ル・マンブガッティサーキットは、フランス西部のサルト県ル・マン市にあるサーキットである。
伝説的な自動車メーカー・ブガッティの創業者エットーレ・ブガッティの名にちなんで命名された。(サーキット開業の1966年にはブガッティは自動車製造をやめていて、歴史上の存在になっていた)
ル・マン24時間レース(オートバイ版)やMotoGPのフランスGPが開催される。ル・マン24時間レース(四輪版)は本サーキットの一部を使用して開催される。
1965年にフランス西部自動車クラブ(ACO)のジャン・マリー・ルリエーヴル会長とジャック・フィナンス・スポーツ委員会会長が主導してサーキットを建設し、1966年に開業した。
開業直後の1967年にF1フランスGPが開催されたが、それ以降はF1が開催されていない。
MotoGPのフランスGPが初めて開催されたのは1969年であり、それ以降、有力な開催地になっている。1990年代までのル・マンブガッティサーキットは、フランス南部マルセイユ近くのこの場所にあるポールリカールと同じぐらいにフランスGPを開催していた。2000年以降のMotoGPフランスGPの開催地はル・マンブガッティサーキットで固定されている。
2021年現在もフランス西部自動車クラブ(ACO)が本サーキットを所有している。
コース形状は変遷しており、フランス語版Wikipediaのこの画像に経緯がまとめられている。
フランスの首都パリから直線距離で185km離れたこの場所にル・マン市がある。
ル・マン市の市街地から5kmほど南に下ったこの場所にル・マンブガッティサーキットがある。
日本からル・マンブガッティサーキットへのアクセスは非常に良い。
日本の空港からパリのシャルル・ド・ゴール空港への直行便は豊富にあるし、パリからル・マンブガッティサーキットは高速鉄道TGVと路面電車(トラム)の2本だけで行くことができる。
パリでホテルに泊まり、そこからTGVで1時間5分かけてル・マン市中心部に行き、ル・マン市中心部から路面電車で16分かけて最終駅のAntarès-MMArena駅に行き、そこから5分ほど歩くとサーキットに到着してしまう。
「レンタカーを借りて慣れない道を走る」「小規模空港向けの飛行機を必死に探す」「1時間ほど田舎道を足が棒になるまで歩き続ける」といった苦行をする必要がない。ヨーロッパラウンドの中で最も現地観戦しやすいサーキットと言える。
このため本サーキットで行われるMotoGPにやってくる日本人観戦者の姿をドルナの国際中継カメラが映し出すことがある。
北緯48度と結構な高緯度にあり、樺太のこの村、オホーツク海、千島列島の芙蓉山と同じ緯度で、冬は雪が降ってサーキットも雪化粧する(画像)。なんと4月に雪が降ったことがあるらしい。
ル・マン市の5月の平均最高気温は18.4度、平均最低気温は8.2度であり、東京の4月並の寒さである(資料1、資料2)。5月のMotoGP開催時は低めの路面温度になるのが恒例のサーキットとなっている。
5月に雨が降ると、震えるような寒さになる。2013年5月19日のMotoGPは雨が降って気温12度まで下がり、スターティンググリッドでニット帽を被るライダーが現れた(動画)。人間の体は気温15度を切ると暖房がほしくなり、気温12度を切ると耳や手が凍り付く感覚になる。ニット帽、イヤマフ、手袋といった防寒対策を考えなければならない。
ル・マン24時間レース(四輪版)は6月22日頃、一年で最も昼が長い夏至の週に行われる。6月下旬なら十分に暖かい。
ヨーロッパの北の方にはJune bride(6月の花嫁)という風習があり、6月に結婚式が集中する。これはなぜかというとヨーロッパ北部は緯度が高くて6月になってやっと暖かくなるからである。このことは気温データを見るとよく分かる。ル・マン市の5月は東京の4月に相当し、寒くて、結婚式を屋外で行うと風邪を引いてしまう。ル・マン市の6月は東京の5月に相当し、暖かくて、屋外で行う結婚式も十分にこなせる。暖かくておめでたい気分になり、広々とした屋外で挙式できる6月こそが結婚式にふさわしい。
