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JRPGとは、コンピュータゲームのサブジャンルの一つである。
RPG(ロールプレイングゲーム)はコンピュータゲームにおいては最も広く認知されているジャンルの一つだが、中でも日本のRPG全般に共通する特色を一定以上備えている作品に対してJRPGの名称が用いられるようになった。特に西洋圏で製作されているそれ(WRPG: Western RPG)と対蹠的な作品群を指す言葉として海外のゲーム関係者の間では広く使われて来ている※。中韓産のRPGにも似た傾向が所々見られるためそれらを含めて言い表す際に使われるものとしてERPG(Eastern RPG)という言葉もあるがこちらは一般ユーザーの間ではあまり利用されていない。
※大手ゲーム配信サイトSteamでは"JRPG"タグが付けられた作品は2016年9月現在で138本を数える。
JRPGの特徴として挙げられている項目は凡そ以下のようなものがある(無論これら全ての性質を兼ね備えていなければならない訳ではない)。
JRPGという呼称が広く使われるようになったのは2000年代中葉の北米市場のゲーム関係者の間であるとされている。当初からそのスタイルに対してネガティブな印象を抱く関係者が好んで使っていた用語であるとも言われ、2009年末には海外の大手RPGデベロッパーBioWare※の創設者Greg Zeschuk氏がインタビューで"JRPGは進化・進歩の欠如により苦境に差し掛かっている"という見解を述べている。こうした発言を皮切りにJRPGというジャンルの是非を巡る論争が国内外のユーザー間でより活発に行われるようになり、その余波は国内の業界スタッフにも及んでいった。
正式に製品のジャンル名称として"JRPG"の名称が用いられている作品は未だ存在していないが、レーベルとして用いられるなどこの定着しつつあるジャンル名称を積極的に活用しようとする動きもある。
※カナダに本社を置くメーカーで『マスエフェクト』や『ドラゴンエイジ』などの大作RPGシリーズで知られる他、人気映画シリーズである『スターウォーズ』を題材にしたRPGも手掛けている。2007年EAにより買収された。
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▲JRPGの定義を巡っては様々な議論が重ねられてきているが、ゲームシステムの純粋な違いによるジャンル区分とは異なるため厳密な定義を与えるのは困難であるとの意見が大勢を占めている。だが概要で列挙したような特徴はJRPGに共通する事項としては多くの人々の頷く所であると考えられ、また次のようにその特徴を表す記述もある。
JRPGの主な特徴としては、コマンド選択式の戦闘システム※、一本道のストーリー展開、自由度の低さ、冗長なカットシーン(ムービーシーン)、等が挙げられる。JRPGとは - はてなキーワード[外部]の2016年9月6日現在の版より引用(※印の注釈は除く)
※西洋では慣習的にRPGとARPG(Action RPG)の区別を付けていないため、Y'sやゼルダの伝説も広義のJRPGとして語られる事があるという。
またキャラクターや世界観に見られる傾向などを含め、JRPGを文化人類学的な見地から総合的に分析した評者(ゲームサイト「Game*Spark」の記者「Kako」)からは以下のような定義が為されている。
JRPGとは「西洋によって後進性、不変性、奇矯性、官能性といった性質を付与され類型化された“異質な”日本のRPG」のことである【JRPGの行方】第6回 「JRPG」とは何か | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト[外部]より引用
西洋のゲーム関係者の間から寄せられている声も概ね上のような内容で占められている。
ま たシステム面での「保守性」もJRPGを特徴付ける大きな要素である。特に国民的RPGと名高い『ドラゴンクエスト』シリーズはナンバリングタイトルでは 近年までターンベース制を墨守しているなど、ハード制約の軛を遁れた世代においても頑陋とも言える古典的システムへの拘りを続けるその姿勢は国内外のゲー ム関係者を困惑させている。
この古典的システムへの拘泥故にクラシックRPGという呼称がJRPGとほぼ同義で用いられる事もある程で、 JRPGといえばシステム面で進歩のない、ウィザードリィやローグなどジャンル草創期に開発されたタイトルのシステムをほぼそのままの形で引継いでいる作品、という印象も持たれている。
◆JRPGと同じくERPGに分類されるKRPG(韓国製RPG)との差異については海外のフォーラムで次のように論じられている。
※MMORPG用語で、同様のタスク(特に敵モンスターの掃討)を繰返し行う事を指す。日本のゲーム界隈でいう「作業」に相当する。
†アイテムの収集や売買などがプレイの中心になる、戦闘の形勢がアイテムに大きく依存するといった類のシステムを云う。
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→コンピュータRPG#歴史の項目も参照
JRPGを形作っていった文化的背景については後述するが、本項ではまず国産RPGがどのような発展を辿ったのかを歴史的に概説する。
日本初の商用コンピュータRPGソフトとして知られるのが1982年に光栄マイコンシステム(現コーエーテクモゲームス)から発売された『ドラゴン&プリンセス』である※。同作ではパーティー制やタクティカル戦闘など今日のJRPGで盛んに用いられているコンセプトが既に実装されており、ジャンルの草分け的存在となった事はほぼ確実である。同社はその後も『剣と魔法』といったハイファンタジーベースの作品を次々と世に送り出した。
コーエーと並び国産RPGの老舗である日本ファルコムも1983年に同社初のRPGである『ぱのらま島』をリリースしており、翌1984年には今日までその系統が脈々と続く『ドラゴンスレイヤー』シリーズの第一作を発売している。
