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直木賞とは、芥川賞とともに日本で一番有名な文学賞。大衆文学の新人に贈られる(建前上は)。
浅田次郎 / 伊集院静 / 角田光代 / 北方謙三 / 桐野夏生 / 高村薫 / 林真理子 / 三浦しをん / 宮部みゆき
▲正式名称は「直木三十五賞」。選考は1月と7月の年2回、芥川賞と同時に行われる。主催は日本文学振興会(文藝春秋社の社内団体)。
一人の作家が二度以上受賞することはできない。また、芥川賞との重複受賞もできない。
菊池寛が、「文藝春秋」の売上が落ちる2月と8月に話題を作るために、芥川賞とともに創設した……というのは都市伝説らしい。主催が実質文藝春秋社なので文藝春秋社の作品が受賞しやすい(例として、第131~140回の受賞作12作品のうち9作品が文藝春秋社刊。さすがに露骨すぎたのか141回以降は割合が下がっている)。
名目上は「新人賞」であるが、受賞するのはデビューから10年前後が経過した中堅以上の作家であることが多い。選考委員よりキャリアの長い作家が候補になることもある(デビュー30年目で受賞した佐々木譲や黒川博行など)。これは選考の際に「これから先も書き続けていけるかどうか」なども考慮されることや、初めて候補に選ばれた作家は好評でも「もう一作見たい」という常套句で落とされることがままあるため。
ベテランが候補になることもあるとはいえ、受賞していなければ誰でも候補になれるのかというとそうでもなく、コンスタントに候補になっては落とされる人はそのうちいつの間にか候補にならなくなり(最近では真保裕一、三崎亜記、古処誠二など)、かと思えばずっとスルーしていた作家を唐突に候補にしたり(最近だと歌野晶午とか貴志祐介とか)、過去に落としてから10年以上放っておかれた作家が復活してくることもある(20年近くのブランクを経て候補になった佐々木譲や安部龍太郎の例がある)。デビュー34年目の佐藤正午が初候補で受賞するなんてこともあり、はっきり言って候補作の選定基準は謎。
また、直木賞の受賞は既刊を含めた売上に直結するため、デビュー作で受賞してしまったりすると(近年では『GO』の金城一紀などの例がある)、売る本がそれしかないため本人にとっても書店にとっても美味しくなかったりする。もっとも最近は商業的影響力では本屋大賞に大きく水をあけられている感は否めない。
受賞のタイミングをよく外すことでも有名で、各作家の代表作に受賞しているとは言い難い。宮部みゆきが最高傑作と名高い『火車』で落とされ『理由』で受賞したり、浅田次郎が『蒼穹の昴』で落とされ『鉄道員(ぽっぽや)』で受賞したり、佐々木譲が『警官の血』で落とされ『廃墟に乞う』で受賞したことなどはその典型で、渾身の力作を落としたあとでわりと地味な作品に受賞することが結構ある。このため、直木賞は「作品ではなく作家に与える賞」という側面がある。これは別に最近に限った話ではなく、例えば池波正太郎や藤沢周平もそんな感じで受賞しており、昔からの直木賞の性質である。SF・ファンタジーが受賞しないことでも知られ、筒井康隆は小説『大いなる助走』で直木賞の選考過程を皮肉っている。
何度も候補に挙げられては落とされ続ける作家が多い。宮部みゆき、東野圭吾、北村薫、恩田陸などは5度落選し6度目で受賞している。道尾秀介は第140回の初ノミネートから5回連続候補入り(5回目で受賞)という記録を作った。ちなみに最多落選回数は古川薫の9回(『漂泊者のアリア』で10回目にして受賞)。
かつては同人雑誌の掲載作や雑誌掲載の短編が候補になり受賞することも多かったが、現在は候補作に選ばれるのはほぼ四六判単行本に限られている。ノベルスは昔から候補になりにくく、第143回では万城目学の『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』が新書版の本としては30年ぶりぐらいに候補になった。
第144回以降、芥川賞とともに受賞記者会見の模様がニコニコ生放送で中継されている。もっとも、西村賢太と田中慎弥が話題になった芥川賞に比べると、直木賞はあまりその恩恵を受けてはいないが……。
2014年からは、現役高校生が年に一度、直近1年間の直木賞候補作から独自に受賞作を選ぶ高校生直木賞が実施されている。ちなみにそちらの受賞作は第6回まで全て直木賞落選作であったが、第7回で本家直木賞第161回受賞作『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』が受賞し、本家との初のダブル受賞を成し遂げた。
▲新進作家の「出世作」的な作品に与えられることが多く、直木賞の前に獲っておきたい賞、というポジション。だが、意外と直木賞との重複受賞率は高くなく、第20回(1999年)の山本文緒以降では、直木賞を獲った受賞者は第26回の恩田陸、第31回の池井戸潤、第32回の辻村深月の3人しかいない。近年の受賞作の傾向的には直木賞より本屋大賞寄りの賞。