余談ながら、June bride(6月の花嫁)という風習を無理矢理日本に広めたのは日本の業者達である。日本の6月は梅雨の最中であんまり結婚式には向かない。それゆえ6月の結婚式場は閑散としていた。困った業者達がヨーロッパのJune bride(6月の花嫁)という風習を知り、「June brideって風習があるんですよ!6月に挙式しましょうよ!」と営業をしたので日本でも広まった。とはいえやっぱり日本の6月は雨が多くて結婚式に向かないのであった。
海岸線から140km程度の場所に位置しており、潮風の影響を受けない内陸部のサーキットである。
ル・マン市は西と北と東の三方向を山に囲まれた場所にあり、「山に囲まれたサーキット」と言われる。Google地形図を見てみたり、地形図を画像検索してみたり(検索結果)、Wikipediaの画像を見てみると、ル・マン市周辺が山に囲まれていることがよく分かる。
山に近い場所は上昇気流が発生しやすくて雲が生まれやすく、基本的に雨がよく降る。
こちらとこちらとこちらが現地の天気予報となっている。
サーキット西隣のこの場所にアルナージュ空港がある。ル・マン24時間レース(四輪版)ではここで車両の点検を行う。
サーキットの周辺には、競馬場やサッカースタジアムなどスポーツ施設が多く建設されている。詳しくはル・マン市の記事を参照のこと。
1コーナー外側のこの場所に、ル・マン24時間レース博物館があり、140台ほどの名車が展示されている。公式ウェブサイト、Twitter、Facebook、Instagramがある。
博物館の横のこの場所が、サーキットの正式な入口となっている。
メインストレートを過ぎて高速右カーブを抜け、シケインを越えると、DUNLOPという銘柄が入った大きなタイヤ型アーチが見えてくる(画像)。
これはダンロップブリッジと言われ、歩道橋になっており(航空写真)、観客はここを通ってコースを横断できる。物が落ちてはいけないのでダンロップブリッジには窓一つ無く、中からレースを見ることができない。
ダンロップは英国発祥のタイヤ銘柄で、米国のグッドイヤーと日本の住友ゴムが共同所有している。ダンロップは本サーキットの各コーナーの命名権を購入している。
フランスにはミシュランという世界2位の名門タイヤメーカーがどっしり根を張っているのだが、本サーキットのレースを見た後だと「フランス=ダンロップ」という印象が強くなってしまう。
ちなみにダンロップブリッジは、世界各地のサーキットで作られている(画像)。2005年のドニントンパークにはダンロップブリッジがあった(画像)。
ダンロップブリッジの隣には3つの地下道が連なっている。Le Musée(7コーナー)進入側のこの場所と、Le Musée(7コーナー)脱出側のこの場所と、バックストレートのこの場所に地下道があり、サーキットを横断できるようになっている。
バックストレートのこの場所に歩道橋がある。
メインストレートのこの場所にトンネルがあり、ピットに物資を運ぶトラックが行き来する。
コース後半のS字カーブがあるこの場所にトンネルがあり、ピットに物資を運ぶトラックが行き来する。
メインストレートが始まるあたりに、ガラス張りの円形の建造物がある。これはコントロールタワーで、レースのタイム計測をする場所である。
メインストレートが終わるあたりに「7」の字を描く形の物体が置かれている(画像1、画像2)。これはミシュランランキングタワーというもので、フランス企業のミシュランが命名権を持っている。Michelinの文字と同社のマスコットであるビバンダムが鮮やかに描かれている。
2012年5月の時点では設置されていなかったが(動画)、2013年5月の時点では設置されている(動画)。
2015年までのMotoGPにおいてミシュランはMotoGPのどのクラスにもタイヤを供給しておらず、ブリヂストンとダンロップがMotoGPにタイヤを供給していた。このため、MotoGPが開催されるときのミシュランランキングタワーは黒い板で覆われてミシュランの文字が見えないように工夫されていた。2015年5月のMotoGPの動画と、2015年6月のル・マン24時間レース(四輪版)の動画を見比べてみると面白い。
頭の部分にだけ葉があって胴体は幹だけの背が高い木(画像)がそこら中に植えてある。(名称不明)
