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斜辺のパラドックス


ヨミ: シャヘンノパラドックス
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斜辺のパラドックスとは、三角形の辺の長さに関する疑似パラドックスである。

古くからある幾何学の典的なパラドックスだが、特に決まった名前はないらしい。用いる図形によりいくつかの変種がある。

斜面と階段のナゾと呼ばれることもあるが、ここでは仮に斜辺のパラドックスと呼ぶことにする。


概要


三角不等式

数学の非常に基本的な定理として、三不等式というものがある。は以下の通り。

a,b,cが三角形の辺の長さであるとき、a+b≧c

等号が成り立つのは、三角形が潰れて三点が一直線に並ぶときである(a,b,cをうまく取る必要がある)。これは任意の三角形の任意の辺について成り立つ基本的な不等式であり、具体的な図形のみならず抽的な図形や一般的なベクトル間で成り立つ重要な式である。これが成り立たないと話が進まないくらいに重要かつ基本的な不等式なので、分野を問わず多くの数学の教科書で最初の方に書かれているか、成り立つことが前提として議論が展開される。


パラドックスの主張


斜辺のパラドックスは、この式をっ向から否定するパラドックスである。斜辺のパラドックスは以下の内容をする。

A:a,b,cが三角形の辺の長さであるとき、a+b=c

この等式が成り立つのはa=b=c=0となる場合(一点に潰れた場合)のみであるので、どのように三角形を構成してもこのような式になることはあり得ない。しかしうまく斜辺を折れ線で近似することでこの等式を示すことができるというのだ。

三角形での明(?)が有名。点の取り方は三角形度によらず同じように取ることができる。

点X=(1,0)、Y=(0,1)、O=(0,0)とすると直三角形XYOができる。この時、XY=2、OX+OY=1+1=2

斜辺に新しい点Z1=(1/2,1/2)を置き、残りの辺上にX1=(1/2,0)、Y1=(0,1/2)を置く。
すると2つの直三角形XX1Z1Z1Y1Yができる。この時、XZ1+Z1Y=2/2+2/2=2、XX1+X1Z1+Z1Y1+Y1Y=0.5+0.5+0.5+0.5=2。

次に斜辺に新しい点Z2=(1/4,3/4)、Z3=(3/4、1/4)を置き、XX1Z1Z1Y1Yの残りの辺にX2=(1/4,1/2)、X3=(3/4,0)、Y2=(1/2,1/4)、Y3=(0,3/4)を置く。すると4つの三角形XX3Z3Z3Y3Z1Z1X2Z2Z2Y2Yができる。この時、斜辺の和=4×2/4=2、残りの辺の和=8×1/4=2。

そのようにして新しい点Znと、それに対応する点Xn,Ynを追加していくと、Xn,Ynの点がどんどん斜辺に近づいていく。Nが限りなく大きくなっていき、Znが斜辺をまんべんなく埋め尽くしていったとき、Xn、Ynの点の集まりが斜辺に限りなく近づいていき、点の集合としてZnとZn,Ynの区別がつかなくなる。

従って、これを限に繰り返すと折れ線を成す点と直線は点の集合として一致するので、極限では斜辺の長さの和=残りの辺の長さの和となる。一方で、どれほど分割を細かくしても斜辺の長さの和=n×2/n=2、残りの辺の長さの和=2n×1/n=2である。

これは2=2と言うことを示しているのであろうか?


別バージョン


このパラドックスにはいくつか異なるパターンがある。

扇形の弧の長さ

[画像を見る]

B:扇形の半径の2倍と弧の長さは一致する。

明(?)

半径1、90度の扇形で明する。弧の長さはπ/2。

弧を2等分する点を置き、X軸、Y軸からその点に向かって軸と行になるように軸から線分を引く(赤色)。赤色部分は長方形なので、新しくできた折れ線の長さの合計は2である。

弧の長さを4等分にする点を新しく置き、その点に向かって軸に行になるように折れ線から線分を引く(青色)。青色部分は長方形なので、新しくできた折れ線の長さは2である。

以下同様にして、円を2n等分する点に向かって折れ線から軸に行な線分を引き、新しい折れ線を引いていく。そのようにしてできた折れ線の長さは常に2である。

これを限に繰り返すと折れ線は限りなく弧に近づいていく。しかし、弧の長さはπ/2であり、一方で折れ線の長さは2である。

これはπ=4を示しているのであろうか?

円弧の方を半径に近づけるパターン

[画像を見る]

先ほどの特殊なパターン

C:半円の直径と円弧の長さは等しい。

直径2とする。半円の円弧の長さはπ。元の半円のふちと中心を直径とする半円を新しく描く(赤色)。新しい半円の半径は1/2であり、弧の長さはπ/2なので、新しい弧の長さの合計は2×π/2=πである。また、半円の直径の合計は2×2/2=2。

次に、赤色の半円の中心と淵を直径とする半円を描く()。新しい半円の半径は1/4なので弧の長さはπ/4、新しい半円の弧の長さの合計は4×π/4=π。また、半円の直径の合計は4×2/4=1

以下同様にして新しく半円を描くと、一つの弧の長さはπ/2nなので、弧の長さの合計は2n×π/2n=π、直径の合計は2n×2/2n=2である。

これを限に繰り返すと半円は限りなく小さくなっていき、直径を成す線分に限りなく近づいていく。しかし、円弧の長さはπ、直径は2である。

これはπ=2を示しているのであろうか?


