無銘とは (ムメイとは) [単語記事]

無銘とは、刀剣や書画などで製作者の名が刻まれていないこと。話し言葉では「無名」と区別が付かないため、混同しないように文脈から読み取る必要がある。(無銘だからといって無名だとは限らない)

曖昧さ回避

概要

通常刀剣などではその刀剣を制作した刀工により銘が彫られる。これにより製造者の証明と刀の性能を保証するのである。

しかし、時と場合により、その銘が削られてしまうことがある。あるいは最初から銘が彫られていない場合もある。また、単に経年劣化により銘が消えてしまう場合もある。そのような刀は無銘と呼ばれることになる。したがって、名刀なのに無銘、無銘だが名刀というものも存在している。

元々刀剣に銘を刻む慣習は大宝律令にまで遡るとされる。一方、わざと銘を刻まない場合というのも古来から慣習として存在する。商売目的で製作したものではなく、目上の者や神々に献上するために製作した場合は、あえて刀剣に銘を刻まないこともあった（作者としては銘を刻む必要が無かったといった方が正しいか）。このため、無銘だからといって銘があるものより「出来が悪い」ということはなく、特徴や由来が明らかとなっているものの中には、有銘のものよりも価値のあるものもある。また、正宗や郷義弘など天下に名だたる腕前がある場合は、銘を刻またなくても刀剣の出来で作者がわかるため刻む必要も無い、という考えに至るものもいたのかもしれない。

銘を削る事例として、大磨上が挙げられる。長すぎる刀を削って適度な長さにする「磨上（すりあげ）」の際、銘が掘られている部分が丸ごと削られることを大磨上（おおすりあげ）という。大磨上をしたのちに新しく銘を入れ直さない場合、無銘の刀の出来上がりである。この事例に当てはまる刀として大倶利伽羅が挙げられる。

銘が消える事例としては、小烏丸など、古刀以前の刀剣に見受けられる。中心部分は通常研がないため、錆により銘が消えてしまうことがある。一度消えてしまった銘を判断することは極めて困難だが、科学的手法による調査や、過去に作成された押形や折紙などの記録をたどる文献調査によって判明することもある。

刀鍛冶が最初から銘を入れなかった事例として、正宗が挙げられる。鎌倉時代末期から南北朝時代に活動したといわれている刀鍛冶正宗は自分の作った刀に銘を彫ることが少なく、その多くが無銘となっている。現在伝わっている正宗とされる刀も無銘のものが多い。

創作作品において

無銘の刀というのはその製作者の名前が不明ということである。これは通常ならば品質保証がないということであり、当然ながら品質が低いものとなっている可能性が高い。序盤に手に入る一番弱い刀として扱われることも多い。

しかし、上記したように無銘だが名刀というのは現実でも実在しており、創作作品においても「名工が密かに作り、自分の名前を刻めなかった」などの理由で無銘とされることがある。中二病的に言うなら「闇に葬られた名工○○の作った最後の刀」といった設定ができるようになる。

上のような例はやりすぎではあるが、刀で切りあうような作品において無銘であることはすなわち「未知の刀」であることを示し、名刀と呼ばれる刀に対して決して引けをとらないような刀と化す場合がある。

無銘の刀が登場する作品

ファイナルファンタジー11 - 無銘刀は侍のジョブと同時に手に入る刀。刀の中では弱い部類に入る。
るろうに剣心 - 斎藤一の愛刀は当初無銘のものであった。緋村剣心との戦いにおいて折られてしまう。
空の境界 - 両儀式が劇中で使用した刀は「銘がない」といわれている。九字兼定といわれているが真偽は不明。
女神転生シリーズ - 真・女神転生で「むめいのかたな」が登場。「もぞうとう」よりマシと言う程度の序盤の武器。以後シリーズ各作品に登場するようになる。
ニンジャスレイヤー - 登場人物の一人、シルバーカラスが無銘のカタナ「ウバステ」を持つ。彼は様々な試作武器を一般市民相手に実験する「サイバーツジギリ」という非道な稼業をしているが、ここぞという場面では何の変哲もないカタナである「ウバステ」を信頼するという。