La ChapelleからLe Museeの区間の両側、バックストレート左側に高い木があるのが見える。
まるで南国の街道を走っているような気分になる。南国の街道には背の高い木が植えられていることが多い(画像)。
レースが開催される時期になると移動式遊園地が本サーキットにやってくる。そのうち、ル・マン名物の高速観覧車は最終コーナーの南のこのあたりに置かれることが多い。
かなりの速さでぐるぐる回っており、しかも窓無しで寒い。2013年のル・マン24時間レース(四輪版)を体験した人によると、1回乗るのに6ユーロで、1回支払うと6回回るまで乗り続けることができたという(記事)。
レースごとにやってくる観覧車が代わる。
2014年のMotoGPは籠14ヶタイプ。2014年のル・マン24時間レースは籠28ヶタイプ。
2017年のMotoGPは籠22ヶタイプ。2017年のル・マン24時間レースは籠30ヶタイプ。
ル・マン24時間レースの巨大観覧車に乗った動画がある(動画1、動画2、動画3、動画4)
ル・マン24時間レース(オートバイ版)が毎年4月の中旬頃に行われる。2018年は4月21日~22日、2019年は4月20日~21日に行われた。
4月の中旬なのでかなり寒い。ル・マン市における4月の平均最高気温は15.7度、平均最低気温は5.6度である(資料)。
午後3時に始まり、夜を徹して、翌日午後3時に終了する。スタッフはゴロ寝して仮眠を取る(画像)。
2000年からMotoGPが開催されており、開催時期は5月中旬で定着している。
5月中旬のル・マン市はとにかく雨が降りやすく、波乱が起こりやすい。2000年から2019年までの20回はすべて5月にMotoGPが開催されたが、「決勝日が一日中晴れた開催」と「決勝日のどこかの時間帯で雨が降った開催」を区別して表にすると次のようになる。
2000 | 一日中晴れ | 2010 | 一日中晴れ | |
2001 | 一日中晴れ | 2011 | 一日中晴れ | |
2002 | 雨が降った | 2012 | 雨が降った | |
2003 | 雨が降った | 2013 | 雨が降った | |
2004 | 一日中晴れ | 2014 | 一日中晴れ | |
2005 | 雨が降った | 2015 | 一日中晴れ | |
2006 | 雨が降った | 2016 | 一日中晴れ | |
2007 | 雨が降った | 2017 | 一日中晴れ | |
2008 | 雨が降った | 2018 | 一日中晴れ | |
2009 | 雨が降った | 2019 | 一日中晴れ |
2000年から2013年までの降水確率は71%で、MotoGP関係者にとって悪夢のような状況だった。ただし、そこから6年連続で晴れが続いた。
5月中旬の晴れた日のブガッティサーキットには、白いものがそこら中に舞っている。この正体は「マロニエの綿帽子」で、街路樹として広く植樹されているセイヨウトチノキの綿毛である。こんな感じの花が咲き、綿毛が舞う。この木の種子がトチの実で、栗によく似ている。
ル・マン24時間レース(四輪版)は、1年の中で最も昼が長い6月22日の夏至のころに、ル・マンブガッティサーキットの一部と公道から構成される全長13.6kmのサルト・サーキットで行われる。サルト県のサーキットなのでサルト・サーキットと呼ばれている。
ル・マンブガッティサーキットのメインストレートとダンロップシケインとLa Chapelle(6コーナー)までは、サルト・サーキットの一部となる(画像1、画像2、画像3)。
FIAヨーロッパトラックレーシングという四輪レースがある。
重量5,500キロのトラックで駆け回り、ドリフトするわぶつかり合うわの爆走レースを展開する(画像1、画像2)。Youtubeで検索するといっぱい動画がヒットする。
ヨーロッパ人はこれが大好きらしく、どこのサーキットも観客大入りとなる。
このとんでもないレースを本サーキットで2006年の初年度から毎年欠かさず開催している(資料)。本サーキットの路面が凸凹になる理由をだいたい察することができるだろう。
2017年も本サーキットでトラックレースが行われ、再舗装された綺麗な路面で豪快に走っている(動画)。それにしても結構多くの客が入っていて(画像)、人気を窺わせる。