様々な仮説


このような矛盾の出る仮説をいくつか挙げる。

なものもそうでなさそうなものも、「ギザギザをどう扱うか」ということを問題にしているという点では同じかもしれない。


解説


これは折れ線の極限に関する操作を慎重に扱っていないために起こる疑似パラドックスである。

曲線と折れ線が点の集合として一致すること

曲線の長さや形状を、その曲線に近づいていく折れ線で近似することができる。

折れ線を成す点の集合Xn曲線Cに近づいていくことを、Xn曲線の最短距離で定義することができる。具体的には、「Xnを中心とする円を描き、Cと交点もしくは接点を持つ円の半径rnの最小値をXnとCの距離とする。rn=0となるとき、XnはC上にあるとみなす」ことができる。

折れ線が曲線Cに近づいていくことは、「全てのnについてrnが0に近づいて行くこと」、つまり、「rnの最大値rmaxが0に近づいていくこと」と定義できる。A,Bは各線分が限りなく0に近づいていくこと、Cのパターンは円弧の上を動く点を用意して、その点と直線の距離を出し、その距離の最大値が0に近づくことを言えばよい。

この場合、A,B,Cのいずれも「折れ線は曲線に限りなく近づいていく」ということが言える。

近似する折れ線の長さと曲線の長さ

では、それぞれの近似折れ線の長さは曲線の長さとどういう関係があるのだろうか。

実は、近似折れ線の長さの極限と曲線の長さには関係がない、と言うのが答えとなる。曲線の長さを定義するのに適した折れ線でないと曲線の長さを定義するのに用いてはいけないということである。

Aのように各部分が相似な二等辺三角形となるような折れ線で斜辺を近似する場合、微小な三角形の斜辺の長さをc/2n底辺度をθ(0<θ<π/2)とすると、残りの辺の長さはc/2ncosθとなる。したがって、折れ線の長さの合計はc/cosθとなる。θ=45°なら2=2を示すことができるし、θ=60°なら2=4を示すこともできる。

[画像を見る]

また、斜辺を分割する点はどのようにとっても良いため、斜辺上の点Zを任意に決めるとそこを頂点とするような折れ線を作ることができる。折れ線自体は連続に繋がっているが、一般的に折れ線の頂点となるような点では微分を考える事ができない。このように考えると、ギザギザの折れ線の極限として定義した曲線では、「曲線上のいたるところで連続だが、曲線上のいたるところで微分不可能」という曲線を定義できてしまう。さらに、右図のように近似の仕方によっては折れ線の長さを無限大にすることさえできる。

つまり、折れ線を「うまく収束」させないと点列としては限りなく滑らかに曲線に近づいていくように見えるのに、微分係数のような「滑らかさ」を定義するような値を定義できなくなってしまう。長さを定義できる曲線は「いたるところ微分(つまり滑らか)」という条件が付くため、いたるところ微分不可能になるような近似折れ線は長さを定義するにはよろしくない、ということになる。二等辺三角形の例で言えば、極限でθが0になるような折れ線以外は近似折れ線の極限で曲線の長さを定義することはできない、ということになる。

また、曲線や直線など、図形の長さはその図形の属する間に付随する距離関数によって変化する。通常用いる距離関数ユークリッド距離であるが、他の距離関数マンハッタン距離、双曲距離など)を採用するとさらに議論が込み入ってくる。マンハッタン距離間における「円」は円周率4の正方形となるので、Aはマンハッタン距離間においては正しい議論となるが、そもそも曲線の長さ自体が任意の度の回転に対して不変ではないことに注意。

そのため、極限を扱う際には何が関係して何が関係しないのか、より注意深く考えなければならない。

ちなみにこの図形は自己相似ではないので、同じような議論が必要になるものの今回はフラクタル関係である。


まとめ


図のような近似折れ線の極限は曲線の長さを定義するのに不適切である。「拡大するとギザギザだから」「折れ線の長さの極限と折れ線の極限の長さは交換しない」「収束する位相が違うので位相を定しない限り得られた長さは意味」というは同じことを違う側面から述べているだけでどれも正しいと言える。

近似折れ線がただ単に各点で曲線に近づいていくだけの近似の仕方は、曲線の滑らかさや曲線の長さには関心であるので、長さも同時に収束するようなより厳しい条件を課さなければならない。点列の収束のみに注すると他の要素が収束していないことに気付かず、折れ線の長さと曲線の長さなどの値があたかも関係があるように論じてしまう。極限を扱う際は、極限の先で引き継ぐ情報(収束するかどうか)をよく注意しないと本パラドックスのように誤った結論を導いてしまう。


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最終更新日: 20/09/18 13:31
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