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クラウディングアウト


ヨミ: クラウディングアウト
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クラウディングアウトcrowding out)とは、経済学の用で、政府国債を発行することで民間に回るお金が不足し利が上昇する、と論ずる理論である。

政府国債発行とそれに支えられる積極財政を否定するときに持ち出される理論として有名である。

一部の経済学者論者たちによって、底的に否定されている。
 


概要


マンキュー教科書での定義

民間銀行は、貯蓄者から預を集め、その預を用いて貸し付けを行っている。

政府国債を発行して民間銀行に購入させる場合、民間銀行は貯蓄者から集めた預を使って購入するので、預が減少する。民間銀行は、預が減少した分、政府以外の企業計へ貸し付ける資が減少する。

政府以外の企業計が民間銀行に対して貸し出しを依頼してきた場合、利を上げることになる。「利を上げるから、借りるのを諦めてくれ」というわけであり、企業計の投資意欲を減退させるためである。

このように、政府国債発行によって、民間企業計に向ける貸出利が上昇し、民間に回るお金が不足して、民間企業計の投資意欲が減退する。これを、クラウディングアウトという。


グレゴリー・マンキュー『マンキューマクロ経済学I入門篇【第3版】』93~97ページ[外部]を参照して記述した。

 
グレゴリー・マンキュー[外部]という人は著名な経済学者で、マクロ経済の教科書を書いたら大ヒットしたことで知られる。マンキューの教科書は世界中の経済学部で使用されているというが、そのマンキュー教科書でクラウディングアウトが以上のように紹介されている。
 

緊縮財政の思想的論拠となる

世の中には、プライマリーバランス黒字化(国債の新規発行を抑えること)を強くしつつ、緊縮財政政府支出を抑えること)を推し進める人たちがいる。

そういう人たちにとって、クラウディングアウトはまさしく思想的論拠であり、すべての出発点である。積極財政国債の新規発行を増加させて政府の支出を拡大すること)をする論者に対して「そんなことをしたら、クラウディングアウトが起こり、利が急上昇して、民間経済活動を阻する」と緊縮財政支持者たちが言うのがおなじみの風景である。
 

マンデルフレミングモデルとほぼ同じ発想

クラウディングアウトを発展させた経済理論というと、マンデルフレミングモデルである。

マンデルフレミングモデルとは、「国債を発行すると内の利が上昇し、外為替市場において自通貨が高くなり、輸出が鈍ってしまう」と論ずる理論である。前半の「国債発行によって内の利が上がる」という点は、クラウディングアウトと全く同じである。このため両理論は親戚同士といった感じである。

マンデルフレミングモデルも、緊縮財政支持者たちがこよなくする理論である。積極財政に対して反対するとき、盛んに持ち出される。
  

crowding outの原義

crowdは英単で、名詞として「群衆」「大群」といった意味になり、動詞として「ぎゅうぎゅう詰めになる」「いっぱいになる」「混雑する」といった意味になる。

outは英単で、「外へ」という意味になる。

ゆえに、crowding outで「ぎゅうぎゅう詰めになって、外に押し出す」といった意味になる。

民間人が銀行の応接室に入って融資の相談をしているところに、政府という大群が突如現れて銀行になだれ込み、民間人を銀行の応接室から押し出してしまう・・・そういう風景を連想させる表現である。
  


クラウディングアウト否定論


クラウディングアウトは一部の経済学者論者たちによって底的に否定されており、「迷信」と扱われている。

クラウディングアウト否定論を唱える経済学者の代表格は、ステファニー・ケルトン[外部]である。2019年7月に来日した際、「クラウディングアウトはcompletely wrong全に間違い)」と言ったという。(三橋貴明の記事[外部]
 

銀行は集めた現金を貸し出しているのではない

クラウディングアウトの出発点は、「民間銀行は、貯蓄者から預を集め、その預を用いて、投資を行なおうとする人々に貸付を行う」というものである。この文章は、マンキュー教科書94ページ[外部]の中段に載っている。

しかしながら、こうした考えは、イングランド銀行によって「common misconception(ありがちな誤解)」と扱われている。詳しくは、信用創造の記事を参照されたい。
 

国債を新規発行すると、民間の銀行預金は、増えるかまたは増減ゼロになる

国債を新規発行し、その国債を最終的に銀行が保有したとする。そうして得た資政府内で支出する場合、民間銀行総額は純に増加する。

国債を新規発行し、その国債を最終的に生命保険が保有したとする。そうして得た資政府内で支出する場合、民間銀行総額は増減ゼロになる。

いずれにせよ、国債を新規発行することで、民間銀行が減少することはない。(国債の記事で解説されている)。

国債を新規発行しても、政府以外が保有する日銀当座預金は変化しない

国債を新規発行し、得た資政府内で支出する場合、政府以外が保有する日銀当座預金の総額は変化しない。

例えば、政府国債を新規発行して銀行に購入させたとする。すると銀行日銀当座預金は一時的に減少する。しかし、政府内で得た資を支出する場合、銀行日銀当座預金が戻ってくる仕組みになっている。結局、銀行の持つ日銀当座預金の額が変わらない。

日銀当座預金というのは銀行にとって非常に重要で、日銀当座預金の額によって貸出可額が決まる(準備預金制度の記事を参照のこと)。

日銀当座預金が全く同額なら、銀行の貸出限度額が変化しないので、民間に対する貸し出しも以前とほとんど同じように行うことができる。利を釣り上げて民間に対する貸し出しを収縮させる必要など、ほとんどない。
 

国債を発行し続けた日本の金利が低下し続けた

クラウディングアウトが発生しないことの拠として提示されるのが、日本経済である。

1990年から日本経済は不気に突入したのだが、そこからずっと日本国政府国債を発行し続けており、累積債務残高が右肩上がりに上昇していった。このグラフ[外部]を見ると、そのことがよく分かる。

クラウディングアウトの観点からすると、国債発行のため利が上昇していくはずなのだが、全くそうならなかった。ゼロ金利政策のため短期金利ゼロ近くにまで下がり続けたし、長期金利も右肩下がりで下がっていった。ちょっと検索するといくらでも1990年以降のグラフが出てきて[外部]、そのことが一瞭然である。
 


インフレの時に金利が上がる


クラウディングアウト否定論者は、「国債を発行すると利が上昇する」という現全否定しているわけではない。

インフレの時に国債を発行すると、利が上昇する」という点は、クラウディングアウト否定論者も同意する事実である。

インフレの時は、好気であり、民間の投資意欲が旺盛である。その需要に合わせて民間銀行も積極的に貸し出しを行う。このため、貸出限度額近くまで貸し出しをしていることが多い。政府国債発行によって小切手が発行され、それを企業銀行に持ち込んだら、銀行信用創造を行って新たに預を創造し、貸し付けをさらに増やさねばならない。そうなると貸出限度額に近づいていくので、銀行も「これ以上は融資をやめよう」と思い、融資を申し込んでくる企業計に対して利を釣り上げて、融資を断る傾向が増える。

これは、クラウディングアウト信奉者の考えることと似ている。


とはいえ、そもそも、「インフレになると利が上がる」というのはクラウディングアウト関係しに発生する事実である。インフレになると長期金利が上がる。また、インフレになると融引き締めのために中央銀行が政策利を利上げするので短期金利も上がる。
 


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最終更新日: 19/10/26 19:08
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