本サーキットのコーナーの数え方は資料によって異なる。英語版Wikipediaだとコーナー数は11ヶと数えるが、MotoGP公式動画ではコーナー数14ヶと数える。本記事ではMotoGP公式動画にならい、コーナー数14ヶと数えることにする。
各コーナーにフランス語の異名がついているので解説したい。
Dunlop curve(1~2コーナー)
Dunlop chicane(3~4コーナー)
Dunlopは英国のタイヤメーカーで、2021年現在は米国のグッドイヤーと日本の住友ゴムが共同所有している。MotoGPのMoto2クラスとMoto3クラスのタイヤを独占供給している。英国に工場があり、そこで作られるタイヤがMotoGPのパドックに運ばれる。
La Chapelle(6コーナー)
Chapelleは礼拝所という意味で、英語のChapelと同じ意味。Laは英語のtheに相当する定冠詞。6コーナーを英語風に言うと「the Chapel」となる。片仮名で表記すると「ラ・シャペル」となる。ル・マン市の名物というとサン・ジュリアン大聖堂なので、そこから連想して命名したものと思われる。
Le Musée(7コーナー)
Muséeは博物館という意味で、英語のMuseumと同じ意味。Leは英語のtheに相当する定冠詞。7コーナーを英語風に言うと「the Museum」となる。片仮名で表記すると「ル・ミュゼ」となる。
LeもLaも英語のtheに相当する定冠詞だが、ちょっと違う。フランス語は全ての名詞が男性名詞と女性名詞に分かれていて、男性名詞に付く定冠詞はLe、女性名詞に付く定冠詞はLaになる。
本サーキットの西にある自動車博物館にちなんで命名されたと推察できる。
Garage Vert(8コーナー)
緑色の車庫という意味。vertは緑色、garageは車庫。片仮名で表記すると「ギャラージ・ヴェル」となる。
'S' Chemin aux Bœufs(9~10コーナー)
「複数の牛たちが通るS字の道」といった意味。Cheminは道という意味。Bœufsは牛という意味で、英語のbeef(ビーフ)に相当する。auxはà と les が合体した言葉で、àはここでは「~の」という意味になる。英語のtheに相当する定冠詞leが、複数形の前に付くときにlesと変化する。ゆえに「複数の牛たちの~」と訳すことになる。
片仮名で表記すると「エス・シュマン・オ・ブフ」あるいは「エシュマノブフ」となる。(英語やフランス語は繋げて発音するのが好ましいとされる)
本サーキットのすぐ東にChemin aux Bœufsという名前の公道があり(地図検索)、それがコーナー名の由来。その公道に沿った駐車場はこちらで、目の前の公道にChemin aux Bœufsという名前が入っている。昔はこの公道を牛が通っていたのだろう。
'S' du Garage Bleu(11~12コーナー)
「1つの青い車庫の前のS字」といった意味。Garageは車庫という意味で、Bleuは青いという意味で英語のBlueに相当する。duはde と le が合体した言葉で、deはここでは「~の」という意味になる。ここでは「~の前の」と訳すのが自然であろう。英語のtheに相当する定冠詞leは、単数形の前に置かれると決まっている。ゆえに「1つの青い車庫の前の~」と訳すことになる。
片仮名で表記すると「エス・デュ・ギャラージ・ブル」となる。
Raccordement(13~14コーナー)
Raccordementは接続という意味。ル・マン24時間レースで使われるサルト・サーキットと接続するコーナーなので、このコーナー名になった。片仮名で表記すると「ラコデモン」となる。
コース全長は4185mで、2018年~2019年にMotoGPが開催された19ヶ所のサーキットの中で上から17番目であり、短いサーキットである。コーナー数は14ヶ所で、2018年~2019年にMotoGPが開催された19ヶ所のサーキットの中で上から9番目である。
ストップ&ゴーのレイアウトで、低速からの加速力、エンジンパワーを問われる。
