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陸上自衛隊(略称:陸自、英名:JGSDF / Japan Ground Self-Defense Force)とは、日本の領土の国防を主任務とする日本政府防衛省直属の陸上軍事組織である。
その活動は領土警備・国内外の災害救援・人命救助、同盟国との軍事共同活動、国際平和協力活動、さっぽろ雪まつりにおける雪像構築等多岐に渡る。
陸上自衛隊は1950年(昭和25年)に設立された「警察予備隊」が1952年(昭和27年)に「保安隊」に改組。さらに「保安隊」も1954年(昭和29年)に改めて改組の上、「陸上自衛隊」として設立された経緯をもつ。
国内での正式名に基づき、英訳は「Japanese Ground Self-Defense Force」…JGSDFだが、海外の軍事系書籍、サイト、軍人などからは「Japanese Army」(日本陸軍)と呼ばれたり記述されることがわりと多い。
国内では略称として「陸自」と呼ばれることが多いだろう。
海上自衛隊が日本帝国海軍の伝統を色濃く受け継いだのに対して、陸上自衛隊は旧陸軍の印象を排除する形で設立当初からアメリカ陸軍・軍事顧問団の影響を受けた。設立当初は素人ばかりだったために組織としてかなり脆弱だったという話も伝われている(その後、旧軍士官を取り込むことになった)。
アメリカ陸軍の影響を強く受けたためか、編成上はアメリカのペントミック師団制度の亜種的なものとなっている(後述)。
冷戦時代、仮想敵国を当時のソ連軍としていたが、冷戦終結後2000年代に入って陸上自衛隊はそれまでの北方重視、火力重視といった冷戦時代の編成から大きく様変わりし、師団の旅団化などスリム化を行いつつ、中央即応集団設立などの組織改変など行う一方、特殊作戦群や西方普通科連隊など特殊部隊の増強も行っている最中である。また発足時より国土防衛を主体として編成されていたものの、湾岸戦争を契機に盛んとなった海外貢献という目的で、カンボジア、東ティモール、イラクなど部隊単位での派遣も行われることになり、これらの平和維持活動のための教育機関なども設置されているなど陸上自衛隊を取り巻く環境は変化しつづけている。
冷戦が終了したとしても東アジア方面は不安定要因が数多い。なによりも、冷戦終結後ここまで世界情勢が変化したことを予期できなかったのであれば、今後もどのような変化があるかを想定することは難しいだろう。陸上自衛隊としてはあらゆる変化に備えるために従来の装備、編成を残しつつ時代の変化を見極めていくことが求められる。これは、陸上自衛隊における兵種(たとえば戦車兵など)技能は一夜にして身につくものではなく、教育と練成には長い時間を必要とするためでもあり、陸上自衛隊が今後ともドラスティックに改革していくという姿はあまり想像は難しい。
他の自衛隊から「用意周到 動脈硬化」と呼ばれるのはそこらへんに理由があるのかもしれない。もっとも、国土防衛という観点からいえば用意周到なのはいいが、動脈硬化はちと困るような…。
冷戦終結後まで、自衛隊、特に陸上自衛隊は旧陸軍の印象もあってか国民に決して評価が高い組織とは言えなかった。その評価が大きく変わったのは阪神大震災での災害支援による派遣活動からで、陸上自衛隊が提供する糧食、風呂など様々な支援能力が国民に知れたことで一気に国民の身近な存在になったといえるだろう。
▲陸上自衛隊は長らく極東ソ連軍を仮想敵としており、北海道を舞台にガチンコ勝負を挑む腹だったため、陣地構築技術と北方の師団を中心として冬季戦能力に定評がある。北部方面隊では嫌になるほど頻繁に雪中機動訓練を行っており、ほぼ全ての隊員がスキーでの機動が可能となっている。一般部隊でこれほどの高い錬度を有している軍は、他にフィンランドの緊急展開部隊くらいだろう。
まあ、訓練で嫌になるほどスキーをする反動で、スキー嫌いになってしまう隊員も結構いるとかいないとか・・・
陸上自衛隊は西側陣営としては屈指の防空能力を有している。