※同社の『ダンジョン』が国産初のRPGであるとの説もある。また83年末-84年初頭にBPS社から発売開始された『ザ・ブラックオニキス』は国産黎明期の本格的RPGとして名が通っており、同作品を事実上国内初のファンタジーRPGと看做す意見も出ている。
時を同じくして任天堂から1983年にFC(ファミリーコンピュータ)が発売され、家庭用ゲームソフトの需要を大きく拡げていった。始めはアクションやシューティングゲームといったアーケード筐体で定番のジャンルが市場を牽引していたが、1986年に『ドラゴンクエスト』が発売され大ヒット※、一年置きに続編を発売しいずれも前作以上の人気を獲得した。87年には『ファイナルファンタジー』の第一作も発売されており同社のゲーム機市場はRPGで活況を呈する事になる。
この傾向は後継機のSFCにも引継がれ、両シリーズの続編を初めとする多くの国産RPG作品が世に出ることとなった。
※FC初のRPGタイトルはナムコ(現バンダイナムコゲームス)から1985年に発売された『ドルアーガの塔』だが、同作はアーケードを前身とするステージ制アクションRPG(海外では「メイズ」(Maze; 迷宮探索型ADV)と呼ばれるジャンルにも分類される)であり、ドラクエのようにワールドマップを縦横に渡り歩きながら冒険を進めていくタイプの作品ではない。
国産RPGに大きな転機が訪れるのが家庭用ゲームハード「PCエンジン」の周辺機器、1988年発売の「CD-ROM2」の登場である。これはCD-ROMを媒体として利用するものであり、旧来のカセットROMから大容量光学メディアの記憶領域をふんだんに活用した表現が可能となった。1989年発売のCD-ROM2向けRPG第1号『天外魔境ZIRIA』ではアニメーションシーンや生音源の音楽やキャラクターボイスなどが収録され、ゲームファンを驚かせた。さらにPS(PlayStation)やSS(SegaSaturn)などコンシューマ機における第五世代ハードの開発でゲーム媒体としてのCD-ROMがさらに普及した事によって※、メジャータイトルの多くでキャラクターボイスやムービークリップを収録する気運の高まりを見せた。
※第五世代の主要ハードであるPSとSSは共にCD-ROMを採用していた(N64はSFCに引続きカセットROMを採用)が、ビデオコーデックの関係上ムービーの画質はPSに分が有り、またポリゴン描画性能もPSが優れていたためスクウェア製品を始めとする3Dタイトルの多くがPS向けに開発された。なおPCゲーム市場では90年代初頭からCD-ROMを媒体とした作品が数多くリリースされており、『エメラルドドラゴン』などのRPGでは声優を起用したCVや原画をフルカラーで取込んだビジュアルシーンが追加されていた。
挿入ムービーの活用を積極的に行ったのがスクウェア(現スクウェア・エニックス)で、1997年に発売された『ファイナルファンタジーVII』および続編のVIII、IXはキャラクターボイスの収録こそ行っていない※がプリレンダCGによる映像表現は当時のソフトの中でも一際目立っていた。
またバンダイナムコ(シリーズ発足当時はナムコ)から発売されてきた、JRPGの代表格との声もある『テイルズオブ』シリーズは第一作からSFCというハードの強い制約にも拘らず有名声優を起用し若干のボイスを収録、また主題歌の挿入まで行っているが、PSにハードを移行した第二作以降ではイベント会話シーンなどに多くのボイスを収録し、翌年発売された第一作のリメイク移植も同様の追加収録をしている。
※FFがCVをゲーム内で収録するようになったのは第六世代ハードであるPS2でリリースされた『X』から。なお『ドラゴンクエスト』シリーズはナンバリングタイトルでCVの採用は未だ行っていない。
このようにハードの性能やメディア容量の大幅な向上によりゲーム内にボイスやムービーを多数収録する事が可能となり、それらをメジャータイトルが積極的に活用していった事で、そうした環境をゲーム内に構築する事が(必ずしも売上には結びつかないが)スタンダードなものになっていき、産業構造の転換を齎したという点が後の国産ゲーム作品の傾向に大きな影響を与えている。中でもRPGはその性質上ゲーム内におけるテキスト量や用意されたイベント数が他のジャンルから抜きん出ており、必然的にそうした視聴覚データの占める比重が高くなるため予算面でも大きく左右されるのは避けられなくなっていった。
2000年代に入るや次々と第六世代ハードが発売されていくが、少なくとも国内の据置市場に関してはPS2(PlayStation2)の独壇場と言って差し支えない状況で、第七世代ハードへの買替えがやや遅れた事も相俟って発売年である2000年から凡そ10年に亘ってその覇権が続いた。このPS2全盛時代に発売された数々のRPG作品こそが「JRPG」の名声を高め、かつゲーム批評空間では負の側面として語られがちな多くの特徴を際立たせていった。
PS2はそのハード特性上開発に手間を要したため、多くの中小デベロッパーがグラフィックを中心とした技術面で躓き、プロジェクトの予算圧迫を招いた。更に前世代から続く映像・音声周りのコンテンツ充実化にも拍車が掛かり、肝心のシステム面やバグフィックス、プレイアビリティの改善といったゲーム性に直結する部分が等閑になっているという批判を内外から蒙る事となった※。
また携帯機市場の拡大が国産ゲーム開発の行方に大きく影響した。SCEの開発したPSP(PlayStation Portable)は当時の携帯機としては破格の性能を有しており、据置機と較べても遜色ないグラフィックスを実現していた。容量面でも1ギガバイトを超える光学メディアを採用した事で旧来の携帯機では不可能だったボイスやプリレンダムービーの多載が容易化した。加えて本機種はPS2に較べて開発費を低く抑えられ†、それでいて据置市場と同等以上のユーザーを獲得できるプラットフォームとして働いたため、国内RPGメーカーの多くが携帯機市場に軸足を移す誘因となった。