下りながらブレーキングをしつつコーナーに進入、という場所が4ヶ所もある。La Chapelle(6コーナー)、Le Musée(7コーナー)、Garage Vert(8コーナー)、'S' Chemin aux Bœufsの1つ目(9コーナー)の4つである。こういう場所ではフロントタイヤを酷使せざるを得ない。フロントタイヤが消耗してしまうとなかなかペースを上げられない。
こちらの動画では使用ギアが明示されており、1速にするのはGarage Vert(8コーナー)のみとなっている。こちらの動画でも使用ギアが明示されていて、1速にするのはGarage Vert(8コーナー)と最終コーナーの2ヶ所である。
コース幅が狭くて適切な走行ラインが狭く、神経質にラインをなぞっていく走りをしなければならない。そういう走りが得意なのがヤマハのマシンで、このサーキットでの成績が非常に良い。2000年から2017年までの18戦でヤマハは9勝。特に2008年から2017年までは10戦7勝と圧倒的である。
とにかくコース幅が狭く、パッシングしにくい。パッシングしようとするとラインが崩れてタイムロスしやすい。それゆえ、予選で全力を出してアタックして、スターティンググリッドをできる限り上にしておきたい。しかしながらル・マンは雨が降りやすく、予選で全力を出してアタックすることも難しかったりする。
比較的にパッシングしやすい場所はダンロップシケイン(3~4コーナー)、La Chapelle(6コーナー)、Le Musée(7コーナー)、Garage Vert(8コーナー)、'S' Chemin aux Bœufsの1つ目(9コーナー)、'S' du Garage Bleuの1つ目(11コーナー)、あたりとなる。
ストップ&ゴーのレイアウトではあるが、それほどブレーキに負担がかからない。
ブレンボ(イタリアのブレーキメーカー。MotoGPクラスのほとんどのマシンにブレーキを供給する)が選ぶ「ブレーキに厳しいサーキット」の中で、このサーキットは「MEDIUM」グループに入っている(記事)。
激しいブレーキングをして超低速に落とすヘアピンコーナー(半径が小さいUの字型コーナー)が無い。
激しいブレーキングをせずに車速を残したまま進入する90度コーナーを2つ複合させたコの字型コーナーが目立つ。
ダンロップシケイン進入やバックストレートエンドは90度よりもさらに緩い角度のコーナーであり、メインストレートエンドのダンロップカーブはブレーキをあまり使わず超高速で突っ込む場所である。
ブレーキレバーをガッチリ握ることが少ないサーキットであり、あまり急制動しない。
だから「ストップ&ゴー」というよりは「スローダウン&ゴー」とでも表現した方がいいのかもしれない。
本サーキットでは大型トラックで荒っぽいレースをすることもあり、路面に凹凸ができやすい。
2016年のMotoGP開催時には路面の凹凸が顕著になっていた。
Le Musée(7コーナー)の進入に凹凸をアスファルトで埋めた場所があり、周囲とグリップが異なって滑りやすかった。
並んで走るアンドレア・ドヴィツィオーゾとマルク・マルケスがここで全く同時に転倒した(動画1、動画2)。後ろのマルクが先に転んでいるので、俗に言うビックリ転倒(先行ライダーの転倒にビックリしてブレーキを握りすぎてフロントタイヤが滑って転倒)ではないことが分かる。
こうした惨状を受け、2016年10月に12年ぶりの再舗装が行われ(記事)、2017年は綺麗な路面になった。
ただ、この路面の良さがいつまで持つのかは分からない。
路面グリップが悪いサーキットとして定評がある。晴れていても滑りやすく、雨が降るとなおさら滑る。転倒の多いサーキットとしての印象が強い。
ル・マンは冬には降雪して気温が氷点下にまで下がり、路面が凍結する(画像)。そういう寒冷地に作られるサーキットの路面に目が粗いアスファルトを使うと、水分がアスファルトに入りこんでから凍結した場合、路面が割れることがある。
そういうわけで寒冷地のサーキットには目が細かいアスファルトを使うことが多い。目が細かいアスファルトというのは摩擦しにくく、ツルツルとすべりやすく、グリップしにくい。こういう路面を「ミュー(摩擦係数)が低い路面」と言うことがある。
サーキットの路面を張り替えて開催された2017年のMotoGPも、予選・決勝ともに転倒が多かった。
