロワ城にてノストラダムスがアンリ2世の王妃カトリーヌ・ド・メディシスに「恐怖の大王」の正体は目に見えないものだと語ったエピソードが紹介されているが、これも事実が確認できない。MMRでもブロワ城の問答が紹介されている(MMRではブロア城の問答となっている)。
- ノストラダムスの死因
- 「全身の肉と骨がボロボロになる奇怪な未知の病気(原文ママ)」にかかって死んだと書かれているが、すくなくともそんな惨い死に方はしていない。
と、挙げればキリがない。
「ノストラダムスの大予言」が所謂「ノストラダムス現象」の火付け役となったため、後発のノストラダムスの予言解釈本も、五島がもたらした誤ったノストラダムス像が色濃く反映されている。
第10巻72番
L'an mil neuf cens nonante neuf sept mois,
Du ciel viendra un grand Roi deffraieur,
Resusciter le grand Roi d'Angolmois,
Avant apres, Mars regner par bon heur.一九九九年、七の月
空から恐怖の大王が降ってくるだろう
アンゴルモワの大王を復活させるために
その前後の期間、マルスは幸福の名のもとに支配するだろう。
上記が例の人類滅亡を予言しているという百詩篇第10巻72番の詩である。この詩は五島が取り上げるまではあまり注目されていなかった。ノストラダムスは数々の比喩を用いて詩を著している。お気づきの方もいるかも知れないが、そんな難解であるノストラダムスの詩で「一九九九年、七の月」をそのまま「西暦1999年7月」に当てはめる方が実は不自然であり、「一九九九年、七の月」とは何らかの隠喩であると考えるほうが自然である。
それから、「恐怖の大王」が「アンゴルモワの大王」であると誤解されがちであるが、「恐怖の大王がアンゴルモアの大王を復活させる」のである。五島は「ノストラダムスの大予言」にてアンゴルモワの大王とは「恐怖の大王により破滅的状況となった時、やけっぱちになった民衆が略奪などの狂行を繰り広げることである」と解釈していたが、それ以前はフランスのアングーモワ地方を指すと考えられていた。
4行目のマルスは軍神、戦争など、あるいは3月の比喩と考えられている。
この詩は古くから人によって差異はあれど「恐怖の大王によって戦争が起きるけどアングーモワに救世主が現れてその前後は幸福になれるってことじゃね」のような解釈が大勢であった。人々に災いが起きると解釈する人もいたが、少なくとも「人類滅亡」とか「世界を滅ぼす」なんて文言はどこからも読み取れない。
つまり、この詩が人類滅亡の代名詞的な存在となったのは五島が終末論とこの詩の「恐怖の大王」「支配」などのワードを結びつけたからだと言っても過言ではないのである。
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ふらんすの よげんずきの おいしゃさん いろんな ところで 「じんるいはめつぼうする」
ってさけんでた だが そんなよげんを したおぼえはない
映画化
「ノストラダムスの大予言」は1974年に映画化されている。ルパン三世の実写版「ルパン三世 念力珍作戦」と同時上映された。文部省の推薦映画であり、1974年の邦画部門の興行収入第2位となったが、「食人鬼となり襲いかかる原住民」「核戦争で滅亡した後に放射能で異形の姿となった新人類のデザイン」などが問題となってビデオ化されておらずカルト映画となっている。ただし、サウンドトラックは発売されている。
1999年を過ぎて
1999年7月を過ぎ、世界は未だ滅亡することなく続いている。
「ノストラダムスの大予言」は日本におけるノストラダムス像を本来とはかけ離れたものにしてしまったが、おそらく日本でほとんど知られていなかった「ノストラダムス」の名を日本全国へと広げたという点での功績はあるだろう。
また、熱狂的な「ノストラダムス現象」を引き起こした本著は怪談やUFOに並ぶ一級品のオカルトエンターテイメントであったと言える。
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関連項目
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