主なアメリカ・イギリスを始めとする西側諸国は、「パトリオット」や「HAWK」などの長・中距離ミサイルと「ローランド」や携帯SAM「スティンガー」などの近・短距離ミサイルの二段階の防空体制を構築している。対して、陸上自衛隊は射程の長い順に03式中距離地対空誘導弾(HAWK)~81式/11式短距離地対空誘導弾~93式近距離地対空誘導弾~91式携帯地対空誘導弾~(場合によっては87式高射機関砲)+さらに航空自衛隊が装備するパトリオット長距離SAMも加えると防空の鬼・ソ連も顔負けな実に5~6段階の防空体制を有している。
なぜこれほど対空戦力が充実しているかというと、前身である帝国陸軍が先の大戦で物量に勝る連合軍の戦闘機・爆撃機に機銃・爆弾で嫌と言うほど叩きのめされた経験があるからのようで、陸自の中の人は「制空権は取られるもの」と考えているようで「防空は空軍の戦闘機の仕事だから陸軍はその補助で十分!」という西側のドクトリンに反して非常に高い防空能力を有しているのである。
(最初から航空自衛隊の戦域防空や支援攻撃をアテになんかしていない。というまことしやかな噂もあるが…)
さらに陸上自衛隊は砲兵戦力も充実している。
陸上自衛隊の砲兵部隊である「特科」では主力火砲として欧州製の牽引式榴弾砲「155mmりゅう弾砲 FH-70」を採用している。FH-70は当時の西ドイツ、イギリス、イタリアが共同開発したもので、日本を含む世界10ヵ国で運用されているのだが、その中でも陸上自衛隊はなんと、運用国中最多の492門が配備されている。これは開発国である3ヵ国をあわせた491門と並ぶほどである。さらに、これに加え「多連装ロケットシステムMLRS」と「203mm自走りゅう弾砲」、北部方面隊では「75式155mm自走りゅう弾砲」及び「99式155mm自走りゅう弾砲」、が配備されている。
これも先の大戦で砲弾の雨を降らせ「砲兵は戦場の神」と崇める仮想敵国ソ連に対抗するためである。
さらにこれらを操作する隊員の錬度も凄まじく高いようで、諸外国では考えられないような命中精度のようである。例えば、毎年実施される陸自最大の公開演習である「富士総合火力演習」では、性能の違う3種類の異なる榴弾砲を用いて、かつ空中で榴弾を爆発させる「曳火射撃」で各榴弾を同じタイミングで爆発させ、さらにその爆発で富士山の形を描くという頭がオカシイ、訳の分からない非常に難易度の高い射撃を行っている。また、ある特科部隊の実弾射撃訓練で数キロ離れた1m四方の的を直撃させた事が多々あるとか、職種は変わるがある普通科の重迫撃砲部隊では1.5km先に置いた半径70cmの円卓に命中させたなど・・・噂には事欠かない。(さらに、観測の隊員が初級者だったため、目標から50mもずれた着弾を120mm迫撃砲に蹴りを入れて3m以内に納めた神射手もいるとかいないとか…)
現在の戦力構成は概ね以下のようになっている。
[戦略単位] 方面隊 (日本を北部・東北・東部・中部・西部ブロック分け)+中央即応集団(他直轄部隊)
[作戦単位] 師団・旅団
[戦術単位] 群・団・連隊・隊・大隊
方面隊では複数の師団・旅団が配備されるだけではなく、混成団と呼ばれる普通科連隊+α規模の部隊が方面隊直下におかれる場合もあるほか、施設隊などの方面隊直轄部隊および教育および予備自衛官の訓練・管理が行われる。作戦単位として中核と成す主な師団・旅団として9個師団・6個旅団が編成されており、展開場所、任務などによって大きく以下に分類される。
陸上自衛隊の師団・旅団編成の特徴の一つにはアメリカ陸軍が1950年代に発案したペントミック師団編成を一部取り入れ、基本的に1個連隊を中核とした諸兵科連合による連隊戦闘団(CT)を形成し戦術単位を構成することを計画している。数個連隊以外は小規模な直轄大隊しか持たない陸自の苦肉の策ともいえる。
これは平時の陸自幹部ポストの絶対数確保や、部隊配置の絶対数の少なさなど色々の側面をかんがえると致し方ないとかない側面もあることも書いておかねばならないだろう。(ちなみに発案元のアメリカ陸軍自体はペントミック師団編成では問題があると判断して幾度か編成改組を経て現在旅団戦闘団を中核としたモジュラー・フォース化師団編成となっている)