2009年のGP125/GP250では転倒者数が完走者数を上回り、走りきれればポイントが貰えるという珍事が起こった。
※この項の資料・・・青山博一の解説記事
メインストレートの左右両側に大きなスタンドがあるのが豪華な印象を与える(画像)。ピット施設の上に大きなスタンドがあるサーキットは珍しい。
メインストレートを走ると、グイッと上りながら右へ曲がるダンロップカーブに入っていく。このカーブはMotoGP屈指の超高速コーナーで、最大排気量クラスでは6速・時速300kmで進入する。ただ、上り坂になっているので多少は走行しやすくなっている。
コーナー外側のグラベル(砂)も進むにつれて上り勾配になっていて、転倒したライダーやマシンをしっかり受け止める構造になっている。この画像やこの画像をよく見るとダンロップカーブの先に「砂の壁」がそそり立っているように見える。「転んでも砂の壁があるから大丈夫」と言い聞かせ、ライダーは勇気を振り絞ってコーナーに突入する。
このダンロップカーブからずっと長い間上り勾配が続くので、一番最初のダンロップカーブをできる限り高速で進入したほうが得をする。一番最初のダンロップカーブの進入速度がその後の上り勾配区間の速さを決めてしまう。
このダンロップカーブでは、フロントタイヤをブルブル震わせるライダーとフロントタイヤを震わせないライダーが出現する。2017年のヤマハサテライトのTech3はフロントタイヤをブルンブルン震わせながらコーナーに進入していた(動画)。一方で、2017年のヤマハワークスはフロントタイヤを震わせず綺麗に走っていた(動画)。
こうしたフロントタイヤの振動は、サスペンションの設定によってある程度抑制できる。サスペンションを柔らかめにして衝撃を吸収するようにすればフロントタイヤの振動が少し抑えられる。
右・右と続くダンロップカーブの後に左~右と切り返すダンロップシケインがある。ブレーキングしながら左に右に切り返す場所で、マシンコントロールが難しい。
このシケインは本サーキット最大の抜きどころである。そのためドルナは3ヶ所にカメラを配置し、さらには上空にヘリを飛ばし、万全の体制を整えている。シケイン下側からのカメラ、シケイン右側からのカメラ、シケイン左側からのカメラ、それぞれにカメラマンが1人ずつ待機している。
メインストレートで先行車の背後に付け、さらに右に傾くダンロップカーブでも背後に潜り込み、スリップストリームの恩恵を受けて車速を伸ばし、ブレーキングしつつ力強く左に切り返し、ダンロップシケイン1つ目の3コーナーでスッとコース左側のインに飛び込み前に出て、ダンロップシケイン2つ目の4コーナーで抜き返されないように後続車を押さえ込む・・・これがダンロップシケインにおけるパッシングの流れとなる。こちらの動画は前のライダーに近づいていく様子がよく分かる。
ダンロップシケインの立ち上がりは転倒多発地帯になっている。ここもまた上り勾配になっていて(動画)、アクセルを思い切り開けて早く上りきりたいという心理が働く。そこで無理にアクセルを開けてしまい、ハイサイド転倒するケースが多い(動画)。
ダンロップカーブからダンロップシケイン進入を経てダンロップシケイン立ち上がりに至るまで一貫して上り坂になっていて、ライダー達は地球の重力と戦う。
ダンロップブリッジをくぐると左に曲がりつつ一気に下り、ライダーに減速G、縦Gがかかる。下り勾配が続く中でマシンを右に切り返し、La Chapelle(6コーナー)に進入していく。
この下り勾配はかなり急激で、下からの画像でそれがよく分かる。上からの画像だとライダーが沈んで見える。
La Chapelle(6コーナー)で、ル・マン24時間レースのコースと分岐する。MotoGP開催時にはル・マン24時間レースのコースの上に巨大なスクリーンが設置されている(画像)。
La Chapelle(6コーナー)の中間地点は谷底で、脱出部分は上り勾配になっている(画像)。
ライダーたちはアーチ看板をくぐってLe Musée(7コーナー)に突っ込んでいく。Le Musée(7コーナー)は転倒多発地帯である。ブレーキングしつつ下りながらの進入で、ラインを外すとフロントから切れ込む。
