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ソラリスとは、
惑星ソラリス――この静謐なる星は意思を持った海に表面を覆われていた。惑星の謎の解明のため、ステーションに派遣された心理学者ケルヴィンは変わり果てた研究員たちを目にする。彼らにいったい何が? ケルヴィンもまたソラリスの海がもたらす現象に囚われていく……。人間以外の理性との接触は可能か?
1961年、ポーランドのSF作家スタニスワフ・レムが発表したSF小説。原題は「Solaris」。
地球外知的生命体と人類のコンタクトを描いた、いわゆるファースト・コンタクトものの古典的名作。特に本作は「最後まで人類には根本的に理解不可能な宇宙人とのファースト・コンタクト」を初めて正面から書いたSF「人類には理解不可能な宇宙人」自体はH・G・ウェルズの『宇宙戦争』から既に描かれているが、人類が宇宙人との相互理解を目指すファースト・コンタクトを主題とした作品で、結局最後まで人類と宇宙人との間に相互理解が成立しない話は『ソラリス』が初らしい。として、(アシモフ、クラーク、ハインラインの御三家が近年評価を下げる中)近年さらに評価が高まり、『S-Fマガジン』のオールタイムベストSF海外長編部門では2006年度、2014年度と2回連続で1位を獲得している。
本文中では、作中に登場する「ソラリスの海」についての様々な研究・仮説が紹介される。実在しないものについて徹底的に考えてもっともらしい架空の学説を大量に生み出すというレムの思考は、この後『完全な真空』(架空の本の書評集)や『虚数』(架空の本の序文集)に受け継がれる。
そういうのは七面倒臭くてよくわからんという人は、「ソラリスの海」が主人公ケルヴィンの記憶から再生した、死んだ恋人・ハリーとの切ないラブロマンスとして、あるいは一種のジェントル・ゴースト・ストーリーのホラー小説としても読むことができる。
日本では1964年に飯田規和訳が『S-Fマガジン』に掲載され、翌1965年、ハヤカワ・SF・シリーズの1冊として『ソラリスの陽のもとに』のタイトルで刊行された(その後、1977年にハヤカワ文庫SF入り)。ただこれはソ連で刊行されたロシア語版からの重訳だったため、ソ連当局の検閲で全体の1割ほどがカットされている。
2004年、原語のポーランド語版からの完訳版が『ソラリス』のタイトルで国書刊行会から刊行(沼野充義訳)。2015年にはハヤカワ文庫SFに入り、旧訳の方もしばらく同時に流通していたが重版未定となったようで、現在は新訳版のみが新品で入手可能である。
1972年、アンドレイ・タルコフスキー監督により『惑星ソラリス』のタイトルで、ソ連で映画化。タルコフスキーの名を世界に知らしめた名作映画だが、原作者のレムはこの映画版をクソミソに罵倒し、タルコフスキーと大喧嘩に発展している。
2002年にはスティーブン・ソダーバーグ監督により『ソラリス』のタイトルで、アメリカで映画化。ちなみにレムはこっちもクソミソに罵倒している。
森見登美彦は本作を読んだ感動から『ペンギン・ハイウェイ』を書いたそうな。
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