また、各国の師団編成が比べるとその規模が半分程度なのも特徴的。陸上自衛隊の師団は諸外国に比べると、旅団以上(3000~5000名)以上、師団(1万2000~1万5000名)以下の増強旅団程度でしかなく(同様に連隊(600名)も諸外国の大隊に相当)、呼称より1クラス下の兵力となっているので、他国と兵力比較する際は注意が必要である。
とはいえ、効率化、情報化が進み以前よりも少ない兵力で作戦地域を支えられるようなり、基本的な作戦単位が師団から旅団に移行するのが世界的な潮流となっているので、陸上自衛隊の編成もあながち的外れではないであろう。
方面隊以下の師団・旅団以外にまとまっている中央即応集団(防衛大臣直轄)は機動運用部隊である第1空挺団、第1ヘリコプター団や専門部隊である特殊作戦群などで編成されている。
(ここ数年の組織改革を見るに、島嶼防衛、ゲリラ・コマンド対策に力を注ぎつつも従来型編成の部隊を北海道の第2師団・第5旅団・第7師団が受け持ち、かつ隊員の充足率を向上させようとしている。また、教育・予備自衛官らを方面隊直轄にすることで、数少ない予備兵力を柔軟に運用させようとしているようだ)
有名どころの師団などの部隊としては以下のものがあげられるだろう。
現状、機械化編成がされている連隊は、第3普通科連隊(名寄・第2師団)、第11普通科連隊(千歳・第7師団)、第18普通科連隊(札幌・第11旅団)、普通科教導連隊(御殿場・富士教導団)、中央即応連隊(宇都宮・中央即応集団)という形である。90年代後半、第12師団(後、旅団)をヘリコプター運用中心の空中機動旅団化構想があったものの予算逼迫のおりあまり進んでいないのが実情である(それでも他の部隊と違いヘリは増強されているが)。
最近の趨勢でもある特殊部隊について、2000年代にはいって特殊作戦群を編成。この他、準特殊作戦的任務を帯びた部隊としては特殊作戦群の母体ともなった第1空挺団(習志野)、島嶼防衛のために編成された西部方面普通科連隊(WAiR)(佐世保)があるほか冬季戦技教育隊(冬戦教)(札幌)も知られている。
冬戦教は1970年代に設立。陸上自衛隊の初の特殊部隊ともいえる存在で普段は冬季間の戦術検討、指導などが主な役割でオリンピックのバイアスロン選手を多く輩出している部隊だが、有事の際は敵後方でのかく乱、遊撃などを任務として冬季遊撃レンジャーとして活動するといわれている。いろいろ妙な噂話がある部隊だが、真偽のほどは明らかにされていない。
防衛庁(当時)は陸自のトラック総数を公表していないが、1960年の時点でジープから6トントラックまで計21259台あり、全員が一斉に乗車移動することが可能になっていた。「日本の防衛力再考」兵頭二十八 銀河出版 1995 p.121
ただしそれより上、すなわち歩兵の移動がすべて装甲車、あるいは歩兵戦闘車で行える機械化編成は数が少ないのが現状である。
▲詳細は不明であるが、従来の地域師団・旅団とは異なる「機動師団」「機動旅団」という、新種の戦略単位部隊が師団は3個、旅団は4個創設される。そして何より目を引くのが「水陸両用団」であり、米海兵隊も装備するAAV-7水陸両用車を装備した事実上の海兵隊的部隊で、陸自が離島事案対処をいよいよ重視したことが伺える。
このことは装備品にも表れており、60mm迫撃砲や84mm迫撃砲(B)/カールグスタフ無反動砲の最新型など、普通科部隊用の軽便な支援火器の調達が始まっている。機動戦闘車や中距離多目的誘導弾といった、その分野では最高レベルの装備も、単年度主義の例外を適用し、かなり早いペースで配備する模様である。
展開能力の重視は(恐らく)オスプレイの導入、在外邦人保護を主眼とした装輪装甲車(改)の開発などにも表れて、陸上自衛隊が国外で活動を行う機会の増大へ、装備の側面からも本格的に対応し始めたとも言える。
加えて空自の高射群、戦闘機隊とともに防空を担う高射特科群への03式中距離地対空誘導弾の配備と改良を継続。地対艦ミサイル連隊の数量維持と、新型の12式地対艦誘導弾の複数年度会計によるコストダウン・早期調達など、敵上陸部隊の沿岸・沖合での漸減。制空権維持能力なども強化される模様である。