Le Musée(7コーナー)は、進入部分・立ち上がり部分ともにコース幅が広い。このサーキットで唯一広いコース幅になっており、スピードを乗せることができる。また、コース幅が広いせいでライン取りも多く取れる。そのため各ライダーがクロスラインをかけてきて邪魔になり、なかなか攻め込むのが難しい。
しかしながら、タイムを上げるためにはLe Musée(7コーナー)を上手く走ることが大切である。Le Musée(7コーナー)を上手く走ることがGarage Vert(8コーナー)の旋回につながり、さらにはバックストレートの加速にもつながる。
Garage Vert(8コーナー)は下り勾配で小さく旋回する場所でバックストレートの加速に直結する。バイクを寝かせて曲がりながら下るので(画像)、グリップを非常に薄く感じ、難しい。
コーナーが終わってバックストレートが始まるところが底辺になり(画像)、そこから上り勾配が始まる。
Garage Vert(8コーナー)を曲がると、本サーキット最長の直線であるバックストレートに入る。ここは前半が上り勾配で、途中から下り勾配になっている。勾配の上り下りの切り替わりで前輪が浮いてウィリーする(画像)。
'S' Chemin aux Bœufsの1つ目(9コーナー)でパッシングを試みるライダーは多い。緩い角度でブレーキをあまり強く掛けないコーナーで、車速が時速100kmになる中速コーナーなのでパッシングは少し難しいが、ストレートでスリップストリームを効かせて抜きにかかることもある。
'S' Chemin aux Bœufsの1つ目(9コーナー)でミスをしても、ショートカットのアスファルトに乗ればレースに復帰できる(動画)。
2011年にはここでマルコ・シモンチェリとダニ・ペドロサが接触し、ダニが転倒してしまった。イン側に入ってパッシングを成功させたダニに対しマルコが外からマシンをかぶせていく(動画)。マルコにはライドスルーペナルティ(長いピットロードをゆっくり走るペナルティ)が課せられた。
'S' du Garage Bleuの1つ目(11コーナー)の進入は上り勾配が付いており、ブレーキしやすい。ここで先行車のインに飛び込むパッシングを試みるライダーも多い(動画)。このコーナーに飛び込むマシンの車載動画には高速観覧車が視界に入る(動画)。
'S' du Garage Bleuの2つ目(12コーナー)で左に切り返しつつ抜くシーンがたまに見られる(動画)。
'S' du Garage Bleuの2つ目(12コーナー)の立ち上がりは下り勾配になっていて、勢いを付けて最終コーナーへ飛び込んで行く。
Raccordement(13~最終14コーナー)でル・マン24時間レースのコースと合流する。
最終コーナーを立ち上がってすぐの場所にチェッカーラインがあり、最終ラップの最終コーナーで抜けば劇的な勝利になるが、ここは非常に狭っ苦しくパッシングが難しい。
最終ラップの最終コーナーで抜いて勝ったのは2011年125ccクラスのマーヴェリック・ヴィニャーレスぐらいであり(動画)、かなり珍しい。
最終コーナーの立ち上がりで縁石をはみ出して緑色の部分に乗り上げると、「コース外走行」と判定されて順位を下げられるペナルティを科せられる。
掲示板
1 ななしのよっしん
2021/01/17(日) 14:30:58 ID: IkvSL6Sqom
2 ななしのよっしん
2021/01/17(日) 17:35:36 ID: AloXpoA/+s
昔、この記事名にしようと思った理由はおおよそ次の3つでした
1.日テレG+がMotoGPの放送で「ル・マンブガッティサーキット」と呼び続けている
2.MotoGPの公式がこのサーキットを呼ぶとき「ル・マンサーキット」「ル・マンブガッティサーキット」と呼ぶことが多いが「ブガッティサーキット」と呼ぶことは見たことがない
3.ブガッティはイタリア系の名前なので「ブガッティサーキット」にするとイタリアのサーキットのように感じてしまう
急上昇ワード改
最終更新:2024/04/24(水) 20:00
最終更新:2024/04/24(水) 20:00
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